ハムロンの丘ではなくハムロンの山だろう!!!!

カットカット村でのトレッキングを終え、ハノイ行き寝台バスの発車時間までは時間的に余裕があったので、サパの町を一望できる展望台が設置されているハムロンの丘へと向かう。カットカットのトレッキングが意外にしょぼかったので、体力的にもハイキングの為の余力が残っている。


開放時間:06:00-18:00(夏季は~18:30まで)
入園料:VND40,000(≒160円)


ハムロンの丘への入り口では各少数民族により作られた民芸品を買い求めることができるが、昨日今日とモン族・ザオ族の女性陣による営業攻撃に屈して多くの土産物を購入している為、ここはスルー。

ひだり みぎ
入園してみていきなりビックリ。誰だよ『丘』って言ったのは。これは『丘』ではなく『山』かと思いますが!!入園してから予想以上の急勾配が続き、残りライフがどんどんと減っていきます。

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くそでかい靴を履いたビッグフットなミッキーに、お乳の弾力性が見事に表現された猪八戒がお出迎えしてくるも、全然嬉しくない。


見通しの良い地点まで到達して前方を見上げると、ハムロンの丘の全容が明らかに。そして、心が折れた

!!!????????Oh…なにこれ??丘と山の定義はあいまいかと思うけど、丘って言ったらもっと低くて傾斜が緩やかな高台を指すのではないのかな?ベトナム人よ、これは丘ではなくて、割と険し目の山なんじゃないかな?この角度と高さに対して丘という単語を用いるのはミスリーディングだよ。今すぐハムロンの山に改名すべき。

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ハムロンの山の中腹は自然公園になっていて、色とりどりの花々が美しく咲き誇っている。これだけ綺麗に整備された公園があるということは、更に進んでいけばきっと素敵な光景が見れるはず!ここは折れた心を繋ぎ合わせて頂上を目指すことに。


ニョキニョキと突き出た石灰石。この形が龍の顎に見えることからハムロン(ベトナム語で龍の顎の意味)と名付けられたそうだが、どこがどう龍の顎なんだかさっぱり分からない。というか龍の顎と言われてもどんな形をしているのか余りイメージできないし。マジマジとみても、男○器にしか見えてこないのだが…

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奇岩の間の狭いスペースを通って更に上を目指す。サパは、一日の中の寒暖の差が激しく、朝は春、昼は夏、夕方は秋、夜は冬と、1日の天気に四季が表れるとも言われている。今は正に夏の真夏であり、猛烈に暑い。高原避暑地と呼ばれているだけあって朝晩は確かに過ごしやすくなるが、日中はハノイと変わらない暑さであり、この中で登山をしていると、着ているTシャツの汗を絞れるくらいになってしまう。いけない。このままでは脱水症状を起こしてしまうので、休憩所に避難して水分補給をすることに。

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山の中腹にあるこちらの休憩所では、伝統舞踊ショーが定期開催されているらしいが、残念ながら本日は既に開催を終了してしまっていた。
【時刻表】
4月16日~10月15日(月~木):08:30-09:15・09:45-10:30・14:30-15:15・15:45-16:30
4月16日~10月15日(金~日):08:30-09:00・09:30-10:00・10:30-11:00・14:30-15:00・15:30-16:00・16:30-17:00
10月16日~4月15日(月~木):09:00-09:45・10:15-11:00・14:30-15:15・15:45-16:30
10月16日~4月15日(金~日):08:30-09:00・09:30-10:00・10:30-11:00・14:30-15:00・15:30-16:00・16:30-17:00


オレンジジュース350mlを2缶買って、見晴らしの良いベンチで一休み。遠くファン・シー・パン山脈や山の裾野に広がる棚田と村々を望みながら体力回復を図る。オレンジジュース2缶は30秒で飲み干し、飲んだ直後に700mlの汗が湧いて出た。堪らん暑さで服もパンツも髪ももうベショベショという異常事態。

