ベトナム航空のお下がりかよ!カンボジア・アンコール航空

遂にカンボジアともお別れの時がやってきた。21:40出発予定のカンボジア・アンコール航空便でシェムリアップを離れ、22:40にホーチミン市に到着する。ギリギリまでカンボジアを満喫したかったので、聞きなれない航空会社ではあったが出発時刻が一番遅いカンボジア・アンコール航空便をネット予約した。このカンボジア・アンコール航空は、2009年に創立されたばかりのカンボジアのフラッグキャリアだそうだ。ナショナルフラッグとはいえ創立は僅か3年前、そりゃあ聞きなれない筈である。

バイタク運転手と価格面で一悶着あって気持ちの良い別れではないが、アディオス!カンボジア!!
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チェックインカウンター。こちらは空港は2006年に建て直されたばかりということでピッカピカ、タイルも輝くこの空間はとてもカンボジアとは思えない。聞いたことのない航空会社だったしリコンファームもしていなかったので若干の不安はあったが、ネット予約時に送られてきた予約表を提示したらトラブルもなくスムーズにチェックイン完了。

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チェックインカウンター横のカフェでカンボジア最後のヤシの実ジュースに舌鼓を打ってから国際線搭乗ゲートへ移動。

ひだり みぎ

ひだり みぎ
搭乗ゲート側には数は少ないがオシャレな土産屋が並んでいて、成金中国人が財力に物を言わせて大量に仏具やらスカーフやらを買い漁っている。そんな仏具ならおぬしらの国でも調達できるだろうに。物欲を満たした後は食欲。搭乗ゲート前で大騒ぎしながらスナックを食い散らかす中国人。すると集まるわ集まるわ…どうやらツアー団体だったようで、次々に中国人が合流し、最終的には20人程で大騒ぎ。

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フライトは何だかんだで定刻通りの出発となった。空港にはボーディングブリッジなど高価なものは有る由もなく、マイクロバスで機体の傍へ移動。バスは数名の日本人、数名の韓国人、数名の欧米人に大量の中国人で満員。

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小さな小さなタラップを登って機内へ。ベトナム航空のお下がり機なのか、機内には所々でベトナム語を見ることができる。後で知ったことだが、このカンボジアアンコール航空、カンボジア待望のフラッグキャリアだが、ベトナム航空の資本が49%も入っているそうな。この日は1時間~2時間の遅延は覚悟していたが、この日はなんと予定より10分早くホーチミンに到着。夜遅くのフライトだったからか、中国人団体客の御一行もぐっすりと静かに快眠されていて、快適な空の旅を楽しむことができた。

◎シェムリアップからホーチミンへの移動メモ
直通のバスは無く、先ずはバスで7時間かけてプノンペンへ、そしてそこからバスを乗り継いで6時間かけてホーチミンへ行くことになる。費用はバス会社によって異なるが、概ねUS$20~30程度。飛行機の場合はホーチミンまで1時間弱、費用はUS$160~US$180前後が一般的な相場なようだ。*ちなみに今回のカンボジアアンコール航空便はネット予約でUS$170であった。

場末感は否めない カンボジア民俗文化村

カンボジア小旅行の締めはシェムリアップ国際空港からバイクで10分弱のところにあるカンボジア文化民俗村。私をUS$2でカンボジア文化民俗村に運ぶために8時間以上も待機していた執念深き運ちゃんのバイクに乗せられ、国道6号線を一路西へ進む。

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この気持ちいい青空!しかし、バイタク運転手の口からマシンガンの弾の如く繰り出される営業トークに、せっかくの清々しさもかき消される。ベトナムのバイタク運転手のしつこさには未だ若干の愛嬌が感じられるが、カンボジアの場合は悲壮感あるのみ。『文化村の後はマッサージはどうだ?(嫌とは言わせない)』『文化村の後は空港近くのクメールレストランはどうだ?(嫌なとは言わせない)』ってな感じで、営業トークと言うか、寧ろ恫喝じみた脅迫に近い感じ。たま~に営業戦略からかバックミラー越しに笑顔を見せるが、溶けきった前歯がむき出しになっていて、逆に不快感と恐怖感が増幅するだけだ。

