ウルムチ⇒敦煌 天津航空 ERJ190搭乗記

ウルムチから甘粛省・敦煌への1,000キロ区間は飛行機でひとっ飛び。これで新疆ウイグル自治区とはお別れとなる。

軽く寝坊したので空港へはタクシーで(所要時間=30分弱、運賃48元)。ウルムチ地窩堡国際空港は中国西北地方及び中央アジア一帯のハブ空港的な役割を果たしていて、ターミナルも3つとそれなりに巨大。今回利用する便のターミナルが分からずに軽くテンパるも、出発時刻1時間前に滑り込む。

セキュリティは鉄道駅以上に厳しく、空港に入るのにも当然ながら荷物検査が必須。そして、中には自動小銃を構えた兵士が睨みをきかせてるというね。自動小銃ですよ、自動小銃。そんなん家族旅行とかで一家団欒ウキウキ気分で空港に来てもムード興冷めだろ。

ひだり みぎ
もちろん空港内での保安検査も徹底されている。指示に従い靴を脱ぎベルト・時計を外して検査台へ上がり、時間をかけゆっ~くりと全身まさぐられるのにじっと耐える。そして、暫くすると係官がおもむろにしゃがみだし、今度は足の裏まで隈なく検査という。これは別に小生が怪しまれていたという訳でなく、搭乗客全員に対して行われる検査内容なのである。故に保安検査では時間を要し、常に長蛇の列ができている。国内線だからとなめてかからず、時間に余裕をもって空港に来る必要があるだろう。搭乗時間に間に合わないかと本当にヒヤヒヤしたわ。


さて、今回利用するのは天津航空のウルムチ⇒敦煌便。ウルムチ・敦煌・西安・張掖あたりの西北部をグルグルと巡回するという西北部限定の運用をされている特別便らしい。オフシーズンなんでウルムチから敦煌への直行便はこの1便だけで、オールエコノミーの全106席、ド満席である。

ひだり みぎ
機体へはウルムチから搭乗する他の乗客と共にバスで移動…。だが、濃霧による視界不良につき出発が見合されることに。数メートル先の視界も遮られてるくらいだからな。濃霧も濃霧だわ。激濃。


ひだり みぎ
搭乗開始時刻を30分程過ぎてからご搭乗。まじかよ。こんな視界不良で飛んでくれるなよな。本当は今日敦煌着いてから万里の長城の最西端とされる玉門関に行きたかったけど、もう遅れても良いんでセーフティーファーストで頼むよ。

ひだり みぎ

ド満席の機内に御搭乗。座席スペースも狭いし天井も凄く低い。


それにしても凄まじい濃霧である。「なんで飛ばねーんだー」なんて後ろの席の男は私の背中に向かって延々と文句を垂れているが、こんなん飛んでもらったら困るわ。


結局、霧が若干適度晴れてからプッシュパック…と思いきや、今度は除氷車が来てディアイシング作業による足止めを喰らう。そして…徐氷作業が完了したと思ったらお次は滑走路の順番待ち。まぁ安全第一ですからね。


雪に囲まれた滑走路をタキシング。窓の外が北国過ぎる。

ひだり みぎ
良かったー、無事に飛んで。雲を突き抜けたら真っ青な空が見え、世界遺産にも登録されている天山山脈を越えて南へと飛んでいく。好天に突き刺す鋭いピークと谷部の白い雪の対比が眩しいほど美しい。


標高が高いのか飛行機の高度が低いのか、地上の濃霧が嘘と思えるくらいに空気が澄んでいることもあり、眼下に広がる山々や街並みがハッキリと見える。


山脈を越えると、だんだんと雪景色が視界から消えていき、代わりに眼下には茶褐色の大地が広がった。砂・砂・砂…。次なる目的地・敦煌は、そんな砂漠に囲まれたオアシス都市。本当に辺り一面無限の砂地獄。三蔵法師御一行様、こんな中を歩いてインド目指すとか、自殺行為にも程がある。