10分後、もう1本のオレンジジュースを注入したところで体内バッテリーの充電が完了。奇岩の間を通って上へ上へと進む。看板が少ないので迷いに迷ったが、20分後、頂上の展望台が見えてきた。
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い、意外としょぼい…こんなに苦労してきたのに…

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うひゃー。展望台はしょぼいが、景色は本物だ。この絶景を見るだけで生き返る。感無量だ。やはり相当な高所にあるらしく風も強く吹いているので、ちょっと怖いがヒンヤリとして気持ちが良い。


絵のように美しく、詩のようにロマンチックな高原都市。ベトナム南部の高原都市・ダラットも同じくフランス人に開拓された保養地としてサパと似た雰囲気が感じられたが、ここサパは更に秘境度、神秘度が高くて魅力的だ。

ベトナム北端の山あいにひっそりと佇む山岳秘境リゾート・サパ。美しく緑溢れる山々、山の裾野に無限に広がる棚田や滝などの大自然、そして、その中で伝統を守りながらひっそりと暮らす山岳少数民族たち。彼らの村々は質素ながら幻想的で美しい自然に囲まれていて、まるで異次元の世界のように感じられた。今回は一泊二日しか時間がとれなかったが、次回は纏った時間を捻出して、少数民族の村にホームステイをさせてもらいたい。

30分くらい展望台で目の保養をし、そろそろハノイ行きバスの出発時間が迫ってきたので下山を開始。

今回は、サパ教会前の広場から18:30発に出発するハノイ行きの寝台バスのチケットをGeckoレストランのお姉さんにVND350,000(≒1,400円)で買ってもらいました。このバスに乗れば、途中、ラオカイを経由し、翌朝05:00前後にハノイに到着するので、次の日もハノイで丸1日使うことができます。

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こんな感じの車内。何故だか青と赤の派手なランプがついたり消えたりしてあまり寝ることはできなかったが、時間は予定通り到着しました。ハノイの中心部からは離れたミーディン・バスターミナル行きでしたが、途中、市内中心部の旧市街でも下りることができたので助かった。


こちらは本日購入した赤ザオ族と黒モン族の首掛けバッグ。誰が作ったか分からない物を買うよりは、誰が作って誰から買ったか分かる工芸品なので、自分の中では貴重なお宝だ。サパはここ数年の旅行で一番のヒットだった。今度は秋口に来て黄金に輝く山々を見てみたいものです。

カットカット村のしたたかなセールスレディー達

サパ市場で新鮮果物をかっ食らった後は本日18:30発ハノイ行きのバスチケットを購入。旅行代理店のマージン込みで運賃はVND350,000(≒1,400円)。ラオカイを経由し、翌朝05:00前後にハノイに到着する。サパからは10時間超の長旅だが、体力の温存などしてられない。ホテルに戻りチェックインを済ませた後は休む間もなくカットカット村のトレッキングコースへと向かう。カットカットはサパ市内の最寄村で、滝や丘など自然の起伏に富んだトレッキングコースがある為、観光客に一番人気の村だそうだ。

サパ市内から南西に約3Km。サパ市場の横から延びる1本道を歩いて30分超、入村料VND50,000(≒200円)を徴収される関所へと到着する。


他の少数民族村に比べて遥かに観光地化している印象で、村への入り口には組織的な土産物屋がズラリと並んでいて、歩いていると少数民族ルックな商人から流暢な英語で商談を持ち掛けられる。


こちらは入村料と引き換えに頂いたカットカット村トレッキングマップ。現在位置が3aのチェッキングポイントになる。チェッキングポイントから丘を300m下った先にカットカット村があり、そこから短距離コースと長距離コースに枝分かれするようだ。距離をみると入り口から出口までの総距離は短距離で900m、長距離でも1,520m程度なので、長距離コースをとることに。所要時間の目安は短距離で30分から1時間弱、長距離で1時間半程度と、そうかからない。サクサクっとしたお手頃ハイキングと言った感じである。


