吉林省・延辺朝鮮族自治区にある珲春市までやってきました。
本日は珲春の最南東に位置し、中国・ロシア・北朝鮮の国境が交わる極東のゴールデントライアングルこと防川展望台へと向かいます。
数百kmにわたって中国と北朝鮮とが向かい合う延辺朝鮮族自治区。鴨緑江と図們江の2つの河川が天然の国境となっており、それぞれの河川の上流域から下流域まで大小合わせて相当数のイミグレと北朝鮮のウォッチングポイントがあるようです。
そしてその中でも一番の人気(当社調べ)が防川展望台。北朝鮮とロシアに中国の国力を見せつけるが如く、ゴリゴリの愛国教育基地 兼 観光地として開発されたみたいっす。
そんな辺境の地の人気スポット・防川展望台は珲春市街地から70kmほど離れた場所にあり、綺麗に整備された省道を車で1時間ほどかけ向かいます。標識にはハングル文字も併記されていますし、この時点で既に辺境の地感たっぷり。
しばらく走ると、手つかずの大自然の中に不自然なまでに巨大で威圧的な建物が見えてきました。圏河検問所という吉林省内最大の国境検問所で、全中国で見ても遼寧省の丹東に次ぐ第二位の北朝鮮へのゲートウェイだそう。北朝鮮側の検問所は掘っ立て小屋レベルでしょっぼいのに、中国だけ当地の開発にかける思いが強すぎますw
ここら一帯は北朝鮮側への日帰りツアー等を企画する旅行会社や朝鮮産品を売る土産物屋なんかが密集していて、辺境地ならではの独特の経済圏が出来上がってます。中国人の日帰りツアーでは川の対岸の北朝鮮・羅先市に行くのにビザどころかパスポートも不要、更には自家用車でそのまま羅先市できたりもするそう。完全に自国扱いしててワロw
圏河を過ぎると、いよいよ川沿いの柵に鉄条網が張り巡らされたり見張り台が設置されたりと物々しい雰囲気に。建物にも「国防意識をもっと強く!祖国の国益を第一に!」といった内容のスローガンが掲げられていて、あぁいよいよ国境線が近づいてきたなと感じさせてくれます。
防川景区
防川景区に着きました。入り口で入場チケットを購入し、景区内の専用シャトルバスで展望台へと移動する形のようなのですが…いきなり土産物屋の名前からして笑かしてくれます。
鑫三角旅遊記念品超市。
朝鮮族の多いエリアなので店のオーナー=金さん率は高めなのでしょうが、ここではまさかの金さんにも勝る鑫さんのご登場w 恐れ入りましたw
金金金金
— ポンズ (@Worldtravelog) August 24, 2020
吉林省から届いたメールの送信者が金の亡者と同姓同名で、失礼ながら思わず身構える pic.twitter.com/JiWe4g6Uqu
防川展望台
防川景区の入り口で景区内専用のシャトルバスに乗り換え少し走ると、ロシアと北朝鮮を威圧するかのように建てられた巨大で堅牢なタワーが見えてきました。陸の国境がない日本だと想像するのは難しいのですが、鳥取と島根あたりの辺境地にこんな巨大で厳つい建造物がいきなり出現するようなイメージ。
タワーの高層階が展望台になっていて、2階には防川に関する博物館が入ってます。4階のなんちゃら体験館は閉鎖中で、使われているのは2階の博物館と展望台のみという惨状。商用ビルだとしたら目も当てられないほど真っ赤っ赤な状況ですが、国家の愛国教育基地として採算度外視で建設・運用されてるので問題ないのでしょう。
この展望台から中露朝のゴールデントライアングルを眺めることができます。
左手に広がる湖の向こうがロシアで、右手に流れる川(豆満江)の対岸が北朝鮮。豆満江には朝鮮・ロシア友情橋が架けられていて、ロシア連邦沿海地方ハサン地区にあるハサン駅と朝鮮民主主義人民共和国羅先特別市先鋒区域にある豆満江駅を結ぶ全長400メートルの鉄道でつながっているそうです。
