永遠の火を祀る アテシュギャーフ ゾロアスター教寺院

“火の国”アゼルバイジャン。

フレイムタワーやヤナル・ダグなど、火の国の神秘性を実感できる場所は幾つもあるんですが、今日は首都バクーから20kmほど離れた郊外に位置するゾロアスター教のアテシュギャーフ(Ateshgah Temple)寺院に行ってきたいと思います。

一般にはゾロアスター教として知られる拝火教は、紀元前にイランで興ったとされる世界宗教の先駆け的存在。火って神秘的だよね!ってことで興った就業がササン朝ペルシア時代には中央アジアから中国まで広範囲に伝播。アゼルバイジャンが7世紀にアラブの支配下に入った当時も、アゼルバイジャンではゾロアスター教徒が多数派だったそうです。

拝火教とかどんなプリミティブな信仰だよ!って思われがちですが、このバクー近郊に遺るアテシュギャーフ拝火教寺院が建てられたのは意外と最近で17世紀。インド北部、トルコ、シリアを結ぶ隊商のルート上に建立され、寺院周辺で地表から噴き出す天然ガスが自然発火し燃え続けていたことから、「これヤバない?めっちゃ神秘的じゃん?」ってことで火を神と崇めるゾロアスター教徒の聖地になったんだとか。

ゾロアスター教の寺院とは一体全体どんなものなのか、期待を胸に行って参ります。

バクーからのアクセス

バクーの市街地から地下鉄でKoroglu駅へ

Koroglu駅で184番バス(Surakhani行き)に乗り換え


ということで、先ずはバクーの地下鉄駅へ。宇宙空間の異世界へと吸い込まれていくようなハイパーコスミック感、癖になります。


ザ・旧ソ連!的なメトロでKoroglu駅へ。

ひだり みぎ
地下深くに造られたKoroglu駅から地上に上がると、目の前がもうバスターミナル。近代的なガラスピラミッドと前時代的な古~い大宇のバスが奏でるコントラストがまた滑稽というか。バブリーな建物が立ち並んでるのに、バスだけは旧式なんですねw


184番は古いタイプの車両なので、運賃の支払いにバクーのICカードは使えないので要注意。運賃(0.2マナト≒13円)は現金で運転手に渡す必要があります。

バスに乗ってしまえばもう拝火教寺院に着いたも同然、終点まで乗ってればオーケーです。
打ち捨てられたような石油採掘場が並ぶだだっ広い古くからの油田地帯を30分程走り、終点で下車。広場の裏手の線路を超えた先に拝火教寺院のゲートが見えてきます。

アテシュギャーフ寺院


なんか、寺院というよりキャラバンサライ的造りの博物館っすね…ちょっと想像とは違いましたが、入場料4マナト(≒250円)を支払い城壁の中へと入ります。世界遺産にしては安い!



ペンタゴンのように形取られた城壁内部の中央に永遠の炎を奉る小さな御堂がありこのお堂の地面から炎が延々と燃え上がり続ける光景を見た火に神性を見出していた人達が、ここを聖地として定めて寺院を建てたそう。



善悪二元論的な概念を持つゾロアスター教の経典では、火は善の象徴であり悪を遠ざける最も尊ばれるべき聖なる存在。もちろん偶像などは無く、礼拝の対象も炎。冬は焚火気分で楽しめそうですが、夏場の礼拝は嫌っすねw


当時の様子は、展示部屋として整備された御堂を取り囲む僧房の一室一室で確認することができます。


ササン朝ペルシャ時代には国境として栄えたゾロアスター教ですが、イスラム勢力の波がペルシャの地にまで押し寄せると、ゾロアスター教徒は次第に弾き出されるようにインドへと移動。南アジアと中央アジアを結ぶ大幹道上にあることから大いに栄えた拝火教寺院ですが、19世紀には打ち捨てられた状態になったそうです。

ちな、ゾロアスター教=拝火教と同義で扱う人もいますが、拝火教はイスラム教から差別的に呼ばれた呼称で、ゾロアスター教徒の中には拝火教という表現を嫌う人もいるそうです。うわぁ、あいつら火を神様とか言って拝んでるしwwwくらいの蔑みから生まれた言葉なんすかね。

ひだり みぎ
建物も無味乾燥なアッシュカラー。服飾品にも豪華な装飾などもなく、極めて原始的で簡素な宗教といった印象のゾロアスター教。この寺院だけ打ち捨てられたまま数百年に渡って時が止まっていることが、延々と燃え上がり続けた炎の神秘性を際立たせます。

ひだり みぎ
ひだり みぎ
当時の信仰の様子を再現したリアルなジオラマも。

ひだり みぎ

目立った外傷は無いが、拝火教寺院の僧房の片隅で苦悶の表情を浮かべ倒れ込むオヤジ。血管がマスクメロンのように浮いてるのかはゾロアスターの呪いによるもの?

ひだり みぎ
重量のある鎖に繋がれたり、腕を一定の位置に固定したまま何年の動かないといった無茶な苦行で自らを律するエクストリーム修行僧もいたらしい。

そ、そうそう、最後に自動車業界ネタで締めたいと思います。マツダってなんでmazdaって綴られるかご存じですか?ゾロアスター教の最高神であるアフラ・マズダー (Ahura Mazda) に因んでるからなんですよ。別に創業者がゾロアスター教徒だったってわけではないですが。

【アテシュギャーフ拝火教寺院】

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