バスでシャングリラから麗江へ山下り 雲南省旅行8

シャングリラでの3泊の滞在期間を終え、この日は次なる目的地である麗江へと山下り。麗江は雲南省でも最も有名な観光地の一つで、人によっては観光地化されすぎていて新鮮味が全く無いと批判する方もいるようだが…自分がどう感じるかは行って見てみなければ分からない。

まず、ホテルからシャングリラの町を巡回する1路バスに乗ってシャングリラバスターミナル(香格里拉汽車客運站)へ。シャングリラまで鉄道が通ってないので麗江への移動手段はバス一択、4時間半かけて山下りをすることになる。

約180km程かけて標高3,200メートルのシャングリラから同2,400メートルの麗江へと800m程を下る。距離としては大したことないけど、山道なんで時間がかかるのだろう。


シャングリラバスターミナルは市内北部の迪慶交通賓館の建物にある。1路バスが来る気配が無かったのでタクシーにて移動、釣銭が中々もらえずに降りるのに時間がかかってたら外の婦警に怒られた。「30秒以内にタクシーを乗り降りしないといけないルール」があるらしいw。桃源郷の割にはなんとも窮屈な制度である。

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ステーションに入りバスの乗車券を買う為に列に並んでいると、「麗江行きはバスの前で乗車券が買える。直ぐ出発するから早く来い。」と係員的なオッサンによりバスの前まで誘導される。うわー怪しいオッサンに捕まったわー。これ絶対白タクの斡旋野郎じゃんと思ったら、請求されたのは正規運賃の通り58元だった。単に怪しい風貌のバスステーション係員だったらしい。疑って申し訳ない。

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09:00ちょうど発の麗江行き中型バス。シャングリラ郊外で降りていったチベット族5名と中国人観光客が何組か居る程度で、バスの中はガラガラだった。やっぱり大多数の観光客が雲南省で訪問するのは大理・麗江まででシャングリラにはなかなか足を伸ばさないのかな。


シャングリラから麗江へのバスの時刻表(2017年9月末時点)。始発07:10~終発15:00までデイリーで10本のバスが出ているようだ。ここから出発するバスは麗江や徳欽など雲南省・四川省方面行きがメインだったが、例外として09:30発のラサ行きのバスなんかも停まっていた。

09:00、時間通りに出発したバスは市街地を抜ける。すると直ぐに田園風景が広がるようになり、ここからぐんぐんぐんぐんと谷沿いの道を下っていく。
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途中、麗江とシャングリラとを結ぶ麗香鉄道の建設現場のような造りかけの高架橋が見えた。麗香鉄道は先に開通した大理ー麗江を結ぶ大麗鉄道の延線区間となるようで、ゆくゆくはチベットのラサまでの延伸計画もあるらしいが…。2009年に着工開始となったものの、標高差がありトンネルや橋が連続しているため、工事が遅れに遅れているようだ。中国が受注したインドネシアのジャカルタ-バンドン間を走る高速鉄道でも同じようなことにならないと良いですね。

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2時間半程走り、フルーツ満載の売店での休憩を挟む。お茶や茸の産地として有名な雲南省だが、地味に果物の王国でもあり、売店の籠をパッと見渡しただけでもバナナ、スモモ、マンゴスチン、ミカン、ドラゴンフルーツ、プラム、ナツメ、マンゴー、ブドウ、ザクロ、グァバ、ザボン等が並ぶのが見える。熱帯果樹を中心に実に良いセレクションだ。

硬くて酸っぱいスモモをかじっていたら出発の時間がやってきた。ここから少し先、シャングリラがある迪庆チベット自治州と麗江のある玉龍ナシ族自治州の境界近く観光地・虎跳峡でも一時停車し、数名の中国人旅行者をピックアップ。シャングリと麗江に移動する間に虎跳峡に寄るのが旅の達人の定番旅行ルートらしいが、自分は昨日に巴拉格宗でお腹いっぱい大渓谷を楽しんだので、虎跳峡に立ち寄る必要性は感じなかった。


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金沙江の流れに沿って南へ、南へと降りていく。長閑な車窓の風景を楽しんでいると4時間半なんてあっという間だわーなんて思ってたらアクシデント発生。隣の乗客が車酔いで食べたフルーツをリバース…バスの窓は開かないし、魂のメーデーコールは誰にも届かないという悲惨な状況で残りの道程を迎えることに。


ようこそシャングリラとあるが、我々の場合はさよならシャングリラ。ここで金沙江を渡り、いよいよ迪慶チベット族自治州シャングリラから麗江へと入る。さらば、シャングリラ!


