快適な避暑地・ダラットから混沌とした雑踏の街・ホーチミン市へ

週末休暇を利用した弾丸ダラット観光の旅程も全て消化し、ダラット空港へと向かわねばならぬ時間がやってきた。どんな旅にも終わりはあるとは分かっていても、これだけ快適な避暑地・ダラットから混沌とした雑踏の街・ホーチミン市に戻るのは、やはり思いっきり後ろ髪が引かれる思いである。

さて、ダラット市内から空港への足はタクシーかベトナム航空手配の有料シャトルバスになる。タクシーだと概ねVND200,000-300,000の費用がかかるところ、シャトルバスはVND40,000で済む。シャトルバスの予約は航空券発券時ではなく、フライト当日出発2時間前までにダラット市内のベトナム航空オフィスに行けば乗車させてくれるとのことだったので、バイタクのケツにまたがり急いでベトナム航空オフィスへと移動する。


流石はおフランスでオシャレなダラットだ、ベトナム航空のオフィスもメルヘンチックなピンク一色・三角屋根で何ともお上品。ここまでやられると新婚さん限定のハネムーン旅行用オフィスで、「男一人の入店お断り」という感じすらあるが、こんな建物が許されるのもまた、ダラットの街に漂う独特の甘~い雰囲気が成せる業だろう。流石はハネムーナーのメッカと呼ばれるメルヘン都市だ。ここで壇蜜似のお姉様にシャトルバスに関して問い合わせると、どうやらここはシャトルバスとは一切関係ない部門らしい。直ぐ近くにある別のオフィスに行ってくれとのことで、住所を書いたカードを渡される。

地図ならまだしも、住所だけ渡されてもなぁ…とりあえず道端で地図を広げてみると、くそ暑い中ダウンジャケットとフルフェイスメットを装備した恰幅の良い原付ライダーが私の前に停まり、ヘルメットを外してどこにいくのか?と聞いてくる。怪しい…メットを外した彼の顔を伺うと、浅黒の肌で、目がまん丸く渋みがある。あ!モーガンフリーマンだ!モーガンに住所を見せたところ、「乗ってけ」と言って(多分、そう言ったのだと思う)バイクのケツをパンパンと叩く。


モーガンのバイクに乗ること1分、ここだと言われて白亜の建物が眩しいNgoc Phat Hotelの前で降ろされる。なんだい、こんなに近かったのかい!!モーガンは金もとらずに私を下ろすと、代金も請求せずに何かを言って颯爽と消えていった。粋な奴もいるもんである。


確かにありました。Ngoc Phat Hotelの一角にベトナム航空のオフィスが入居しています。手続きは至って簡単で、便名と名前を伝え、パスポートを提示するだけで完了です。


意外にもかなり清潔なシャトルバス。ここから空港までは30分強でダラットの空港に到着する。

ひだり みぎ

ひだり みぎ
2009年に開港したばかりとのことで、発着便数が少ない割に綺麗で立派な造りとなっていて、ダラットフラワーや民芸品、ドライフルーツなど一通りのダラット土産が買えるようになっている。肝心のフライトはというと…予想通りのディレイ。ここベトナムでのディレイは予想通り過ぎて驚きも怒りもしないが、搭乗口近辺を見回しても明らかに搭乗者数が少ない…これはまさかのフライトキャンセルになるかと肝を冷やしたが、21:30、無事に搭乗開始のアナウンスが流れて胸をなでおろす。


空港にはボーディングブリッジはおろかシャトルバスすら用意されておらず、ターミナルから飛行機までは各自徒歩で移動。ホーチミン市までの飛行距離を考えたらプロペラ機だろうと予想していたが、まさかのエアバスA321がだだっぴろい飛行場に一機ぽつりと放置されていてワロた。