離陸から30分程、ショボい餌が配られる。ただでさえ乾燥してるのにこんな沢山ビスケット食ったら口の水分が全部もってかれて唇が干しブドウみたいになっちまうわ。

フライト自体は1時間半ちょっとでしたかね。延々とゴビ砂漠の上空を飛び続けた飛行機は、荒涼とした砂漠めがけて高度を落としていく。
ひだり みぎ
おいおい砂漠に不時着かよーって感じだったのだが、着陸間際、窓の外に滑走路が現れ安堵する。そんなこんなで、砂漠のど真ん中に建つ敦煌空港に到着だ。


真っ青な空の中、陽の光をいっぱいに浴びて金色に輝く敦煌の二文字が目に飛び込んできて、「おぉぉぉ・いままさに敦煌の地に降り立ったぞぉ。」という実感が湧いてくる。

ひだり みぎ
空港から市内へはエアポートバスで10元。チケットカウンターは無人だったので、空港の出口脇に停めていたバスのドライバーに直接お支払。

今日は遅延により旅程の一部省略を余儀なくされたけど、フライトキャンセルや遅延のリスクを取って真冬の新疆を旅行してるんだから仕方が無い。寧ろ安全第一濃霧の中を特攻されずに助かったと思いたい。



Booking.com

【2017年新疆・敦煌・西安旅行記】






ウルムチ国際大バザールと二道橋市場

さて、零下10度を下回る極寒のウルムチで何をするか。

最寄りの海から2300kmほどの距離があり、地球で最も海から遠い都市と言われるウルムチ。敦煌やハミ、トルファンのさらに奥というと砂漠と山脈しかない西域の僻地というイメージを抱いてしまいがちだが、実際には天山山脈の麓に上海や深センなどと何ら変わらぬ驚きの大都市が形成されている。街の中心部には有名ブランドが入る大型モールや高層ビルが軒を連ね、街にはオシャレな装いの若い漢族男女がスマホをいじくりながら歩いていますからね。

そんな大都市ウルムチの市内には、残念なことに観光資源は殆ど無い。唯一観光地らしい場所と言えば国際大バザールくらいのものだけど、ここも訪れた旅人たちからは不自然に作られたはりぼて感満載のショッピングモールと扱き下ろされてしまっているし。さてウルムチで何をするべきか。

一日中ホテルに籠りっぱなしもなぁ、かといって郊外まで出るのも億劫だし…ということで、考え抜いた末にはりぼて感満載の国際大バザールを見に行ってみることに。シェラトンからバザールへ直で行けるバスが無かったので、先ずはバスでウルムチ南駅へ。

ウルムチの冬は過酷で、1月の平均最低気温は零下19度。酷い時には零下30度を下回るとか。雪山あり、氷柱トラップあり、道路凍結有りと、完全にアイスクライマーの世界である。

ひだり みぎ
ウルムチ南駅は蘭州からの蘭新線・阿拉山口駅からの北疆線・カシュガルからの南疆線の終点起点となっていて、駅前は旅館や市場も多くワイワイ賑やかな雰囲気だ。


それにしてもウルムチの中心部には本当に漢族が多いなぁ。新疆にいるという実感がわいてこない。

ただ、国際大バザール近くの二道橋マーケット周辺なんかはウイグル色が強く、エスニックな街並みが広がっている。

これでも随分と行政による再開発が進んでしまっているらしい。少し前までは更に古朴とした雰囲気だったとか。


どれもこれも色彩が派手だし、ここら一帯では女も男も絢爛多彩な民族的服飾を見にまとっているので、とにかく街中がカラフルだ。

二道橋マーケットに入ってみる。
ひだり みぎ
ここで商われているのは新疆各地及び中央アジア各国の伝統的手工芸品や生活用品であるようだ。数元程度の使い捨て食器や繡花小帽から様々な図案をした数万元の本格的ウイグル地毯や高級和田玉まで何でも揃っている。