窓の外には古城風の瓦屋根家屋やトウモロコシ畑が増えてきた。シャングリラではジャガイモくらいしか取れなかったので、辺り一面に広がるトウモロコシ畑を見て標高を下げてきたことを実感する。酸素の濃度についても確実に違ってはいるんだろうけど、鈍感な自分には余り違いが感じられんかな。


シャングリラを出て4時間20分、麗江バスターミナルへと到着した。くっそ大都会だし、何より暑いぞ麗江!!



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巴拉格宗大渓谷でアメージング雲南省を満喫 雲南省旅行7

シャングリラ二日目は巴拉格宗大峡谷行きのツアーに参加することに。
巴拉格宗大峡谷はシャングリラから北に80キロ離れた四川省との省境近くに形成された大渓谷。その規模たるや凄まじく、全長154km・最大標高差3,500mという途方もない大きさを誇るのだと。全長154Kmとか東京-静岡間の距離だし、標高差3,500mというのも富士山の高さ並ですからね…。大自然の中で中国のスケール感をこれでもかと味わうことができるトレッキングツアーになっているようだ。


巴拉格宗へのバスの乗車券は、独克宗古城の北の入り口近くのチケットセンターで買い求めることができる。シャングリラと巴拉格宗を結ぶバスの運賃だけなら往復50元と安いけど、巴拉格宗景区への入場料(150元)と景区内のバス運賃とガイド料(60元)も支払わなければ巴拉格宗に行っても何もできないので、結局はツアーに参加するにあたって合計で260元(≒4,500円)を支払うことになる。


この日は9時出発なので08:50には集まって下さいとのことだったのだが…時間を過ぎても現れない阿保が1組いたせいで出発が遅れ、09:35に漸く出発となった。やむにやまれぬ事情があるなら仕方ないとは思うが、悪びれる様子が無いどころか「遅刻してきた俺らカッケー」という中学生ヤンキーみたいな態度でバスに乗り込んできたのには原辰徳。

最後の一組が到着し、見事に満員御礼となった巴拉格宗ツアー。空席無しでギュウギュウ詰めとなったバスに乗りこみ、険しい山々を切り開いて整備された雲南チベット公路の新道を行く。道路は舗装され、山間はトンネルと橋とで繋がれていて道路事情は悪くない。
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四川省でも雲南省でも、観光資源となる辺境山間部の開発が驚くべきスピードで進行しているようだ。安全面は二の次といった感じで落石対策がおざなりといった感じで怖かったが。

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徳欽県の手前、金沙江と金沙江の支流である崗曲との分岐点で国道を右に折れたらいよいよ渓谷らしい景色が目の前に広がってきた。これこそが金沙江の支流が造り上げたグランドキャニオンだ。

巴拉格宗観光の起点・水庄村

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シャングリラを出て1時間半、巴拉格宗観光の起点となる水庄村でバスを降ろされた。

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ここからが巴拉格宗大渓谷ツアーの本番だ。小さな寺院を見せられた後にシャトルバスを乗り換え、リス族のガイドさんと共に巴拉格宗の見所3か所を順に回っていくことに。

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ヤクの群れを避けながら第一の見所へと山登り。ガイドのオジサンがとびっきりの嗄れ声でチベット歌謡“巴拉格宗(アカペラ嗄れ声バージョン)”を披露し旅情を掻き立ててくれる。

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ジグザグの山道を登るに従い怪奇な石灰石の岩峰群が次々に現れ息を吞む。ガイドの子供の頃なんかは最寄りの町まで下りるのも道なき道を歩いて進まねばいけなかったのが、香格里拉市政府の観光促進プロジェクトで10億元もの大金が投入され、ここ巴拉格宗の山道が整備されたそうだ。

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ストゥーパ。

巴拉村

山道を30分程登っただろうか。標高3,000メートル地点の山間の村・巴拉村に到着した。

今から300年ほど前に戦乱を嫌うチベット族の有力者一族が四川省から桃源郷を探して住みついた隠れ里。「巴拉格宗」「巴拉村」の名称は一族の出身地である巴塘に由来するらしい。

