広州でのダルマさん

欧州風建築群の立ち並ぶ沙面で爽やかな散歩を楽しんだ後、次なる目的地である陳氏書院を目指して康王南路を北上。途中、上下九広場を過ぎたところで神秘的な線香の香りがどこからともなく漂ってきた。匂いにつられて進んでいくと、華林禅寺という名の寺に辿り着いた。

随分と古めかしいなぁと思ったらそれもそのはず、なんと西暦525年前後にインドから達磨が広州に辿り着いた際に興されたという歴史ある寺だそうだ。


境内に入って先ず目につくのは髭もじゃらな仏像。このむさ苦しきお方が何を隠そう中国禅宗の始祖である達磨(ダルマ)大師である。南インドのタミル系王朝の王子であった達磨はインド洋を渡り、足掛け3年かけて現広州に辿り着いた。到着後、達磨は先ず南北朝に分断されていた当時の中国の南朝の梁を治める武帝に謁見した。仏教を排斥する動きが盛んだった当時の中国にあって仏教を保護し厚く信仰していた武帝は達磨を歓迎し、問答を交わす。

帝「ワシぁ今まで数多の仏閣を築き、仏像を納め、僧を育てるなどの善根を積み、仏教興隆に寄与してきたんじゃ。ワシの功徳、すんごいだろう!」
達「オッサン何言いますねん。あんた無功徳や無功徳!」
帝「なんでやねん!」
達「そりゃあもう功徳をひけらかすようじゃあ、それは偽善ってもんじゃよ、偽善。だから無功徳!」
帝「なら真の功徳とは何なんだよ」
達「そりゃあおっさん、空っぽよ空っぽ。真理は空っぽで、功徳なぞ現世では求めることは出来んばい。」
帝「貴様偉そうに!そう言うアンタはいったい何者だ?」
達「オッサン、そりゃワシにも分からんのじゃよ。」

物理的な御利益や功徳を求める武帝と達磨の心は噛み合わない。この後、達磨は失意のもとに北魏の国の少林寺に行き、只ひたすらに壁に向かって座り続けるという何とも暇で退屈な修行に打ち込むことになる。面壁九年、壁観修行(壁が如く動ぜぬ境地に達することで真理を観ずる)と言われるらしいが、彼は一言も発さずにひたすらと壁に向かって座り続けた。その間何と9年!彼は来る日も来る日も迷いを断ち、感情を鎮めて座り続けた。余りに長期に渡り座り続けた代償として手足が腐敗して切断せざるを得なくなったとも言われるが、修行の成果か、五体不満足となっても何と150歳まで生き長らえたそうだ。

ダルマさんと言えば日本ではネタ要因としても扱われている節が有り、「だるまさんが転んだ」や「にらめっこ」、「だるま落し」などでネタにされ、選挙後には当選議員によって目に墨を入れられる。私の中で何とも親しみ深いキャラクターだったのだが、まさかあのダルマ像は手足の腐敗が原因で胴体だけの躯体になったとは思いもしなかった。

ひだり みぎ
150歳まで生きたとされる達磨さんの長寿にあやかりたいのか、境内ではご老人の姿が目立つ。それにしても当地の線香はコントかよ!と思うほどに長く、そして太い。 境内を探索していると、五百羅漢堂を発見。


文革の際に破壊されてしまった物を1990年代に改修してできたそうだ。


中に入ると昨日造ったばかりじゃないの?と思うくらいの強烈な輝きを放つ仏像が整然と並んでいて、香港の萬佛寺を偲ばせる。 しかも萬佛寺や今は無きタイガーバームガーデンにも勝るとも劣らない程にキャラクターが濃い。というか妙に人間味に溢れている。

ひだり みぎ
念仏しすぎてなのか、髭が黒い数珠と化した仏さん。

ひだり みぎ
ダンボのような巨大耳たぶを持った幸の薄そうな坊さんとカラスの様な真っ黒な顎鬚をたくわえた不安な表情の坊さん。

ひだり みぎ
こういったマジックで塗ったようなデザインの髭が流行っていたのでしょうか。

ひだり みぎ ひだり みぎ
花を見つめてうっとりする男有り、怪訝そうな表情で小鳥を手なずけようとするサーファー風ロン毛男有り、口紅を引いたホモ男有りと、一人一人のキャラ設定が非常にユニークだ。あれが解体、これも欲しい!もっと金をくれえええええええ!!!!いくら鎮めたくとも無限に湧き上がってくる煩悩。達磨さんは9年にも渡る壁との睨めっこで「無」の大切さを説いたのだが、どうもここの仏像さんたちは本能全開、欲望のままに野放図に生きているように見受けられる。悟りを開くにはまだまだですな。

ひだり みぎ
これだけ濃いキャラの仏像が整然と鎮座する五百羅漢堂。棚の上には更に多数の“二軍”仏像が控えるという層の厚さ。 煩悩に忠実に生きることの大切さを学びました。


開放時間:08:00~17:00

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