プラシン寺院は、1345年にランナー王朝第5代パーユー王によって建てられた由緒ある寺院らしい。“由緒ある”とか“格式高い”という常套句は今回の北タイ旅行で耳にタコが出来るくらい聞いてきたし、もうお腹一杯になるくらいに寺院を見たさ。寺院寺院寺院…修行僧かのように数多くの寺を回って正直もう飽き飽きしてきているのだが、SPチキンの近くということだったんで、折角なので立ち寄ってみることに。
チェンマイの観光ランキングで210 軒中18位とトリップアドバイザーでも高評価なようで、境内には観光客も数多い。因みに栄えある1位はワット・チェディルアン、2位はワット・プラタート・ドイステープと、古都チェンマイらしく寺院が大活躍してるようだ。
これも観光客誘致策の一環なのか、境内では観光客向けのバザールみたいなのが催されている。流石に修行僧を惑わすような18金グッズは無かったけど、これがまた仏具とかじゃなくて俗っぽい物ばかり売られているんだな。
テキヤの親分風の大男がピーヒョロロ、ピーヒョロロと竹笛の実演販売中。太っちょの恵体から繰り出される蚊の泣くようなか弱く繊細な音色がまた何とも面白い。
合奏団によるタイ民謡の演奏もあったりして、祭り気分が一層盛りたてられる。なんだろん、このB級テーマパーク感。由緒正しき寺院のはずなのに、妙に世俗の垢まみれになっているというか…
本殿とかは確かに立派なんですけどね、なんかもう、ディズニーランドのシンデレラ城くらいに見えてきた。
本殿前の広場には傘に護された釈迦像が祀られていて、敬虔なタイ人が頭を垂れて熱心にお祈りをしている。やっぱりこういう祈りのある場所って良いですね。ディズニーランド発言は撤回する。私も見様見真似で一束の花を寺の入口で買い、お供えさせて頂いた。
本殿内は赤いカーペットが敷かれ、正面に大変穏やかで慈悲深い顔の仏像が祀られている。ボテッとしたお体とか、大作りなお顔立ちとか何とも大味な大仏様だが、パッチリ切れ長お目目を見ていると仏様の求心力に吸い込まれそうな感じで、しばし見とれてしまう。
説法の他、僧侶3名による読経も始まった。お経の意味は全く分からないが、その言葉の響きや抑揚が美しく、タイ仏教の神秘的な雰囲気が醸し出されている。
本堂裏側は矮小歯なナーガが護っている。タイ北部のランナー様式の寺には欠かせない神様だ。すっごい愉快な顔してる。
続いて本堂の裏手に建つ講堂に入ってみる。屋根や柱、ファサードの模様が特徴的で、入り口では一対のナーガと獅子が参拝客を威嚇するような表情で御堂を護っている。
うわぁあ!!中央に精巧な作りの高僧の四天王像が配置されていて、リアルなお坊さんの姿にギョッとする。表情とか前のめりの姿勢とか、剃髪した頭の青さ具合とか、マダムタッソーの蝋人形かよってくらいライフライクで本当に不気味。不気味がっちゃいけないんだろうけど。
彼らっすね。四天王かと思ったら5人いるけど。常に一人を休ませるようなローテーション制なのかな。
高僧の後ろには緑色になったり紫色になったりと七変化するマジック台座に鎮座する仏像が、更にその奥にはエメラルド仏のレプリカと思われる緑色の仏像が配置されている。
エメラルド仏は、一時このワットプラシンにもあったが、彼方此方と転々する数奇な運命を辿った後、現在はバンコクのワット・プラ・ケオ(エメラルド寺院)に安置されている。
内部に描かれた壁画はラーンナー地方の昔の習慣などを描いたもので、北部タイの寺院壁画の代表作と言われている。
伊丹が激しいものもあるが、それでもラーンナー時代の風俗が伝わる貴重な作品だ。
白く綺麗な仏塔。奥に見える傾斜の急な切妻屋根、独特な意匠の装飾の建物が本尊のプラシン像が安置されているライカム礼拝堂になるようだ。
ライカム礼拝堂の内部。この建物内も朱塗りの壁や柱に金色で華美な模様が描かれていて、豪華で独特な雰囲気を漂わせている。内部へ足を踏み入れた時に眼に入る朱と金の空間の眩しいこと。
奥に安置された仏像は寺院名を関した本尊のプラシン仏。お堂自体は、外から見るとそれほど大きくないように見受けられるのだが、内部空間は「無限」を感じさせる程の広がりを感じるから不思議。チェンマイの仏教美術の魅力はこうした堂内空間の巧みな使い方と仏像や朱色と金をベースにした華麗な模様が一体となって醸し出す壮麗で厳粛な雰囲気にあるんだろう。