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チベット族が切り拓いた巴拉村はこんな山深い場所にある。観光地化される前は水庄村から丸一日かけて歩いてきたそうだ。シャングリラなんかはそれこそ1か月くらいかかったのではないか。幾ら戦禍を免れる為とはいえ、自給自足も難しそうなこんな場所を住まいに選んだのか不思議でならない。

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新築家屋が並ぶ巴拉村で、「老板(ボス)の家」とガイドが呼ぶ家屋の中を案内してもらうことに。

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村落のボスが代々住まわってきた家だというが、妙に新しくて生活感がないというか…。山間部まで中共主導の開発の波が押し寄せてきいるので、ここも香格里拉市政府の観光促進プロジェクトの一環で建てられたのではと思えてくる。

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テラスからのビュー。空が澄んでいれば当地の聖山で未踏峰の巴拉格宗雪山の頂上までハッキリと見渡せるらしいが、生憎この日は曇り空。


生憎の天気ではあるが、山間に霧が立ち込め山稜がぼやける様が逆に神秘的に感じられる。

村に1時間程滞在し、ここから次なる目的地「シャングリラ大峡谷桟道」へとバスを走らせる。

シャングリラ大峡谷桟道

大峡谷では河を臨む渓谷の断崖絶壁に危なっかしい遊歩道が設置され、スリルと興奮を味わいながら渓谷を散策することができるという観光スポットだ。
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断崖絶壁にへばりつくよう取り付けられた遊歩道を川沿いに散策。切り立った深い谷の間を流れるエメラルドグリーンの川の水も綺麗で、なんとも絵になる秘境的風景が続く。

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2.5キロ歩いて最終地点のゴムボート乗り場へ。ここから再び2.5キロを歩いて戻るかゴムボートでラフティングをして戻るかの二者択一を迫られるのだが、このボートが高い!8人乗りで120元というので一人あたり15元かと思いきや、一人120元だと。かといって同じ道を2.5キロも歩いて帰るのも味気ない感じがするし…

せっかくなので、マイナスイオンたっぷりの涼しい風を受けながら川下りすることに。
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うおっ。

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超絶安全運転でエキサイティングなラフティング体験とはいかなかったが、大自然をより身近に感じられて貴重な体験ができた…と思ったら、他の乗客からは「つまらない」「一人120元とか詐欺もいいところ」みたいな感じで文句のオンパレード。少数民族風の船頭のお兄さんがボロッカスに扱き下ろされてて可哀想だった。

渓谷の絶景に大満足してすっかり帰る気でいたら、シャトルバスは山の間に切り立った狭い谷の前に到着。ここから高さ約700mの階段を上るのだと。

通天峡桟道

巴拉格宗氷河の雪水から成る川が地層の割れ目を千百万年に渡り浸食して出来た峡谷なんだけど、これまた大迫力で自然の力に平伏してしまいそうになる。
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険峻な大峡谷の急斜面を登る。峡谷のあまりの大迫力に、地球ヤヴァイってなるわ。

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大地の裂け目のように形成された峡谷の長さは約4,000m。両側の山の距離が短く、両側の絶壁はまるで巨大なカーテンのように太陽の陽を遮るので、谷底は深く狭く暗くて薄気味悪く、地獄の魔道を歩いている気にすらなってくる。今は雨量の少ない季節だから川が流れていないが、雨季には氷河の雪水と雨水が千軍万馬が如く勢いよく轟轟と流れ落ちてきて魔感が増すようだ。


700m程の高さを登るのだが、そもそも3,000m近い標高の場所なので、階段の登りが結構きつく、途中でギブアップしてバスに戻る方々も沢山いた。

体力に自信のあった自分は汗だくになりながら終点まで上り詰めたところ、終点には無情にも行き止まりと書かれた看板があるだけだった。頂上からの絶景的な御褒美を期待していただけにこれにはガッカリだ。

途中には氷河に削られて形成された滝なんかもあるんだけど、帰りは正直疲れすぎて景色を眺める余裕なし。もはや観光というより罰ゲームのように思えてくるエクササイズ系ツアーである。

帰りのバスなんか、小学生の遠足のように皆さんグッタリ。結局、09:30過ぎにシャングリラを出た我々がシャングリラに戻ってきたのは17:00過ぎとなった。朝から丸々一日拘束されてしまうしツアー代金も高いけど…それでも参加する価値はあると思う。日本じゃこんな凄まじい渓谷トレッキングなんて体験できないですからね。

