世界一エモくてエキゾチックな町 サラエボ旧市街

セルビアのベオグラードからボスニアヘルツェゴビナの首都・サラエボにやってきました。ホテルで荷解きをしてから旧市街をぶらつきに出てみます。

社会主義的な厳めしさと、東西文明の十字路としてのエキゾチシズムが良い具合に融合した独特の町並み。これに第一次世界大会が勃発するきっかけとなるサラエボ事件や血で血を洗う地獄の内戦といった負の歴史要素なんかが絡み合い、何とも言えぬ感情がこみ上げてきます。

町全体が赤い炎に包まれるかのような夕陽も印象的。ユーゴ時代の栄華を懐かしめたセルビアもエモかったけど、ここサラエボは違う意味でエモい。エモすぎる。

バシチャルシアと呼ばれる旧市街の中心地区は、東西文化が混じりあって混沌とした雰囲気。
歴史的にドンパチやりあった異民族との融和なんてたやすく実現できる訳もなく、内戦が終わって統一国家ができたとはいえ民族間の分断状態は続いてる訳で。ちょいきな臭いバルカンものの歴史映画の舞台に入ってきた感じがしてきます。

町でよく見かけるVedran Puljicさんモチーフのウォールペイント。彼は地元サッカークラブを愛する若者で、2009年にサッカーの試合会場で起こった暴動により命を落とした犠牲者です。

サッカーといえば旧ユーゴ諸国の国民的スポーツであり、ここボスニアヘルツェゴビナも例外ではありません。元日本代表監督のハリルホジッチやオシムもここボスニアヘルツェゴビナ出身ですし、ペトコヴィッチやサリハミジッチ、イビシェヴィッチといった〇〇ッチ系名選手も数多く輩出するくらい、ここボスニアヘルツェゴビナはサッカー熱の高い国なんです。

当然、国内リーグも組織されていて、他のサッカー強国同様に盛り上がっています。ただ違うのは、ボシュニャク人はAチーム、セルビア人はBチーム、クロアチア人はCチームといった具合に民族ごとに応援するチームが分かれている点。民族ごとに分断されている国家社会の縮図のようになってしまっていて、サッカーに対する熱い思いが民族間の抗争へと発展することもしばしば。

その最たる例が2009年の暴動事件。国内リーグの試合中にボシュニャク人サポとクロアチア人サポの間で小競り合いが始まり、現場の混乱の中でボシュニャク人側のVedranがクロアチア側の過激フーリガンにより撃たれて犠牲になりました。

更に始末が悪いことに、彼を撃ったとされる男はクロアチア系の警察の援助を受けクロアチアに逃亡。最終的には逃亡を手助けした警察ともども逮捕されたものの、クロアチアで行われた裁判ではVedran殺害については罪を問われず、公衆に対する危険行為の罪のみで有罪判決を受けるに留まったという。

そんな民族間の対立を象徴するようなVedran Puljicのウォールアートが未だ町中に残されているあたり、この国が一枚岩でないことを表しているようです。

バシチャルシアと呼ばれるボスニア旧市街の中心までやってきました。ここら一帯はオスマン帝国統治下の16世紀にアラブスタイルのスークをモデルに設計されたマーケットで、絹製品や金属加工品、宝飾品などが売り買いされていたそうです。

トルコ風のエキゾチック名街並みに加えて後年に建て加えられたオーストリア風の優雅な街並みが入り混じり、まさに東西文明の十字路といった独特の異国情緒を感じます。

ボシュニャク人のモスクやイスラム神学校があったと思ったら、クロアチア人のカトリック教会やセルビア人の正教会があったり、更にはユダヤ教のシナゴーグまで、狭いエリアにありとあらゆる宗教の施設がひしめき合っています。民族共生の象徴的街並みと言われているようですが、どちらかというと現代版バルカン半島の火薬庫ですよ。導爆線があちこちに引かれたままで、薬莢臭すら漂ってきそうな勢いです。

旧市街から川沿いに戻ると、サラエボの象徴・ラテン橋が見えてきました。まさにこの橋の袂でボスニア系セルビア人の青年によりオーストリアハンガリー帝国の皇太子が暗殺され、第一次世界大戦開戦への火ぶたが切って落とされたという歴史的現場です。

以後もこの橋は第二次世界大戦から社会主義時代、地獄の紛争まで悲惨な近現代史を目撃してきています。今は平和に佇むなんてことのない橋ですが、ラテン橋を眺めていると歴史の紆余曲折と数々の悲劇に思いを馳せずにいられません。

事件現場の角にはサラエボ事件を解説したサラエボ博物館が建っていて、夜分にも関わらず大勢の観光客がライトアップされた展示パネルを食い入るように見つめています。

一通り旧市街地を歩き終えたのでホテルへ戻ろうとしたところ、セルビア民族一の偉人であり発明王として名高いニコラ・テスラが酒場前のパブで誰かと電話をしているところを発見w

二コラに誘われセルビア人パブの店内へ。タバコの煙モクモク、音楽ガンガン、団体客ウェイウェイでバルカンな雰囲気満点のイケイケなパブでした。

報告する

関連記事一覧

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。