村へと向かう坂道も土産物屋がびっしり。このように、村への道はずっと下り坂、そして村に入っても石段の下り坂が続いている。田圃の畦道をトレッキングするイメージで考えていたが、道は舗装道路や石段になっているので、多少の下り登りのアップダウンはあるもののトレッキング難易度は高くない。道順も分かりやすいので、ガイドさんも不要だろう。


カットカット村はモン族の居住地と聞いていたが、モン族グッズ以外にも少数民族風のアクセサリーやストールなどが多く取り揃えられているようだ。


どうやら外国人としては私が本日一番のりだったよう。朝一の観光客の匂いを嗅ぎつけたのか、物売りの黒モン少女たちがわんさかとやってきて、あっと言う間に幼いセールスレーディー達の餌食となってしまう。彼女たちは『buy for me』を連呼し、チームプレーでもって私の周りを完全に囲み、私の機動力はあっという間に削がれてしまった。周りを完全に密着包囲された身動きもとれない窮地に追い込まれ、私はただただ立ち尽くすのみ。いきなりの試練到来だ。


このような状況に追い込まれ、身動きもできない状況にいると、輪をかけて更に大量のモン族が援軍としてやってくる。なんてこった!!!どうなっているんだ!!こちらが何を言ってもBuy from meという返事しか返ってこないというやりきれない状況。ここで助け船!私の次に入村してきた白人観光客に助けを求めると、あっさり無視すりゃいいんだよと言って強引にスルーしていった。あぁあのふてぶてしさが私も欲しい。

くそっ!続けて横を通った白人老夫妻がチラッとこっちを見る。すると、今までこっちをマークしていた少女の約半分がそちらの老夫婦へと移ったではないか!マークが薄れた一瞬の間隙をついて私も前進を試みるも、手薄となったディフェンダーがきっちりと進行方向をブロックしているではないか。これでは引き返すか、前方のディフェンスのブロックの間を縫って突っ切るしかないか…いや、もう面倒臭い。別にぼったくり価格ではなかったので、根負けして、VND10,000(≒40円)の魔除けのようなキーホルダーを6個購入し、解放される道を選択。この可愛らしいセールスレディー達、私がお金を払った途端に一目散に走って離れていってしまうというのはちょっとひどいのではないだろうか。ちょっと傷心。


こんな顔をされたらなかなか断れません。

ひだり みぎ

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入り口の試練を乗り切ったさきには山の斜面びっしりに広がる棚田や緑いっぱいの山々といった原風景が。どことなく東北地方の農村地帯といった風情満点の風景で郷愁をさそいます。


牧歌的な農地の間を抜けていくと、早くもカットカット村のメインストリートに到達する。藍染めに使う樽や蘭染め衣裳が軒先に出ていたり、道端でおばあちゃんが刺繍に勤しんでいたりとモン族の生活感が感じられるが、働き盛りの若者は背中に竹や木で作られたバックパックを背負ってサパの町まで行商に行ってしまったようで、余り活気はないようだ。


緑が美しい景色が広がる中、子どもたちが走り回って遊んでいる声と家畜の鳴き声ばかり。平和そのもの。

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民家が個人商店を兼ねているようで、軒先には飲み物や民芸品が並んでいます。モン族の家庭料理レストランなんてあったら嬉しいのに、主に土産屋ばかりである。


こちらにも若い行商人。年が10にもならぬ内から自分の背丈の半分くらいある竹籠を背負って裸足で行商をしている。

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滝を過ぎ、こちらの吊り橋を渡ったところでカットカット村のトレッキングコースは終了。トレッキングと言うよりはハイキングといった感じで、さっくりと農村散策を楽しむことができました。でもさっくりしすぎててトレッキングと言うには物足りない…