この一帯の国境線を見ると面白い事実に気づきます。防川は豆満江を10kmほど下ったら日本海という場所にあるのですが、中国側の領土は朝鮮・ロシア友情橋の地点で途切れていて日本海に出られないようになってるんですよね。日本海を目の前にして海へのアクセスを封じられた中国帝国の無念さ、歯がゆさが伝わってくるような地理関係になっています。
展望台の最上階からの眺め。正面の湖の向こうがロシアで、右手に流れる川の対岸が北朝鮮。
中国領は川に架かる鉄橋の手前までで、橋の東岸側がロシア領、橋の西岸側が北朝鮮。
見事にロシアと北朝鮮との挟み撃ちで中国の海洋進出を邪魔しているという構図っすね。この国境線が引かれた経緯も含め、これは中国側からしたらバチクソ悔しいやつ。
北朝鮮側は鉄道駅を中心にぽつぽつと集落が形成されているようです。この鉄道を使ってロシアへ武器を流してるなんて疑惑もありますが、この日も大量の貨車が待機していて不穏な感じでした。仮に北朝鮮からロシアに武器が流れているとしても、はるばるヨーロッパのウクライナ戦線に送られるというよりは中国に備えてのものだと個人的には思いますが。
博物館
せっかくなので、低層階にある博物館も観てみることにします。
ロシアとの国境線が定められた経緯に関する展示ももちろんありました。
中国としては、清朝時代の19世紀に結ばされた不平等条約(アイグン条約と北京条約)により沿海部を含む100万平米超の領土を奪わたっきりとの認識なので、当然面白くないですよね。展示地図にもはっきりと「失地範囲」って書かれてますし。
し列強の袋叩きに遭い国内が混乱している最中に火事場泥棒的に領土を奪われ、更には奪い取られた場所に「極東を制圧せよ」という意味の町(ウラジオストク)まで建設されて。
ロシアがウクライナ戦線でコケたり躓いたりしたら、ネルチンスク条約で定められてた国境線までは取り返しにかかる準備をしてるんじゃないかなと。
忸怩たる思いを抱えつつも経済面での実利を確保するために、琿春からロシアのザルビノや北朝鮮の羅先の港経由の船便ルートを開拓したりしているそうです。2023年8月には、ウラジオストク港の使用権も165年ぶりに回復したそうで、相手国側の港湾をガンガン中国資本で開発して、気づいたら実質中国化みたいな展開を狙ってそう。もうロシアさん極東に構ってられる余裕ないでしょうし。
21世紀、極東の地図が塗り替えられるんじゃないかなと個人的には思ってるのですが…日本も漁夫の利オナシャス。
スピードボート
中国の国境タワーから出ると、スピードボートでロシア・北朝鮮友好橋の手前の中国領のキワキワを攻めるというツアーの客引きに遭遇します。
対岸の北朝鮮領には等間隔で監視塔が並んでいて、変なムーブを見せようものなら即射〇されそうな恐怖感もありましたが、せっかくなのでボートツアーに参加してみることに。
しばらく待って乗客が集まらなかったので、ワイともう一人のボッチ客の2名で出航。五星紅旗を掲げるスピードボートで中国領のキワキワを攻めに行きます。
中国側は厳つい巨大なタワーが建つというのに、北朝鮮側はほぼ原生林w なんか操縦士が解説っぽいことを話してくれてましたが、残念ながらほぼ聞き取れず。
もっと橋の真下あたりまで行くのかなと思いきや、操縦士も射〇を恐れてか橋の遥か手前で華麗にUターンをキメ引き返します。
北朝鮮側の見張り台では常に銃を持った軍人が二人体制で見張ってますからねw 気味悪いですからねw こんなところで辺にリスク取って人生終わらせたくないですからねw
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