ハルビンから鈍行列車で長春へ 安重根義士記念館

ハルビンから吉林省の長春へと移動します。
距離は約270kmで、移動時間は高速鉄道で長春西駅まで1時間、普通の列車だと長春駅まで3時間。宿泊先が長春西ではなく長春駅前の旧ヤマトホテルだったこともあり、今回はのんびりと鈍行列車で移動とすることにしました。

中国国家鉄路集団の哈爾浜駅東清鉄道敷設のためにロシアによって建てられた町・ハルビン、全てはここから始まりました。

1899年に開業した際には極東ロシアの小さな地方駅の一つにすぎなかったのが、六度にわたる増改築を経て、今や8面16線を有する中国東方地方きってのターミナル駅となっています。

駅舎の手前には不要となり廃棄待ちであろうシェア自転車が大量に葬られた墓場が。
今の電気自動車とかもそうですが、中国では成長市場に雨後の筍が如くニョキニョキと新しいプレイヤーが湧いて出てきて速攻でレッドオーシャン化。過当競争で多くの新規参入者が淘汰され早期撤退…みたいな状況が伝統的に繰り返されています。その中でも勝ち抜いて残り続けるメーカーもあるので、ある意味で資本主義経済を最も体現している国といった感じになってはいるのですが…。
この自転車の墓場も、市場の需要を計算せず我先にと各社がとりあえずハードを一斉に揃え始めて、気づいたら市場に投下された自転車の総数が人口の百倍まで膨れ上がっちゃってましたみたいな話なんでしょうね。機会損失のリスクを負うくらいなら先に作って後の始末は走りながら考える!ってスタンスの会社ばかりなので。EVも家電のアセンブリ程度の感覚で参入してくるメーカーが後を絶たないようですが、果たして今後どうなることか…

ハルビン駅 北駅舎

そんなこんなでハルビン駅へ。こちらの北駅舎は開業当時のアールヌーボー様式で建て替えられているそうで、確かにヨーロッパ然とした雰囲気がたっぷり。

2023年時点で中国高速鉄道網の最北端に位置するハルビン。ロシアによって築かれたこの町ですが、実は今でもロシアと中国とを結ぶ結節点としてウラジオストック行きやモスクワ行きの国際列車が走ってるんですよね。北京発モクモク行きの列車とか、ロマンありすぎでしょう。

安重根義士記念館

駅の一角には、貴賓室を改造して作られた安重根義士記念館が設置されています。安重根の生い立ちや思想、ハルビン駅の挙事などに関する展示品が並んでいました。
安重根といえば伊藤博文をここハルビン駅で暗殺した人物で、日本側の評価では殺人罪により処刑されたテロリストっすからね。こんなん建てろとロビー活動する韓国も韓国だけど、建てる中国も中国だし、もっと強く抗議しない日本も日本ですよ。

中国だってこんな反政府暴動の首謀者でありテロリストを認めたら、独立を望むウイグルやチベット族の独立運動を肯定することにつながりかねんだろうに。

犯行に使われた七連式のFNブローニングM1900。弾痕を調べるとホームで近距離で撃たれた弾道ではないようにも思われ、犯人は別にいるとの説もあるようだが真相は闇の中。

1909年10月26日。ハルビン駅1番ホームから出迎えの方へ向かおうと伊藤博文が動き出したところを安が襲撃。近距離から3発の銃弾を受けた伊藤は倒れ、最後に犯人が朝鮮人であることを聞くと、「バカな奴だ」と言い残し息を引き取ったとされる。享年68。

実際、韓国の独立と東洋の平和を願うのであれば伊藤の暗殺は日韓合併の機運を高めるだけの最悪な打ち手であり、この暗殺事件の早や10か月後には併合が決定。

結果として安の思惑とは真逆の方向に話が進展して朝鮮半島は早期に併合されてしまったわけなんですが、日本の統治下で韓国の近代化が加速したという意味では、皮肉にも確かに安は韓国を救った英雄といえるのかもしれません。

記念館内には事件現場を示すマーキングもあります。三角のマーキングが発砲地点で、四角のマーキングが命中地点?と思ったら、記念館内だけでなく1番線ホームにも三角と四角のマーキングがある。ホームのが実際の現場で、記念館内のは距離感を示すだけのものなのかな?

駅舎内

なんだか出発前から重苦しい気分になってしまいましたが、気を取り直して駅舎内へと入っていきます。ガラス張りのファサードに掛かった大時計やアーチ屋根が美しく、外観だけでなく内部も往時のスタイルに合わせて造られていることが伺い知れます。

柱と梁、更には階段の手摺なんかも深緑で統一されていて、プラットフォームも旅情がパないっす。ここだけみると中国とは思えないくらい。

時速80kmで巨大な中国大地をのほほんと走る緑皮車。この便も21時間かけ遠く温州まで走破していくそうです。なんでも強く大きく早くという国の進路とは真逆にある過去の遺物といったレトロな趣すらありますが、高速鉄道と比べて運賃が比較的安いこともあり、意外に人民様の間では人気なよう。
この日もスローライフ信仰族のような若者から、夜逃げでもするんですか?といった具合に大量のスーツケースを抱える債務者風の怪しい老人、子連れ主婦など様々な乗客でほぼ全席埋まっていました。乗客全員がスマホでメールを処理するような忙しい雰囲気の高速鉄道とは明らかに異なり、のんびりとした雰囲気です。

こんな車内販売もローカル路線を走る鈍行列車ならではの醍醐味。誰も商品に興味なさそうでしたがw

そんな鈍行列車でいく長春への旅。ハルビンのタワマン群を抜け雑木林を過ぎ去ると、窓の外の風景が辺り一面広がる緑の絨毯に変わります。中国東北三省の地理情報は満洲国関連の書物から断片的に得たものくらいしかなかったので、長春以北はもっとシベリアシベリアした荒涼とした景色が無限に広がっているものかと思っていたので意外でした。
実際にはここら一帯は開田ブームにより耕され倒していて、たとえばこの黒竜江省だけで日本全土と同じくらいの水田面積があったりというくらいの農業大国ぶりなんだそうです。

へー豊かなんですねーと隣のおばさんと世間話を楽しんだり。旧満州国圏内は反日感情がーなんて語る人も多いようですが、自分は何も気になりませんでした。むしろ親日家の方が多いと思ったくらい。

3時間の鈍行列車での移動でしたが、あっという間に長春着。ハルビンはロシアにより建てられた町でしたが、満州国の首都として日本の都市計画に基づき開発されたここ長春からは、満州国時代に建てられた日本風の街並みも残されています。町歩きが楽しみ!

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