搭乗率は目測で約20%、大幅採算割れ確実だがよくぞ飛ばしてくれた!離陸後はシートベルトサインが消えて水が配られたと思ったら、飲み干す間もなくシートベルト装着の指示が。以前に訳有りで香港⇒広州という超短距離路線に乗った時も離陸後速攻で「Cabin crew, 30 minutes to landing」のアナウンスがあり笑ってしまったが、今回はそれをも上回る短距離ぶりで、僅か30分でホーチミン市に到着した。行きはバスで山道を大きく揺れながら7時間の移動だったが、飛行機は1時間弱でホーチミン市に到着するんだから楽なもんだ。


Ngoc Phat Hotel
Add.: 10 Ho Tung Mau Street, 03 Ward, Da Lat City, Lam Dong Province.
Phone: 0633-68-3979

ダラット高原鉄道で隣町のチャイマット村へ

縦に長い国土の南北が統一鉄道という交通大動脈で結ばれているベトナム。山岳地帯にあるここダラットにも1932年~1938年にかけて鉄道が敷設され、統一鉄道南北線のタップチャム駅からの支線が伸びていたそうだ。だが、ベトナム戦争後の主要路線復旧工事に際して行政から不要不急の路線というまさかの戦力外通告を突きつけられ、資材供出のために路線を残して廃線とされてしまう。駅、建てたのに…路線、引いたのに…当時の鉄道敷設関係者の恨めしい声がそこはかとなく聞こえてくる。

う~ん、先人の苦労のもとに建てられたこの路線を上手い具合に有効活用して町興しできないか…という議題が観光誘致会議で挙がったのかは知りませんが、やがて、「ダラット高原鉄道」と銘打った観光鉄道として、ダラットから7Km先のチャイマット村までの一駅区間限定で復活運行するようになったそうだ。ただ、このチャイマット村自体は特にめぼしい見どころはなく、単にダラットの隣の駅だったというだけで観光列車の終着駅になってしまったと思える寂れた村で、これを機に村を発展させようといった考えも一切見られない長閑で平和な村だ。タップチャムまでの路線が再開した際には、再びその存在が忘れ去られてしまうのであろうちっぽけな村が終着駅ではあるが、ダラット高原鉄道のロマンに惹かれ、世界中から鉄男・鉄女が集まってくるという。自分自身も鉄男というわけではないが、ホーチミン市に戻る前に何とか時間を捻出し、ダラット高原鉄道に乗車することに。

ダラット駅はスンフン(春の香り)湖の湖畔にある。湖の脇を通り抜け、駅を目指しバイタクで走っていると、右手に面白い看板が目に入った。
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残念ながら通り過ぎてしまったが、「ひろしマート」との文字が青い看板に踊っている。在越日本人ひろしさん開業のスーパーマーケットらしい。自己主張して何ぼという派手目看板が蔓延る昨今、「ひろし」という名前の脱力感と、どこか弱弱しい控え目な感じのフォントが奏でる絶妙なゆるさ加減がひろしさんの人柄の良さを物語っている気がする。

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ひろしマートからバイクで1分、ランビアン山を模したと言われる三角屋根が特徴のダラット駅に到着だ。なんとなく雪景色が似合いそうなおしゃれな佇まいのこの駅舎はベトナム一美しい駅とも称されているらしいが、現在は観光目的以外の一般利用はされておらず、完全な宝の持ち腐れとなっている。

因みにこのダラット駅、ベトナム一美しいで賞の他にも数々の誉れ高き賞の数々を受賞してきたアワードウィナーらしい。

【ダラット駅の主な受賞アワード】
・最も古い駅舎
・最も高い場所にある駅
・最も独創的な駅舎

翻訳が下手なだけだろうか、何だか余り「おぉ!!すげえ!!」とはならない微妙な賞ばかり受賞してきたダラット駅に感心しつつ、売店で濃厚なダラット・ミルクを一気飲みしてから駅舎へと入る。