ひだり みぎ
このフロアには干し果物や飲食ブースが立ち並び、漂う空気には様々な香りが入り混じっている。

続いて、ローカル色の強い二道橋マーケットから観光客向け要素の強い国際大バザールへ。

尖塔にモスクらしき玉ねぎドーム屋根…潔いほどにこってりこってりしたイスラム建築がお出迎えだ。

ひだり みぎ
このバザールは2009年のウイグル騒乱の現場となった場所であるらしく、今でも厳重な手荷物検査が行われてる。

ひだり みぎ
うーむ…噂に違わぬハリボテ感。シンボリックなイスラム風な塔やテントなんかが設置されている。


ラクダやピラミッドまであるし…。

ひだり みぎ
オフシーズンの為かバザール内の各店舗には客が殆んどおらず、全くといっていいほど活気がない状態だ。一番人気が同じ敷地内のカルフールというんだから笑えてくるわ。皆さん他の店は眼中にないといった感じで、荷物検査を受け敷地に入ってからカルフールに直行だったもんな。

そんな冴えない国際大バザールではあるが、お土産色ばりばりのイカしたコーナーなんかもある。
ひだり みぎ
ひだり みぎ
ひだり みぎ
煌びやかだー。ウイグル族の工芸品や民族衣装、トルコ絨毯、ロシアンなマトリョーシカ、これでもかと金ぴかに輝く装飾品に中央アジア的調度品などなど、見慣れない西方の土産物の数々が…。アラブと中央アジアと東欧とがごっちゃになった詰め合わせ感が堪らない。


その他、ウイグルハットにウイグルナイフ、革製品、シルク、弦楽器などなど多種多様なカラフルウイグルグッズがフロア一杯に敷き詰められている。


もちろんの和田玉も。新疆のホータン地区(和田地区)で採取される中国の国石だ。嘗ては皇帝一族しか持つことのできなかった希少価値の高い和田玉、ここは記念に一個…とも思ったけど、高い。ひたすら高い。翡翠相場までバブル化してるとは聞いていたけど、ちょっと買う気が失せるくらいのお値段だったので、ここは泣く泣く撤退。

やっぱり基本的には観光地価格なのかなぁ。手っ取り早く中欧アジア全域の土産物が調達できて便利だとは思うんだけど。

【ウルムチ国際大バザール】

住所:解放南路8号
営業時間:10:00-20:00(5-9月)・10-4月(10:30-19:30)

【二道橋市場】
住所:解放南路37号
営業時間:10:30-19:30

シェラトンウルムチ クラブフロア宿泊記

ハミからトルファン経由でウルムチまで鉄道で移動した前回エントリーからの流れで、新疆時間03:30にシェラトンウルムチに到着した。場末感満載のB級ホテルしかないような辺鄙な田舎町を巡り歩いた末に辿り着くシェラトン…ロビーに入った時に感じる温もり・安心感は筆舌に尽くし難いものがある。

32階建てで372の客室を誇る大型ホテル。世界で一番海から離れた都市と言われていて、シルクロード上の辺境の町というイメージのあるウルムチだが、市の中心部にはシェラトンの様な高層ビルや大型ショッピングモールが林立する内陸の大都市だ。

ひだり みぎ
この画像は新疆時間09:00に撮ったものであるが、マイナス20度の寒さが伝わるであろうか。ウルムチはタクラマカン砂漠の北方に聳える天山山脈の更に北方に位置するため、カシュガルやクチャよりまた一段と寒い。皮膚が痛くなるレベルで寒いんだ。

ひだり みぎ

このシェラトンもロビーとショッピングモールが連結しているのだが、驚くことにゼニア・オメガ・ヒューゴボス・バーバリー等の高級店ばかりで、買い物客は殆どが漢族というね。え?ここウルムチですよね?と思わず疑ってしまう。


