ペルシャ湾にのんびりと浮かぶ開放的な雰囲気の島国バーレーン。
王国としての建国は1971年8月14日。湾岸諸国の一つで、UEAやカタールと同じく歴史が浅くもオイルのジャックポットを引き当て成長した成金国家なんだろうと思いやって来たのだが、いやはや侮るなかれバーレーン。確かに、国としての現代史を見れば歴史は浅い。というかほぼ無いに等しい。
それがですよ。バーレーンに来てみて分かったのは、世界最古の文明であるメソポタミアとインダスとを繋ぐ中継貿易の拠点として栄えたディルムンなる文明が紀元前2000年頃からこの地に栄えていたという事実。
メソポタミアやインダスは世界最古の四大文明として広く知られているけど、ディルムン文明なぞ耳にかすったことすらない。それでも、メソポタミアとインダスが栄えた時期に、バーレーンにもしっかりと文明が根付いていたという事実を示す遺跡もバーレーン中に数多く残されているんですわ。
ディルムン文明にまつわる遺構の一つが、バーレーン要塞(カラート・アル・バーレーン)。
首都マナーナからほど近いペルシャ湾の海岸沿いにあるというので行ってみた。聞けば、地味に世界遺産にもなっているのだと。世界遺産にもなっているような立派な古代文明の遺跡なのに、なんで日本ではこんなにも認知度が無いのだろう…
バーレーン要塞へと向かう公共交通機関は無いようなので、移動の足はタクシーで。
バーレーンではオイルだけでは生きていけないということなのか、現地人が割と自分で働いているのには驚かされた。しかもくっそ暑いのに、律儀に伝統的なコスチュームまで身に着けてらっしゃる。タクシーの運転手が現地人なんて、カタールやUAEではまず考えられんことですわ。
バーレーンのタクシーの初乗り価格。平日6時から22時は1ディナール(290円)。平日22時から6時と週末祝日は1.25ディナール(360円)。この他、ホテルから乗る場合は1ディナール、空港から乗る場合は2ディナールが加算される。1ディナール≒300円弱と通貨価値が高いので、ちょっとタクシーメーターが動くだけでドキッとしてしまったわw
今回はバーレーン門⇒バーレーン要塞⇒アル・ハミース・モスク⇒シェラトンとメーターで周ってもらって15ディナール(≒4,300円)弱。やっぱり東南アジアや中国くらいのノリでチャーターしたら結構するので、これなら自分でレンタカーを運転して郊外のアアリ古墳や生命の木も一緒に見に行けばよかったかもしれん。
バーレーン門から爽やかな海岸沿いを走り抜け、20分ほどでバーレーン要塞脇に建てられた博物館へと到着した。
バーレーン要塞 博物館
メソポタミア文明とインダス文明を結ぶ交易の要衝として、少なくとも紀元前2300年頃には今日のバーレーンの地に栄えていたとされる古代都市ディルムン。その古代文明の中心地とされるバーレーン要塞は、2005年に「バーレーン要塞、ディルムンの古代の港と首都」の名称で世界遺産にも登録されている。
世界遺産に相応しい立派な箱物をした博物館だが、ワイ以外に訪問客はいないよう。無理にでも雇用を創出したいのか、その割には学芸員さんや清掃員がやたらといて世間話に花を咲かせてたのが印象的。世界遺産併設の快適な博物館で世間話するだけの簡単なお仕事、常にアウトプットでの付加価値向上を強いられるストレスフルな勤務環境にいる日本人としては、ただただ羨ましく思えてくるっす。ワイも中東への出稼ぎ労働者に転身しようかなw
伝統的なディルマン船。こういった椰子の枝で作られた小さな舟で短距離の交易がおこなわれていたそうな。貨物を積んだら直ぐに沈んでしまいそうなものですけどね…
具体的にメソポタミアやインダスとどういった品目を交易していたかについてはまだまだ解き明かされていないようだが、メソポタミア側が穀物・銀・オリーブオイルなどを輸出し、ディルムン側は銅・木材・真珠・インダスの象牙や亀甲などを輸出していたと考えられているそうだ。
今日のバーレーン要塞に残されているのは、16世紀にバーレーン島を占領したポルトガル軍が造営した要塞跡。その一つ下の層には、14世紀にアラブ人が作った要塞跡が埋まり、更にはササーン朝様式、そしてディルムンの古代様式と、紀元前2300年頃からの文明跡が幾重にも重なるように埋もれているそうだ。
バーレーン遺跡
14世紀にペルシャ湾の海岸沿いにアラブ人が築いた砦を基にして、16世紀にバーレーンにやってきたポルトガル人が現在見られる要塞を建造した。16世紀と言えば大航海時代でポルトガルがイケイケガンガンだった時代だろうか。領土を拡大したい!という野望をもって船で喜望峰をぐるっと回ってこんなところまで来ちゃうんだから凄いよな。ワイなんて飛行機の出張でちょっとアジアに行くのにすら億劫に感じるのに。
というわけで、ようするにディルムン文明の遺跡は地中に埋もれたまま未発掘の状態であるようっすね。でも、これだけ幅広い時代の遺跡が一か所に集中している希少性の高さから、「バーレーン要塞 、ディルムンの古代の港と首都」として世界遺産に登録されたそうだ。
この地中から顔をのぞかせている遺跡はアラブ時代の物?現代的高層ビル群のコントラストが良い味出しているっす。
もうちょっと陸地側に歩くと、要塞感たっぷりの遺跡が見えてきた。
中にも入ることができるみたい。しかも、博物館と違って無料。無料で入れる世界遺産も珍しいわ。それでいて観光客が誰一人としていないとか、もっと珍しい。
イケイケのポルトガルにより建てられた要塞だけあって、生半可な攻撃ではびくともしないような堅牢な造り。中も広々としてしています。
地下室や井戸、イスラム風の造りの隠し部屋なんかもあったりと、要塞の中で冒険気分が味わえます。
うーん。歴史が無いと言われる湾岸諸国では単に発掘調査が進んでないだけで立派な文明が古代から存在していたというのは勉強になりましたが、いま見れる遺跡自体はディルムン時代に築かれたものじゃなかったというのはちょこっとした誤算。博物館もディルムン時代の出土品がメインという訳ではなかったし…いくら世界遺産とはいえ、ここだけの為にバーレーンに来るとがっかりしてしまうと思います。
【バーレーン要塞】
博物館入館料:BHD2(遺跡だけなら無料)
休館日:月曜日
所在地:Qal’at Al Bahrain Ave, Al Qalah, Bahrain
+973 1756 7171
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