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文化村に到着。ここで悪人相のバイタク運ちゃんとはようやく手切れだ!相場よりは高いが彼の言い値であったUS$2を彼に握らせて走り去ろうとしたら案の定…渡した2ドルを右手で握りしめ、左手をパクパクさせて『戻る為のガソリン代US$2』とか言いやがる。合計2ドルって言ったじゃねーか!バイクのエンジンをかける前にも念押ししているし!『金の為じゃないんだ。文化村って遠いんだよ。』と食い下がる歯溶け親父。だから知らねーよ!文化村の場所を把握した上で2ドルって見積もったんだろう!!大体、金の為じゃないとか言って金を請求してきて発言と行動の整合性とれてなさすぎる。200円ごときではあるが、ふっかけられた時は男として引いてはいけない。結局、お互いの主張をぶつけ合った挙句、『①とりあえずは2ドル。②4時間以内に文化村⇒空港までを1ドルで移動する。1ドルは込々費用。』で決着した。②に関しては1ドル以外の費用は一切発生しないことを何度も再確認したが、果たしてどうなるであろうか。

ようやくバイタクから解放されてチケットブースに向かうと、一難去ってまた一難。驚愕の事実を突き付けられる。『US$15です。』んん??手持ちのガイドブックにはUS$12と書いてある。カンボジアの古典的ジョークか何かかな、多分?古いガイドブックは信用すべきじゃないとはいえ、それでも1年前のMadeInJapanのガイドブックとニヤケ顔のカンボジア人の言うこと、どちらが信じられるかと言うと、1年前のでも迷わず日本のガイドブックである!絶対にこれ、ガイドブックには入場料US$12と書かれていますよ?と日本語ガイドブックを係員の眼前に突き出すも『ええ、値上したんです。』との一言であっさりと片づけられた。どうやら値上は本当らしい。ただでさえ12ドルとか高っけぇなぁと思っていたのだが…

US$15と引き換えに貰った地図とパフォーマンスショーの時刻表。
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人口の90%を占める大正義クメール人の他、ベトナム人、華人、36の少数民族から成るカンボジア。どうやらこちらの文化村ではカンボジアに住まう各 少数民族の生活様式や伝統儀式を再現したショーが披露されているようだ。

 

ショーの名前

開催時間

開催場所

Khmer Wedding Ceremony

10:30-11:00

Millionaire House

Mix Khmer Traditional Show

13:30-14:30

New Theater

Khmer Wedding Ceremony

15:10-15:40

Millionaire House

Mixed Chinese Traditional Show

15:50-16:10 (月~木)

Chinese Village

Happy Chinese Dancing Show

15:50-16:10 (金土日)

Dreamy Princess’s Daughter & Magic Peacock

16:20-16:40

Kola Village

Choosing Fiancé

16:50-17:20

Kroeung Village

Khantremming

17:30-18:00

Khmer Village

Rice Praying

18:10-18:40

Phnorng Village

The Greatest King Jayavarman 7

19:00-20:00(金土日)

Big Theater

 

おあつらえ向きに殆どのショーの開演時間は午後に固まっていて、急げば午後一のショーである クメール伝統ショーに間に合う!という訳で21万平方メートルという無駄に広い敷地の中を小走りで会場に向かう。
ひだり みぎ

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ひだり みぎ
くっ、オブジェやら銅像やらが一々コメディー感に溢れているぞ。カンボジアの歴史と文化、各民族の暮らしっぷりを紹介するお堅い民俗博物館的な場所であろうかと想像していたが、入ってみると実にシュール!!アミューズメントセンター的要素が随所にちりばめられていて、急いでいるのに不思議オブジェの前で足を止めて見入ってしまう。

ひだり みぎ
場末感漂わせるミニチュア涅槃像やプノンペンのセントラルマーケット模型、超ミニミニ王宮像などの姿も発見。涅槃像は良いとして、広大な土地にある余りに控え目な模型は何だか見ていて物悲しくなってくる。

そしてついに到着ニューシアター。中に入ると既に満員御礼の中でショーは開始されていて、中学校の体育館のような舞台の上で中国雑技団も顔負けの柔軟体操が披露しているぞ!
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他にも武術有り、太鼓の演奏あり、棒術有り、闘鶏ショー有り、アプサラダンスショー有りと、演出や小道具のチープ感は否めませんが、次々にクメールショーが繰り出される。

