パレルモ町歩き ノルマン王宮とパラティーナ礼拝堂

地中海に浮かぶ魅惑の島・シチリア島のパレルモにやってきました。

シチリア島というと1日あれば周れるくらいのイメージでしたが、実は四国より大きな地中海最大の島。
肥沃な大地と温暖な気候に恵まれたこの楽園を巡っては、紀元前から様々な民族間での争奪戦が繰り広げられてきました。ギリシャ人を始め、フェニキア人、ローマ人、アラブ人、フランス人にスペイン人と、次から次へと異なる民族がシチリアを征服しては脱落していって。
支配者が変わる度に都度新たな文化が溶け合い混ざり合いしてきた結果、シチリア島ではイタリア本土とは明らかに異なるエキゾチックな特徴を持つ独自の文化が醸成されてきました。

古来からの“文明の十字路”。今日はそんなシチリア島最大の町・パレルモを歩いてみます。

ホテルを出るといきなり目の前に広がる異国情緒満点の街並み。ローマでもナポリでもヴェネチアでもないこの感じ。イタリアと一口に言っても、独立した都市国家の集合体なんだなーと改めて実感します。それぞれの都市で文化が異なるだけでなく、どこに行っても皆さん郷土愛めっちゃ強いですし、サッカーチームのサポータも地元愛に溢れて激熱だったりしますからね。イタリア国民というより、ナポリ人とかローマ人の集合体みたいなイメージ。

建物にも誇らし気にシチリア州旗が掲げられています。あまりにも奇抜過ぎて、夜これに追い掛けられたらどうしようとか不安になってくるデザインですがw

建物の一つ一つが実に味わい深い。シチリアンバロック様式やアール・ヌーヴォー風の家屋があったり、アラブ風のクーポラがあったり、壮麗なバロックの教会があったり、はたまたビザンチン・アラブ・ヨーロッパの要素が掛け合わさったアラブ・ノルマン様式の遺構が残っていたり。
ただただ町を歩いているだけで、壮大なパレルモの歴史絵巻を見ているかのような気にさせてくれます。

ベッリーニ広場

12世紀に建てられたビザンチン様式のマルトラーナ教会とイスラム様式のサン・カタルド教会が寄り添うように建ち並ぶベッリーニ広場。中央の噴水にはギリシャの神々の銅像が集結したりと、異国文化が入り混じって発展してきたシチリア王国の都・パレルモを象徴する場所になっています。

マッシモ劇場

これまた古代ギリシャの神殿っぽい古典的な建造物が見えてきました。

いや、ギリシャ風かと思ったら、別の角度から見たらアラビアンな宮殿風。騙し絵か!

この建物は1897年に完成したオペラ座で、映画ゴッドファーザーパート3のクライマックスでも登場するパレルモを代表するランドマークの一つ。公式ガイドツアーとオペラ上演の時間以外は入れないそうで入場を泣く泣く断念しましたが、内部も相当に美しいそうです。

コンサートの入場料も16.5ユーロ~と安かったので、夜にコンサートを見に来ても良かったなと今になって後悔。

Homepage – Teatro Massimo – Fondazione Teatro Massimo

ジェラート

マッシモ劇場付近を適当に歩いていると、寒さに手を震わせながらジェラートを食べてる大人たちを発見w しかも手にしたジェラートはどれもメッチャでかくてメッチャ美味しそう。

天国。幸せ過ぎて昇天しそう。

アイスは主食。
ハンバーガーみたいにバンズに挟んで食べる新食感系ドルチェでしたが、旨くないわけないですよね。ワイの顔面くらいのサイズの巨大アイスを全力で頬張らせて頂きました。

パレルモ大聖堂

パレルモ旧市街を歩いていると、これまた異様な建物に遭遇しました。
4世紀にキリスト教会として建てられ、9世紀にはアラブ人によってモスクとして改修され、11世紀にノルマン人により再び教会として再建されたパレルモ大聖堂。

ここは地下に歴代国王の墓や宝物庫があったり、屋上のテラスからパレルモの町を一望出来たりと見所満載だったので、別記事に情報をまとめました。

https://worldtravelog.net/2023/12/palermo-cathedral/

ヌオーヴァとノルマン王宮

16世紀に神聖ローマ皇帝の入城を記念して建てられた城門の中には、これまた数奇な歴史に翻弄されてきたノルマン王宮が残されています。

城壁の西側にあるアトラスが妙にジワりますが、これはキリスト教がイスラム教徒を駆逐したことを記念して彫られたそう。自国の英雄を称えて国威を掲揚するようなアトラスはよく見かけますが、敗者を侮辱するような像というのはあまり見ないかも。他に何かしらの意図があるのかもしれませんが、いかにも罪人風なタッチで彫られた半裸の囚人像ですからね…

王宮の敷地内は南国植物満載の庭園になっていて、歴代君主の宮殿らしい優雅な雰囲気。ただ、やっぱりところどころアラビアン要素が散りばめられているので、イタリア本土にあるような豪華爛漫な王宮とはまた雰囲気が異なります。

王宮の歴史は古く、カルタゴ人が2000年前に築いた砦がルーツ。その後9世紀にアラブ人の統治下で城塞として再建設が始まり、12世紀以降からは歴代ノルマン王たちによって豪勢な王宮として拡張されたことでアラブ・ノルマン様式の建物として仕上がりました。
建物の2階には中世キリスト教美術の最高傑作の一つともいわれるパラティーノ礼拝堂が入っていて、パレルモでも1-2位を争う観光名所となっています。

パラティーナ礼拝堂

初代ノルマン朝ルッジェーロ2世の時代に建設が始まり、1143年に献堂されたパラティーナ礼拝堂。
ノルマン人により建てられたものではありますが、基本的に武闘派傭兵集団的な脳筋マンだったゲルマン系ノルマン人は建築技術とか美術関連の分野については疎め。その上、元々は別にガチのカトリック教徒という訳でもないし。

ということで代わりに今までパレルモを仕切っていたビザンチンやイスラム教徒の職人たちを建築プロジェクトに登用しまして、結果としてラテン文化・ビザンチン文化・イスラム文化が高度に融合した独自のアラブ・ノルマン様式が確立されていきました。

贅を尽くした華やかな装飾と異文化が融合した神秘的な空間。神秘の暴力に屈してついついイエスの奇跡を信じてしまいそうなくらい、神秘的で、幻想的で、特別な空気に包まれています。

ムスリム職人が手掛けた寄せ木細工の天井なんかおよそ教会とは思えない造りですが、それでも不思議と周りのビザンツ絵画とも融合していて違和感がないという。これがアラブ・ノルマン様式マジックです。

壁を埋め尽くすモザイク画では、アダムとイブの楽園追放など聖書の世界が鮮やかに描かれています。これら全てが小さな小さな石の欠片を一つ一つはめ込んで描かれていると考えるわけですから。途方もない作業量と職人さん達の苦労を考えると眩暈がしてきます。

床と壁の低い部分は幾何学模様の大理石の象嵌細工が良い味を出しています。

足元はアラブ風味が強めですが、このモザイクの柄はアラブ文化とビザンチン文化の融合したコズマーティ調というスタイル。イスラム美術とビザンチン美術の結晶と言われる職人芸のその芸の細かさを目の前で拝むことができます。

とにかく一言では表せない異種文化の調和を目の当たりにできますので、パレルモに来たら絶対に見ておきたい場所の一つです。

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