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孔子が眠る文廟と国中の秀才が集まった国子監


1010年に李王朝の都と定められて以来ベトナムの中心でありつづけた長い歴史のある街・ハノイ。もちろん今もベトナム社会主義共和国の首都であり政治の中心地となっている。“カラフル”、“モダン”、“エネルギッシュ”、“暑い”、“奔放”、“煩雑”といったイメージのホーチミン市に対し、ハノイにいると、“シック”、“レトロ”、“成熟”、“情緒”、“風情”といった印象を受ける。何というか、首都としての落ち着きというか安定感というか、そういった空気を感じるのだ。街並みも風情があって良い。旧市街とよばれるホアンキエム湖の北側には当時の城壁や街並みも多く残っているし、青々とした街路樹が連なる通りや、パステルカラーのフランス様式の建築物、静かな水面の湖など、風情満点の街並みが広がる。

ハノイには何度か来ているが、観光の為の時間を取れるのは今回が初めてだ。ホテルでチェックインを済ませ、ホテル前に屯していたタクシーに乗ってガイドブック一押しの文廟とやらに行ってきた。学問の聖地と崇め奉られている神聖な場所だそうだ。

バイク・チャリを上手いこと掻き分け走るタクシーに揺られる事10分弱だろうか、『ここだ』と言って下車を命じられる。VND31,200にのメーター費用に対してVND40,000を渡すと『Thank you』と言って顔をくしゃくしゃにして満面の笑みを見せてきた。お釣りをやるとは言っていないぞ。
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『ここだ』と言われたのでこの塀の向こうが文廟なのだろうが、肝腎の入り口が見当たらない。

ひだり みぎ
それらしき門を見つけるも、入り口ではないらしく、門の前にヤンキー座りをするお姉さんに止められた。

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入り口を探して塀沿いに歩いていると、壁に向いて置かれた古ぼけた椅子と壁に掛けられた鏡の列が並んでいるのを発見。

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やっぱり路上散髪屋のようだ。歩道の端にイスと鏡を置いてインスタント散髪屋を開業するなんて光景は見慣れてはいるが、この男、神聖なる学問の聖地の塀を商業利用するとはなかなかの度胸である。しかも頻りに床に置いたビール瓶に手が伸びてるし…青空理容師は見慣れているが、飲酒散髪屋は初めて見たぞ。

露店散髪屋を尻目に塀を伝って歩くこと5分、文廟への入り口を発見!
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この文廟、李朝時代の1070年に孔子を祀るために建立された孔子廟とのことだ。その後、1076年に官吏養成を目的として境内に国子監というベトナムで初めての大学が開設され、以来1779年までの700年の間に数多くの学者や有力な政治指導者を輩出してきた名門大学のよう。儒教に科挙にと、ベトナム北部は中国文化の影響を色濃く受けているのだなぁと改めて実感。

文廟門の造りはベトナムの仏教寺院によくある二つ屋根の三関門タイプで、もともとは木像だったものが後黎朝後期の17-18世紀あたりに石造りに建て替えられたそうです。この中央の門は文廟で儀式が行われる時以外は閉じられていて、王や高官だけが通ることのできた特別な門だったそう。一般庶民はというと?現在は閉ざされている左右の小さな門から出入りしたそうです。私も高官気どりで悠々と中央の門から入ってやりました。
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文廟門の両側にある石造の柱には「東西南北全ての道はこの道に通ずる。」「教義はこの道にあり。」といったようなことが書かれている他門の左右には竜虎のレリーフが施されています。龍は特に吉運とされていることから儒学者の成功や幸福の象徴で、虎は力と権力の象徴とされているようです。まんま中国文化のパクリだな、というかこの場所自体、中国そのものの雰囲気だ。

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さて、こちらは門の反対側。反対側から見ると、中央に人の姿のレリーフがあるのが見えます。これは孔子とその4人の弟子たちの姿を象ったものらしい。こうして時を経て尚、参拝客を見守っているのです。

中央の門を入り、奥に真っすぐと伸びる道は皇帝の道と呼ばれている。
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モデルさんだろうか、観光客が挙ってレンズを向けていたので私も失礼することに。皆さん笑顔が素晴らしい。

