コスパに優れるフェアフィールド東莞常平 宿泊記(Fairfield Dongguan Changping)

この日は東莞に新しくできたばかりのフェアフィールド バイ マリオット東莞常平(Fairfield by Marriott Dongguan Changping/東莞星汇広場万楓酒店)へとプチ遠征。

フェアフィールドホテルといえば北米ではハイコスパなセレクトサービスホテルとして破竹の勢いで成長をしてきた人気ホテルだけど、中国での認知度は全然。それが去年から一気に中国で攻勢をかけてきていて、2017年に中国初のフェアフィールドが南京にオープンしてからというものの、東莞常平、上海静安、済南と次々に繁殖を続け、2019年度には景徳鎮と太原にも開業を控えるという勢いを見せている。

基本的なコンセプトはSPGのエレメントやハイアットのハイアットプレイスに似てるかな。コストのかかるサービスやインテリアをそぎ落とし、シンプルながらも高級感ある空間を提供するようなブランドである。レストランやスパなど付帯施設付きで包括的なサービスを提供するフルサービスのホテルより、こういったセレクトサービスホテルの方が昨今勢いがあるようで、中国のみならずアジア全域でフェアフィールドやアロフトといったセレクトサービスホテルがホテル数を伸ばしている。

因みに1980年代後半にフェアフィールドのブランドコンセプトが打ち出された際には、デイズインやハンプトンインといったバジェット系ビジネスホテルと同等程度の一泊US$45を宿泊レートと想定していたらしい。この価格で泊まってもリッツカールトンに泊まっても宿泊実績的には同じ1泊。場外ホームラン打とうがドームランでスタンドぎりぎりに打ち込もうが同じホームラン1本は1本。ライフタイムプラチナ会員を目指して宿泊実績稼ぎに邁進する修行僧的にはありがたい存在である。

流石に1980年代と比べるとレート水準は上がってしまっているが、それでもここ東莞のフェアフィールドも一泊税サ込みで368元(≒5,980円)。まさか中国系の同等ホテルと同じくらいのレートでマリオット系列のホテルに泊まれるとは…。

香港から常平へ

ではいざ行かん、東莞の常平へ。でもどうやって?
ひだり みぎ
香港から移動すると仮定した場合は、ホンハムから広州東行き広九直通列車を使うのが一番早くて楽。香港市街地のホンハムから僅か1時間10分で常平に着いちゃいますし、ホンハムで出国検査を受け常平で入国検査を受けるので、深センのイミグレの混雑を回避できるメリットもある。運賃もHK$155と法外に高いという訳でもないし。
参考サイト:https://www.it3.mtr.com.hk/b2c/frmFareGuangdong.asp?strLang=Eng

どうしてもバスが良い!という方にはバスで移動できないことはない。以下リンクは香港から佛山へとバスで移動した際の体験記だけど、常平に行くのと基本は同じ。


香港からバスで中国とのボーダーに移動し、国境を越えたところで待機している各都市行きのバスに乗り換える。ここで自分は佛山行きのバスに乗ったけど、これで常平行きのバスに乗ればいいだけの違い。但し、バスだと国境で乗り換えがあるので荷物を持ってたら面倒だし、ソロ移動で言葉が喋れないと不安だと思う。

自分の場合はと言いますと。深センから常平に行くという知り合いに車で送ってもらっちゃいました。なので、移動中の冒険は省いて、本日はいきなりホテルエントランスからの紹介になります。

ということでいざ突入。

ロビーフロア



フルハイトの大きな窓で大変明るく爽やかなロビーフロア。いくら中国とはいえ税サ込々5,000円台のホテルとは思えんぞ。但し、一部サービスを妥協することで成り立っている価格なので、ドアマンやコンシェルジュは一切無し。誰にも迎え入れられることなく自分でフロントへと直行する。


フロントに行くと、こちらが名乗り出る前から「ようこそ!」と笑顔で熱烈歓迎を受ける。プラチナ特典自体は500リワードポイントとレイトチェックアウトくらいのものだけど、こういう対応があれば他の特典など要らんわとすらすら思わせてくれるような良い対応だった。中国の新しいホテルにしては珍しいと思ったら、マネージャーさんが他のマリオットからの転籍者らしく、気合の入った指導を受けたらしい。


