ビザンツ時代からの歴史が詰まったアヤソフィアと大宮殿モザイク博物館

続いては、イスタンブールの歴史の象徴・アヤソフィアへ。

知名度でこそトプカプ宮殿には劣るかもしれませんが、歴史的重要性という意味ではイスタンブール屈指の存在の建物です。キリスト教世界とイスラム世界との激しい覇権闘争の舞台として壮絶な歴史を辿ってきたイスタンブール、そのの為政者に翻弄され続けながらもイスタンブールの町の中心に立ち続けてきたわけですからね。

アヤソフィアの歴史、さらっとおさらいしておきましょう。

——————-
360年 コンスタンティヌス帝が当方正教会の大本山として建造
404年 火災で焼失
415年 テオドシウス2世が再建
532年 反乱で崩落
537年 ユスティニアヌス帝が再建(現在のアヤソフィア)
1453年 コンスタンティノープルを征服したオスマントルコ帝国のメフメト2世がモスクに改装
1935年 トルコ共和国が無宗教の博物館として一般開放
——————

元々はコンスタンティノープル(今日のイスタンブール)を征服したコンスタンティヌス大帝によりそう当方正教会として建てられたのが、オスマン帝国が当地を統治することになりモスクとしてリニューアルオープン。20世紀になりトルコ共和国が建国されると世俗化され、無宗教の博物館として利用されることになりましたよ、と。

イスタンブールの長く壮絶な歴史の中で、為政者や宗教が変わっても常に信仰の中心で有り続けてきたわけですから、まさにイスタンブールの歴史の生き証人っすね。

アヤソフィア


トプカプ宮殿の入り口脇に威風堂々と建つアヤソフィア。尖塔の1本だけが赤いのは、この1本のみがメフメト2世により建てられたオリジナルのものだから。この1本のみが赤レンガで建てられて、後代に追加された3本の尖塔は石灰岩と砂岩で作られている為に白くなっているそうです。

ひだり みぎ
恐る恐る身廊へと歩を進めてみると、キリストとイスラムが融合した独特の厳かな雰囲気にただただ圧倒されます。

ひだり みぎ
メフメト2世がコンスタンティノープルを攻略すると、アヤソフィアの十字架は取り除かれ、キリストのモザイク画は漆喰で塗り潰さた。ギリシャ正教の大本山が格式高きモスクへと姿を変え、難攻不落と言われたビザンツ帝国千年の都がキリストの都からアッラーの都へと転換した。そう考えると、遥か昔から続くキリスト世界VSイスラム世界の争いの象徴ともいうべき存在ですよね、アヤソフィア。そう考えると、なんか鳥肌が立ってきます。


頭にショートケーキがのっかってますよ、でお馴染みビザンツ絶対倒すマン・メフメト2世。彼の名が語られる際には「破壊者」「キリスト教最大の敵」「血にまみれた君主」などおどろおどろしい枕詞がずらりと並べられますが、実際にはヨーロッパ文化への造詣も深い文化人で、町の攻略後の略奪行為を最小限に食い留めたり、捕虜となったビザンツ貴族の身代金を自ら払って解放を保障するなどの慈悲も示していたらしい。
総攻撃前には降伏開場も呼び掛けてるわけだし、更にはコンスタンティノープルを落とした後もキリスト教やユダヤ教も認めたり、破壊者というよりは逆に有能な文化人っぽい印象があるんすけどね、メフメト2世さん。現代でも貴重な歴史遺産をぶっ壊して回るテロリストがいるわけですし、真に野蛮で無知な暴君だったらアヤソフィアなんか、いの一番に破壊されていたことでしょう。

ひだり みぎ
ひだり みぎ
ミフラーブ上部の半ドーム屋根の部分に、黄金に輝くキリストと聖母のモザイク画を発見。メダリオンに描かれた装飾アラビア文字の煌めきと同居する黄金のモザイク画が、イスタンブールの歴史の変遷と歴史の重みを感じさせてくれます。


熾天使の絵もバッチリ。



身廊の前室には10世紀のモザイク画“キリストと皇帝”。キリストを囲むように大天使と聖母マリアのメダリオンが描かれ、左には膝まづく礼拝中の皇帝の姿が。

ひだり みぎ
壁面には漆喰の下から出てきた金地のモザイク画が多数。モザイクを剥がさずに漆喰で覆い隠すだけに留めたオスマン帝国グッジョブ!


