バガンの遺跡群をEバイクで巡る

さぁやってきましたバガン観光の初日。休んでいる暇などないので、ヤンゴンから夜行バスでやってくるなり早速行動を開始します。

バガンとは

9-13世紀に栄えたビルマ族最初の統一王朝・バガン朝の都城。4世紀半続いたバガン王朝統治下で築き上げられた幾万もの堂塔伽藍の一部がエーヤワディー川中流域に広がる平野部40㎢を中心に広く遺っており、カンボジアのアンコールワット・インドネシアのボロブドゥールと並んで世界三大仏教遺跡とも称される東南アジアを代表する観光地である。

観光はEバイクで

ガイドブックに拠れば、現存する遺跡だけでも3,000余にもなるんだと。とにかく広範に遺跡が分布しているようなので、Eバイクなる電動自転車風バイクをレンタルして効率よく遺跡群を巡っていくことに。全部周るのは到底無理そうですが…

Eバイクはホテルでも借りれたけど、正直者のフロントスタッフが「ホテルから徒歩2分のレンタル店だとホテルより安くて良いバイクを借りられる」と教えてくれたので、ホテル近くのShwe Sabai Storeなる雑貨兼レンタルバイク屋へ。多くの旅行者がバガン観光の拠点とするニャウンウーやニューバガンでは、宿や雑貨でもバイクを貸し出しており、至る所でバイクを借りられる。

さて、こいつ。どっからどう見ても電動スクーターなんだけど、商品登録上は「自転車」というカテゴリー付けになっているらしく、無免許・ノーヘルでの運転が認められているらしい。もちろん自賠責保険への加入義務もなく、更に言えばナンバー登録がなされているのかも疑問という法的にグレーそうな代物だが…。

レンタル店の人曰く航続距離は約30キロ。道中で電池が切れたら電話一本で迎えに来てくれるサービス付きで1日のレンタル代は6Kチャット(≒500円)だった。夜9時まで丸々使わせてもらえて500円は安い。


最高速度は時速40km程だが、バイクに乗ると風や音、匂いなどが敏感に感じられ、旅してる感が全力で味わえる。「細い路地の向こうに良い感じのパゴダがあるから行ってみよ!」「ちょっとさっきのパゴダに戻ってみるか」などなど好きな時に好きな場所へと小回りの利く移動ができるしね。無数のパゴダが点在するバガンでは、小回りの利くバイクの方がタクシーよりも観光に適していると思う。

ひだり みぎ
というわけで脳内BGMでインディージョーンズをガンガンにかけヒャッハーとバイクを走らせていると、ちょうど秘境感漂うバガンの地に陽が昇ってきた。


だだっ広い草原の中に埋もれたような無名のパゴダの周りには誰もおらず、ただただ鳥が囀るだけの静寂に包まれている。数千年前の大地に迷い込んだのではないかという感覚になるというか…。観光客が来ないような無名の遺跡も無数にあるので、誰にも知られていない自分だけのお気に入りスポットを見つけてバガンの大地を駆け回るのも面白い。

ひだり みぎ
ひだり みぎ
それにしても…石を投げれば遺跡に当たる!とばかりにあちらこちらに点在する遺跡の数々を前に、もう何が何だか分からなくなってくる。ほんと遺跡の千本ノックじゃないけど、これでもか!と次から次へと遺跡が現れるんで。最初のうちは一個一個の遺跡を地図で照らし合わせて「ああ、これが〇〇パゴダね」と納得しながら走ってたんだけど、そこら中に遺跡があるので地図を見て動くのを止めた。メインどころには遺跡前に看板が立ってるし。

アーナンダ寺院(Ananda Temple)

オールドバガンの城壁へ向かってバイクを走らせていると、城壁の手前で一際強烈な存在感を放つ建造物を発見。どうやらこれが「バガンで最も美しい寺院」と称される1091年建立のアーナンダ寺院になるらしい。壁は漆喰で塗り固められ、仏塔は金箔で光り輝いて…一目見ただけでこの建造物が特別な意味を持っているのが分かる。
ひだり みぎ