フロント周りにはアロフトのRe: Fuel的な24時間営業のショップがあり、日用品や簡単な飲食品が販売されている。


ビールの品揃えはそこそこ良いし、価格もホテルのミニバーなんかと比べると随分と良心的。コロナの瓶とドイツビールのロング缶が20元で、青島の330ml缶が10元。仕事終わりにホテルに帰ってきてついつい手が伸びちゃいそうな価格設定だ。


ルームキーでアクセスできるジムもあった。この24/7のミニショップと簡易的なジムを備えるのがフェアフィールドのハード面での特徴らしい。その代わり、プールやファンシーなレストランは無く、飲食施設はオールデイダイニングのレストランが1箇所だけというのがデフォ。

部屋:ビジネスルーム

シンプルだけど清潔で温かみのある部屋、これがフェアフィールドの特徴。
ひだり みぎ
部屋の種類は「デラックス」と「ビジネス」の2種類。ビジネスルームの方が数十元高いレート設定になっているけど、広さや作り自体は変わらなそうなので、低層階と高層階の違いのみなのかな。


別に高層だろうが外の景色は大したことないんだけど、交通量の多い場所にあるので、もしかしたら低層だと外の音がきになってくるのかな。まぁ選べるなら高層フロアを選ぶに越したことはないでしょう。

ひだり みぎ
部屋の中はシンプルながらも快適。特徴的なのは、シンクとベッドがスライドパネル1枚で仕切られていることだろうか。パネルをスライドさせてオープンにすればバスシンクの目の前直ぐがベッドという状態になる。まぁ基本はソロ利用の部屋っす。

ひだり みぎ
ドアを開けて直ぐ右側前方が、このコンパクトなバスルーム。シャンプー・ボディーソープ・ハンドソープは据え置き式の物だし、バスアメニティ的な物も節約の対象となっていて、洗面台周りには歯磨きキット・コップ×2・ドライヤーくらいしか用意されていなかった。

ひだり みぎ
入って左手前方がクローゼット。バスローブやアイロン、電子ポット、冷蔵庫、金庫、スリッパといったところは揃っている。このアイロンなんかはビジネスルームだけの備品かと思ったけど、デラックスにも置かれているみたいだし…ほんとデラックスとビジネスルームの差が分からない。

ひだり みぎ
コンプの水2本、ティー・コーヒーセットもあるし、冷蔵庫にはビールとソフトドリンクも用意されている。


ウェルカムフルーツまで用意頂いたし、切り詰めるところは切り詰めているけれど、ゲストが快適に滞在できるようにとの計らいは十分に感じられる。

朝食

ひだり みぎ
朝食はロビーフロアのオールデイダイニングで。

ひだり みぎ

麺料理の具材も豊富だし、宿泊者全員に付いてくる朝食サービスにしては頑張っている。ホリデイインエクスプレスや東横インレベルだと思っていたので、これは嬉しい誤算。


一泊5,000円台のホテルの無料飯にしては悪くないでしょう。オープン後すぐの滞在で利用客も多くなかったからか、ホリデイインエクスプレスみたく朝食を食べるのに順番待ちみたいなことも無かったし。

所感

いやー、税サ込み朝食付きで368元なら確かにコスパは高い。常平だとフルサービスホテルの汇華国際飯店、逸豪国際大酒店、欧亜国際酒店あたりに泊まられる出張者が多いかと思いますが、清潔度合いと部屋の快適さでいったらフェアフィールドの方が全然上でお勧めです。

フェアフィールド東莞常平(東莞星汇広場万楓酒店)


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住所:常平鎮横江厦村星汇広場2棟
電話:+86 185 7695 0253

プルマン東莞長安(長安君源鉑爾曼酒店) 宿泊記

この日は前々から気になっていた東莞のプルマンへ。東莞のプルマンといえばプルマン東莞長安(長安君源鉑爾曼酒店 Pullman Dongguan Chang’An Hotel)とプルマン東莞フォーラムの二箇所あり、価格帯はどちらも一泊1万円前後と、プルマンにしては安いが東莞のホテルとしては高いという設定になっている。