続いてミリオネア―の館という名の高床式木造住宅の2階で結婚式のショーが催される。

言葉は聞き取れないが、カンボジア人客たちは涙がちょちょ切れるくらいに腹を抱えて大爆笑しているので、よっぽど面白おかしい内容なのだろう。ショーの展開は分からんがカンボジア人が椅子から転げ落ちる勢いで爆笑してる姿を見て楽しんでいたら、不意にシャーマンっぽい役どころの男がこっちに来た!!顔には油性マジックで眉毛とちょび髭が書かれている。いまどき小学校の演劇でももう少し手の込んだ演出を見せてくれるだろうが、顔に落書きされた大の大人が迫真の演技でシャーマンを演じる姿は一周廻って何だか新鮮で面白い。
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なんだなんだ!隣に座っていた韓国人が腕を掴まれステージ裏に連行されていった。すると、民族衣装姿に変身した中国人が満面の笑みを浮かべて舞台上へ。観客参加型なのかい!サクラなのかと思ってしまうほどにノリの良い中国人と思われる男性は、どうやらクメール美人の花婿役に抜擢されたらしい。
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身振り手振り手解きを受けながら婚約儀式を一つずつ紹介していく韓国人。
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無事に大役をこなして退場する韓国人。

この後も孔雀ダンスや婚約者選びのショーなど外国人観客を強制的に巻き込む参加型ショーが次々と繰り広げられていく。しかも、思い出作りの為にちょろっと出演とかじゃなく、花婿とかバリバリの主役を与えられるから驚きだ。人選によっては悲劇になりかねない。

さて、こちらで全てのショーを紹介できれば良いが、ページの容量上、特に印象に残った中国曲芸ショーのみをご紹介。
ひだり みぎ
中国村には、なんかよく分からないけど言われてみたら確かに中国っぽい不思議なオブジェが特に多い。

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ショーの方も、何かどことなく中国っぽいよねー的な、中国に対する浅はかなイメージだけでやってるじゃないかとも思えるアクション芸ばかりだが、こってこてのわざとらしい芸が見ていて何だか微笑ましい。勿論、ここでもカンボジア人、大ウケ。

最後に、入り口横にあった蝋人形博物館へ。
ひだり みぎ
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こっちは一転、嫌にリアル。

何だかんだで安っぽいショーも楽しめて、文化村には4時間以上も滞在してしまった。フライトまでの良い時間つぶしになったどころか、すっかり15ドルの元は取れたと思う。暑いので日が昇り切る前の朝から…というのあなた、戦略ミスです。どうせ行くなら13:30からの訪問がベストだと思います。

因みに先述のバイタク運転手、ちゃんと4時間待っていました。しかし、1ドルと約束して握手まで交わしたのに、シェムリアップ空港に到着すると見事に5ドル請求されました。口約束なんてこの国では何の意味も持たないようです。

パブストリートとオールドマーケット@シェムリアップ

レンタサイクル屋の鼻毛兄貴に自転車を返却。これからパブストリート/オールドマーケット地区で遅めの昼食を摂ってからホテルで荷物をピックアップし、空港近くにあるカンボジア民俗文化村へと移動する。ホーチミンへのフライトは21:30発なのでたっぷりと文化村を満喫できる筈。因みに航空会社はカンボジア・アンコール航空。僅か1時間足らずのフライトでUS$170と一丁前の価格であるが、サービスなどは期待しないし、多少の遅も気にしない。只々墜ちないことを切に願うのみだ。

さて、パブストリートに向かうのにホテルの前を横切ろうとすると、「ヘイ、ミスター」と聞き覚えのある声が…振り返ると今朝話しかけてきたバイタクドライバーの姿が!

…それは今朝、アンコール遺跡に向かう為にホテルを出た時のことだった。前歯が溶けきり、ワニの皮膚みたいに乾燥してひび割れた肌を持つ、すこぶる人相の悪いバイタクドライバーが人差し指を立てて私を呼んだ。「ミスター、これからアンコールワットに行こう。」既にトゥクトゥクを手配していた私は断ったのだが、余りのしつこさから、ちょっと高いがカンボジア文化村までの移動をUS$2でお願いすることにしたのだ。「午後にカンボジア文化村まで行くけど…でも時間は決まってない。」「おっけー!2ドルでいい!ここで待ってるからな!」と言って別れたのが朝の6時過ぎ、まさかこのワニ肌親父、US$2の為に7時間以上も待っているとは…

感動の再開を果たした私たち。
ワニ肌「よっしゃ!長かったな!待ってたぞ。行くぞ!!」
私「いや、パブストリートで飯食ってから行くから。」
ワニ肌「…10分くらいでな。」

