コソボのプリシュティナの観光地巡り

複雑な歴史を持ち、未だに民族闘争の火種が燻り続けるコソボ。

中世期のセルビア王朝が首都を置いたことで栄えた歴史ある場所なのですが、15世紀にはオスマン帝国がセルビア王朝を退けたことでイスラム教の勢力下に置かれることに。以降、イスラム教徒のアルバニア人がコソボに移り住むようになったことで、歴史的にはセルビアと結びつけられるが民族的にはアルバニア人が居住するといという、現代のコソボ紛争の下地が作られました。

セルビア人にとってコソボは中世より栄えたセルビア正教の聖地でもあり、一方、コソボの人口構成で9割超を占めるアルバニア人にとっても何世紀にも渡って住み続けてきた祖国そのもの。
こういった事情からセルビア・アルバニア両国のナショナリズムがぶつかりあい、更には大国の思惑なんかも絡み合って大規模な紛争が勃発。2008年には英米の後ろ盾を得たコソボがセルビアからの独立を宣言するも、セルビアを含め国連加盟国の半数弱は未だにコソボを正式な国家として承認していないという状況が続いています。

そんな民族紛争の舞台となっているコソボですが、イメージとは裏腹に都市部の治安は落ち着いていますので、特に安全な首都プリシュティナを見て回ることにしました。

外務省の治安情報(23年11月時点)では、セルビアとの国境沿いのみ危険とされている。

早速プリシュティナのバスターミナルから市街地の方面へ歩いていると、目の前のビルにビルを発見。

これはまごうことなく本物のビル・クリントン。コソボの独立にあたって尽力したことから英雄扱いされているのは知っていましたが、ビルにビルの演出とはコソボ人も粋なことしますねw アメカスとしては、コソボの為というより自国の利益の為に動いたんだと思いますが。

そして足元にはヒラリーw 親米というより親クリントン夫妻だなw

コソボ国立博物館

ビル・クリントンビルから更に南の市街地方面へと歩いていくと、だだっ広い草むらの中に奇妙な建物を見つけました。

マザー2に出てきそうな悪の巣窟的オーラが全開のこちらの建物、1982年に建てられた旧ユーゴスラビア国立図書館だそうです。

図書館の設計が始まった当時、類まれなる統率力をもって多民族国家ユーゴスラビアをまとめあげていたチトーが死去したことでユーゴ情勢が急速に悪化。コソボでもアルバニア人とセルビア人の対立が激化し、民族紛争が耐えない日々が続いたそうです。
そんな状況の中、設計士のMutnjaković氏はコソボでの民族融和と平和を願い、アルバニア人のイスラム建築とセルビア人のビザンチン様式を取り入れたデザインにしたんだとか。
結果として奇抜な立方体とドーム屋根が不揃いに組み合わさった不気味な建物に仕上がってしまいましたが、実際は平和の象徴的ランドマークだったのですね。悪の巣窟とか言ってすまなかった!

救世主教会

図書館の傍には、Mutnjaković氏の願い虚しく、建設途中で無残に朽ち果て放置されたセルビア正教会の姿が…

浮浪者とカラスが住み着く廃墟と化してしまっていて、図書館とは反対に民族対立の象徴的存在となってしまっています。
アルバニアとセルビアが融和して正教会が完成するのが先か、紛争が激化して完全に破壊されるのが先なのか…。果たして私が生きている内に答え合わせすることができるでしょうか。

New Bornモニュメント

続けて通りを歩いていると、今度はニューボーン(NEWBORN)と書かれたポップなモニュメントが見えてきました。コソボの独立を記念して作られた記念碑だそうで、コソボ民の国に対するメッセージやグラフィックがモニュメント上に書き綴られています。
正直“I♡NY“的な陳腐なポップアートと大差ない気もしますが、新生コソボを象徴する意義深い作品です。

Heroinatのオブジェ

こちらは20,000本ものピンを用いてデザインされたヒロイン(Heroinat)というオブジェ。コソボ紛争中にセルビア兵から被害を受けたアルバニア系女性20,000人に捧げる為のものだそうで、奇抜なモニュメントの多いプリシュティナ市街地の中でも一際異彩を放っています。

拡大してみるとこの通り、ピンの高さの調整だけで女性の顔が表現されているのですが…ピンの端面一本一本にも顔が描かれていることが分かります。近くで見ると20,000人の顔が、遠くで見ると1対の巨大な顔が浮かび上がるというカラクリ。
政治的な意味合いの強いオブジェで作られた背景まで知ると複雑な気持ちになりますが、純粋にアートとして見る分には面白い作品だなと思います。

若さとスポーツの宮殿

モニュメントの背後には、いかにも社会主義国の公共施設といった厳つい建物が建っています。その名も“若さとスポーツの宮殿”。愛と青春の旅立ちくらいゴロが良いこちらの建物は、1977年建立の多目的ホールだそうです。
遠景ではユーゴスラビアらしい個性満載のフォルムで非常に勇ましいのですが、近くでよく見るとガラスが割れたままの状態になっていたりと、なんとも廃れて寂しい感じでした。まぁその状態も含めてユーゴスラビアっぽいと言いますか、虚しくも瓦解してしまった超大国ユーゴスラビアそのものを象徴しているかのようです。

政治性の強い奇抜なモニュメントや社会主義時代の厳つい建物が入り混じるコソボの首都プリシュティナ。基本的にはイスラム教国家のはずですが、親米国家だからか市街地にはクリスマスマーケットもあったり、西側諸国の影響も強く受けていることが伺えます。

西洋風のオシャレなカフェやレストランが立ち並ぶ目抜き通り。全人口の7割超が35歳以下という若い国だけあって新市街地は若者や子供で溢れ返ってます。

ケバブ屋台の前にオシャレな西洋風のカフェがあったり。

ヨーロッパにありながらそのエキゾチックなムードに惹かれ、コソボを訪れる旅行者も年々増えてきているみたいですね。首都を歩いている分には夜も普通に安全で、とても民族紛争の舞台といった空気感はなく、平和そのものでした。

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