ネット評価はフォーラムも長安も大差無さそうだが、画像から判断するにフォーラムが低層でクラシカル、長安が高層でモダンといった感じだけど…。どちらにするかちょいと悩んだけど、今回は深センからの移動だったので、深センから近いプルマン東莞長安を選んでみた。

深センからは東莞の主要鎮を回る大型バスで長安汽車北駅へ行き、汽車北駅近くの長安商貿城というバス停留所で9路または11路のローカル市内バスに乗り継ぎ40分程。


長安に着いたらバス停周辺にハイエナの様に群がるバイタクを使っても良いだろう。運ちゃんから街の情報を教えてもらえるしな。「長安と言えば二年程前までは風俗産業の一大集積地的なところだったけど、今や堂々と営業しているエロ系の店はない。しかし、地元の人間である私なら今なお営業を続ける風俗店を知っている。そこの店は公安と繋がっているから100%安心だ。行かないか?」といった具合に余計な営業もされるけど、これもこれで地元民との触れ合いだし。

ひだり みぎ
バイタク運転手の風俗営業攻撃をのらりくらりとかわし続けること20分、ホテルの手前に沙頭総合市場というローカル市場があったので降ろしてもらう。

ひだり みぎ
沙頭総合市場は果物や野菜・日用雑貨品が集まる地元民向けのマーケットで、ローカル市場故に価格設定がすこぶる安い。荒ぶる物欲…。あれやこれやと買いたくなってしまうが、今回は特に安かった偽リーボックや偽アディダスを扱う店でフィットネス用の使い捨てシューズのみ25元で購入した。意外とちゃんとした素材に作りなんだけど、製造原価幾らなんだろうか。

靴だけ買って市場を離れようとしたところ、ウイグル族のような顔立ちの少女がカットされたハミ瓜を売っていたので、最後にハミ瓜も追加購入してホテルへと向かう。
ひだり みぎ
市場から5分程歩くと両端が折れ曲った独特なスタイルのプルマン長安が見えてきた。流石にプルマンという立派で威厳漂う箱だ。

館内も天井が高くグランド感たっぷり。東莞にあるホテルの中ではトップクラスの高級感だな。
ひだり みぎ

エントランスに近づくとビックリ!ニコニコと真っ白い歯でホテルに迎え入れてくれるドアマンがまさかの黒人。これだけでも驚きなのに、黒人ドアマンに歓迎されたと思ったらチェックイン担当もアフリカの人で、更には部屋へと向かう廊下にも中国人上司(?)に中国語で怒られソーリーソーリー言ってテンパるアフリカの方が。アジアでも珍しいんじゃないか、ここまでアフリカンホテルマンを配員してるホテルは。

部屋:コーナースタジオ

部屋は二段階アップグレードのコーナースタジオルームが用意されていた。57㎡あるというが、コーナールームの為に細長い造りになっていて、ベッド周りは実面積以上に狭く窮屈に感じる。

ひだり みぎ
壁・テレビ・カフェテーブル・デスク等に艶のあるブラックを拵えていて、シックでスタイリッシュな雰囲気。

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ミニバーや室内設備は流石にプルマンで、快適な滞在に必要な物は一通り揃っている。チキンステーキサンドイッチ=48元・炒飯=32元と五つ星ホテルのルームサービスにしては価格設定が良心的なのもポイントが高い。

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続いてバスルームを見てみよう。バスタブ脇に大きな窓ガラスがあり、暗めのトーンでシックに纏まったベッドルームとは違い明るく広々とした印象だ。

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バスアメニティはプルマンでお馴染みのC.O.Bigelow。

プール・ジム
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プールとジムは共に5階に位置。ジムは器具の順番待ちをしなければならないくらいの小さなものだった。

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運動後はホテル内のAzure Barへ。最大収容人数百人なんですよーなんて言って通されたけど、利用客は小生のみ。ご自慢の広いバースペースに私一人とかただでさえ気まずいのに、私だけの為に目の前でフィリピン人デュオによる生演奏が始まり気まずさ倍増。