ビルマとインドの建築様式を融合させたスタイルで造られた重厚なアーナンダ寺院。黄金に輝くインド風の尖塔を中心に完璧に計算され尽くし建てられた左右対称の構造になっている。


寺院には東西南北の4面に入口と参道があり、内部には2重の回廊が設けられている。


東西南北4体の仏像は寺院内部の回廊で結ばれているのだが、この内側の回廊もまた見所満点。内壁に設けられた1,500もの壁龕のそれぞれに仏像や釈迦の生涯を描いたレリーフが設置されているのである。さながら仏教をテーマにした博物館だ。

ひだり みぎ
東西南北それぞれの方面に佇む仏陀の立像。東西の仏像は焼失したために作り直されたものだが、南北の二体はなんと建立当時のものが遺っているらしい。ありがたそうなので、自分も周りの現地人の見様見真似で旅路の安全と一攫千金をお祈りしておいた。

タラバー門(Tharabar Gate)

アーナンダ寺院を抜けると、いよいよオールドバガンことバガン都城への入り口であるタラバー門が見えてくる。高さは10m弱程、煉瓦造りで重厚な造りのタラバー門は、バガン王朝の成立に先立つ849年にピュー族の王により築かれた。タラバーという名はパーリ語の「Sarabhanga」という言葉に由来しており、「矢から護られる」程度の意味になるそうだ。バガン朝末期、モンゴル軍による相次ぐ侵攻で最後は蒙古軍の弓矢部隊による攻撃に屈したというから皮肉なものであるが。

四方を城壁に囲まれたバガン都城の東側主門。かつては12の門があったそうだが、残念ながら大部分は直ぐ傍を流れる川の氾濫により流されてしまったそうで、今ではこの東門の痕跡が一部残るのみ。


門の両脇にはバガンの町の守護神であるナッ神の兄妹像が祀られていて、お供え物が並べられていることから現在でも信仰の対象となっていることが分かる。「ナッ」とは精霊や祖霊を表わす言葉で、非業の死を遂げ神格化された37柱の神をメインに八百万の神が存在する。ミャンマーは敬謙な仏教国である一方で、ナッ神信仰や八曜日に基づく守護神信仰など土着信仰も仏教と併存し、広く信じられているのである。 ナっ信仰では精霊だけでなく自然神も崇められているみたいだし、言ったら神道のような物でしょう。日本の寺にも鎮守社のような社が祀られるように、ミャンマーの寺にも境内にナッの祠をよく見かけるし。


さて、ここからが城門内。東から西へと城門の中に入り、最初に現れる主要な遺跡はタヴィニュ寺院である。高さ65メートルとバガン一の高さを誇る遺跡なので、否が応でも目に入る。

タヴィニュ寺院(Thatbyinnyu Temple)



オールドバガンの壮大な原野にそびえ立つタビィニュ寺院は12-13世紀頃に建てられたとされる。タビィニュという言葉は仏教用のパーリ語で「全知全能」的な意味を持っているとのことで、全ての寺院より抜きんでたスーパーテンプルを目指して王のプライドをかけた工事が行われたに違いない。北朝鮮が国家の威信をかけて柳京ホテルの建造を目指したみたいなもんだろ。

ひだり みぎ

そんなスーパーテンプルの建つ一帯が城内でも最も見所が集積するエリアにあたるのか、土産屋も多く並んでいる。売り子はカンボジアの押し売りキッズ達と違い落ち着いた主婦や若妻風の女性が多く、強引で不快な営業はしてこない。愛想よく礼儀正しい方も多く、ついつい手編み風の草鞋を二足ほど買ってしまった。

ピタカタイ(Pitakat Taik)