まさか自分もウルムチでゼニア製品を買うなどとは夢にも思って無かったが、セール品のシルクネクタイが安かったので購入した。

さて、新疆時間03:30に到着したところまで話を戻そう。金属探知機での荷物検査を経てロビーに入り、同情を誘うような疲れきった表情でフロントスタッフへと歩み寄り一言「チェックインプリ~~~ズ」。すると、ちょっと参った様な表情で、「いやいや、今まだ新疆時間4時でして、今チェックインすると、システム上の問題でもう一泊分の料金がかかることになります…。正規のチェックイン時間は新疆時間12:00、すなわち北京時間14:00となります。」うん、ごもっとも。そうだよね。知ってたよ。でも、「そこを頼むわー。どんな部屋でも良いんで空きがあれば何とかならんかなー。」と粘り腰で相談を持ち掛けると、スタッフ氏はパソコンをピコピコ弄りだし、ちょっと頑張って部屋を用意してみるから、ロビーで暫く待つようにと一言告げた。果たして…20分後にルームキーを持ってロビーまで来てくれた。Your24申請時以外でこの時間にチェックインできたことは初めてだ。神対応をありがとう。


これだからSPGライフは止められない。ウキウキ気分で部屋のある28階へと向かう。

部屋:エグゼグティブデラックス

ひだり みぎ
部屋に入ると、正面がベッドルームになっている。何人での利用を想定してるのか知らんが、中々広く、オフィスチェア×3・一人掛けソファ×2・パーソナルチェア×2と各種椅子がやたらと豊富w

ひだり みぎ
外にはウルムチの高層ビル群の合間から天山山脈までハッキリと見渡せる。

ひだり みぎ

ひだり みぎ


外出先から部屋に戻ると、ウェルカムフルーツに加えて新疆名物のナッツも運ばれていた。



外は極寒氷点下なのにちょろちょろとした水量の微温湯しかでないような安ホテルを転々としてきたので、アッツアツのシャワーを浴びて体の芯まで温まれただけで感極まって泣きそうになるw。今回の旅行を通じて小さく些細なことにも幸せとか生きる喜びを感じられるようになった気がしてくる。

エグゼグティブラウンジ

ひだり みぎ
ラウンジは27階。上海や深センといった沿海部の大都市にあるシェラトンと比べると、随分とシーティングスペースが随分とゆったりと設けられている。ラウンジの利用客が多くないからなのだろう、今回に関しても他に利用客がおらず、ラウンジ独り占め状態だった。

ひだり みぎ
それにしても、窓の外に広がるウルムチの都会っぷりには改めて驚かされる。道路両脇に建ち並ぶ高層ビルと果てしなく続く車輛の行列がどことなくジャカルタを彷彿とさせるんだ。幾ら新疆省の首府とはいえシルクロード交易で一時的に栄えた辺境の古都程度だろって先入観持ってたんだが…。やるじゃん西部大開発。

外はマイナス20度と極寒なので、晩食はイブニングカクテルで済ますことに。
ひだり みぎ
お酒はヒトコブラクダのロゴが可愛らしいご当地のシルクロードワインとビールのみだが、ビールは烏蘇と新疆ビールというローカル銘柄2つを含む全5種類と充実。


ミールはどれもこれもすっごく美味しくなくて、外から買ってきた冷凍の物を蒸したのであろう饅頭が一番マシという為体。こりゃあ明日の朝食も期待ができそうにないな。気の利くウイグル系の美人女性スタッフが居てくれるのが唯一の救い。

朝食も27階で。

ひだり みぎ
利用客が少なく静かなのは良いが、やはりここでも食欲がそそられない系のメニューばかりが揃ってしまっている。


食事については中の下レベルかな。余り日本人のお口には合わない内容かと。

館内施設:

ひだり みぎ
今回は利用できなかったが、新疆料理レストラン・巨大コンフェレンスルーム・プール・ジムを完備。

所感:

うーん。新疆唯一のSPGプロパティにして新疆省都ウルムチ最大級の巨大ホテルがシェラトンウルムチ。この日は殆ど利用客がいなかった気がするのだが、一体どういった客層が利用してるんだろうな。ウルムチに進出している外資チェーンで言えばヒルトンとグランドメルキュールもあるけれど、内資資源関連企業の出張者用?ウルムチは新疆各都市へのハブになっているとはいえ、旅行客が長期滞在するだけの観光資源がある場所ではないし…。