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クラシーで、どこかメルヘンチックな雰囲気の待合室。そこに飛び交い鳴り響く中国語の怒号。いや、彼らは怒ってるつもりも大声で話してるつもりもないのでしょうがね…「うお、これさっき撮った写真見て!」「いいじゃんいいじゃん早速ウェブに投稿しなよ」こんな極普通のありふれた会派まで大声で話す必要はどこにあるんだか…中国人の声のボリュームにすっかり辟易している白人の横で構わず大声を張り上げる中国人という、何度も見た構図がここでも繰り返されている。


こちらは現在の時刻表。7:45発、09:50発、11:55発、14:00発、16:05発の一日5本がダラット⇔タップチャム駅を結んでいる。客車はデフォルトで4両編成で、乗客数によって連結数を増減させているそう。余りにも客の集まりが悪い場合は一方的にキャンセルされることもあるらしいので、タップチャム駅に行ける行けないはある程度運任せになってしまう部分があるのが辛いところ。

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待合室の奥を抜けるとそこはプラットフォーム。運良く今回はそれなりの集客ができたとので運行するという知らせに拍手喝さいが巻き起こる。

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プラットホームの右側に今回乗車する鉄道が、左側には現役引退した機関車や、軽食やアルコール類を含むドリンクが供される「ダラット・プラトー・レイル・ロード」が停車している。ダラット線の現役時代を模した造りとなっていて、綺麗に改装されている。

485ここちらは実際に運行される車両の客室。いざ、「ダラットの車窓から。」の始まりだ。

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道なき道を行く」感がたっぷりで、一見してどこにレールがあるのかわからない草むらの中をかき分けて進んでいく。時速30km程度の低速でコトコトゆっくり走り、のどかで平凡な風景を楽しむことができるが、シートが木製の為にケツが痛い

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チャイマット駅までの約30分間、車窓から見える景色といえば、木々、ニンジン・キャベツ・アンティチョークの畑、そして、ビニールハウスビニールハウスビニールハウス。ダラットは観光地としてだけでなく、冷涼な気候を活かした高原野菜の栽培地としても知られているだけあって、びっしりと大規模なビニールハウスが展開されている。


ビニールハウスの景色を楽しむこと30分弱、チャイマット村に到着。

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プラットホームが無いので線路に直接降り立つことになる。この村で40分滞在した後に、乗ってきた電車でダラットまで引き返すことになるので、くれぐれも復路便に乗り遅れぬよう、時間配分を計算して村の探索を行う必要がある。とはいってもチャイマッ ト村の観光資源は本当に本当に乏しく、40分もあれば 見るべきところは全て見て帰れるといった規模の村なので、余り時間的な心配はいらないか。

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ダラット中心部は色とりどりの花々が咲き乱れ、古き良き教会やヴィラが佇むお洒落な雰囲気だが、ここチャイマット村はだいぶ趣が異なる。 木造の個人商店では男どもが昼間っからビール片手に囲碁やカードゲームを嗜んでいる。なんというか、のんびりほのぼのとした村だ。

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ゆっくりとした穏やかな時間が流れる村を散策していると、目の前に突如としてド派手な寺院ゲートが出現。ゲートの上には幸せそうなほっこり笑顔の大仏の御尊顔がプリントされた看板がデカデカと掲示されていて、この門をくぐるだけで御利益がありそうだ。

霊福寺と呼ばれる寺院はゲートから徒歩1分のところに建つ。此の親にして此の子ありではないが、此のゲートにして此の寺院あり。ゲートの派手さに負けない威風堂々とした佇まいの寺院です。
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じゃああ~ん。

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中では信者さんが集まり、LEDランプに照らされた仏像に向かってお祈りを捧げている。仏像とかも派手であれば派手であるほど御利益があると考えられているのだろうか。ベトナムではクリスマスバリに派手なLEDで仏像が装飾されているのをよく見かける。

そして、ここ霊福寺は仏像だけではない。寺院の壁面・柱・天井と、内装にも趣向が凝らされていて、全てが目の痛くなるほど派手な極彩色で彩どられている。そう、日本の厳かなイメージとはかけ離れていて驚かされるが、上座部仏教寺院と思われるここのテーマは「とにかく派手に祀れ」なんでしょう。

