ラマダン期間中のチュニスを歩く

ここまできてホテルで外籠りするだけというのは勿体ないので、ちょっくらチュニスの町を歩いてみることに。

コンシェルジュに町の見所を聞いてみると、「今からカルタゴに行くにはちょい遅いし…ラマダン初日だから閑散としてると思うけど、旧市街に行ってみると良いよ。ホテルの外の大通りでタクシー拾えるから。」とのことだったので、ホテル前の通りに出てタクシー待ち。
大通りをとんでもないスピードで車が走り抜けていく中、くっそボロボロのバンが停まってくれ、マッチョで強面の中年運転手がたどたどしい英語で声をかけてくれました。

ボロく汚い車、厳つい顔に鍛えられた体、たどたどしい英語…これ以上ない胡散臭さだったけど、男は警察を自称する。「何してる?どこにいく?私は警察。今日はラマダン初日で外国人一人だと何があるか分からない。車に乗れ(命令形)。」

割れたリアガラスを段ボールで補強していたりと、とても警察車両には思えない怪しさ満点の車だったけど、物腰が柔らかくて厳つい顔の割には人の好さそうな男だったので本物の警察と判断、お言葉に甘えてフリーライドのオファーに乗らせてもらうことに。


10分弱ほど走り、「ここを右に行ったらメトロの駅。進行方向に向かうトラムに乗ったら旧市街に着くから!グッドラック!」と右も左も分からぬ市街地の一角に放り出されました。


降ろされた大通りは人通りも少なく殺伐とした雰囲気。ゴミが散乱してるし、有刺鉄線で囲まれた建物があったりと、シェラトン付近よりここの方がよっぽど無法地帯感あって危険そうなんですがw


店もほとんど閉まってるようだし、やっぱラマダン期間中にイスラム圏に来ちゃだめだよなー。北アフリカを代表する大都市とは思えないスラム風シャッター街ぶりでちょっと怖い。


そんな静まり返った町の中で、ゴォーーーっという奇妙な機械音が近づいてくる。ゴミの収集車か?気になって音の発生源に出てみると、ゴミを蹴散らしながらメトロが走り去っていっいきました。こいつを追いかければメトロ駅に着くに違いない!そう思って全力ダッシュ。


メトロといってもチュニスメトロは地上を走るライトレールのようで、300m程走った公道上に小さな駅舎が見えてきました。


元々メトロに乗る予定じゃなかったので、財布を見ても小銭は無し。うわー、これ絶対気まずくなるやつやんと思いながら乗車券販売の窓口にいた髭のオッサンに10ディナール(≒370円)を差し出すと、案の定、「このアホ。こんな安い運賃なのに高額紙幣出してくるとか空気読めないの?」的な罵詈雑言を浴びせられる羽目に。ああ、耳が痛い…そして部屋の中から酸っぱい匂いが漂ってきて鼻も痛い…
ただ、くっそ大きな声で文句を言い放ちつつ硬貨のお釣りを搔き集めてくれ、なんだかんだ文句言いつつ律義にもきっちり9.6ディナールのお釣りを返してくれました。運賃0.4ディナール(≒15円)?


こんな運賃じゃ清掃員も雇えないのでしょうか。トラムの中もゴミ落ち放題、落書き描かれ放題と、日没後は乗りたくないような荒んだ雰囲気です。空港やシェラトン付近のリゾート然とした爽やかな開放感はどこへやら。


車窓の外に広がる街並みも荒んでいましたが、暫く走って建物が小ぎれいになってきたので下車。ここから少し歩くと、アベニュー・デ・フランスという洋風な大通りに行き当たります。チュニスの新市街はフランス統治下時代に築かれた小洒落たオフランスな建築群で構成されているようです。


地図で見てみるとこんな感じで、官庁街と新市街の間にアラブアラブした旧市街がありまして、旧市街の正面玄関から真っ直ぐ伸びる御フランス通りを中心にヨーロッパっぽい新市街が広がるイメージ。


チュニス新市街にはオフランスでオシャンティな建物が多く立ち並んでますが、その中でもひときわ強烈な個性を見せつけるのがチュニス大聖堂(セントビンセントデポール教会)。ヨーロッパ的な建築様式をベースにアラビアンな要素が加わった独特なファサードが特徴で、ヨーロッパっぽい新市街と、アラビアンな旧市街とに二分されたチュニスの町を象徴する存在とされているようです。

中の様子も見てみたかったのですが、番犬のように吠えまくる狂犬門番(?)に追い返されてしまいました。ワイ以外にも周囲の人に対してランダムに吠えまくってたんで、聖なるラマダン初日に教会に行くとは何事だ!?的な主張を吠え散らかしてたのでしょうか。触らぬキチガイに祟りなし。残念ですが教会の中に入るのは諦めました。


大聖堂から少し西に歩くと見えてくるのが、旧市街と新市街とを隔てるフランス門なる石造りのゲート。ここから先には旧世界の面影を残す庶民的なメディナ(旧市街)が広がっています。

7世紀に作られ始めたとされる歴史あるチュニスの旧市街は、なんでも昔は堅牢な城壁に囲まれた城塞都市として栄えていたようでして。迷宮のように張り巡らされた細い路地の数々も、外的を迷わすことを目的にデザインされたものらしいです。
ひだり みぎ
ラマダン期間中につき活気こそ感じられませんが、地元民向けのローカル商店に混ざって観光客相手の土産屋も所狭しと並んでます。アーケードのように天井が覆われているからか、閉塞感があって怪しげな匂いがプンプン。

ひだり みぎ
布製品に革製品、銀食器や陶器、スパイス、香水などなど、狭い路地の両側にあらゆる製品がひしめいていて、アラブの混沌を実感できます。


市場内にひしめいているのは商品だけでなく、獲物の到来を待ち構えるあざとい肉食系アラブ商人も大量繁殖。薄暗い路地に彼らが奏でるニーハオニーハオの大合唱がこだましています。
うわー、完全アウェーでやっばい雰囲気だなーと思いつつ彼らの商店の前を通ろうとすると、当方が日本人だと判別したのかナカータ・ナカムーラと日本人の名前を連呼してのウホウホゴリゴリ肉食商人モードに豹変。日本人は押しに弱いとでも思われているのか、押してダメなら押し倒せ!くらいの勢いの営業でした。ラマダン中で獲物も少ないことから飢えていたんでしょうね…


肉食商人の追っ手を振り切り薄暗いスークの出口を抜けると、正面には若者でにぎわう水タバコ屋が。バナナはおやつに入りません的なグレーゾーンで、ラマダン期間中の日中でも水タバコはオーケーなんすかね。皆さんモスクの目の前で気持ちよさそうにプカプカと吸い倒してらっしゃいました。神聖なるオリーブモスクの目の前で。

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