髪振り乱しまくりキメ顔ドヤアアァの大熱唱で、気まずさに耐え兼ね席を離れたいのだが、よく考えたら帰るのも帰るので気まずいという悲しいジレンマ状態にハマる。

結局、45分のセッションを独りで最後まで見届け、拍手喝采してから逃げるように部屋へと帰還した。
ひだり みぎ
ひだり みぎ
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翌朝の朝食はURBAN SPOON ALL DAY DININGで。

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寒すぎる冷房の風が直撃してホットミールは冷めきってしまっているし、プルマンにしては期待外れな内容かな。特にオムレツ(煎蛋巻)はモロに中華風というか、蛋煎卷という中国語の通りパリッパリに固くなるまで焼いた卵を巻いただけの代物で本当に頂けない。煎蛋巻って焼いた卵を巻いてみたってくらいの字義なんで、Omelette=煎蛋巻という中国語訳がそもそも不適切なのかもしれんな。

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冷え切ってしまってて残飯のようなバッフェの料理は申し訳ないが残させて頂き、アラカルトでピザとモヒートを注文。こんなことなら始めから朝食無しプランで泊まれば良かったわ。

まぁ総合的には悪くはないホテルだと思うけど、絶対にまた泊まりたいと思わせるインパクトには欠けていた。場所が場所で観光にも適していないしな。来る前から分かりきっていたことだけど、長安に出張で来られる方にしか利用価値は無さそうだ。

プルマン東莞長安


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住所:NO.38 Jinghai Zhong Road, Shatou District, Changan Town, Dongguan, Guangdong
電話:86-769-81668888
Eメール : h7483-re1@accor.com


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グランドメルキュール東莞虎門 宿泊記

アコーの2連泊×3で6,000ポイントが貰えるキャンペーン、メルキュール ジャカルタ コタ・ノボテル ジャカルタ マンガ ドゥア スクエアと繋いだバトンを受けるアンカーには中国広東省のグランドメルキュール東莞虎門(東莞匯源美爵酒店)を持ってきた。

ホテルの位置する虎門鎮は東莞中心部から南へ約30km。深セン宝安国際空港まで車で40分・広州市中心部まで1時間ちょいと近隣主要都市へのアクセスも悪くないけど、ここに泊まるのは虎門に仕事で用事のある人かディープなアコーマニアくらいのものだろう。自分は後者で、わざわざ週末を使って広州から電車で駆け付けた。仕事終わりに広州市街地から広州南駅まで車で40分、広州南から虎門まで新幹線で17分、虎門駅からホテルまでタクシーで20分…ドアドアで2時間近くかかったな。
ひだり みぎ
虎門は阿片戦争時代の遺構や博物館があるくらいの猥雑な下町ってとこなんだけど、グランドメルキュールの外観は思いのほか近代的。

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ロビーもモダンでスタイリッシュ。ここだけ見たら一泊4,000円は安そうだけど、チェックイン時のスタッフの対応でボロボロとボロが出る。なんかもうスタッフが本当に素人の寄せ集め状態というか…。外国人のチェックイン手続きに慣れてないのかやたらと時間がかかるし、やたらと待たされ待たされ待たされた挙句に部屋が無いので30分待てとか仏頂面で言い放ってくる始末。それだったらチェックイン前に発信された「お気を付けてお越しください。スタッフ一同お待ち致しております」的なメールはなんだったんだ。システムエラーかオーバーブッキングか知らないが、21:00で部屋が準備できてないとか勘弁してくれよ。

部屋:エグゼクティブキング
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結局20分待った後にエグゼクティブルームに通される。いかにもラウンジアクセスの付きそうなカテゴリー名称だが、残念ながらホテル内にラウンジは無く、ドリンクバウチャー類も頂けず。アコー会員には何らメリットの無いホテルである。