ラウンジは飯がしょぼく、わざわざ追加料金でエグゼルームを利用するのであれば、そのお金で外のモールで食事をした方が良いレベル。中国内陸の非観光都市のホテルに余り多くを求め過ぎてはいけないということでしょう。

シェラトンウルムチ(Sheraton Urumqi)


Booking.com


住所:669 Northern Youhao Road, Urumqi/ 友好北路669号
電話:86-991-6999999
SPGカテゴリー:3


Booking.com

クチャ⇒ハミ⇒トルファン⇒ウルムチ 鉄道の旅

この日はクチャからトルファンに向かう予定であったが、計画を変え鉄道でハミまで南下することに。ハミは甘粛省にも近い新疆東部に位置し、古代ウイグル族の「Khamil(大きな門)」を由来にする名前の通り、嘗ては中央アジアへと続く天山北路のゲートとして繁栄したそうな。


距離的にクチャから1,000キロ超はあるんじゃないだろうか。14時間もかかったわ。


23:38発のK1662に出発時刻に合わせてホテルをチェックアウトし、真夜中のクチャ駅へ。


当然ここでも駅の敷地に入る為だけに身分証明証と荷物の検査がある。これがジャカルタのホテルなんかで実施されている緩ーくナーナーな検査ではなくガチチェックなもんで、時間がかかることこの上無し。新疆内の鉄道駅へは時間に余裕をもって向かいましょう。

ひだり みぎ
この日は大量の物資を抱えた手稼ぎ系風なウイグル族の方の利用が多いよう。すっごい人口密度の中で待たされて、出発時刻30分前に漢族係員のご指導によりホームへと移送される。


マイナス10度以下のくっそ寒い中、20分程ホームで列を作って待たされる。その間、係員は延々と「列車が来ても決して列を崩さぬよう。一人一人順番に、文明的に乗車するよう。」と夜闇に大声を張り上げ“教導”してた。


こんなに早くから外で待たせやがって!と思い始めた23:29、予定到着時刻よりも10分程早く列車が到着。カシュガルからトルファン・蘭州等の大都市を経て、省の宝鶏までの3,600キロを走破する列車である。3,600キロとか北海道から沖縄以上の距離があるし…北海道(新千歳)から香港までの距離が3,430キロというとこの距離感がお分かり頂けるだろうか。もうホント大陸のスケールは凄まじいわ。

今回の座席であるが、カシュガル―クチャ間で利用した4人部屋の1等席が確保できず、残念ながら通路脇に備えられた簡易3段ベッド(2等席)の上段席となった。
ひだり みぎ
片側に細い通路があり、あとはずら~っと仕切り・カーテン無しの三段ベッドが並んでいる。一等席と違いコンパートメントで仕切られていない分、煩さや匂いが気になるのが二等席のデメリットか。合宿感が高いというか、三段ベッドを家族で借り切ってトランプをしたり飯食ったりと、日本とは違い中国の寝台車の中は結構騒々しい。基本的に声でかいし、彼ら。まぁ楽しむ分には良いんですけど、問題なのは消灯後もその状態に変化が無いことだ。流石に他の人が寝ている時くらいは弁えられないのかとは思う。

ひだり みぎ

ベッドはこんな感じ。一番下の段はベッドに腰掛けるスペース的余裕もあるが、2段目・3断目は頭がつかえて座ることすらままならず、ベッド上での移動は戦場の歩兵気分で匍匐前身が基本。水を飲む時などは寝たきり患者気分で上半身だけ起こし水を口に流し込まねばならない。故に、料金は上段が一番安く、下段が一番高い設定になっている。

一等席と比べたらベッドも気持ち程度固いだろうか。

それより、消灯されているのに真夜中に大声で話す阿保がいて、疲れていたのに中々寝つけなかった。


09:45、夜明けと共に通路の一人席へ移動。自分のベッドの中段・下段の人間は途中下車しており、体臭のきついウイグル族の男性に入れ替わっていた。


ピチャンを過ぎ、砂漠に突入。


13:38、ハミ駅に到着後、同じく新疆を旅行中だった知人と合流して会食。

できればハミで一泊したかったところだが、明日以降の計画を考えるとウルムチまで戻る必要があったので、夜のうちに泣く泣くハミを離れることに。結局、ハミでは観光も何もできなかったし、そういやハミ瓜も食べてない!