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これは凄い、ビール瓶や不要となったタイルなどの廃材で作ったエコ獅子。

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頭上を仰げば、この寺院の屋根を人力で支える罪人(!?)たちの姿が!。凄まじい形相で屋根を支えています。

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2階には高さ17mの仏像がそびえ立っていて、その周囲を無数のミニ仏像がぎっしりと囲んでいるwww

ハチャメチャな霊福寺の見学を十分に楽しんだが、それでも帰りの鉄道の出発まで時間があまったので、駅近くのDonna Cafeで一服する事に。英語メニューも有る清潔なお店だが、フルーツシェークがVND 20,000~、ビールはVND 15,000~と良心的な価格設定で、ダラットから遥々チャイマット村に来たものの、やることのなくなってしまった観光客が殆どここに集結している。

メニューを眺めていると、そこには衝撃の文字が。Strawberry icecream with beer。え? strawberry icecream with beer…アイスにビール?いっちょ頼んでみると、なんてことはない。名前の通りビールにアイスがぷかぷかと浮いている…せっかくなのでビールとアイスを完全融合させて味わうと…これは飲んでみてのお楽しみ。チャイマット名物というわけではないが、ここまでこられた方は是非こちらをご賞味頂きたい。

マイナスイオンほとばしるダタンラ滝で癒される

トゥイェンラム湖の畔から山間の細道をバイクで進むこと10分弱、ようやくダタンラ滝へとたどり着いた。こちらの滝は高原都市ダラットが誇る一大天然記念物で、プレン滝と並んでダタンラ二大名瀑の一つ。大自然を鑑賞できるだけでなく、滝の周辺ではラフティングやロッククライミングなどのアウトドアアクティビティまで楽しめるらしい。

さて、ここだと言ってバイタクのオヤジに降ろされた先で約束通りVND 20,000を手渡すと、ニヤリと黄色い歯を見せ握手を求めてくるオヤジ。しかしまぁオヤジと分かれたものの、滝の姿はどこにも見当たらないし、瀑音も聞こえない…
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どうやらここから滝へ行くには電動ソリ(!?)とも一人ジェットコースターとも言える奇妙な乗り物で山を下っていかねばならぬらしい。

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こちらが噂のレール上を滑走する電動ソリ。大人往復VND 50,000 (≒250円)、片道VND 35,000。片道?そう、ソリが嫌な方は歩いて山下りすることもできるよう、トレッキングコースが整備されているようだ。

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歩いた場合は滝まで15分程かかるらしい。既に疲労レベルがMax付近まで来ていたので、ソリを選択。ジェットコースター気分が味わえそうですしね。

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おんぼろだけど大丈夫かな~と思っていた矢先、案の定、私が乗るはずだったソリが故障したとの事で格納庫へと引き上げられていった。「よくあることなので、心配しないで下さい。」と係員がサラッと笑顔で言い放つ。いや、故障がよくあるほうが心配になるわ!!不安に苛まれる。

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座席に乗り込むと、係員にシートベルトをめちゃくちゃきつく締められる。「両脇のレバーを前に倒すと加速、後ろに引くとブレー「」という簡素な説明を受け出発。力加減が分からいないのでのんびり走っていたら後続車からケツを掘られ、レール脇で見張ってる係員に何やらベトナム語でどやされる。『もっと速く走れよ根性なしめ』と言っているようだ(適当)。

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うおおおぉぉぉぉぉ!!!悔しかったのでバーを思いっきり前に倒してやったら結構なスピードが出るし、傾斜もカーブの角度も急な箇所では遠心力でふっとびそうになる。

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うぉ~。雑木林の中を走りぬける快感!!!気分はすっかり未開のジャングル地帯を切り開くインディアナジョーンズ!!

