長春の旧ヤマトホテル(春誼賓館)に泊まる

長春での宿は春誼賓館。
1泊50元ほどのドローカルな招待所とかゲストハウスといった響きの宿名ですが、元々ヤマトホテルとして建てられた箱を使った、長春でも有数の名門ホテルだそうです。

ヤマトホテルはかつて南満洲鉄道が経営していた直営の高級ホテルブランド。JRホテルや東急ホテルズといった鉄道会社によるホテル経営の先駆け的存在っすね。
1907年に旧満州圏のダリニー(大連)で開業したのを皮切りに、ここ長春、奉天、ハルビンなど満鉄沿線の主要駅周りで計16のホテルを運営していました。

開業から100年以上を経て今や満州鉄道どころか満州国すらないわけでして、当然ながら法人としてのヤマトホテルも残ってはいないわけなのですが、ここ長春のヤマトホテルは当時の建物が現存していて宿泊も可能。こんな話を聞いてしまったら、泊まってみたくなっちゃいますよね。

場所は長春駅の対面。駅前の通りを渡った先という駅前物件となります。

敷地内に入って正面が迎賓楼(旧館)、左手が後になって増築された貴賓楼(新館)と分かれているようです。今回の予約はもちろん旧館で入れていたのですが、「旧館は不便なんで新館にアップグレードしておきました」というありがた迷惑な話を受けてしまいます。
お気持ちはありがたいが便利とか便利の話ではないので旧館でお願いしますと伝えたところ、残念ながらコロナ禍で営業活動を縮小しているそうで、この日は新館の貴賓楼のみゲストを受け入れているとのことでした。恩着せがましくアップグレードなんて言わないでw

迎賓楼(旧館)

旧館の方は宿泊はできないけど見学は可能という許可を頂きましたので、誰もいない旧館の内部を探検させて頂きます。

1909年に政治的な交渉の場として長春駅前に建てられました。時代的には満州国建国よりはだいぶ前。日露戦争に勝利して、これからこちらでゴリゴリに統治していきますよ!という意思の表れか。

100年も前の建物なので幾度となく改修されてきていますが、踊り場にあるカモメのステンドガラスは1909年の開業時からあるそうです。激動の時代に欧州列国に負けじと奮闘していた日本人。満州の地に新しい最高級ホテル建てるとなった当時の関係者の夢や希望や思惑などなどを想像するだけで、胸にこみあげてくるものがあります。

踊り場から二階へと上がると、これまたクラシカルで華やかな空間が。
満州国皇帝の溥儀が使っていたという鏡が設置され、その両脇にはヤマトホテル時代に滞在した著名人の写真なんかが飾られています。

もちろん溥儀もいるし、甘粕ニキなんかも。満州国の首都・新京の社交の場として様々な場面に使われたであろう特別な舞台に今まさに自分がたっていると思うと、胸熱すぎて火傷しそうです。

休館状態で完全なる静寂に包まれていたということもありますが、本当に異世界・異空間にタイムトリップしたような不思議な感覚に陥ってしまい、当時このホテルで華やかに催されていたであろう舞踏会のシーンなんかが脳裏に浮かんでくるという。

映画シャイニングのあのトランス状態。見えないものが見えてきて、現実と非現実の世界が分からなくなっちゃうヤバい状態の一歩手前までいっちゃいましたw

貴賓楼(新館)

これは危ないと思い新館の現実世界へと戻ります。チェックイン・チェックアウトの手続きなどはこちらのロビーで対応頂くことになります。クラシカルなテイストの旧館とは違って、モダンチャイナな雰囲気。新館にはヤマトホテルの名残は一切感じられません。

装飾品も中国の方が好きそうな馬や鹿などの縁起物で固められていますし、色使いなんかも風水を意識したかのようなスタイル。

新館客室

部屋は無駄に広い。スペースが余りまくってて逆になんかソワソワするというか。

バスルームは典型的な中国の3つ星クラス。新館といえども一昔前のスタイルです。

アメニティ類はホテルのロゴ入り。歯ブラシの袋だけが場違いに高級感があって浮いています。

ティーカップやコーヒーカップにもこだわりが感じられる。ヤマトホテルの名に恥じぬ作りにしようと、新館開業時は当時の最高級最先端ホテルとして張り切ったんでしょう。

ウェルカムスナックと合わせて、明日の天気予報と手書きのサンクスレターもいただきました。ラブレターを渡して走り去るシャイな少女かのように、「はい、これ」とだけ言って去っていく従業員の姿が印象的でした。
レターの名前を見ると越野さん?いや、赵野さんでした。紛らわしいw

所感

新館はただのローカルホテルで、ヤマトホテルに泊まったという実感はほとんど得られません。
既に旧館での予約受け入れも再開しているようなので、どうせこちらに泊まるなら多少古くて不便でも旧館に泊まった方が味わい深い宿泊体験になるかと思います。
一報で快適さを求めるのであればこちらのホテルはおススメできませんので、シェラトン、ハイアットリージェンシー、シャングリラあたりをどうぞ!

【春誼賓館】

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