この先にはバイタク運転手がうじゃうじゃと屯をしておりますので、疲れてもう歩きたくなくなっても帰りの足には困りません。


こちらはカットカット村から川を越え丘を越え、ガイドを兼ねて最後まで付き添ってくれたカットカット村のマイさん。いや、正確に言うと勝手についてきてしまったの だが、他にくっついてきた黒モン族は一人二人と途中で離脱する中で、彼女だけは薄っぺらいサンダルで最後まで付き合ってくれて、ちょっと嬉しい。幼女の物 売り攻撃が執拗な事を除けば、モン族の人柄はとても人懐っこく、無邪気で素朴な笑顔に癒される。一定年齢以上に達したモン族はモン族としての自我意識が芽生え、決して裕福な暮らしぶりではなさそうですが、現代的な生活を望んでいるわけでもなさそうで、一族の伝統と共に生きる幸せを感じているようです。この大自然とマイさんの笑顔をみていると、村の入り口での営業攻撃など忘れ、ほっこり和んでしまいます。

ベトナムが誇る珍酒(サソリにコブラにタツノオトシゴに…)

本日は09:00からカットカット村のトレッキング、13:00からハムロンの丘登山、そして18:30ハノイ発のバスにて戻りという計画だ。日中は暑いサパも朝晩は過ごし易く、パンツ一丁で寝ていたら07:00に寒さで目覚める。本当にここはベトナムか!!

さて、眠気覚ましの熱いシャワーを浴び、市場へと朝飯をがっつきに出かけると、こんなものを発見。

世界の珍酒の中でも特段に異色なサソリ+コブラ酒。サソリ酒もコブラ酒もみたことはある人は多いかもしれませんが、違います。こちら、サソリ+コブラです。なんとまあ、便の中でコブラがサソリの尾をくわえているではありませんか…なんだかやばそうな茸類も混ざっている…鑑賞用でなくて飲酒用??というか、サソリもコブラも明らかに瓶の口より大きいんだが、どうやって収納したの?彼ら、中で育ったの?何でこんな絶妙なポーズで止まってるの?などなど突っ込みどころが多すぎますが!!他にも高句麗人参的な物だったり危なそうな山菜や蛇、そしてタツノオトシゴが入ったお酒、そして、ド直球ではあるが、何かの動物の性器っぽい物まで…小さな個人商店のくせしてとにかく怪しく不気味なお酒のオンパレード。それも、普通に飲料水や食用油や味噌っぽい一般商品の中にシレっとこれらの珍酒が混ぜて置かれているから驚きを通り越して笑ってしまう。サパの少数民族の人達、どんだけなんですか!!

どうやらベトナムには滋養強壮に効きそうな様々な爬虫類や昆虫やその他ヤバそうな物をどっぷりと漬け込んだ珍酒が沢山あるようだ。サソリなどは漢方医学では『毒を持って毒を制す』的な考えで、茹でたサソリや煎って粉末にしたものを服用すると、破傷風、ひきつけ、筋肉痛に対して効果があるとされるので、もしかしたら本当に滋養強壮にも良いのかもしれないが、これは不気味過ぎるし、そもそも朝一で飲むようなものではない。『TAC HE Seahorse』とのラベルがあるやつなんて、物凄いボリュームのタツノオトシゴが詰め込まれているが、タツノオトシゴってワシントン条約で絶滅危惧種に指定されてるから持って帰れねーだろう。そう思いスルーしてしまったが、後でもっと疑問点を店主に追求してお土産に何本か買ってくるべきだと激しく後悔した。

サパに行かれる方、こちらのお店に立ち寄ってみては如何だろう。ハムロン通りからサパ市場へ向かう坂を下りてる途中にあったと思います。

ラオチャイ村、タヴァン村の美しき棚田群

バック滝の見学を終え、サパ市内を経由してラオチャイ村・タヴァン村へと向かう。バック滝での軽い登山で大量に汗をかいたので、水分補給の為に途中でバーストリートにてビールの補給を行うことに。

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高原避暑地とも言われるサパであるが、日中は想像以上にめちゃくちゃ暑い。『気温の年間平均が16~18度と非常に涼しく、冬は氷点下になることもあります。』なんて書いてたガイドブックもあるし、標高が標高だけに(1,600m)寒いかと思って秋用ジャケットも用意してきたが、日中は半袖一枚でも十分すぎて、バーストリートでは真っ昼間っから上半身裸で泥酔してる白人観光客の姿も見ることができる。

