タイトルにあるバオダイとは、ベトナム最後の皇帝としてベトナム史に名を馳せる歴史的有名人だ。バオダイを漢字で表記すると保大(やすひろ!?)となり、何だか一気に妙な親近感が湧いてくる。
ここで、保大さんの波乱万丈なキャリアを振り返ってみよう。時は1913年、当時のベトナムの王朝である阮朝の皇子のボンボン息子として生まれ、幼少期~青年期を宗主国のフランスで過ごすも、戦時の動乱期に反仏クーデターを発動し、フランスから独立宣言をしてベトナム帝国を樹立。日本の敗戦後には8月革命の末に退位へと追い込まれるも、今度はホー・チ・ミンによりベトナム民主共和国政府の最高顧問に任命されたことで、政治の表舞台に返り咲き。その後は香港に亡命してみたり、フランスの傀儡国家ベトナム国の元首になったり、国民投票に敗れてフランスへ亡命したりと、グローバルな舞台で波乱万丈な人生を歩まれた保大さん。ダラットの町の南西2kmの松林の中にには、そんなラストエンペラー・保大さんが毎年夏に住まわったとされる離宮が残されている。
バオダイ宮殿はダラット市内を見下ろす小高い丘の上に建っている。
流石はフランス育ちのボンボンおフランス。いかにも西洋育ちのお坊ちゃまの離宮といった感じのシャレオツな佇まいのこちらが、5年の月日をかけて完成されたバオダイさんご自慢の別荘である。離宮なのに1000㎡の建築面積で、26の部屋があるという超大豪邸である。
前庭には可愛らしく装飾されたベスパや白馬などが訪問客を乗せて走り、いかにも観光地という雰囲気だ。
記念撮影用の孫悟空と猪八戒も待機してるけれど、暑いからだろう、モロに顔出して携帯弄って遊んでるwww子供にお金(VND1,000≒4円)を渡されてからマスクを被ってダンスを演じる孫悟空。「俺だってこの糞暑い中、安い給料でやってるんだよ。」くらいの考えが態度にありありと出てしまっているが、ここらへんのユルさがなんともベトナムクオリティ。子供側も孫悟空による演劇というよりは、孫悟空の恰好をしたお兄さんによる芝居だと割り切っている感がある。
満を持して別荘の内部に入ろうとすると、靴の上からビニールカバーを履くよう厳命される。土足厳禁。そう、ここはベトナムが誇るラストエンペラー・バオダイ様の御殿なのである。床に汚れ一つ残すことさえ許されないのだ。よって、内部は観光客が一様に青いビニールの靴カバーを履いて参観するという滑稽なことになっている。ベトナム流の臣下の礼かしらんが、まぁ甘んじて受け入れよう。
おっと、こちらがバオダイさん。きっちりネクタイまで締めちゃって、お坊ちゃま臭がプンプン香ります。でもワイルドな一面もあるらしく、彼が狩猟したとされる像の象牙や虎の皮がさりげなく展示されてたりします。
バオダイさんの彫刻。いかにも目からビーム光線を発しそうな不気味さで応接間を見据えています。
こちらは変身写真コーナー。煌びやかな皇族衣裳を身に纏い、王座に座って記念写真を撮ることができます。なんだかセットが安っぽい気がするので、観光地化した際に後付けで作られたのではないだろうかと勘繰ってしまう。
皇太子・バオロン(保隆)様の御寝室。シックで落ち着きのある部屋である。
バオダイの奥さんナム・フォン皇后のプライベートルーム。彼女は有名な地主、しかも当時のベトナムで5本の指に数えられるほどの大富豪のご令嬢様だったそうだ。
大変お美しい。それもそのはず、ベトナムのMiss Beauty賞を何年にも渡って防衛していたそうだ。美男美女で中々お似合いのこのご夫妻、3人の王女と2人の王子をもうけられたそうだ。どうりで寝室が多いわけです。
バオダイさんのプライベートルーム横のバルコニーにある望月楼。語りモードに入ったバオダイさんが涼んだり、シャンペンを片手に月を眺めたりしたそうだ。ロマンチック保大。やることなすこと一々お坊ちゃまな人なんだなぁ。
外には広大な敷地に広がる美しく手入れされたフラワーガーデンも眺めることができる。高原都市ダラットの気持ちいいそよ風に吹かれながらバオダイ帝在りし頃の古き良きインドシナに思いを馳せるのも良し、自然光を浴びてテラスで読書も良し、お馬にまたがり宮殿の周りのガーデンを駆けるのも良し。中々に趣のある場所である。
出口付近にあるお土産屋。売り物はホーチミングッズや仏具など。そこはバオダイさん縁のお品を売ったらんかい!!!
続いてはケーブルカーに乗ってダラット南部を目指します。
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