前回からの続き。三棟屋博物館にて客家人の土楼と荃湾の歴史に触れた後、無性に荃湾の街を歩いて見たくなり、戻りのフェリーを一便遅らせて街歩きに出かけることにした。なあに、明日からの出張の準備など、少し睡眠を削って時間を捻出すれば良いだけの話だ。
この高層集合住宅の密集地帯の中にいると、昔見た香港映画の一コマに入り込んだ気になってくる。
ここら一帯は土地勘も無ければ地図も無い。ただただ気の趣くままに足を進めていると、摩天楼群の間の僅かな隙間に小さな公園を発見。
銀紙で覆われた謎の建物の屋根には無数の旗が突き立てられていて、某真理教のサティアンの様な雰囲気を漂わせている。
恐る恐る建物の正面に回ってみるとそこには集会所が!そして奥から聞こえる謎の呪文。いよいよもって怪しい雰囲気が…
周囲を見回すと、辺り一面に目が痛くなるほどの派手な飾り付けがふんだんに施されている。
何だ祭りでもやってるのかい!ということで音の出る方に行ってみると…
いや、お葬式でした…まさかこんなところでお葬式にでくわすとは。かなり不謹慎ではあるが、香港での葬式見物など又とない機会だと思うので、少しだけ観察をさせてもらうことにした。
何だか楽しげな紙製のお供え物が並べられている。あの世に旅立つ故人の副葬品として燃やされるという文字通り冥土の土産。故人のリクエストによるものなのか、あの世で乗り回す車や住まうことになるであろう家宅、多額の現金に麻雀牌、携帯電話にラルフローレン調のワイシャツにと…何だか物凄いリアルな死後感が表れている。土地不足でマンションだらけの香港では果たせなかった夢、あの世では3階建て新築1戸建てだ!!服は向こうでも買えるだろうけど、まぁ落ち着くまでの間の2~3着分ぐらいは持って行った方がよさそうだよね!みたいな話だろうか。現ナマも天地銀行有限公司発行の一億札や百億札が束になって積まれており、天地がジンバブエが如きハイパーインフレを起こしていなければあの世ではさぞかし成金生活が堪能できることであろう。不謹慎ながら申すと、何だか現世への未練たっぷりに旅立たれる感がひしひしと伝わってこないでもないが、絵に書いたような『万の楽しみ常にして、苦しみ交わざるなり』的な極楽浄土だけでなく、現在の延長線上としての死後の世界があってもよいのかもしれない。
あれだけ大量に用意された天地銀行券があの世でちゃんと流通していることを祈りながら、いったんMTRの荃湾駅へ戻り朝食を取ることに。駅ビルの中にあった美心MXという小奇麗なチェーン店に入る。
セットを二つ頼み、飲み物をアップグレードしても600円ちょいという値段が武器のチェーン店だ。味も無難であったが、チキン粥を頼んだはずなのにチキンの肉は全く入っていなかったことは残念。こんなミスリーディングな名前改め、ピーナッツ粥にすべきである。
さて、腹拵えをした後には胃が重くなったので、二階建てバスに乗ってMTR荃湾西駅に向かうことに。
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今川様
コメントありがとうございます。
そうなんですよね。お葬式用の紙製の冥器のように天后様との関連性も薄く妙に世俗的な紙の飾り物ばかりなので…それにしても、お詳しいですね。この道の研究者様でしょうか。色々と勉強になります。ありがとうございます。