プトラジャヤのピンクモスクとシルバーモスク

ル・メリディアンに泊まる為にわざわざやってきたクアラルンプールの南25Kmに位置する行政都市・プトラジャヤ。せっかくここまで来て何もせず帰るのも勿体ないので、適当にプトラジャヤの街を徘徊してみることに。

プトラジャヤは1980年代に起草された連邦政府機関移転計画に則り開発された計画都市で、各省庁の本部など国の中枢機関が集積する。これだけ聞いてもただのつまらない官公庁街としか思えないのだが、極めて計画的に造られたユニークで美しい都市景観や独特な現代イスラム調の建築物が注目を集め、国内外からわざわざプトラジャヤの街並みを見に来る観光客も絶えないという暦とした観光地らしい。確かによく見たらガイドブックにも「美し過ぎる新行政首都」なんて取り上げられてりしてるわ。

行政都市として真っ新な所から作られた為、俯瞰図を見ると非常に細かく整備されているのが良く分かる。

ひだり みぎ
首相官邸から南南西の方向に国際会議場まで一直線に延びる100メートル幅の直線道路がプトラジャヤ全体の中心軸となっていて、中心軸の左右には各省庁の建物が建ち並ぶ。

マリディアンのコンシェルジュにプトラジャヤの見所を伺ったところ、ピンク色の花崗岩で出来たピンクモスクと鉄とアルミで出来たシルバーモスクという二箇所が主たる観光名所になるんだと。早速ピンクモスクへと向かうべくタクシーを呼んでもらい車上に乗り込むと、70リンギット(≒2,100円)でプトラジャヤの町の見所を見て回ってやるとの逆オファーを巨人の元助っ人・ヘンリーコトーを彷彿とさせるちょび髭のマレー人運転手から提示された。「日本人も沢山ガイドしてきたし、元お役所務めだから官庁街であるプトラジャヤは私の庭みたいなもの」的なアピールを繰り返していてちょっと怪しかったけど、暑くて歩き回るのも嫌だったんでお願いすることに。


糞みたいにやる気のない無気力脱力系バッティングフォームからセオリー無視のやけくそゴルフスイングを武器にハッスルする褐色のちょび髭付きスキンヘッドは当時野球をやっていた小学生中学年の自分的には凄く印象的だったのだが、まさかこんなところで彼のことを思い出すことになるとは。

コトーのせいで話が逸れてしまったが、モスクは入場時間が限られているとのことで、先ずはモダンイスラームの意匠が施されたユニークなデザインの政府機関の建物が立ち並ぶプトラジャヤの幹線道路へ。メインストリートだというのに週末だからか街を歩く人は疎らだし、整然とし過ぎた計画都市ならではの殺伐さもあってなんだか異様な雰囲気だ。
ひだり みぎ
近代建築とエキゾチックなイスラム建築が見事に調和した街並みが続く。多様・猥雑・混沌・混雑といったキーワードがお似合いのクアラルンプールとは対極的で、人工的に造られたプトラジャヤは実によく秩序づけられ、非常に静かで整然とした町である。

ひだり みぎ
これは運輸省庁で、こちらは教育省庁…といった具合に元お役人と自称する運転手が一々説明してくれたんだけど、大変申し訳ないことに今や彼が説明してくれたことは殆ど覚えておらず、彼が元マンチェスターユナイテッドのライアンギグスのファンというどうでもいい記憶だけが残っている。コトー似のギグスファン。

立派な橋が架かる湖ももちろん人口のもの。プトラジャヤの総面積に対して3割強もを湖や緑地などに充て、都市景観を高めると共に冷却機能を発揮させているのだと。
ひだり みぎ
プトラジャヤの町を見て回るにはタクシーチャーターが便利だと思うけど、遊覧船に乗って湖から入念に計画された建築群を眺めたり気球に乗って上空から町を俯瞰したりなんて楽しみ方もあるらしい。

