麗江 東巴文化博物館と東巴紙坊で学ぶトンパ文字 雲南省旅行9

シャングリラからトンパ文字使いのナシ族が築いた雲南省の町・麗江へとやってきた。

自分とトンパ文字との出会いは大学生の時分まで遡る。なんか宇宙人が背伸びをして昆虫と合体したような気持ち悪い絵柄のプリントTシャツを着てゼミに現れた男がいましてね。当然のように「何それ?」って訊いたら待ってましたとばかりに「タンパ文字で快楽って意味なんだよ」としたり顔で教えてもらったのがトンパ文字との初接触。そいつからトンパ文字について語られるうちに、トンパ文字を生み出したナシ族の町である麗江に行ってみたいと思い続けてきてたんですわ。

トンパ(東巴)文字とは?

今から千年余り前に中国山間部に住まう少数民族のナシ族により生み出されたという、可愛らしい絵文字タッチな字面が特徴的な象形文字。今や極々少数の司祭によって継承されているのみで、ナシ族内でのコミュニケーションの手段ではなく観光資源程度の役割しか担っていないそうだが…麗江の街を歩けば、壁にも看板にも道路の標識にまでも、これでもかこれでもかというくらいに可愛らしいトンパ文字を見ることができる。

ひだり みぎ
漢字やエジプトのヒエログリフともまた違った可愛らしい象形文字。麗江市内の商店の看板にも漢字と併せてトンパ文字の表記を見ることができる。


このKFCを表わすトンパ文字3文字の「鶏を調理して食べる感じ」。分かる、なんとなく分かるわぁ。

麗江に着いて直ぐ、麗江古城の街並を探索して回りたいとのはやる気持ちを押さえてトンパ文化博物館へと向かう。
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石畳の道・道に沿うように設けられた水路と水路に架かる石橋が一体となって風情満点の古城を北へと進む。

玉泉公園(黒龍潭景区)


古城の北の外れにある玉泉公園(黒龍潭景区)の入り口が見えてきた。たかだか公園に入るのに麗江古城維持費と称して80元も徴収されるのも嫌だったけど、地図を見たらトンパ文化博物館はこの公園内にあるようだったので、仕方なく80元を支払い公園内へ。

玉泉公園は麗江でも有名な観光スポットの一つだそうだ。麗江の北に聳える標高5,596mの玉龍雪山からの雪解け水により湖のような泉が作りだされており、その水が大変に澄んでいて碧玉のように美しいことから玉泉公園と呼ばれている。
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周囲を緑豊かな森に囲まれた湖。玉龍雪山の雄姿や雲が水面に鏡のように映り非常に神秘的であるのだが…わびさびのない国の方達はこんなところでも爆音で音楽をかけて元気に体操して雰囲気ぶち壊し。

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公園内を15分程歩き、東巴文化博物館に到着した。さっき支払った80元が博物館への入館料を兼ねているのか、特に入場料を買い求める必要も無さそうな感じだったので、勝手に入らせてもらうことに。

例のスローガンだってこの通り。トンパ語に「愛国」とか「富強」に相当する概念があるのか知らんが、中共が掲げる社会主義核心価値観も勿論トンパ語訳と共に掲示されている。


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なんだか「公正」の文字が可愛らしい…というか、象形文字なのに形のない概念まで絵で表現できるのが凄い。最近になって「公正はこんな感じっしょ!」とかって中国共産党の手で後付けで加えられたんだと思うんだけどね。


こんな中国共産党による解釈の押し付けみたいな博物館だったら見る価値もないかなーなんて思いながらも入ってみた。

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トンパとは「智恵ある者」程度の意味。天文や神話伝説、日常生活に関わる様々な民族の知識を伝える伝統文化の伝承者であり、葬式や祖先祭祀などを主催し、冠婚葬祭や遠出の吉日を占うシャーマンみたいな役割を担う巫師を指すそうだ。かなり妖しげな仕来たりもあったようで、祭事に使われたのであろう摩訶不思議な道具の数々が展示されている。