地理的には亜熱帯性気候に属すことから、12~2月=寒い、3~5月=過ごしやすい、6月~8月=暑い、9月~11月=過ごしやすい、といったざっくりとした四季はあるようだ。タフィン村の赤ザオ族のお姉さんは10月の米の収穫期が観光のベストシーズンと言っていたが、春に田植えをし、精魂を込めて育てた稲が収穫を迎える時期にこの地へ赴くと、黄金色に輝く稲穂の中で赤や黒の民族衣装に身を包んだ人々が農作業をする美しい光景に出会うことができるのだろう。でも春は春で色鮮やかな民族衣装を身に纏った女性男性が田植えをし、夏には稲が青々と実り、冬は冬で満面と湛えられた水が照り輝く様子が楽しめるので、結局は四季折々で、春夏秋冬いずれの季節に訪問してもそれぞれの良さを楽しめる万能な観光地なのだと思う。

さて、ビールで水分補給したところで、いざ出発。

遠くから眺めるサパ市街。ここから峡谷を下り、ラオチャイ村・タヴァン村を目指します。


サパを一歩出たところから美しい山々と棚田が織りなす牧歌的な風景が果てしなく続いていく。ここら一帯は中国西南部、ラオス、タイ、ミャンマーなどの山岳地帯に暮らすモン族が多く居住する地域だそうだ。彼らは元々は中国の雲南省の山々で焼畑農業による生活を営んでいたが、300年前より漢民族の支配を嫌って南下し、不便故に安全な山谷に分派して村々を築きあげてきたとされる。バックハーにいた花モン族もモン族の一派で、他にも衣装、方言、風俗習慣から大きく白モン族、黒モン族、青モン族に細分化されるようだ。定住の地を持たず、故郷を他民族に追われ、豊穣の地・安住の地を求めて山地を移り住んで来た流浪の民・モン族。昨今、激化する新疆でのウイグル人に対する激しい弾圧を見ていると、スパッと中国を見切ったモン族の決断は正しかったように思える。

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山や谷を切り開き、山裾から谷間にまでびっしりと開墾された様々な形状の棚田群は、モン族の先人たちの知恵と苦労の結晶と言えるだろう。午前中に訪問した赤ザオ族のマーチャ村・タフィン村による棚田よりも規模は大きく、圧巻の景色が周囲一帯に広がっている。


写真を撮っていると可愛い女の子に声をかけられた。ミサンガを買ってあげると嬉しそうにお姉さん(多分、子供営業員たちの元締め)の元に帰っていった。彼女たち、幸せになれるといいな。

ひだり みぎ

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まるで美しい織物のような、寄木細工のような、大地の彫刻品とも言うべき人工の芸術作品。この美しいサパの棚田は、バリのライステラスや中国の龍勝棚田、紅河ハニ棚田などと並んで世界で最も美しい棚田11選に選出されたそうだ。ここまでくると人工物とは信じ難く、地球外生命体により作られたミステリーサークルではないかとも疑ってしまう。


青い空と白い雲の下、扇状に開けた山間に川が流れ町があり、周囲の斜面には幾枚もの棚田が広がっている。自然災害などと戦いながら、何代ものモン族により築きあげられた圧巻の超大作。その圧倒的なスケールと絵画のような自然美を前に暫し茫然。何故だかふつふつと湧きあがる大自然への畏れ、敬い、感謝する心。時間を忘れて無言でただただ見入っていたのだが、背後から『早く出発するぞ』との運転手の声に現実に引き戻される。ここは絶対にまた再訪しなければならないし、その時はもっと時間を取って心行くまで滞在したい。


引き続き峡谷を下り、ようやく遠目に村落が見えてきた。


川ではワンパクな子供たちが水遊びをしています。

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開墾と維持に手のかかる棚田が織りなす牧歌的な自然美は山岳地帯の人々の知恵の産物。平地の限られる山間地部でも、山の斜面に階段状に田んぼをつくることで耕作面積を増やすことができるし、大雨の時に雨水を貯留したり、急な斜面の崩壊を防ぐことができる。『魚は水に泳ぎ、鳥は空を飛び、我らは山に生きる。』というモン族の諺があるそうだが、土地がやせる度に山を移動し、新たな安住の地を開拓する山岳民族の知恵と苦労の集合体が目の前に広がっていると思うと鳥肌が立つ。