渋いセンスのベッドボードは4枚のパネルから成ってるんだけど、4枚の柄の繋がりが微妙に合ってないところに中国的粗雑さが表れている。


なんだよこの岡本太郎的なオブジェ。部屋の全体のトーンと合ってなさ過ぎて気持ちが悪いw。

ひだり みぎ


スリッパはア誰かの使い古しなのか履く前から汚れていたり、ちょっとホテルの清掃管理を疑いたくなってくる。

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清潔なバスルームには深めのバスタブもあるし、4つ星ホテルとして及第点以上。タオル類もヘタってないし。

ひだり みぎ

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部屋の窓からは虎門の下町風景が楽しめる。日本の虎ノ門とは大違いの庶民的な町並みだ。

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ただ、下町と言ってもホテルは大通りに面していて飲食店やコンビニもあるので、必要最低限の食べ飲みには困らない。

ひだり みぎ
特にお世話になったのがホテルを出て右手の方向に2分程歩いたところにあるローカル麵屋。

ひだり みぎ
看板メニューの担々麺は二日連続で飽きずに食べれるくらいには悪くない味。


麵屋の隣にあるパン屋もまぁ食べれるレベル。

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パンが一つ40円程からと安いので、ついつい大人買いしてしまう。


偽マック的なコンビニもホテルから徒歩1分。ビールが350ml缶が2.5元(≒40円)~と鬼安で、適当に食う物・飲む物を調達してホテルで引き籠るのに便利。

朝食:
ひだり みぎ
朝食会場はロビーフロアのフローレンスカフェ。お腹を空かせて土曜日朝9時に気合満点で馳せ参じたところ、殆ど料理が残ってない状態だったw。


酷い!


酷すぎる!


箸もなんだか汚いし…。私とほぼ同時にレストランに入ったマリオみたいな白人のオッサンはキチガイかの様に発狂して従業員を罵倒してたのだが、従業員が言葉が分からずニコニコと聞き流してたのがシュールで受けたw。


日曜日は土曜日の教訓を活かして8時に参戦、見事に食にありつけた。ただ、オムレツも作り置きで冷めてたし、他の料理も軒並み冷めきってしまっていて美味くはなかった。

所感:
居心地の良いホテルを虎門くんだりで探すってのがそもそも難しい話だったんだろうな。虎門には自称5つ星・4つ星ホテルは幾つかあるんだけど、やっぱり深センや広州にあるホテルのサービス水準とは大きく隔たりがある。ホテル修行とは言え、わざわざこんなところまで足を運んだ自分がバカだった。

グランドメルキュール東莞虎門


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住所:広東省東莞市虎門镇虎門大道123号
電話: (+86)769/85244888


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中国の大衆食堂再び。

今日は東莞某所への出張。毎度ながら出張時は食事処の選択に困る。選択肢が多くて困るという贅沢な悩みではなく、選択肢が限られ過ぎて困るのである。

午前の打ち合わせ後に客先近辺を車で流し、ここは駄目あそこは駄目と食堂を選別。選択基準は一に衛生標準、二に衛生標準。味は二の次三の次で、先ずは衛生的で清潔なレストランの確保が求められる。食の安全問題が根深く残る当地では、外食するにあたっての自己防衛が必須なのである。

10分程車を走らせた末、こちらの名も無きローカル食堂に決定。
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これでもここら一帯では清潔な方なんです!

中は奇跡的にクーラー完備。
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今日は不機嫌で荒々しい運転が目立ったドライバーさんも『悪くないね』と御満悦な様子。

肝心のお料理ですが
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ジャン!

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ジャン!

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ジャ~ン!

40種類程の現品を見て気に入った物を小皿によそってもらうシステムでした。1皿6元~15元までのプライスレンジで、同価格帯のお品であれば、1皿に2品を半分ずつ盛ってもらうことも可能。白米は一人2元で食べ放題です。現品を見てオーダーできるのは非常に助かる。

普段は肉系中心に食べていますが、ここの肉類は外観からして衛生面で危なっかしい感じがしたので今日は遠慮しておきました…

結果、何だか非常にみすぼらしい感じの昼食になってしまった。

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6元の揚げ豆腐に8元のゴーヤチャンプルとレンコン炒め(レンコンはゴーヤチャンプルの下に隠れています)プラス白米で〆て16元(≒200円)。見た目と値段以上に美味しかったです!ケチケチせずに溢れんばかりに盛ってくれるのも有難い。

あとどうでもいいことだが、ゴーヤは中国でも苦瓜と言うらしい。スイカが西瓜、カボチャは南瓜、キュウリは黄瓜で…お陰様でウリ科系植物のボキャブラリーが一個増えました。

明日も出張だ。大丈夫かとは思うが、朝起きて腹を壊してないことを祈る!