【巴拉格宗シャングリラ大峡谷】

シャングリラ⇔巴拉格宗往復バス運賃:50元
巴拉格宗景区への入場料:150元
景区内のバス運賃とガイド料:60元

シャングリラで味わう茸料理とシャングリラビール 雲南省旅行6

シャングリラ古城の茶館でプーアル茶をしばき倒し、ナパ海で放牧中のヤクの乳とヨーグルトを堪能、藍月山谷で標高4,500メートルの異世界を体験し、雲南のポタラ宮でチベット仏教の高僧的な人物による説経を…非常に濃度の高い香格里拉での一日を終え、濃厚な一日を〆るべく夜の食事処を探しに行くことに。


香格里拉美食を求め、再び古城へ。

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香巴拉老街なる横丁の中に佇む少数民族家屋風の米麦農茸餐吧に入ってみる。他にも伝統家屋風の洒落た小店舗が並んでいたけど、店名の中に「茸」という文字が入っていたという単純な理由一つでここに決めた。雲南省シャングリラといえば茸ですからね。


女将さんの娘さんに案内されて二階席へ。夕食時だというのに他に利用客がいないのが気になるところだが…家庭料理を中心としたメニューの中から「上級茸炒め(+エクストラキノコ)」「ヤク肉炒飯」を注文。メニューは基本的な炒め物が中心なんだけど、ヤクの肉やチーズ、茸といった地元の食材をふんだんに使っているのが一般的な中華料理屋とは異なるところ。

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スイス生まれのチベット族オーナーの手によりシャングリラ産の麦から作られた地元のクラフトビール・シャングリラビールも置いてある。Beer Made in Heaven!

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全6種類の個性的なビールはラベルもまた超個性的。ビール好きなオッサンとしては全種類コンプしたいところだったが、標高3,200メートルの高地に来て未だ24時間程度。暴飲で体への負担をかけるのは宜しくないと判断して自粛することに。



一杯だけなら良いでしょう…と注文した黒ビール、その名もブラックヤク。チベットで不屈の強さの象徴とされる黒いヤクに肖って作られたブラックヤク、キャラメルとチョコレートの味が強烈に利いて、クリーミーでキメ細かいといよりは、ラベルの中で荒れ狂うブラックヤクのように力強い味わいの一杯だった。


ビールを味わっているうちにヤク肉炒飯と上級茸炒めがやってきた。残念ながらギリギリで松茸シーズンが終わってしまったとのことで椎茸炒めになってしまったが、これはこれで美味しいし何より安い!かなりのボリュームだったのにクラフトビール込みで60元だった。


良い感じの女将さんとその旦那さん。場所が場所だけに気軽に「また来まっせ」とは言えんけど、約束通りブログに載せておきましたよ。古城内の香巴拉老街にありますので、シャングリラの家庭料理を味わいたい方は是非こちらをお訪ね下さい。


帰りがけには雲南省の土産諸々を調達し、明日に訪問する巴拉格宗香格里拉大峡谷へのバスチケットを予約。雲南省旅行、初日から飛ばし過ぎたわい。

ミニポタラ宮ことシャングリラの松賛林寺 雲南省旅行5

シャングリラ観光初日の〆はチベット仏教寺院の松賛林寺。1681年に完成した雲南最古かつ最大のチベット仏教寺院で、チベットのポタラ宮に準えてミニポタラとも呼ばれているそうだ。ミニポタラというとちょっと失礼だしショボイ印象を受けててしまうが、果たして…


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入場料は115元。チベット風建物がイカしたチケットセンターから松賛林寺までは2km程の距離があり、チケットを買ってから松賛林寺の玄関口までシャトルバスで移動することになる。

バスが走り出して直ぐ、林木生い茂る丘の上に金ピカ寺院が見えてきてバスの中の皆様も「うぉぉぉ~。あいよぉぉぉ」とテンションアップ。ポタラ宮よりもゴールデンゴールデンしてて、こっちの方が寧ろ宮殿ぽい感じがしないでもないわ。
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丘の上に建てられたというか、もう丘全体が寺院といった感じ。松賛林とは天界の神様が遊ぶ地を意味するそうだが、確かに雲も近くて本当に神様が遊んでそうだわw


