テーマパーク風に再開発されてしまったカジュアル老城と異なり、カシュガルの町には一般的ウイグル人が住まう伝統的家屋も辛うじて残されている。
中でも、カシュガル老城の東の切り立った土崖の台地に残る集落が一番の規模のようである。
俯瞰モードで家屋群を確認する為、摩天楼と呼ばれる近くの観覧車がある高台に登ってみる。
あー、良く見える良く見える。レンガ造りの家々が高台にびっしり張り付いていて、まるで陸の軍艦島のようなシルエット。
因みに、反対側の景観はこの通り。他の中国の都市と変わらない近代的で無機質な漢族居住エリアになっていて、高層マンションなんかも建ち並ぶ。
ウルムチでもクチャでもそうであったが、新疆の町では決まってウイグル族と漢族の住み分けが行われていて、ウイグル族はまるでインディアン居留地のように固まった集落で生活を営んでいる。また、小・中学校も別々で、北京語が話せないウイグル族は社会の要職に就けない仕組みになっているとか。それでいて一定のポストには傀儡的なウイグル人を据えたりしてて、やってることは漢族が支配階級として西域に君臨した時代の羈縻政策と何ら変わんないんだよな。カザフ族・ウズベキ族・キルギス族・タジク族など中央アジアの諸民族はまがりなりにもそれぞれの独立国家を持っているので、こりゃあウイグル族も独立してぇぇぇぇって流れになってもおかしくはないわなぁ。
そんなウイグル族が住まう高台居住区を近くで観察してみると、まるで煉瓦造りの要塞かのように住居が密集していることが分かる。そして、鼻を突く強烈な匂い。香辛料をたっぷりかけた羊肉串の匂いだ!
一部の家屋は廃墟寸前といった具合で今にも崩れ落ちそうな状態にあるけれど、それでも確かに中からは生活音が聞こえてくる。漢族の姿も皆無だし、中国であって中国ではない全く異なる雰囲気で、自分が西域まで来たことを改めて実感する。
日干しレンガの住居が並ぶ異世界。継ぎ接ぎだらけで今にも崩れ落ちそうな家、色鮮やかな木のドアを拵えたお洒落な家、崖に沿って建つ歪な形の家…。どれもがオンリーワンの手作り家屋であるようだ。何となく郷愁をそそられる。
こういったウイグル人居住区がカシュガル中心部に幾つかあり、高台エリアに次いで規模が大きいカシュガル職人街のウイグル居住区に行ってみる。
フォトジェニックな職人街。
店先で職人が金槌の音をカンカンと響かせながらのんびりと銅器を作っていたり、モクモクと煙を上げながらケバブを焼いたりしてる。ここだけ切り取ってみたらどう見てもチャイナじゃない。
そんな職人街の中ほどに、二階部分が欄干付きテラスになった木造の巷門がある。こいつがウイグル居住区への入り口だ。
煉瓦造りの民居が連なる巷の内部はまるで迷宮のように入り組み、細い路地が交錯。内部にはモスクや商店なんかもあったりして、古代西域の異国に迷い込んだかのように思わせてくれる。
高台民居と比べて裕福な家庭が多いのか、門構えや外壁の模様にも凝った立派な邸宅が並ぶ。
家屋の中からはイスラム音楽が聞こえ、街角にはサッカーをして遊ぶ子供の声が響き渡る。やっぱりカシュガルでは博物館なんかに行くより街歩きをしてた方が楽しいわ。
【高台民居景区】
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