魅惑のミャンマー タチレイ(タチレク)前篇

チェンマイ→チェンラーイ→チェンセーン→ゴールデントライアングルとバスで小刻みに北上を続け、遂にタイの最北部・最深部に位置するメーサイまでやってきた。町の最北部を東西に流れるサーイ川の向こう側はミャンマーのタチレイ(タチレク)だ。煩雑そうなビザ手続きが心理的障壁となって行く気すら起きなかったミャンマーだが、タチレクにはノービザで気軽に入ることができるとのことで、せっかくなんでミャンマーへ駆け足日帰り観光に出ることに。まぁミャンマーといって思い浮かぶワードは「野蛮な軍事政権」「北朝鮮バリの独裁政権」「世界最貧国の一つ」「サフラン革命の弾圧、日本人カメラマン銃殺」などなど…民政移管されたとはいえ、映画ランボー内の描写や、僧侶達が読経するだけの静かな民主化デモに対しての武力弾圧の様子を取り上げた報道などから刷り込まれた危険でネガティブなイメージしかないんですがね…一個人の偏見でかなり偏った見方なんだろうが。後は日本の繊維衣料業界が頑張っていたり、「アジア最後のフロンティア」として持ち上げられながらも中々本格的にはテイクオフして行かない、三橋貴明氏がやたら推しているといった印象くらいなもんで、積極的にミャンマーに行きたい!というよりは、ここまで来たんだからついでに行ってみるか程度の記念旅行になりそうだ。


こちらがタイの国道一号線の最北部にあるメーサイの出国管理局。タイ人・ミャンマー人とその他の外国人で入り口が分かれているようで、パスポートチェックで順番待ちの外国人の横を大量の物資を抱えた現地人たちがドライブスルーのような身軽さでスイスイと国境を通過していく。


ミャンマー政府により厳しく規制されている諸々の物資や携帯機器、燃料、医薬品などが不法にミャンマーに流れ込んでいる為にミャンマー側の大幅な貿易赤字になっているようだが、メーサイとタチレイは共に国境貿易の拠点としてそれなりの活況を呈している。貿易規模で言うと、メーサイ―タチレクでは年間1億米ドル弱の貿易額があるそうだ。

ひだり みぎ
タイの出国手続きをパパッと終え、国を分かつには不十分と思えるほど細いサーイ川に架かる橋を渡る。この橋の上で車両は左側通行から右側通行にチェンジし、川の先にはタチレイ、人生初めてのミャンマーが待っている。

ひだり みぎ
The City of Golden Triangleというサインがあるが、タチレイはタイとしか国境を接していないので、このタイトルはミスリーディング。ゴールデントライアングルという怪しい響きで観光客を惹きつけようという魂胆だろう。

ひだり みぎ
ミャンマーの入国管理局。列の前にいたマイケルムーアみたいな肥満体の老ファランがエクスペンシブを連発して時間かけまくりでウンザリ。宿代1泊分の500バーツなんて法外、Outrageous、unreasonableだ!!なんて調子で永遠と。しかも「君もそう思わんかね」とかいってこっちに助け船求めてくるし。私の存在に気付くなら、アンタがゴネてるせいで後ろに列が出来ちゃってるのも気付かぬもんかね?そんなに高いと思うならさっさとタイに戻ってくれ。こんなことを断言的にいうのも悪いが、アジアで余生送る為に沈没してる老白人ってろくでもない自己中心的な奴らばかり。自分が王様だと勘違いしていて、喚けば黄色人種のモンキーたちが何でもやってくれるみたいなひん曲がった考えが潜在意識の中にあるようで、自分の価値観に合致しないことがあると直ぐに取り乱す。結局このマイケルムーア、500バーツ払ってミャンマーに入国→速攻で折り返しタイに戻っていった。やっぱり沈没者か、ビザラン目的だったのね。


さて、入国審査で自分の番になったので係員にパスポートを提示すると、ペラペラっとページを捲り「ok,、500バーツプリーズ」と。事前情報ではUS$10か500バーツとのことだったのでスッと10ドル札を差し出すも敢え無く撃沈、500バーツオンリーだと。500バーツって15ドル超でっせ。ドルで貰ったことにして、差額分を着服する気なのだろうか。そもそも通貨によって支払金額にこんな差が生じること自体おかし過ぎるし、ミャンマーに入るのにタイバーツを要求されるのも変な話だが、仕方ないので500バーツをお支払。当然ながら領収書などを発行してもらえるわけでもなく、500バーツはそのまま係員の懐へと消えていった。

