「ナポリを見てから死ね」という有名な言葉、あるじゃないですか。
イタリア大好きマンのゲーテがイタリア紀行の中で書いた言葉で、額面通り美しすぎるナポリの風光を見ずに死んだら生きた価値すらないくらいの意味合いらしいんですけどね。
それが昨晩ナポリに来てみてどうですか。電車の駅は薄暗くて落書きだらけだし、通りには普通にゴミが散乱しているし、いかにも不機嫌そうな強面の方々が屯してジロジロと睨みを利かせてるし…どうなってるんだゲーテさん、と。
最寄りの地下鉄駅から宿泊先のホリデイインに向かう道も荒んだ雰囲気満点で、小便臭いわ黒人に追いかけられるわでもう最悪。聞けばマフィアの皆様も大変にご活躍されているとか。
イメージとは全く真逆なブラックでダーティーな部分しか見えてこないんですが、パラレルワールドにあるダークサイドのナポリに降り立っちゃったんですかね。
「ナポリを見てから〇ね」ってなんか別の意味があるんじゃねって勘ぐってしまうほど、夜のホテル周辺は退廃的で猥雑で危険な香りプンプンでした。
うーん、どうしたもんかゲーテさん。いや、でもこれはきっと夜だからですよね?
きっと昼間のナポリは素晴らしい印象を与えてくれるに違いない。そう信じて、夜のフライトの時間までナポリの町を歩いてみることにしました。ゲーテを信じろ!
ホテルをチェックアウトして適当に市街地の方に向かってみると、南イタリアの港町っぽい下町情緒あふれる街並みが見えてきました。
殺伐としたホテル周辺とは異なり、このエリアは生活感剥き出しで活気満点。古い建物に囲まれた狭い通りをスクーターや車がクラクションをガンガン鳴らしながら走り抜け、建物の一階に並んだ商店では近所の馴染みのオッサンたちが陽気に世間話に興じている。ゴミゴミはしているがエネルギッシュで、古い文化と下町情緒が融合した人間味溢れる港町といった雰囲気に満ち溢れています。
商店に並んだ品々もユニーク。ブロッコリーなの?セロリなの?野菜なの?果物なの?
南イタリアの太陽をたっぷり浴びて育ったカラフルな野菜や果物や、方々で漂うエスプレッソの匂い、陽気に喋り倒すジローラモみたいなオジサンたち…なんとなくイメージしてたナポリっぽくなってきましたよ!
人も物も車も過密状態にある下町ナポリ、特に路肩に停められた車の車間距離がおかしすぎます。前後の車間距離数1cmでどうやって脱出するんだw
上から見ても路肩に隙間なく車輛がびっしりと詰まっていて、まるで縦列駐車数珠繋ぎの路上アートみたいw 道理でイタリア人の皆さま、縦列駐車がお上手なわけですね。交通マナーはクソですが、縦列駐車だけはレベル100まで極めたかのようなテクニックで狭いスポットに入っていきますからw
いやー、このアジアのようなワチャワチャした感じも良いですね。ローマとは全く町も人も感じが異なるので、軽くカルチャーショックを受けるといいますか。これはローマとは異なる独自の歴史と文化を持った独立国家ナポリ王国ですわ。
地下の歴史遺産
ローマの歴史ももちろん大変に誇るべきものですし、現代にまで残る古代の遺跡群は目を見張るものもあるのですが、人種・文化の交差点として栄えてきたナポリの歴史遺産も中々に面白い。
ギリシャ植民都市時代の地下の石切り場やローマ時代の水道、中世期の共同墓地など、街のいたるところにそれぞれの時代の遺跡や建造物が重層的に残っていたり、ナポリならではの独特な歴史遺産が多く残されています。
特に印象深かったのが、ギリシャ植民都市時代の共同墓地に作られた中世のカタコンベ。
当時は頭部に思考が宿ると考えられていたことから、頭蓋骨だけ飾って首下はフレスコ画を描くという埋葬スタイルだったそう。胴体のフレスコ画は生前の社会的ステイタスが描かれていて、ガイドさんが細かくストーリーを解説してくれるので、不謹慎だとは思いますが楽しめました。
Catacombs of San Gaudioso – Catacombs in Naples (catacombedinapoli.it)
↑はBasilica of Santa Maria della Sanitaという聖堂の地下に広がるカタコンベで、見学には英語かイタリア語のガイドの帯同が必須となります。
ピッツェリア
歴史と言えばピザ。ナポリと言えばピザ発祥の地としても知られます。有名なピッツェリアも多くありますけど、名の通ってない適当な店舗でも感動するくらい美味しかったりしますので、ナポリのピザのレベルの高さはガチ。
ナポリではマルゲリータとボンゴレが至高の組み合わせ。
濃厚な味のトマトソースとモッツァレッラチーズが乗った本場のマルゲリータは生地もフワフワ・カリカリで絶品。ボンゴレもアサリの旨味と白ワインが最高にマッチしてて極上の逸品でした。
ナポリのメシは安くて美味い!
Pasticceria Poppella
美味いと言えばドルチェも。通りを歩いていて行列のできるドルチェ店を見つけたので入ってみました。皆さんテークアウトでサクッと歩きながら食べるスタイルのようでしたが、ワイはイートインで。
一番人気はナポリ名物のFiocco di Neve。ブリオッシュ生地にリコッタチーズと生クリームを詰め丸く焼き上げたシュークリームのようなドルチェで、行列が絶えることなく飛ぶように売れてました。
マッチョなオッサンが丁寧に作ってくれるコーヒーも安くて美味しいですし、完全にナポリを見る目が変わってきましたね。イケるやんナポリ!
ポジリポの丘
最後に、ゲーテが最も感銘を受けたというポジリポの丘からの絶景を拝んでから空港に移動しようと思います。ゲーテにそこまで言わしめた丘の上からの絶景がどんなものなのか。足を運んで確認しておかねばなりません。
ゲーテが来た1787年にはまだ道路すら整備されていない天然の丘だったようです。自らの足でやっと登りきった丘の上からの大絶景…さぞこみ上げてくるような想いにとらわれたのでしょうが、ワイは楽してケーブルカーで丘の上までワープ。
輝く太陽、ゴシック様式の建物、紺碧の海、遠くにうっすらと見える雄大な火山。海と火山に育まれた南イタリア最大の街・ナポリ独特の絶景が眼下に広がります。
猥雑だったホテル周辺のナポリと、丘の上から見たナポリの全景は完全に別物ですね。港、海、空、イタリアの伝統的な建物、後ろにそびえるヴェスヴィオ火山。すべてが混然として、実に美しい景色を織り成していて、下界のダークサイドなナポリの部分はこの美しさを一際際立たせるための演出なんじゃねとすら思えてきます。
カオスのような雰囲気も残しファッションの都ミラノや花の都フィレンツェのようなエレガンスさはありませんが、逆に庶民の暮らしや豊かな歴史が垣間見える場所も沢山。わずか1日でナポリの何が分かるのだとお叱りを受けるかもしれませんが、紺碧の海に陽気なオッサン、安くて美味しいピザにパスタなど、イメージしていたザ・イタリア的な町だなという印象を受けました。様々な文化が混在して混沌としながらも美しく刺激的な町・ナポリ。ポンペイのついでくらいの扱いでしたが、短時間ながらも立ち寄ってみて良かったです。
もうこれで、いつ死んでも思い残すことはありませんw
コメント