シルバーモスク


街の中を適当に30分程流してもらった後、プトラジャヤの見所の一つであるシルバーモスクへ。このモスクは大部分をアルミと鉄を使っていてワイヤーを張り巡らせて形作っている為、色合いからシルバーモスク、素材からアイアンモスクやスチールモスク、鉄のモスクとも呼ばれているらしいが、政治家だかの名前に由来する正式名称はトゥアンク・ミザン・ザイナル・アビディン・モスクとやたらと長い。こんなんタクシーの運転手に告げても絶対通じんわ。



ひだり みぎ
角ばった近代的デザイン。ガラス繊維補強コンクリートやワイヤーメッシュ、大理石を用いた装飾が洗練された近未来的な雰囲気を醸し出している。

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中には3つの主要な祈りの間が設けられていて、約20,000人がお祈りできるらしい。


二階の遊歩道を渡った先にはイスラムの意匠がふんだんに施されたドーム型の連邦裁判所が。マレーシアって国民全員を対象とする法・行政・裁判制度と並んでムスリムのみを対象とするイスラム法・イスラム行政・イスラム裁判制度も併存する一国家二制度の国なんだけど、一般裁判所の最上 位に位置する連邦裁判所の建物にイスラーム的意匠が施されるというのは司法もまたイスラムの下にあることを暗に示しているようで意味深だ。

【Masjid Tuanku Mizan Zainal Abidin】

住所:Jalan Tuanku Abdul Rahman Presint 3, 62100 Putrajaya

ピンクモスク

続いて可愛すぎるモスクことピンクモスクへ。

ピンクモスクの周りはプトラ広場と呼ばれる直径300mの円形広場になっていて、観光バスが沢山押し寄せている。現地の方にとっては神聖な祈りの場ですが、やはり刊行者的にはフォトジェニックなかわいらしいモスクと言うことで人気なのだろう。

とはいえ、普段は現地の方々の為の宗教施設なわけであり、見学可能な時間は下記の時間帯に制限されている。

土曜日-木曜日 9:00~12:30、14:00~16:00、17:30~18:00
金曜日 15:00~16:00、17:30~18:00



また、女性や肌の露出多い系ファッションの男子は入り口で無料で貸し出されているローブの着用が義務付けられることになる。この日も中国人のおばさんたちが暑い暑いとピンクのマントをモスク内で脱ごうとしてガイドに怒られていたので皆様はきちんとルールを順守されるようお願いします。


ひだり みぎ
中に一歩入ると目の前に巨大なピンクモスクが現われる。全体のデザインはペルシアのサファヴィー朝のモスクの設計様式で、健在は鮮やかなピンクの花崗岩を用いたそうだ。その大きさはあまりにも巨大で、中庭から全体像をカメラに収めるのが困難なほど。


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通常のモスクとは異なり、尖塔が1本しかないのが特徴的。本数がないぶん高さが重用視されたのか、このミナレットの高さはなんと116メートル。中東やアフリカのアラブ世界の並み居る強豪を抑えて世界で4番目に高いミナレットとして知られている。

建物の中に入ってみると、壁・柱・天井…絨毯と細部まで全てピンク色。クールでスタイリッシュで現代的なシルバーモスクとは対照的にどこまでもラブリーでプリティーなモスクである。

ひだり みぎ
ドームの内側や壁にはみっしりと植物の紋様などのイスラミックな装飾が施され、ステンドグラスの窓からは柔らかい陽の光が注ぎこんでいて幻想的。イスラム芸術の魅力を目の当たりにすることができる。

この場にいるだけで女子力がアップしそうなくらいのかわいらしいモスクであり、おっさん一人だとなんとも申し訳なくなりそうな気分にすらなってくる…。

【Putra Mosque(ピンクモスク)】

住所:Persiaran Persekutuan, Presint 1, 62502 Putrajaya

なんだかんだで楽しめたプトラジャヤ。移動で2時間+観光で2時間と、クアラルンプールから半日あれば余裕で見て回れるし、クアラルンプールと空港の中間地点にあるので、夜行便の出発前にサクッとプトラジャヤ観光をしてから出国みたいなスケジューリングを立てるのも良いでしょう。

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