アヘン戦争博物館・海戦博物館

今日は中国の広東省東莞市の虎門鎮に関して。ここは清国と大英帝国によるアヘン戦争の舞台となった場所で、中国人旅行者の間でもアヘン戦争に因んだ観光スポット(=愛国主義教育基地)が多数あることで有名です。

時は18世紀後半、清朝は半ば鎖国状態とも言える程の貿易制限策を取っており、欧米諸国との交易は広東省の広州一港に限定、更に清朝政府の許可を得た特権商人としか取引できない体制を敷いておりました。当時の英国は中国から中国茶・陶磁器・絹を輸入していましたが、その反面、中国への輸出が殆ど無いことから輸入超過となり、当時の国際貿易の決済に使用されていた銀が英国から大流出、大きな通商摩擦が重商主義の英国内で問題視されるようになりました。

更に北米に目を向けるとアメリカ独立運動の機運が高まっていたことから北米対策への負担も増え、台所事情が苦しくなります。こういった状況で先ずは“開国”を求めて清政府に使者を派遣。しかしそこは中華思想どっぷりの当時の清朝、英国からの派遣団に対して『三跪九叩頭の礼(3回跪いて、頭を9回床につけて礼を見せる)』を要求するなどして話が噛み合いません。従来の中国の歴代王朝と周辺諸国との関係では中国王朝が上位に立ち、相手を服属させる関係を結ぶ一方で、内政の干渉はしませんよという攘夷関係を採っていましたが、誇り高き英国人にはこの考えは通用しませんでした。

そこで英国紳士は考えた。当時のインドで生産したアヘン(麻薬)を売ってみようと。アヘンを清朝に輸出し、そのインドには英国製の綿織物を輸出。そこで得た代金で英国が清朝からの諸物品を輸出する、いわゆる三角貿易の開始である。
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英国にとってはこの策が功を奏し、清朝ではアヘンが空前の大ブーム(?)になります。1838年には清朝の年間歳入の3分の1以上の額のアヘンを輸入するほどまでになってしまった。清朝政府は国家財政破綻の危機を感じてアヘンを禁止、その取締役大臣に林則徐を採用します。

林さんは断固たる決意を持って欧米諸国のアヘンを押収。虎門に造った二つの巨大な人工池にてアヘンを石炭と一緒に投入することで化学変化を起こさせて処分したという。この清朝の対応に対して英国では清国への出兵が議会で可決され、1840年のアヘン戦争へと発展します。

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後に英国自由党首相の座に上り詰めるウィリアム・グラッドストーンは議会で『大義無き戦争は英国末代までの恥となる!』と出兵反対を強く訴えますが、出兵賛成271票に対し反対が262票と僅差で出兵が決議されてしまいます。

前置きが長くなりましたが、虎門に林さんがアヘンを投げ捨てた人工池跡が残されてます。
ひだり みぎ
この敷地内には人工池の他、林則除記念館・アヘン戦争博物館も入っていて、『全国重点文物保護単位』『国防教育基地』『全国禁毒教育基地』『全国愛国主義教育示範基地』『AAAA級観光景区』を兼ねているという、何だかおどろおどろしい場所のようだ。

敷地の中央にどっしりと鎮座しているのが林さん。
ひだり みぎ
列強にたいして気後れしない林さんの民族的気概と、母国・国民の為に立ち会がった愛国主義的精神は現代の愛国主義教育の中でも大々的に取り扱われている為、若い世代の中国人なら誰しもが知っている程の有名人物です。