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5分程のおんぼろソリによるスリルを楽しみ、終着地点を少し進んだところにようやく滝が見えてくる。この『大自然を行く』って感じに冒険心が刺激されます。

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ここまで来ると風に乗って気持ちの良い水しぶきが吹きつけてくる。

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雄大な自然が織りなす小川と滝。美しい滝と滝の音に呑まれると時間の感覚が次第に無くなり、体も頭もスッキリするし、ほとばしるマイナスイオンと水しぶきに心が洗われる。こんな山奥まで来たかいがあるってもんだ。

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ゴォーッという音と共に流れ落ちる水の豪快さ。雨季には更に迫力が増すらしい。ナイアガラやビクトリア、イグアスなどの世界三大瀑布と比すと酷であるが、まぁ世界10000名滝には入るんじゃないか(テキトー)

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バオタイ帝の離宮と同じくダタンラの滝つぼ近くにも西遊記の孫悟空がいらっしゃる。不安定な岩場で華麗なストリートダンスやジャグリングなども披露しているのだが、孫悟空はそんなキャラだったか?

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どうやらロープウェーに乗って滝から続く川下へも行くことができるらしい。

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ロープウェーを下りた先は緑の匂いが心地よく鼻孔をくすぐる桃源郷!色とりどりに咲き誇る花々に大自然の緑、そして奥から聞こえる滝の瀑音…

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おお!また滝だ!これがダラット二大滝のプレン滝かと思ったら、どうやら違うらしい。それでも喧騒から離れられて、長閑な大自然の中で心地よい野鳥のさえずり、小川のせせらぎが耳に入ってきて、疲れも忘れてしまいます。

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帰りのソリは直角かよ!という急勾配を一直線に上がっていく。頭が下になるので、重力でポケットの中身が落ちていくので要注意だ。結構危ないと思うが、シートベルトはつけないで下さいとのこと。ベトナムならではの謎の安全管理基準である。

ケーブルカーに乗って自然溢れる竹林禅寺とダタンラ滝へ

ダラットの街から南に4Km程進んだ先にある丘のケーブルカー乗り場は、更に2.3Km南下した先の小山に建つベトナム最大の禅寺・竹林禅院とを結んでいる。街の更に南の雄大な大自然の中にあるダタンラ滝やプレン滝へと向かうにも、このケーブルカーが足となる。


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バイタクオヤジとの別れを惜しみつつケーブルカー乗り場へと向かう。丘の頂上に建つケーブルカー乗り場へと続く階段の先には五穀豊穣の祈りを捧げる女性の彫刻芸術が見られる。日本同様に稲作農耕文化を発達させてきたベトナム、田舎の水田風景は日本のそれを彷彿とさせるし、こういった芸術にも日本文化との類似性を感じることができる。

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ケーブルカー乗り場の高台から眺めるランビエン山とダラット市街の街並み。色鮮やかに咲き誇る花々に澄んだ空気、青々とした山々、小鳥の鳴き声…中国・東南アジアの喧噪を離れる為の現実逃避の旅にはもってこい。癒されます。

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ケーブルカーはオーストリア製。周りを見渡すと何故か100%ロシア人。男は皆揃って唇が厚く赤ら顔、ガタイが良く皆でゴルバチョフゴルバチョフ言っている。

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ケーブルカーでは眼下に広がるダラットの街並みや高原野菜の畑、美しい松林・山々など高原都市ならではの絶景を約20分かけて楽しむことができる。しかし、生憎小生は一人旅、屈強なロシア人男3人組みとまさかの相席となってしまう。愛想も糞もなく、豪快に大声で談笑するロシア人と密室に閉じ込められるというのは非常に息苦しい体験だった。

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ロープウェーを降り立った矢先では、ピッカピカに剃髪をした僧侶が列を成してお出迎えしてくれている。