丘の上に幾重にも重なり合うようにして建つ建築群。文化大革命により大部分が破壊に遭い、現在の建造物は殆どがその後に再建されたものらしいが、何か西遊記にでも出てきそうな感じで抜群の雰囲気だ。

入り口を飾る壁画は非常に鮮やかで独特な色使いが特徴。壁や天井に密教を連想させるような曼荼羅や大迫力の四天王が描きこまれている。

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チベット仏教の始まりは7世紀。インドで起こった仏教がチベットに伝播し、チベット固有の土着宗教であるボン教という呪術的な宗教と融合して独自に発達、チベット仏教に昇華した。13世紀にはインドに於いてヒンドゥー教の伸長と共にイスラム教勢力の侵入により仏教が衰退。居場所を失ったインド仏教はヒマラヤを越えてチベット高原に安住の地を求め、チベット仏教がインド大乗仏教の本流を継承することになったそうである。いわば本家本元直系。なんで、壁画とかには密教色も色濃く表れたりしてる。


寺院マップ。丘の斜面がなだらかだからか、丘全体が寺院の建物でびっしりと埋め尽くされている。

こちらフリー素材の画像集から拾ってきた本家のポタラ宮。

垂直度が違うな。

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なだらかな斜面に設けられた階段を聖地の中心へと向かって上っていく。普通に歩く分には気にならないけど、やっぱりここは3,300メートルの高地ですからね。階段を上り下りすると確かに息が切れやすい。あまり無理はせず、ゆっくり、ゆっくりと上がっていく。

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シカや吉祥紐の文様が描かれた黒い垂れ幕が掛かる建物が斜面びっしりに建てられており、寺院というよりも山賊の要塞のよう。中国でもなければインドでもない、非常に独特な世界観である。


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大殿は5階建てのチベット式建築で、内部は仏教の吉祥数を表す108本の真っ赤に塗られた木柱によって支えられている。

地味な外観と違って内部には金・赤を基調とした派手めな色彩でチベット仏教独特の世界感が表現されいる。

残念ながら内部に祀られた多種多様な神々・守護尊やダライラマ像は撮影不可だったが、非常に独特で聖地と言うにふさわしい厳かな雰囲気に圧倒された。



建物や窓枠は上へ行く程に細くなる四角錐台で、地にどっしりと構えた思想を感じさせる。大地に身を投げ出すチベットの祈り・五体投地もそうだけど、世界で最も空に近い高地民族の文化には大地に根ざした行為・造形が溢れているようだ。


ポタラ宮のように1時間ルールもなかったし、ゆっくりと好きなだけ敷地内を見て回れるのも嬉しいな。

【松賛林寺】

電話:82294111
入場料:115元

標高4,500mの世界 藍月山谷風景区と石卡雪山 雲南省旅行4

ナパ海から車を走らせる。向かうは香格里拉市内の外れに聳える石卡雪山の藍月山谷風景区だ。

道中、モクモクと煙が立ち込めていたので炊煙かと思ったら、なんと鳥葬による煙というではないか。鳥葬とか、外国人が日本にまだ忍者がいると考えているくらいのもんで過去の風習かと思ってたけど、未だにチベット文化圏では鳥葬が最も一般的な葬儀方法になっているらしい。断片化した死体を鳥葬台に安置し、香木に火を点してハゲワシを誘きよせ…。ここから先はグロ注意になるので興味ある方は自分でググって下さい。

鳥葬の煙を浴びながらシャングリラの大自然の中を石卡雪山に向かって走っていると、通りの左右にチベット風の石積みの塔の波が出てきて自分がチベット文化圏にいることを再確認させれる。まぁチベット風といっても、実際に建てたのは共産党観光推進委員会とかそういった類の組織だろうけど。



塔の奥の草原には赤い野草が広がっていたので、「鮮やかだなー。何の花ですか?」と運転手に聞いてみたところ「季節によって色合いが変わる特殊な毒草」との予期せぬ回答が返ってきた。普通に牛だかヤクだかは美味しそうに一心不乱に貪り食ってたんで、人間に対してだけ有毒性がある花なんだろうけど、一体何の花なんだか。ツツジ科なんだろうけどシャクナゲにしては色がくすんでいるし。