こちらは最古のトンパ文字が書かれた経文。トンパ文字で書かれた古籍は中国内外に約二万冊ほど存在すると言われているそうだ。紙自体が日本の和紙のように手漉きで作られていて丈夫である上、原料に虫除け成分のある木を用いている為に虫食いの被害もなく、保存状態は比較的良好。
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この経文の内容がまた興味深く、戦争などの政治外交に関するもの、十二支や手相など宗教的なものやら天文暦法に関するもの。大衆向けの恋愛物語や医療関連などなど多岐に渡り、当時のナシ族の文明レベルの高さと豊かさを感じさせてくれる。

主要トンパ文字と漢字の対比表も結構なスペースを使って掲げられている。単字の構造を見ると古代中国の甲骨文字に類似する点も認められるが、記号化が進んでいないようで、「妊娠」とか「射る」とか、ここまでくるとなんかもう絵文字でしょというようなものも。ここまで絵画性が強いと、一人一人の絵心や感性によって書かれ方も変わってくるんじゃなかろうか。

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どうです、この「お腹に子供を孕んでる感」と「敵陣に対して勇敢にも攻め入ってる感」。一個一個を吟味していくと、確かに「火」の煙が山からモクモクした感じなど、「うわ~、分かるわそれ!」と思わされるものも多数。

一通り博物館を見て回ると、「今日はあなたの吉日」とばかりにニコニコとした職員が声をかけてきた。なんでも普段はお見えにならない東巴文化界のオーソリティー的お偉い様がお見えになられているようで、その先生に記念色紙を書いてもらったらよい、いや書いてもらうべきだとのことで、ナシ族風の衣装を身に纏った人の良さそうなおじさんがポツンと座ってるのが見えるそういやどっかの中国の遺跡でもあったわ。「この遺跡を築いた王様の末裔によるサインサービス」的なやつ。これがまた高くてさ。ここでも一筆200元(≒3,400円)だと。

いくら記念の品になるとはいえ、東巴文字のオーソリティが一筆入れた記念色紙に200元とか怪し過ぎたのでここではお断りし、もう少し土産物になりそうな東巴グッズを買いに出かけることに。

【東巴文化博物館(麗江市博物館)】

住所:麗江市教育路
電話:3103593
休館日:第1、第3月曜
入場料:無料

麗江古城にハンコやらTシャツやら、トンパ文字をモチーフとした土産物が多数売られているが、自分は博物館で見たトンパ紙に興味を惹かれたので、トンパ紙グッズを取り扱う東巴紙坊という店を尋ねてみることに。

東巴紙坊


ナシ族が漉いた手作りの紙を「東巴紙」と呼ぶ。昔は主に東巴経の写経の為に用いられていたという伝統的東巴紙だが、ここ東巴紙坊では東巴紙で作った雑貨を売り出している。

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ノートやランプシェードが主力製品。虫除けの為に植物の樹皮が紙漉きに使われているとのことで、微かに甘い香りを漂わせている。

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ミニ辞書と一言会話集を発見。何種類かバリエーションがあり、一冊一律50元。意外とお求めやすい良心的お値段である。

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更に、今ならトンパの伝承者により無料のサインサービスが行われていて、購入したトンパグッズに自分の名前などを書き込んでもらうことが出来る。因みにこの岡崎慎司似のナシ族のお兄さん、トンパ語分からないしどうやってコミュニケーションとれば良いかと思ってたら北京語バリバリ流暢だった。

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辞書とブックリーフをお買い上げ。この辞書が日本語対応でまた面白くてね。「宗教」「地理」「武器」「飲食」といったカテゴリー別の辞書になっていて、「鬼が震える」「身代わりを出す」「ウリは熟れればヘタから落ちる」「崖の上に自然に出来た階段」「虎退治の道具」「先祖の恩に報いる」「羊毛刈りバサミ」「洗っても綺麗にならない」「いざこざを引き起こす女」やらと、トンパ族の生活が想像できるような単語がズラリと並んでいる。「人」「ナシ人」「漢族」「チベット族」「白族」との違いも興味深いし、ほんとこの辞書面白いわ。

B級グルメをつまみながら古城を歩くだけでも楽しい麗江の町だけど、やっぱせっかくなんでトンパ文字関連グッズも見て回りたいところ。店員さんもフレンドリーで接しやすいですし、この東巴紙坊、お勧めです。

【東巴紙坊】



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