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いや、私を待っているわけではなく、どうやらお偉いさんが車に乗ってやってきたらしい。Zenマスターだろうか。この日の為に皆さま昨晩に髪の毛を剃り直したのだろう。見事に剃りあげられたテッカテカの頭で、車の中の人物にやたらと媚を売ってゴマをすっていた。ヘコヘコと頭を下げるサラリーマンのような僧侶の姿は正直見たくはなかったぞ。

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テュックラム禅院。漢字表記だと竹林禅院。海抜1,300mの高地に位置する敷地面積6,000㎡の超巨大禅寺だ。日本でも一般の参禅者が増えているというが、先に見たヴァンハン寺も禅宗の寺院だったし、ベトナムってZENが流行っているのだろうか。そういやホーチミン氏にもZENモールなるショッピングセンターがあるしなぁ。

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黄色い袈裟を纏った機械のように無表情の僧侶が敷地内を行き交う。各50人もの比丘・比丘尼が住み込んでいるそうだ。

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おっ、境内にはグラニットボールも発見。数トンはあろうであろう巨大な石が綺麗に磨かれ、下から吹き出る水の水圧でクルクルと回転している。一点を芯に永遠と静かに回り続ける石が何となく寡黙に座禅を組み瞑想する僧のイメージと被らなくもないが、この巨大な石は仏教的に何か特別な意味があるのだろうか。知っている人がいらっしゃったらご教示頂きたい。

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竹林禅寺の名の通り、緩やかなスロープは竹林へと伸びている。

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背後には山々が聳え、前方には一面に広がる緑地帯と湖畔。風水的には最高な立地条件になるんだろう。冷ややかで澄んだダラットの空気に新緑の新鮮さの中で何ものにも縛られず、拘らず、自然と一体となってあるがままに生きていく生き様も悪くは無いと思えてくるから不思議である。一人、ダラットの高原で瞑想に耽る。たまにはこういったのんびりとした旅も悪くない。

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竹林の奥に見え隠れする湖。訳も無く湖を目指して下山することにした。

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ふぉーー。大自然!!!(といっても実はこれ、人工湖らしい)

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余りに美しい湖の姿に引きつられてピクニック気分で竹林寺のある鳳凰山を下山してきてしまったが、次なる目的地・ダタンラ滝へと向かうタクシーはおろかバイクすら走っていない。携帯電話で地図を見ると、ダタンラ滝へは山間の小路を3Km程進むことになるようだ。歩くにはちょい遠い…

30分程湖畔でぼーっとしただろうか。ダタンラ滝は諦めて竹林寺院に戻ろうかと思った矢先、ついにバイクで走り来るオヤジの姿を発見!バイタクかは分からぬが、車道に出てオヤジをストップ。気分はすっかりヒッチハイカーだ。試しにダタンラ!と言ってみると、『分かったよ』といった笑顔を見せて指を二本立てる薄汚い恰好のオヤジ。まさか20万ドンじゃないだろうしなぁ…それともただのピースサインだったり??彼の反応を見るべく2万ドン札を取り出してみると、嬉しそうに頷くオヤジ。ということで命拾い。20000ドンでダタンラ滝へと連れて行ってもらえることになりました。

バオダイ宮殿で古き良きインドシナに思いを馳せる

タイトルにあるバオダイとは、ベトナム最後の皇帝としてベトナム史に名を馳せる歴史的有名人だ。バオダイを漢字で表記すると保大(やすひろ!?)となり、何だか一気に妙な親近感が湧いてくる

ここで、保大さんの波乱万丈なキャリアを振り返ってみよう。時は1913年、当時のベトナムの王朝である阮朝の皇子のボンボン息子として生まれ、幼少期~青年期を宗主国のフランスで過ごすも、戦時の動乱期に反仏クーデターを発動し、フランスから独立宣言をしてベトナム帝国を樹立。日本の敗戦後には8月革命の末に退位へと追い込まれるも、今度はホー・チ・ミンによりベトナム民主共和国政府の最高顧問に任命されたことで、政治の表舞台に返り咲き。その後は香港に亡命してみたり、フランスの傀儡国家ベトナム国の元首になったり、国民投票に敗れてフランスへ亡命したりと、グローバルな舞台で波乱万丈な人生を歩まれた保大さん。ダラットの町の南西2kmの松林の中にには、そんなラストエンペラー・保大さんが毎年夏に住まわったとされる離宮が残されている。