時間指定してきやがった上に、監視する為に私の後ろを尾行してくるワニ肌運転手。レストランを横切る度にここに入れ、あそこに入れと指図をしてきてうざすぎる。
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昼間は観光客全員が遺跡に行ってる為であろう、昼間のパブストリート界隈は夜の賑わいが嘘のような落ち着きぶりである。観光客の姿はひっそりと息をひそめ、本日の仕事にありつけなかった負け組ドライバー達が道路脇で屯しているくらいのものだ。こんな場所を一人で歩こうものなら彼らからの営業トークの雨嵐に晒されること必至だが、今回はワニ肌歯無し親父が私のすぐ横について魔除けとなっているお蔭で声はかからない。そして、ワニ肌歯抜け野郎は客の無いドライバーに対しての優越感からか、どこか誇らし気そうな表情を浮かべて私の後をついてくる。

ひだり みぎ
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パブストリートの一角にあるオールドマーケットに到着。他の東南アジアの国々のマーケット同様に、内部は人と物でごった返している。生鮮品を含む食材が温度33度、湿度80%以上の常温で管理されているだけでなく、普通に床置きにされてたりもする。日本の食品衛生管理者が見たら泡を吹いて倒れるだろう惨状であり、オールドマーケットでの食事は断念。軽く土産物エリアを冷かした後にパブストリートに戻って食事をすることに。

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こちらの衛生管理ができていそうなクメールキッチンというレストランに入店する。当然、私が食事をしている間もドライバーは店の出入り口にバイクを留めてこちらを監視している。

ひだり みぎ
クメール料理で一番の定番ものの料理とビールを求めたところ、アモック(AMOK)と呼ばれるクメール料理と、アンコールワットのロゴがオシャレなアンコールビアーが机に並べられた。この店の盛り付け方の味気無さもあるが、ハッキリ言って見た目はゲ○を想起させるくらいにマズそうで、写真入りメニューだったら絶対に選ばれない類の料理だと思う。名前もズゴックみたいで品のある感じではないが、食べてみるとココナッツベースの甘味カレーといった感じで案外箸が進む。

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ひだり みぎ
アモックだけでは食い足らず、続いてバーストリートのど真ん中にあるテンプルハウスへと移動。もちろんバイタクの運ちゃんも私と共に移動。ここテンプルハウスは1階にはビリヤード台、2階にはアプサラダンスショーのステージがあり、昨夜は悪酔い白人観光客だか長期沈没者だかが祭りが如く羽目を外す会場となっていた。

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昨夜はプノンペンからのバスが予想以上の鈍行っぷりを発揮した為に楽しみにしていたアプサラダンスショーを逃してしまったが、テンプルクラブでは毎晩19:30から分刻みのスケジュールでアプサラダンスショーを開催している。レストランで飲み食いすれば無料鑑賞できるので、シェムリアップを訪れる方は足を運んでみては如何だろう。

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こちらでは小エビとレモングラスのサラダと世界遺産アンコールワットの名を冠したアンコールビールを注文。ビールは18:00までハッピーアワーとなっており、グラス一杯US$0.5と嬉しいお値段になっていた。このくっそ暑い天気にくっそ喉越しの良いテイスト、更にこのくっそ安いお値段ときたら、水が如くガブ飲みしてしまう。

程よく酔っ払った後はバイタクに乗ってカンボジア民俗文化村へ。

レンタサイクルでシェムリアップの街探検その4

シェムリアップでの滞在時間も残り半日。灼熱の日差しを肌に直に受け、時計を気にしながらペダルを漕ぐ!続いての目的地はレンタサイクル屋の鼻毛兄貴に教えてもらったキリングフィールド。キリングフィールドと言えばプノンペン郊外のチュンエク(⇒訪問記)が有名だが、他にもカンボジア全土に同様の大量殺戮センターが400もあるとされている。それらが全て自国民を死に追いやる為に作られたのだから狂気の沙汰もいいところ。

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国道6号線を北に折れる。午前中にアンコール遺跡へ向かう際に通った道だ。

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あっ、ここ朝トゥクトゥクで通ったじゃん!特別な場所だと思ったので止まってくれって運ちゃんにいったらNot Interestingの一言で片づけられて素通りした場所だ!!