ベトナム特産のバッチャン焼きのレンガが敷かれた皇帝の道を真っすぐに進むと、2つ目の門である大中門に到着する。
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赤塗の柱が印象的だが、瓦屋根の上では一対の鯉が尾を上に跳ね上げ、真ん中の瓶と鱗には陶器の破片が埋め込まれるなど、よく見れば非常に凝った造りになっています。後漢書の登竜門の話から、鯉は困難に打ち勝ち成功を収める者の象徴とされているのだが、学徒達も必死に跳ね上がる鯉の姿と厳しい試験に挑む我が身を重ね、鯉を見て多いに鼓舞されたことでしょう。

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続いて奥へ進んでいくと、ハノイのシンボルにもなっている奎文閣と呼ばれる3つ目の門に行きあたります。そういや10万ドン紙幣にも描かれていますね。

ひだり みぎ

ひだり みぎ
閑静で学び舎としては抜群の環境にある。この地に集まる学徒は殆どが各地方で受験可能な郷試をパスした挙人と呼ばれる超秀才であり、大学で3~7年間に渡り儒教の聖典である四書五経などから学んだ後に会試を受け、会試に合格後、宮殿で開かれる最終試験・殿試に挑むというプロセスになっていたそうです。

奎文閣をくぐった先にはティエンクアン(天の井戸という意味らしい)という名前の池があり、その両側には風雨を避けるために作られた瓦屋根の下に82の石碑『進士題名碑』がズラ~っと並んでいます。
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進士とは、官吏登用試験である科挙に合格した人のことで、要は科挙の合格者の栄誉を讃える為、彼らの名前と出身地を刻んだ碑が並べられたのです。それも、よく見たら可愛らしい亀形の石台の上に…2010年に世界記憶遺産に登録されて以降は碑に触れることはできなくなったそうですが、それまでは毎年受験シーズンに合格祈願のために文廟を訪れ亀の頭をなでる受験生が多くいたそうです。

さて、奎文閣をくぐり、最後の大成門を抜けるといよいよ孔子の霊が祀られている文廟に到着です。
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祭祀など行われていた大拝の庭と、その奥に見えるのが柑子色の屋根瓦が美しい大聖殿で、内部にある立派な祭壇の前では訪問者たちが熱心に祈りを捧げています。

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祭壇の上には『萬世師表』と書かれた額縁がありますが、これは『万世に渡り人々の模範となる師』という意の孔子の言葉だそうです。他にも『集大成』、『徳参天地』、『道冠古今』、『福斯文』といったありがたそうなお言葉が書された額題がかけられています。

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孔子像。イエス・釈迦・ソクラテスというそうそうたるメンバーに並んで世界四大聖人に数えられるほどの凄いお方だ。

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どちらかというと人相が悪そうに見えるが、人を外見で判断してはいけない。実力主義が横行し身分制秩序が解体されつつあった春秋時代の周末・魯国に生まれ、周初への復古を理想として身分制秩序の再編と仁道政治を掲げ、仁(人間愛)と礼(規範)に基づく理想社会の実現を説いたアツい漢(オトコ)だ。

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大聖堂の両脇奥には男性器の象徴であるリンガのような石碑が5基ずつ安置されていましたが、これはリンガではなく孔子の門人で特に優れた十人の賢者を表しているそうだ。徳行に優れた者、言語に優れた者、政治に優れた者、文学に優れた者の4タイプの聖人がいたことから、四科十哲と呼ばれているそうだ。

この文廟の裏手には国子監があります。ベトナム最古の大学である国子監は1076年に李朝第四代皇帝リー・ニャントンによって国を治める優秀な官僚の養成する目的で建立され、以後20世紀までこの地に存在し続けていました。しかし、1946年の抗仏戦争中に完全に破壊されてしまったので、現在の建物は2000年に「タンロン建都990年」の記念事業として再建された復元建物になるそうです。

ひだり みぎ
いかにもめでたそう。

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文廟マップ。

文廟の中の木陰のベンチに腰かけて風景を眺めていると、ここがベトナムの首都のど真ん中であることを忘れてしまうくらいに静かでゆったりとしたな空気が流れています。後は御利益に即効性があったら言うことなしなんだが…

文廟
住所: 66 Nguyen Thai Hoc, Ba Dinh dist., Hanoi
時間: 07:30-17:30
定休日: 無し。
料金: VND 10,000 (約40円)


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