意外に栄えているハミ駅前。かなりの距離を南に下ってきたので少しは温かいのかと思ったのだが、ところがどっこいハミも1月の平均最低気温は零下16.7とまだまだ寒い。


ひだり みぎ
煌びやかで現代的なハミ駅。

仕事納めから非常なる過密日程での旅行が続き疲労困憊だったので、列車に乗るなりグッタリ。

目覚ましで起きたらトルファンの一歩手前。ということで、2017年度はハミからトルファンに北上する列車でグッタリしながらの年越しとなった。


ひだり みぎ
北京時間02:00、トルファン駅に到着する。ここでもマイナス14度、寝起きの体にはちと堪える。

到着ホームから一旦外に出てキップを買いに行かねばならなかったのだが、吠え狂う野犬に追いかけ回された挙句に氷結した道路で転倒するアクシデント発生。野犬、マジ絶許。散々な年明けである。
ひだり みぎ
追いすがる野犬を振り切り、03:31発K679号の三等席を購入。一等・二等に続き、この三等で全座席クラスをコンプすることになる。

ひだり みぎ
警備員しかいない寂しいプラットホームで出発待ち。警備員には「なんだお前、一人なのか」と心配される流れから、「結婚してないのか」とお節介事まで言われる始末。

ひだり みぎ
出発時刻となり、ガラガラの三等車に乗り込む。

ひだり みぎ
汚いな~。小生の座席番号で他人が横になって思いっきり爆睡してるし。


結局、極寒のウルムチに辿り着いたのは北京時間朝5時(新疆時間3時)。クチャのスバシ故城も寒かったが、ここはもう一段階寒さのレベルが上。顔が痛くて大変なので、もっこもこマフラーとニット帽で顔も防御し、目だけを出す格好で歩かざるを得ない。



こんな時間に公共交通機関は無く、宿泊先のシェラトンまでは白タクで向かうことに。言い値30元から20元に値引いたからか、シェラトン方面に行く他の客を捕まえようとして中々出発してくれなかったが、05:30には無事にシェラトンへと着くことが出来た。


果たして新疆時間03:30のアーリーチェックインが受け付けられるのか…。



Booking.com

【2017年新疆・敦煌・西安旅行記】







タクラマカンの秘宝 キジル石窟(キジル千仏洞)

お次の目的地はクチャの町から西に70キロ程のところにある、新疆地区最大の石窟寺院・キジル千仏洞。敦煌・雲岡・龍門なんかと並び中国八大石窟の一つと目され、タクラマカンの秘宝とか死の砂漠に咲いた仏教芸術の名花とまで評される重要遺跡である。辺鄙な場所にあるけれど、タクラマカンの秘宝とまで聞かされたら行かない訳にはいかんっしょ。

ということで、クズルガハ烽火台から一路西へと車を走らせる。

ひだり みぎ
奇岩の聳えるワイルドな塩水渓谷の中を爆走。天山山脈の真っ赤な山肌に深い切れ込み…冒険してるぞ感が高まってくる。


ひだり みぎ
渓谷を抜けた先のキジル千仏洞への道沿いには、これまた珍しい堆積地層の山地が横たわっている。まさにそこは草木1本見当たらない赤茶けた奇岩の山並みで、まるで月世界に来たかと思わせるような怪奇な風景が展開する。

ひだり みぎ
不毛で荒削りの岩肌を持つ岩石山の間を縫いながら分け行って行き、岩石山を抜けると今度は荒涼とした丘陵地帯のゴビ砂漠に入る。凄まじく荒れ果てた景色の連続で、完全にVRの世界ですわw

