独立記念博物館の直ぐ隣には16世紀の初頭にポルトガル軍が建造したサンチャゴ要塞とマラッカ王宮博物館がある。ここら一帯はマラッカ王国時代の中枢地帯だったようで、観光スポットも目白押し。
サンチャゴ砦遺跡、別名ファモサ要塞史跡。マヌエル王の命により、喜望峰をグルリと廻ってマダガスカル島経由でインドへ到着した大航海時代初期の覇者・ポルトガル。1509年に初めてマラッカの土を踏んだポルトガルは、東西交易により栄華を極めていたマラッカ王朝支配の野望に燃え、1511年7月に16隻の艦隊を率いて再来航、圧倒的武力によってマラッカ王国の征服に成功した。その後、マラッカを東方貿易の柱頭堡とするポルトガルの計画からマラッカ海峡の海岸沿い一帯が要塞化されたのだが、今ではサンチャゴ遺跡の城門一か所を除いて全て朽ち果ててしまったそうだ。石積みの壁がいい感じに風化していて、確かに歴史が感じられる。
城門跡の内部では陽気なおじさんが中国語の歌謡曲を弾き語っている。よく見りゃさっきセントポールの教会で『月亮代表我的心』を熱唱していたおじさんじゃないか!こんな濃い顔した人が流暢に中国語の歌を歌うもんだから中国人観光客の注目を集めていた。
丘の上からは遠くマラッカ海峡が見渡せる。地図を見るとサンチャゴ砦からマラッカ海峡の海岸線まで約700メートル程あるようだが、全てが埋め立て地であり、要塞の建造当時は直ぐ外が海だったらしい。マラッカ海峡から攻め入る外敵に対しての防海砦が必要と考えたポルトガル軍は司令本部を設置した要所のセントポール丘の周囲を高さ5メートルもの城壁で囲ったそうだ。
海峡の反対側は建設ラッシュに沸いている。マラッカは人口約50万人の都市だが、国内外から毎年700万人もの観光客が訪れる観光都市だ。若しかしたら今の中国のように風情ある歴史的建物が真新しい高級ビルに建て替えられてしまう日が来るのかもしれない。
サンチャゴ要塞跡の直ぐ脇には典型的なマラッカ王国時代の王宮を模した建物が建っている。マラッカ・スルタン・パレス(通称・マラッカ王宮博物館)だ。1396年にマラッカ王国を建国した初代国王パラメスワラが当地に王宮を建造したが、後にマラッカを占領したポルトガル軍によって焼き払われてしまった。マラッカ王宮は設計図も残されていない歴史上の建築物と化してしまったが、16世紀に著された「マラヤ年代記」や「マラヤ王統記」などの残された文献を基に20世紀になってから復元されたという文化財だ。建築にあたってはクギや接着剤などは一切利用されておらず、木組みだけで建てられたという匠の技が施された一級品の建築物である。「マレー年代記」にはマラッカ王国時代の街の風物、交易品などはもちろん、王家の系図、王宮の建築構造などが細かく記載され ており、博物館内部に展示されているジオラマや絵画も、史実に基づき忠実に再現されているとのことだ。
突き槍を持った薄白い門番が妙にリアルな表情をしていて不気味である。絶対生身の人間かゾンビだろ!横を通ったら手持ちのスピアで一突きされるのではないか。せっかく入場料を払っているのだが、はっきり言って入場が憚られる程の奇怪さだし、少なくとも入場口に配置するようなマネキンではないだろう。ここで靴を脱いで入館。サンダルも不可なので、靴下は履いてきた方が良いだろう。
中に入っても恐ろしくリアルなマネキンが勢ぞろい。皆、感情に正直と言うか、喜怒哀楽が表情に出まくっている。不気味不気味不気味!中学校とかにあった人体模型と同列の恐ろしさ。
ジャワの貿易商(左)は遠目を眺めたり虚ろな目をしたりと、明らかにカメラを意識しているようだ。中国人商人(右)は何かオカマっぽい。
アラブ商(左)にグジャラート商人(右)。毎年3月には少なくともグジャラートから4船の貿易船が衣類やアヘン、ヨーロッパからの武器やメタルワークなどを満載して入港したていたそうだが、事前提出書類の不備か何かで入港を拒否られたのか、抗議の姿勢と表情を見せている。せっかく武器を持ってきたのにWhy!!って言っていると思う。
サイアム(タイ系)の貿易団は嬉しそう。毎年30船ものジャンク船がサイアムから来航、銅や金銀などをマラッカにもたらした。
二階部分には当時の王宮内の様子が大量のマネキンを使用して表現されている。他国の王様がマラッカのスルタンに謁見しているらしい。当時のマラッカ王国では王様が自らをスルタン(俗世の支配者)と名乗り、戦争や和平に関する議決権、国民の生殺与奪権に関わるすべての権力を握っていて、スルタンの独裁的ともいえる政務が行われていた。
末席にて跪かされている罪人の懺悔に満ちた面様といったら…刑務官のふてぶてしい面構えも秀逸だ。
マラッカ王宮博物館 | |
時間: | 09:00-17:00 |
定休日: | 月曜日終日、金曜日の12:45~14:45 |
料金: | RM 2 |
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