こちらは村の学校だそうだ。日曜日で村人総出でサパへと出稼ぎに行っているのだろうか、水遊びをしていた子供たち以外は村人に遭遇しない。もぬけの殻だ。


皆、出払ってしまってるのかなー。鳥・虫の鳴き声に風の音、風のせせらぎしか聞こえません。峡谷の中の比較的平坦な場所にあるようで、ラオチャイ村とタヴァン村は体力に自信のない人にもお勧めのトレッキングコースとなっているらしい。


おっ、モン族と言えばこれこれ。路肩には藍染めを終えた衣裳が天干しされています。数あるベトナム少数民族の衣裳の中でも黒モン族の衣裳が断然にセンスが良い。田植え名人であると同時に染物職人でもあるんですね。物によっては藍染めの上からロウを塗り重ね、光沢も出すそうだ。今や既製の服飾も簡単に入手できるだろうが、それでも自分達の衣装を愛し、ひっそりと伝統を守り続けている彼らの姿を見ることができて大変感動(小並感)


ラオチャイ村からは細い一本道が続く。暫く走っていると、これでサパに切り上げるとジンさんが言いだすではないか。え!?もう一つのラオチャイ村は?と伺うと、何ともう通り過ぎたとのことだ。それぞれが非常に小さい規模の散居集落である為に、村の境界も分からぬ内にタヴァン村を通過してしまったらしい…いやいや、知ってたなら教えてくれよ…こうして、ラオチャイ村・タヴァン村巡りは気づかぬ内に幕引きとなってしまいました。

帰り際、まだ天空は明るいのにサパの町がすっかり暗闇に包まれている不思議な現象を目撃。これも山岳地方ならではの現象なのでしょうか。山々に囲まれたサパの町は本当に神秘的だ。
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バック滝で体験できるエクストリーム・スポーツ(!?)

午前中に赤ザオ族の村の訪問を終え、午後は絶壁を流れ落ちるバック滝の観瀑台へと登⇒モン族・ザオ族の住むラオチャイ村・タヴァン村巡りという旅程を組んでみた。時間に余裕があれば少数民族の村々を結ぶ渓谷を自らの足でトレッキングしたり、少数民族のお家へのホームステイにも参加したいのだが、明日の午後にはハノイ行きのバスに乗らねばならぬ強行日程で来ている身、しょうがなく午前と同じバイタクのジンさんにVND250,000(≒600円)に午後も頼むことに。白人観光客は自分でスクーターを借り切って無免許+2人乗りの暴挙に出て大いにはしゃいだりしているが、限られた時間内に効率良く村々を回りたいので、ここは無難に土地勘のあるジンさんにお願いするのが一番だという判断が働いた。

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サパ周辺に位置する村々とトレッキングロードの地図。

まずはサパの西北12Km、海抜1,700mの山間を流れ落ちる壮大なバック滝へと向かう。ゆうに高さ100mはあろうかという断崖絶壁を勢いよく流れ落ちていて、画像にも捉えられている通り、遠目からでもその雄姿を確認することができる。
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サパの町から滝までの一本道は予想に反して綺麗に舗装されており,バイクの乗り心地は悪くない。途中、モン族が道脇で果物の露店市を出していたので寄りたかったのだが、運転手のジンさんは買って買ってアピールをするモン族の横を華麗にスルー。午前とは違い、絶景ポイントに差し掛かっても「虫が多い」とか「日差しが強くて肌に悪い」など何かと理由をつけて軒並みスルー。何だよ肌に悪いって。拘束時間に関係なくVND250,000という支払条件なので、とっとと目的地まで運んで早く仕事を切り上げたいという気持ちも分からぬでもないが、こんなにも早く馬脚を顕すとは!!しまいには一回止まることに追加費用を請求してきそうな勢いだ。