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バオダイ宮殿はダラット市内を見下ろす小高い丘の上に建っている。

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流石はフランス育ちのボンボンおフランス。いかにも西洋育ちのお坊ちゃまの離宮といった感じのシャレオツな佇まいのこちらが、5年の月日をかけて完成されたバオダイさんご自慢の別荘である。離宮なのに1000㎡の建築面積で、26の部屋があるという超大豪邸である。

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前庭には可愛らしく装飾されたベスパや白馬などが訪問客を乗せて走り、いかにも観光地という雰囲気だ。

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記念撮影用の孫悟空と猪八戒も待機してるけれど、暑いからだろう、モロに顔出して携帯弄って遊んでるwww子供にお金(VND1,000≒4円)を渡されてからマスクを被ってダンスを演じる孫悟空。「俺だってこの糞暑い中、安い給料でやってるんだよ。」くらいの考えが態度にありありと出てしまっているが、ここらへんのユルさがなんともベトナムクオリティ。子供側も孫悟空による演劇というよりは、孫悟空の恰好をしたお兄さんによる芝居だと割り切っている感がある。

満を持して別荘の内部に入ろうとすると、靴の上からビニールカバーを履くよう厳命される。土足厳禁。そう、ここはベトナムが誇るラストエンペラー・バオダイ様の御殿なのである。床に汚れ一つ残すことさえ許されないのだ。よって、内部は観光客が一様に青いビニールの靴カバーを履いて参観するという滑稽なことになっている。ベトナム流の臣下の礼かしらんが、まぁ甘んじて受け入れよう。

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おっと、こちらがバオダイさん。きっちりネクタイまで締めちゃって、お坊ちゃま臭がプンプン香ります。でもワイルドな一面もあるらしく、彼が狩猟したとされる像の象牙や虎の皮がさりげなく展示されてたりします。

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バオダイさんの彫刻。いかにも目からビーム光線を発しそうな不気味さで応接間を見据えています。

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こちらは変身写真コーナー。煌びやかな皇族衣裳を身に纏い、王座に座って記念写真を撮ることができます。なんだかセットが安っぽい気がするので、観光地化した際に後付けで作られたのではないだろうかと勘繰ってしまう。

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二階には寝室が配置されている。

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皇太子・バオロン(保隆)様の御寝室。シックで落ち着きのある部屋である。

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バオダイの奥さんナム・フォン皇后のプライベートルーム。彼女は有名な地主、しかも当時のベトナムで5本の指に数えられるほどの大富豪のご令嬢様だったそうだ。

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大変お美しい。それもそのはず、ベトナムのMiss Beauty賞を何年にも渡って防衛していたそうだ。美男美女で中々お似合いのこのご夫妻、3人の王女と2人の王子をもうけられたそうだ。どうりで寝室が多いわけです。

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バオダイさんのプライベートルーム横のバルコニーにある望月楼。語りモードに入ったバオダイさんが涼んだり、シャンペンを片手に月を眺めたりしたそうだ。ロマンチック保大。やることなすこと一々お坊ちゃまな人なんだなぁ。

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外には広大な敷地に広がる美しく手入れされたフラワーガーデンも眺めることができる。高原都市ダラットの気持ちいいそよ風に吹かれながらバオダイ帝在りし頃の古き良きインドシナに思いを馳せるのも良し、自然光を浴びてテラスで読書も良し、お馬にまたがり宮殿の周りのガーデンを駆けるのも良し。中々に趣のある場所である。

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出口付近にあるお土産屋。売り物はホーチミングッズ仏具など。そこはバオダイさん縁のお品を売ったらんかい!!!

続いてはケーブルカーに乗ってダラット南部を目指します。