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迫真の表情で大蛇を引くヒンドゥー教の神々たち。アンコールワットの第一回廊のレリーフにもあったヒンドゥー教おける天地創造神話・乳海攪拌だ。昔々、ヒンドゥー教の神々も人間と同様、永遠の青春を望む本能は抑え切れなかったようで、不老不死の聖水・アムリタを手に入れたいという誰しもが一度は持つであろう欲望に駆られた。作戦会議の結果、最高神の一人である宇宙の守護神ヴィシュヌ神の意見であった「天界の大海を撹拌すればアムリタが生まれる筈。須弥山を攪拌棒にしてぐるぐる回そう。」という何とも破天荒な案が実行に移されることになった。しかし、この巨大な攪拌棒を海の中で廻すの為には同等に巨大な支えが必要になると考えた。そこでその支えにはヴィシュヌ神の化身である巨亀・クールマを抜擢、この亀の甲の上に攪拌棒を乗せ、攪拌棒に紐を巻きつけて左右に引っ張り合って攪拌棒を廻せばよいのではと考えた。流石は神様、賢明なお考えである。そこでヴィシュヌ神は、紐として大蛇ヴァースキを選んで自らの体に巻きつけた。次に、この紐となる大蛇ヴァースキの頭と尾を綱引きのように引っ張り合う動力源には神々を起用。同じ神々でも馴染み同士では綱引きにならない。お互いに反目し合う神々に引っ張り合いを演じさせなければいけないと思い、ヒンドゥー教の神々には大蛇の尾を、そして悪神阿修羅には頭を引っ張らせることとした。流石の用兵術、抜かり無き作戦だ。
こうして、神々と阿修羅の綱引きによる動力が攪拌棒を回転させ、ヴィシュヌ神の思惑通りに海が掻き混ぜられていった。その壮絶な攪拌によって、大蛇ヴァースキは口から毒やら有害物質やら火やらを噴出。吐き出された毒はシヴァ神が飲み干す事に成功するも、山々の木々は大炎上、山に住む動物や天人・天女や樹木、草花など全ての生物は息絶え次々に海へと落下していきました。そして、樹液や薬草のエキスが海中で溶け、海に落ちたあらゆる物質と混ざりあって海は乳状となったのです。

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文章だけでは分かりずらいので図解を挿みましょう。亀の上に支えられた須弥山に絡めた蛇を両端から引っ張り合うことで山が回転⇒山の住民や木々が海に落下⇒海中であらゆる物質が混ぜられて、海水が乳状化。以上、ここまでのまとめ。

やがて、どういう原理だか、乳海の中から太陽と月が出現!!続いて、後にヴィシュヌ神の妃となるラクシュミー女神が出現!その後も牝牛・スラビ、白馬・ウッチャイヒシュラヴァス、酒の女神・ヴァールニー、象王・アイラーヴァタ、宝珠・カウストゥバ、などが次々に乳海の中から現れ、最後に医学の祖であるダスヴァンタリ神が念願のアムリタがたんまりと入った壺を持って現れた。しかし、いざアムリタが出現すると、正邪両神間でアムリタを巡っての戦争が勃発。あろうことか、アムリタが悪魔の手に渡ってしまった。この展開に終止符を打ったのも、この案の発案者であるヴィシュヌ神。この世のものとは思えぬほどの超絶美女に変身することで悪魔たちを欺いてアムリタを奪還、神々にアムリタを与え、不老不死となった神々は魔物たちを追い払いましたとさ。一件落着。う~ん、この…悪神もアムリタを作るの手伝ったのに…どちらが正義でどちらが悪なのか分からなくなるお話です。

話が大きくそれてしまいました…
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名称はワット・トメイ寺院と言うこちらのキリングフィールドも、チュンエクと同様に中央にポツンと慰霊碑が立っている。奥には寺院の本堂とぼしき建物が建っていたが、時間が圧しているので、慰霊塔の前で鎮魂を願い、レンタサイクル屋に戻ることにした。

ひだり みぎ
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シヴァタ通りを南下。流石にシェムリアップ随一の大通りだけあって、近代的な建物が並んでいます。

ミニチュアアンコールワットと電飾仏像

どうやら午前中にバイヨンで受けた呪文が祝福の祈りではなく不幸の呪いだったらしく、お目当てのレストランはやってないはワットボーの本堂には入れずじまいになるわと非常についていない。

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意気消沈気味にペダルをこぎ始めると、興味をそそられる内容の看板に遭遇。「100メートル先、Dy Preungによるミニ版アンコールワット」

