中世オマーン時代の宮殿で感じるアラビアンワールド ジャブリン城

ニズワフォートバハラフォートと巡り、続いて向かうのは荒野の町・バハラ郊外に位置するジャブリン城(Jabreen Castle)。

オマーンの首都マスカットから200キロ以上離れた南西の荒野にジャブリン城が建てられたのは17世紀のこと。16世紀初頭からオマーンを支配していたポルトガル人を駆逐し、オマーンをアラブ人の手の元に奪回したヤアーリバ朝君主により建造された。内部は要塞建築と洗練された宮殿風の装飾との調和が素晴らしく、オマーンの歴史的建造物の傑作の一つにも数えられているそうだ。

ひだり みぎ
荒涼たる砂漠にポツンと立つサンドベージュの宮殿は3階建てで、南北に二つの塔を持つ。宮殿としては全体的に質素で規模も大きくないが、ヤアーリバ朝第三世の君主であるビブラブ・イブン・スルタン(Bil’arab bin Sultan)統治時代には、スルタンや家臣が暮らす居館であるのと同時にイスラム世界における最先端の教育が施される学舎としても使われるなどしていたそうだ。

早速、中世オマーン建築の最高傑作とも謳われるお城の中を見学する。アラビアンナイトの世界にどっぷりと浸ってくるぞー。

角ばった造りの砂の城に入ってみると、建物の中央は台所等がしつらえられた中庭になっていた。壁際には博物館よりしく当時使われていた台所用品等がびっちり展示されており、なんだかドラクエの世界みたいに思わず壺を一つ一つ割ってアイテムが無いか探したくなる衝動に駆られてしまう。こんな砂漠エリアにポツンと建つ城にある壺だったら命の木の実とか小さなコインとかナイスなアイテムが見つかるはずだわ。

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通路が入り組み要塞のようなお城の内部には、実に55もの部屋が設けられているそうだ。外から見るとシンプルで小さな建物にしか過ぎないので、中に入ってみると大きく複雑に感じられるから不思議。

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ダンジョン感満載で訪問客の冒険心をくすぶってくる。キャッスルフェチ・フォートフェチな皆様には堪らんでしょうな。



イマームの寝室へと繋がるアーチ状の天井を有した階段の4段目に注目。横木が意図的に緩く作られており、来客者が音を立てて来訪できるように工夫されているそうだ。夜になると敵の襲来に備えて横木は外すなどの罠をしかけていたらしく、なんだかまるでインディージョーズの世界に迷いこんだ様なアドベンチャー感たっぷりの雰囲気である。

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襲来する敵に対して熱湯や煮えたぎる油を浴びせる為の“殺し穴”なんかも設けられている。



こちらは籠城戦に備えてのデーツの貯蔵庫。籠状に編まれたバッグに小分けされ積み上げられたデーツは自らの重量で潰されてハチミツ状の濃い果汁を垂らし、垂れてきた果実が傾斜した床の溝を通って自動的に土瓶に集まる仕組みとなっている。これらデーツは平常時には食用として保存され、戦時には油攻めの要領で熱して城の扉の上部にある注ぎ穴から敵兵に向かって注がれたそうだ。


わざとらしくコーランが壁に立てかけられたこちらの静かな空間は図書室。ジャブリン城はスルタンたちが暮らす居館であるのと同時に、イスラム世界における最先端の教育が施される学舎としても機能した。ジャブリン城が建てられた時代は啓蒙の時代と呼ばれ、イスラム法・アラビア語・歴史・医学・天文学を始めとする数々の学問を行う学校まで設立されたのだと。


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天井の細工が美しい神学校。複雑な柄が描き込まれたこれらの木製天井はオマーンで最も芸術的価値の高い天井とされている。

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こちらは太陽と月の間だったかな。上部の7つの窓は月の光を映すように設けられており、下部の7つの窓は日中の強い日差しを遮るよう作られている。7という数はイスラムに於いて特別な数であり、天国は7つあり、地球は7層からなるとされている。壁上部には、暑い空気を外に逃がすための格子窓も取り付けられ、床の上には涼しい空気を取り入れる為の隙間が空けられているなど、優れた通気効果を生み出すための多くの工夫なんかも施されているそうだ。


こちらの4畳半程の小さく薄暗い部屋は、スルタンが密談のために使っていたという部屋で“密談の間”と呼ばれていた。陰謀や紛争が相次いだ君主ビブラブ統治時代の末期には重要な秘密協議が頻繁に行われていたらしい。

地下にはそのビブラブ王の墓も。
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ビブラブ統治時代の末期には君主の座を巡る内訌が激化、1692年に弟が率いる軍によってジャブリン城に追い込まれ、最後は勝ち目がないことを悟って自分の城で神に死を懇願して息を引き取られたそうだ。


最後は権力闘争の舞台となったジャブリン城だが、今や周囲には長閑な砂漠とナツメヤシ畑が見渡す限りに広がるだけで、なんとも長閑なもの。


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あの日本でも有名な船乗りシンドバッドはオマーンを舞台にした物語なんだそうだが、砂漠の宮殿の見張り台からこんなのどかな景色を眺めていると、本当にシンドバッドが絨毯に乗って飛んできそうな気持にさせられる。

ニズワフォートやバハラフォートと比べると外観は小さくシンプルなジャブリン城であるが、アラビア芸術の刻まれたスルタンの部屋からは往時の生活の様子まで感じ取れてアラビアンナイトの世界に想いを馳せるにはぴったり。見学客も殆どいなかったし、観光地としてはちょっと地味な扱いみたいだけどお勧めできる観光スポットかと思います。バハラからも近いのでバハラフォートとセットで是非!

【ジャブリン城(Jabrin Catle)】

営業時間:土~木=09:00-16:00・金=08:00-11:00
入場料:Bzs500(≒OR0.5)


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