ひだり みぎ
文字通り命を賭けて国防に貢献した愛国者たちのレリーフ。中国でも軍人はやっぱりゲートルを巻いたりしてたんですね。筋骨隆々とした屈強な男どもから成る精鋭部隊も動員されましたが、結果は近代装備を配した英国の圧勝に終わりました。。

ひだり みぎ
開戦前には珠江河口に砲台11基、大砲300発を設置、60隻のジャンク船に漁民や農民から成る民兵も組織しました。アヘン戦争時もほぼ国民皆兵体制だったのでしょう。

ひだり みぎ
玩具の大砲を使った的当てゲームなんかも楽しめたりします。

博物館は敷地の一番奥にあります。
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愛国主義教育基地でもあるこの施設には多くの人が訪れていました。

先ずはアヘンの紹介。
ひだり みぎ
アヘンの流入は貿易赤字を引き起こしただけでなく、清国内のアヘン吸引の悪弊によって国民の健康が著しく害され、社会の風紀退廃や軍兵のモチベーション低下にも繋がり、清朝内でアヘン厳禁派が台頭、アヘン取締りの動きが加速します。

アヘンを池に処分する愛国者たちの画(右)に実際の池(左)
ひだり みぎ
1月間かけて1,500トンものアヘンを廃棄。化学反応による煙がもくもくと立ち込めていたことから、当初は焼却処分をしていると思われていたそうです。

続いて獅子洋にかかる虎門大橋のすぐ横にある海戦博物館へ移動。
ひだり みぎ
夏真っただ中で観光シーズンのはずであるが、海岸沿いは手入れがされておらず非常に汚い。

ひだり みぎ
虎門大橋は全長15.6km。まさにここがアヘン戦争の舞台でした。開戦が避けられないと悟った林さんは沿岸防備を固めます。

ひだり みぎ
ひだり みぎ
広州に入る前に珠江の入り口である虎門で英国艦隊を迎え撃つ作戦でしたが、相手の大砲とは射程差が大きかったので清朝の射程外から攻撃を受けてしまう。世界の中心を自負していた中国の防衛体制はいとも簡単に瓦解してしまいます。今の中国の海防意識の強さはこの時の苦い経験から来ているのでしょう。

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海戦戦略も欧米諸国のそれと比べて非常に単純幼稚であったとされています。中華思想にかまけて他国侵略に対して十分な対策を取っていなかったことから清朝の防衛体制・軍事態勢は余りに脆弱でした。陣頭指揮を取れるような優秀な人材にも乏しかった為、軍の統制すらままならなかったとか。

ひだり みぎ
敵軍の上陸を許し、あっさり広州を包囲される。その後アモイ・上海までも北上され、首都である南京に迫られた時点で清朝が屈服。不平等条約が調印されてアヘン戦争が終結した。条約の内容は①香港の割譲、②賠償金支払い、③広州、アモイ、福州、寧波、上海の五港の開港に自由貿易の承認などで、この不平等条約から列強諸国の清朝に対する植民地化が開始され、中国は“国恥”と呼ばれ、中国人が東亜の病人と形容されるこ屈辱の時代に突入することになります。日本国内ではアヘン戦争で隣国が完膚なきまでに叩きのめされたことから開国派が台頭し、明治維新へとつながっていきます。

この博物館は愛国主義教育基地としての機能の他に、青少年禁毒教育的重要施設の役割も兼ねています。同じ過ちを繰り返さない為にも麻薬なんかに手を出したらダメなんだ!

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男の表情と握りしめた拳から強い決意が伝わってきます。

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こうなったらダメだぞ!

アヘン戦争後の“国恥”とも形容される時代は愛国主義教育の主要プログラムの一つです。如何に中国が騙し虐げられ、多くの志ある有能な民が命を捧げて母国を守ろうとしたか。この国恥は共産党が帝国主義の象徴であった当時の日本軍支配から解放して“新中国”を打ち立てた。そして世界に蔓延していた当時の強権主義・覇権主義に異を唱えたんだということが強調されています。ここら辺が共産党の反日教育により国民の不満の目を逸らされていると言われる所以です。

それにしてもかつて覇権主義に反対した国が今や率先して…おっと、ここら辺でこの話は止めておくことにしましょう。