イスラム的幾何学模様の中に埋もれるように残る『聖母子、ユスティニアヌス1世とコンスタンティヌス1世』のモザイク画。

ひだり みぎ
手すりの幾何学模様や金色に輝くアラビア文字が描かれた巨大なメダリオンがイスラムを感じさせるが…モスクのようでモスクではない、教会のようで教会ではない不思議で神秘的な聖なる空間。東洋であり西洋でもあるイスタンブールならではの博物館、個人的にはトプカプ宮殿より印象に残りました。

土産屋も、キリスト的な物とイスラム的な物が共に揃っています。


キリストグッズメインと見せかけての…

ひだり みぎ
ひだり みぎ
イスラムグッズギャラリー。街角の個人商店ではみかけないような、かなーり上質な品々も揃ってます。

【アヤソフィア(Ayasofya)】

所在地:Sultan Ahmet Mahallesi, Ayasofya Meydanı, 34122 Fatih/Istanbul
電話:+90 (212) 522 17 50
公式ホームページ:http://ayasofyamuzesi.gov.tr/en

大宮殿モザイク博物館

また、モザイク繋がりで言うと、アヤソフィアの近くある大宮殿モザイク博物館なる小さな博物館も見逃せません。
“大宮殿”と名前にあるのは、コンスタンティノープル時代に東ローマ皇帝が住んでいた宮殿跡地に残されたモザイク画が公開されているかららしいっす。

宗教的な意味合いは殆どなく、日常生活の一場面や神話の一部をモチーフにしたものばかりで、アヤソフィアのモザイク画とは違った魅力が味わえます。

7500万~8000万個のガラス粒やテラコッタ(1㎡あたり40,000粒!)を詰め込んで作られたビザンツ職人渾身の力作。


顔一個を表現するだけでも膨大な作業量を要することが分かります。


ヤシを取るオッサンの姿もこの通り忠実に再現。

ひだり みぎ
生々しい弱肉強食の世界。

ビザンツ宮殿跡!という点を楽しみにいったら失望すること必至ですが、当時の社会の雰囲気を味わうにはアリっすかね。20分くらいでサクッと見て回れる小さな博物館です。

【大宮殿モザイク博物館(Museum of Great Palace Mosaics)】

Related posts(関連記事):

古代のお宝ざっくざく イスタンブール考古学博物館
続いてはイスタンブール考古学博物館へ。 世界でも十指に入る博物館だとトルコさんが自画自賛してるので、期待値は高いのだが果たして…。 世界でも十指に入るかはさておき、東西の十字路に栄えた全盛期のオスマン帝国の版図はメソポタミア、アラブ、エジプトという肥沃な三日月地帯も含んでいるので、ギリシャ・ローマ・ビザンティン時代の出土品だけでなく、シュメール、ヒッタイト、アッシリア、パルティアなど東...
宿泊記 アジア未進出マリオット系ホテル ACホテルイスタンブール マッカ
イスタンブルでの宿はマリオット系列ながらアジア未進出で馴染みの薄いACホテル。 モダンでスタイリッシュなライフスタイルホテルブランドで、2020年にはアジア初のACホテルとしてACホテルバイマリオット銀座東武が開業予定となっているそうですが、果たしてどういったコンセプトのホテルなのでしょうか。 一応、マリオット公式情報では、“スタイリッシュなデザインが特長の若者を中心としたビジネス店レ...
搭乗記 アゼルバイジャン航空 B787エコノミークラス イスタンブール⇒バクー
トルコでの観光を終え、次なる目的地となるコーカサスの地へ。先ずはイスタンブールからアゼルバイジャンの首都・バクーへと飛び、ジョージア⇒アルメニアと周ってからイランへと抜けるルートでコーカサスを周ってきたいと思います。 アゼルバイジャンへは、1,106マイル・2時間45分の空の旅。 この区間は安定安心のターキッシュも直行便を飛ばしてますが、今回は少々の冒険をして未知なるアゼルバイジャ...
欧米か! イスタンブール ヨーロッパ大陸側新市街
アジア大陸とヨーロッパ大陸にまたがって広がり、ローマ帝国・ビザンティン帝国・オスマン帝国と3代1600年に渡って大帝国の首都として繁栄した世界的大都市・イスタンブール。 来てみたは良いけれど、長ーい歴史と広ーい都市圏とで、正直、どこからどう歩き始めてみて良いのか見当もつかんのだが…。 とりあえず、ボスポラス海峡の東側に広がるアジア大陸側と西側のヨーロッパ大陸側に町が大きく二分され、更にヨー...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。