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矢印に従って道を進むと、親子とみられるパジャマのクメール人美女とおばさんがニコニコ笑顔で立っている。芸術家Dy Preung氏の展示会兼実家のようだ。パジャマ姿での歓迎に目を疑ったが、まぁ首都に住む人々がのデパートにもパジャマで買いに行く様なお国柄のカンボジアだ。パジャマでの応客も至って普通のことなのだろう。

入場料US$1.5を払って中に突入。仕草の可愛らしい女の子とデヴァターばりの慈愛のこもった笑顔を浮かべてクメール語で話しかけてくれるおばさん。何言ってるかさっぱり分からないが、アットホームな雰囲気が素敵である。
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うむ、なるほど中はやっぱり住まいも兼ねているようで生活感丸出し。どうやら昼食の準備中だったようで、お母さんの邪魔をしてしまったようだ。悪気は無かったのだよ…

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ギャラリーとなる中庭にはぎっしりと精緻な石造りのアンコール遺跡群の模倣細工が並べられている。作品の上にゴミやクズが散乱しているのは見なかったことにしておこう。作品のお住まいの連子窓も立派だったが、恐らくこのご一家の長であられるDy Preung氏が彫られたのだろう。聞いてみると、Dy Preung氏は確かにこちらにお住いだが、生憎外出中であるとのこと。
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こちらはバイヨン。雑草が生えて所々ひび割れが発生しているのもまたリアル。クメール王国の石細工職人の技術が現代にも脈々と受け継がれていて何だか嬉しい。

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二階のテラスからギャラリーの全容を眺めるとこんな感じ。

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敷地の一番奥は工房兼ゴミ捨て場になっているようで、廃材などが無造作に置き捨てられていた。こんなものまで包み隠さず見せてくれる職人の奥行きの深さに思わずにっこりしてしまう。こんな細かい職人芸を披露する人の割にはかなり大雑把な感じの人のようだ。

さて、一通り見え終えて帰ろうとすると!別れ惜しいのか、手を引っ張られて敷地の隅っこに連れて行かれる。ほらこっち!この台に登って塀の向こうを見て!と、はしゃぐ女の子。未公開の超大作があるのかと興奮気味に塀の向こうに目をやると…
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ワニ…隣の家の簡易プールでうじゃうじゃ動いていて、めちゃくちゃ生臭い。隣にはワニを眺める私を見て満面の笑みを浮かべる女の子。このワニの大群をわざわざ見せてくれたんだね…なんてサービス精神旺盛なんだ…ありがとう。

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バイバイ、また逢う日まで。別れを惜しみつつ、チャリ探索を継続。

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アンコールミニチュア館周辺は伝統的高床式住宅や子供たちがバレーボールを楽しむような名も無き小規模寺院がある。ここにいると仕事で悩んでいる自分がばかばかしくなるくらい長閑な雰囲気だ。

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Future Bright International School。この国にはNew Hope Schoolとかsuccess Schoolとか、クメールルージュがもたらした暗黒時代の反動だろう、妙に前向きな名前の学校ばかりなような気がする。

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今にも崩落しそうなおんぼろの橋と立派なナーガ像。この国でインフラ整備が進まないのは、お金が無いのではなくお金の使い道を間違えているんではないかと真剣に思っちゃうくらいいに仏像や寺院は立派な造りになっている。ここからシェムリアップ川の西側へ渡る。

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日本の援助指導の下で整備されたという国号6号。道路が舗装されているだけでなく、なんと車線まで書かれている!!!車線の存在に驚くとは、すっかり驚きの基準が低くなったものである。東南アジアから帰任する駐在員は日本の生活に慣れるのに暫くリハビリが必要だと言うが、こりゃあ日本に帰ったら驚きの連続で心臓発作を起こしかねないな。

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街を南北に貫くシヴァタ通りを挟んで東側の国道6号線はハイソな建物が多く、王の別荘やら王国独立記念祠が建っていた。

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でた!仏像の背後に飾られてるダーツの的みたいなネオン電飾!!カンボジアやベトナムの寺院で強烈な後光を放つ物をよく見かけるけど、色も安っぽいし、寺院の雰囲気を台無しにして徳を損ねていると思うのは私だけだろうか…「侘び」「寂び」「モノトーン」「地味」が通り相場の日本の寺院に慣れっこの私には、どうしても7色に輝くピッカピカで楽しげな仏像に向かって跪いてお祈りを捧げる人の姿は不謹慎ながらコントのように見えてしまう…