因みに、パスポートを預け入れる代わりにエントリーパーミットが発行されるとの事前情報を得ていたが、それもなし。エントリーパーミットに関する取り扱いが変更されて簡素化されたのだろうか、ミャンマー出国時にエントリーパーミットが無いとか言ってトラブルにならないか心配だ。「今日中にタイに戻るよな?戻らないと大変面倒だ。戻るよな?、戻るよな?戻れよ!」と何度も念を押され、その度にyes yesと空返事をしてパスポートを返してもらう。確認してみたら、この時点でミャンマー入国と出国のスタンプが押されているし…うーん、あやしい。で、入管の部屋を出るとき、最後のワンプッシュで「カムバックトゥデイ!」と。そうだよな、今日ミャンマーを出国するスタンプまで押してるんだからそりゃあ帰れなかったら拙いことになる。タイとの陸路国境での出入国条件が緩和されたとも聞いていたんだがなぁ。

ひとたびイミグレを抜けるとゲート前に待ち構えている群衆に廻りを取り囲まれ、トゥクトゥク運転手の大群による一斉射撃を受けることになる。1人の観光客に対し10人超のトゥクトゥクドライバー、熾烈なネギカモ争奪戦の幕開けだ。目を輝かせて迫りくる飢狼の圧力をかわしつつ前進すると、今度は下の猥雑な市場の方から声がかかる。トゥクトゥク運転手の次は物売りだ!日本人の個人旅行者は狙い目なのだろか、それとも余程わたしが物欲しそうな顔をしていたのか、「タバコ?DVD?」から始まる物売りの攻撃は次第にエスカレートし、「オンナ、オキヤ、ブンブン?1000バーツ。安い。」と永遠に離れない。日本人の先達の影響なのだろうが、こんなところで置屋なんて言葉を聞くとは思ってもいなかった。彼らの誘いを断り続けていると、最後はバイアグラまで勧められる始末。別に性欲に困ってオキヤ行きを拒んでる訳ではないっつーの。


こちらが入管の出口で待機する人たち。


空港の出迎えシーンのようではあるが、手に持っているのはウェルカムボードではなく、タチレクの観光地紹介のパンフレット。 日本人と見るや日本語で、韓国人と見るや韓国語で、白人には英語でと言語を臨機応変に使い分けている。ミスター!パゴダ!テンプル!ロングネック!ベリーチープ!ツアーの営業が不発と分かると今度はやれ女はどうだ、やれ置屋は、やれエロDVDはと、とびっきりの笑顔でエロ方面に切替てくる。

ひだり みぎ
これらの群集を掻き分け進み、50mほど歩くとようやく取り巻き達から解放することができた。一人になり落ち着いて周囲を観察してみると、確かにここはタイではないことを実感する。みすぼらしい格好をした物乞いが多いし、男はインドやバングラデシュ人みたく腰巻きを巻いていて、女性は日焼け止めのタナカを顔に塗っている。そして、新興国特有の外国人へのタカリ攻撃。ホント、細いドブ川を一本渡っただけなのにこうも劇的に変わるもんかと。ただ、経済的には二つの町は強く結びついている為、タチレクは完全にバーツ経済圏に組み込まれていて、どこの商店でも頼りないミャンマー通貨よりバーツでの支払いが歓迎されているようだ。

取りあえず手っ取り早く観光名所を回ってみたかったので、営業も控えめに端っこでモジモジしていた人の良さそうな男に声をかけ、100バーツで観光名所を回ってもらうことに。彼の営業道具である観光名所案内によると、見どころとしては寺院が3つ、その他に長首族の村落も近辺にあるという。
ひだり みぎ
早速爆音を上げて町の東へと走り出すトゥクトゥク。舗装状態の悪い道を砂煙を上げて爆音で走るのだが、威勢の良い音の割にエンジンが弱く、風防がないのが気にならないくらい遅い。まるで農耕機にでも乗っているようだ。埃っぽくてデコボコが目立つ道路を走る車両はポンコツバイクが多く、自動車も相当古いものばかり。沿道に並ぶ商店の品揃えもタイとは全く比較にならないほど寂れていて、時が何十年も昔へ引き戻されたかのような感じを受ける。川を隔てただけなのに、両国の間にある歴然たる経済力の差を実感させられる。これがアジア最後のフロンティアと呼ばれるミャンマーか…

走り出して10分程、喘息の御爺ちゃんが懸命に坂道を登っていくような感じで何とか丘の上に登りきり、タチレイ第一の見どころである寺院に到着した。

続く。

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