見渡す限りに広がる砂漠の中を20分程走っただろうか、急に視界の先が開け、眼下にムタルト川が形成するオアシスの空間が現れる。これがキジル石窟へと続くエントランスなんだと。草木1本生えないこの荒涼とした場所に、忽然とオアシスが出現する様は例え様のない心の安らぎを感じるものである。

エントランスからは石窟が造営された岩山の稜線が見える。この季節の訪問者は殆ど無く、小生がこの日初めての旅行者とのことだ。


オフシーズンにうき博物館も閉館中。



ポプラ並木の中を進むと、前方に小高い山を臨む広場に出た。


考える人みたいになっているが、こちらはクチャ出身で大乗仏教を東アジアに伝えた三蔵法師鳩摩羅什の座像。背後の険しい岩壁に蜂の巣のようにびっしりと開削された石窟群が確認できる。

ムザト河北岸の懸崖に東西3キロに渡って築かれたキジル石窟。後漢から宋代にかけて開削されたもので、その数は仏殿窟・僧房窟合わせて236窟。敦煌の莫高窟よりも古い魏・晋・南北朝時代から唐朝後期に至るまでの約1000年の月日と多くの人間の情熱をかけて築かれたものだと考えると大変に感慨深い。

創作者は、河岸壁の比較的軟らかい断崖を穿ち窟として、その内部にはウルトラマリンにも使われる希少なラピスラズリ等を使って壁画が描いたそうだ。壁画の題材は釈迦の誕生から涅槃までの仏伝図・釈尊の生前の物語・古代西域の各民族の人々の風俗画などなど多岐に渡っている。

そんな芸術性の高いキジル石窟だが、自然崩壊とイスラム教徒や文革による破壊、20世紀のドイツ人探検隊に大谷隊等の剥ぎ取り持ち出しにより、その多くは残念ながら原型を留めていないという。
ひだり みぎ
現在では各洞窟は保護の為に施錠されていて、鍵を持ったガイドの同行がなければ洞窟内部を見学できないようになっている。ということで、専門ガイドが合流してきて一緒に洞窟を見て回ることに。「今回は34・32・27・8・10・17」の6箇所を見て回りますーと。

そう、見学できる洞窟も限定されてしまっているのだ。しかも、それらを自由に全部見て回ることも出来ず、ガイドの気紛れで拝観できる石窟が決まってしまう。

急な階段を上り、いざ参拝。

ひだり みぎ

岩肌にびっしりと開削されているのがよく分かる。この景色だけでもうお腹いっぱいだ。

ひだり みぎ
脚下にムザト河が傍を流れ、渓間には雪が残る。乾いた風景ではあるが、川に向かってポプラ林が続いているので、夏にはオアシス的な景色が楽しめるのであろう。

もうホント凄いわー人間、ってなりますよ、ここ。砂岩に穴を穿って空間を作り、壁画を描き細工を施した人々の信仰心と凄まじいまでの執念が生んだ芸術…厳しい自然環境・異宗教による破壊・冒険者の盗掘に耐え千数百年。一部は切り取られ穴を空けられと破壊されてしまっいるとはいえ、今なお絢爛たる色彩で色鮮やかに残る当時の人々の想いと願い、そして釈尊の前世の物語。圧倒される。

最後は極寒の中の見学に付き合ってくれたガイドに幾何かのチップを差し上げ、クチャへと引き返す為に再び荒涼とした大地を突っ切っていく。

人間もやべーが、自然もやべー。地球の圧力によって歪められた褶曲地層が続く。


垂直に反り建つ地層。


岩山を抜けるとゴビ砂漠に抜ける。天然ガスのコンビナートが蜃気楼のように地平線に建つ不思議な眺めである。

アクセスが悪くクチャからタクシーをチャーターする以外に行く方法はないが、ここは新疆旅行にはマストでしょう。

【キジル千仏洞】

開放時間:09:30-19:30(5-9月)・10:00-19:00(10-4月)
入場料:55元



Booking.com

【2017年新疆・敦煌・西安旅行記】