バック滝までの道のりには見所が多いんだがなぁ。やっぱりバイクをレンタルして自分で好きなように行動すべきだったかと後悔の念に苛まれる。しょうがないので走行中にパシャパシャと写真を連写する。

ひだり みぎ

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周辺に連なる緑豊かな山々の裾野に広がる峡谷はどこまでも深く,何重にも重なり合う稜線の上には夏雲が湧いていてとても神秘的。自然が作り出す雄大さと華麗な造形美を味わえる極上の場所である。

20分くらい走っただろうか、滝の麓に到着した。滝の左右に設置された階段を登って滝の上部にある観瀑台まで進むには入場料料5000ドン(≒20円)が必要だ。近くで見る水の清涼感が心地よいだろうし、高所から眺める風景もきっと素晴らしいに違いない。ここは疲れを圧していっちょ上まで登ることに。

バイクを離れ、滝の上部へと向かう私に向かってジンさん、『no more than 30 minutes! (30分以内にしろよ!)』とかほざきだす。客の安全を願うのではなく自分の時間しか気にしない畜生め!
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少し上ると滝の全貌が見えてくるのだが、乾季だからだろうか、近くで見ると水量・迫力という点では意外としょぼい。遠目からみたら一気に水が垂直落下しているように見受けられたが、岸壁の上から流れが下ってきて、中腹にゴロゴロしている黒い岩岩の塊に打ったところで幾筋にも分かれている為、下から見る分には爆音も水しぶきもなく、予想していた豪快な姿とは程遠いといった印象だ。

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結構な角度の階段を5分程登っただろうか、観瀑台というか、展望台のような踊り場へと到達した。ここもモン族が営業権を押さえているようで、民族衣装を纏った少女たちがせっせと商売に勤しんでいた。一通り彼女たちの商品を眺めた後、遠方の山々を見渡そうと滝の反対側に目をやると、なんとまあ!!命知らずな少女が崖の際に建てられた柵の上にバランス良く座っているではないか。すぐ後ろは断崖絶壁であり、彼女の体重が乗る事で柵もろとも地滑りを起こして崩壊する可能性がないわけでもないだろうに、そのスリルを楽しんでいるのか、彼女はニヤニヤとずっと薄気味悪い笑みを浮かべている。服装からするとモン族ではないだろうし、観光客でもなければ自殺志願者というわけでもなさそうだ。スカイダイビングやバンジージャンプで感じる恐怖や恐怖に快楽を求めるようなお方なのか?

私の視線に気づいたのか、更に崖側に体重をかけて危険なパフォーマンスをとる彼女。君は何がしたいのかい?英語で率直に思うところを尋ねてみると、『君もどうぞ。5000ドンで写真を撮ってあげる。』と言うではないか。なんだそれ、スカイダイビングやロッククライミングなど、一歩間違えば死と隣り合わせのエクストリーム・スポーツみたいなものか?人間の脳には本来、宿主に危険を避け、安全を求めるようプログラミングされているので、手に汗握る緊迫状況や恐怖・不安が解消した際に大きく安堵し、それが快感に思えてくる。所謂「ホッ」とする快である。私はチキンなので、恐怖や不安は全力で避けたいと思っているが、これとは別に、恐怖を感じる対象に自ら進んで直面することで、対抗恐怖と呼ばれる恐怖を乗り越えようとする心理作用を楽しむ人間も割と多くいるというようなことも学生時代に聞いたことがあるが、そういった人間心理を突いた商売なんだろうか。高所恐怖症チキンの私があんな場所に立たされたら本気でチビッテしまうだろう。お金を貰っても御免被りたい。

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最後は『景色も良いから試してみなさい、この臆病なし!』とまで言われるも、自尊心より恐怖を避けたいとする本能が勝り、彼女の誘いは頑なに断った。あんなとこに立たずとも、展望台からの眺めは抜群で、遠方にファン・シー・パン山脈の美しい姿を望むことができるんでね!