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そんな毒草と仏塔に囲まれた通りを真っ直ぐ突き抜けると、標高3,300メートル地点にある藍月山谷風景区の入口に到着した。ここから2本のロープウェイを利用して高所まで上るのが藍月山谷風景区のアトラクションである。

まず1本目のロープウェイで標高3300mの入口から標高3750m地点にある亜拉青波牧場へ、そして2本目のロープウェイで標高4500m地点にある石卡雪山山頂付近まで移動するのだが…4,000メートル超の世界は自分も未体験なので若干ビビってる。

防寒具レンタルなんかもあったりするし、酸素が薄い上に風が強くて寒いんだろうな。


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チベット風の洒落たチケット売り場でも、「大丈夫?今から4,500メートルの世界ですよ?酸素は?防寒具は?」といった広告多数で恐怖心を煽ってくれる。

ロープウェイの往復運賃として220元(≒3,800円)を支払ってロープウェー乗り場へ。


山頂付近のトレッキングマップ見てたら死亡谷とかあるし。中国でも死亡=死亡という意味だよなぁ…。念の為に中日辞書で確認すると、「[動] 死亡する」と出た。サンキューグーグル!

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寒さや酸素濃度に加えて怖いのがこのロープウェー。他に誰も観光客がいなくて不安になる中、意を決して乗り込んで標高3750mメートル地点へと向かう。シャングリラ市街の標高ですら自分の人生での最高地点なのに、更に高い未知の領域へと向かうわけだから、自分の体が適応できるのか若干心配だった。僅か20時間前まで標高21メートルの広州にいたわけだし。

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ロープウェイステーションでスタッフが物資を積み下ろしする関係で途中で軋みと共にちょいちょい停まってくれるし、ちょっと生きた心地がしなかったわ。

まるで別の惑星に降りたつかのような緊張した気分で山の中腹へと降り立つと、目の前には至って平凡な草原が広がっていて、赤頭巾をかぶったチベット民族のおばさんたちが掘っ建て小屋で井戸端会議を繰り広げていた。
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亜拉青波牧場。標高約3,800メートルと富士山より高いところにある牧場で、チベット族の皆様はここでジャガイモを栽培したりヤクを放牧したりして生活を営んでいるらしい。決して藍月山谷風景区の営業時間無いだけここにいて給料を貰うアルバイトではないそうだ。


10分程休んで体を順応させた後に第二のロープウェーへ。森林限界の線がくっきり見えていてちょっとおじけづきそうになる。

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ちょっと立派なステーション。ここでも最後の警告が掲示されていて、「重大危害」「自己責任」の文字が看板に踊る。

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第2ロープウェイは長さ2,000メートル・高度差600メートルで、ゆっくりゆっくりとモミなんかの針葉樹が生い茂る山を4,500メートル地点まで登っていく。


森林限界を越えた先のゴツゴツとした岩山が目の前に迫り、いよいよ終点が見えてきた。

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標高4,500メートル…。気圧の低さは気にならなかったが、風が吹き荒れ猛烈に寒い。

気温的には10℃ちょっとあるんだろうけど、吹きっさらしの風が本当に強烈で…。最初は雲に包まれ真っ暗な中を小雨が降りしきるような天気だったのだが、極寒の中を20分程粘ってようやく晴れ間がのぞいてくれた。粘り勝ちだ!
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視界が開けたのはほんの少しの間だったけど、山間に広がるシャングリラの町や、香格里拉を囲む大迫力の山々まで見えてもう感無量。標高21メートルの広州から3,200メートルの香格里拉まで飛行機で、3,200メートルのシャングリラから4,500メートル地点までロープウェーを使って苦労ゼロでここまで上ってきたというのに目の前に広がる絶景に感動してしまった。

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石積みストゥーパに括りつけられたカラフルタルチョーが音を立ててはためいていて、なんともチベットっぽい4,500メートル地点。なんか運気が上がった気がするわ。220元のロープウェー代を払う価値あるね。


運転手に電話したら「え!?もう下りてくるの?オレ今ちょっと市街地戻ってメシ食ってるんだけど!」とか言われたけど、想像以上に寒かったので、4,500メートル地点での滞在僅か30分足らずで下界へと降りることに。

【藍月山谷風景区と石卡雪山】

電話:8232565
営業時間:08:00-18:30(入場は16:30まで)
ロープウェイ運賃:220元