さて、香港文化博物館を目指して沙田に来たは良いものの、残念ながら閉館となっていた為、文武庙、黄大仙、佛堂門大廟と並んで香港四大寺院の一つとされる名刹とされる車公廟を目指すことに。文化博物館と沙田海から流れ入る城門川を隔てて目と鼻の先にある。
新界に属する沙田は香港でも最大の人口を誇るベッドタウンで、周囲には見渡す限りの長閑な風景が広がる。重要発展区の一つとして住宅地、商業地の開発が目覚ましい。運河に沿って緑溢れる公園やジョギングロードが作られていて、喧騒とは無縁の安らぎを感じることができる。
運河を渡り、車公廟路という分かりやすい名前の大通りをMTR大囲駅方面に進むと直ぐに見えてくる真っ赤な建物。
これが車公廟のようだ。中央分離帯が邪魔をして斜め横断ができない為、しぶしぶ地下道を渡って道路の反対側に渡る。
白を基調とした落ち着いた外観の高層ビルが立ち並ぶ沙田の中で強烈な存在感を見せつける真っ赤な車公廟。この道教寺院の由来は諸説あるようだが、19世紀に沙田で大流行した霍乱を鎮める為に建立されたという説が有力だそうだ。暴動反乱はもちろんのこと、疫病や天災などをも制圧する伝説的な力をお持ちだったとされる南宋の勇将・車公を祀ったところ、寺院完成のまさにその初日から疫病問題が収束に向かったらしい。なにやら即効性のある御利益が期待できそうだ。
境内に入ると直ぐに車公に仕えた武官・文官と思しき方々の像が目に入る。
皆さん、長野冬季オリンピックでラージヒルを飛ぶスキージャンプの船木和喜選手を彷彿とさせる美しい前傾姿勢だ。
境内に入って正面にあるこの立派な本殿は、5000万香港ドル(≒6億円!)超をかけて1993年に新たに建立されたもの。車公の誕生日が旧正月二日だったらしく、毎年旧正月には車公の生誕祝い兼初詣の為の参拝客で溢れ返ってしまうので、より多くの参拝者を収容できるようにとの増築措置が取られたらしい。
*お借りした画像です。よほど御利益があるのか、車公廟が人気者なのか、ネットで旧正月中の車公廟の様子を見ると、確かに辺りを埋め尽くさんばかりの人で境内が覆われている。なんと彼の誕生日には十数万人の参拝客が訪れるとのことだ。そんな人気者の車公氏、華南の大反乱を鎮圧した功労を称えられ、大元帥の地位まで上りつめたそうだ。出世コースに乗っていたかに見えた車公氏だが、宋朝はモンゴル帝国軍の侵略を受け衰退。末期には宋朝皇帝を引き連れて今の香港まで逃れるも、最終的には道中で不幸にも病死してしまったらしい。そんな車公を拝みに本殿に入る。
本殿の中に足を踏み入れると、思わず入口正面に立つ車公の凄みにたじろいでしまう。
でかい!とてつもなくでかい。そして眩しい程に金ぴかの車公さんはヘソの位置でこれまたドデカイ剣を両手で握りしめる堂々とした仁王立ちを披露している。顔は非常に厳めしくあり、元帥としての威厳を精一杯顔で表現しているのかもしれないが、目を吊り上げた表情が非常に怖い。幼い子供ならば泣き出すレベルだ。
横からの観察。
屋根を突き破らんかの勢いでそびえ立つ車公。足元にいる手のひらサイズの人間ドモを威圧的に見下ろしています。これだけの迫力と巨体があれば病原菌も裸足で逃げ出すであろう。
しかし、これだけ存在感を発揮する車公の手前で申し訳ないのだが、どうやらこの寺を訪れる参拝客の目当ては彼ではないようだ。
ようやく初夏の訪れを感じるところまで気温が上昇してきたが、こちらは決して扇風機のディスプレイ販売ではない。これが車公廟最大の名物である風車である。車公像の左手側に置いてある銅製の風車を時計回りに3回転させることで運気を変え、右手側にある太鼓を3回叩くことで車公に願をかけるのだそうだ。3回転以上回してしまうと逆に運が逃げてしまうというから回す時には注意が必要だ。
この太鼓を叩く必要があることは家に帰って知った事実。風車は回してきたが、太鼓はスルーしてしまった。風車だけで効力があれば良いのだが。
風車は車公廟のシンボルであるようで、廟内至る所にくるくると風車が回っていました。
本殿の風車で運気を変えた上、妖気を破り浄化することができるマジカル幸運風車もお土産で購入することができる。土産用は流石にインテリアとして家内に飾っても違和感のないよう可愛らしいデザインだ。
これで昨年夏から不幸せが続く小生の運気も上向くこと請け合いだ。香港の疫病問題を瞬く間に沈静化させた釣り目将軍のお力に期待する。
●開放時間:07:00-18:00
●入場料:無料
●最寄駅:MTR大囲駅・車公廟駅
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