こちらは仏教の律蔵・経蔵・論蔵から成る三蔵経を納めた書庫跡。1044年に王の座に就いたアノーヤター王(Anawrahta)がそれまでの大乗仏教を捨て上座部仏教を国教化し、仏典をコレクションしたりスリランカ・インド・カンボジア・タイなどから僧や職人たちを呼び寄せるなどした結果、バガンが東南アジア有数の仏教都市として発展していったとされている。それ故、アノーヤター王は今日のミャンマー人を一大民族にのし上げた名君として英雄視されているのだと。


今風に言えば国立図書館かな。内部は空になっているので見所としてはパンチが弱い。

シュエジゴォン・パゴダ(Shwezigon Pagoda)

最後に印象に残ったのはニャウンウーのシュエジゴン・パゴダ。アーナンダ寺院と並びバガンを代表する仏塔で、地球の歩き方ではめっちゃ発音良くシュエズィーゴォンパヤーと紹介されている。

くっそでっかい狛犬と、金箔の販売を生業にする野生のミャンマーババアの強引な押し売りにまずビビる。

ひだり みぎ

シュエジゴンパゴダは1044年頃にアノーヤター王によって造り始められた。スリランカの王から仏陀の遺骨を贈与された際、王宮に祀って自分だけ崇拝するのでは仏教の栄えは滞ると考え、庶民の為にもと遺骨を安置する立派なパゴダを造ったとされている。そりゃあ英雄視されますわアノーヤター王。

ひだり みぎ
因みにパゴダが建てられた当時はナッ信仰も栄えていたこともあり、境内の中ではちょっとコメディタッチな風貌のナッ信仰の神様も一緒に祀られている。

ひだり みぎ
そんなナッ神は出来の悪いゆるキャラっぽいというか…コメディ的なちょっとお笑い要素高めだけど、メインの仏塔はヤンゴンのシュエダゴンパゴダを彷彿とさせる堂々の造りでただただ圧巻。三層構造の方形の土台の上に乗る黄金の塔は高さ40mほどだろうか、中には釈迦の額骨と歯が奉納されていると言う。

取りあえず今回はアーナンダ寺院・タレバー門・タビィニュ寺院・ピタカタイ・シュエジゴンパゴダを取り上げてみたけれど、もちろん他にも見所満載。メインどころをサクッと見て周るには丸々2日あれば十分そうですが、一個一個の遺跡をガッツリ吟味してバガン全域を思いっきり遊び倒すには一週間あっても足りなそう…

その他、オールドバガン中心に点在する無数の遺跡の中で記憶に残った優良遺跡10選を独断と偏見で選んでみましたので、地図と合わせて簡単にご紹介をさせて頂きます。私みたいに限られた時間内でバガンを見て周るという方は、どうしても足を運びたい遺跡だけは地図にマーキングしてチェックしながら見て周った方が良いかもしれん。
【その他バガン遺跡10選】
・マヌーハ寺院(Manuha Temple、モン族の囚われの王により建てられた哀愁たっぷりの寺院)
・ブーパヤーパゴダ(Bupaya Pagoda、バガン最古でピュー族スタイルの仏塔)
・ティーローミィンロー寺院(Htilominlo Temple、バガン最大級の寺院)
・ダンマヤンジー寺院(Dhammayangyi Temple、曰く付きの寺院、心霊スポット)
・スラマニ寺院(Sulamani Temple、“最高の宝石”。12世紀の風俗が描かれたフレスコ画が残る)
・マハーボーディー寺院(Mahabodhi Temple、ブッダガヤの大菩提寺がモデル)
・ミンガラゼディパゴダ(Mingalazedi Pagoda、バガン王朝最後の仏塔)
・ミャゼディ碑文(Myazedi inscription、ビルマ版ロゼッタストーンことビルマ語最古の碑文)
・ナンパヤー堂(Nanpaya Temple、ヒンドゥー寺院で、梵天像が有名)
・シュエグーヂー寺院(Shwegugyi Temple、“偉大な黄金の洞窟”)



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