西遊記のモデル・玄奘三蔵ゆかりの地 大慈恩寺(大雁塔)

この日朝一で向かうは宿泊先のウェスティンと目と鼻の先に位置する慈恩寺内に立つ大雁塔。西遊記の原典とされる大唐西域記を著した玄奘三蔵がインドから持ち帰った仏典・仏像を保存する為に建てられた七層の塔である。

そう、玄奘といえば大唐西域記、大唐西域記といえば西遊記と連想されてくる。
破天荒な内容の冒険伝奇活劇でフィクション要素の強い西遊記だが、仏僧が孫悟空・猪八戒・沙悟浄の三人の妖怪と天竺(ガンダーラ)を目指して旅をするという話の大元は、玄奘三蔵が西安への帰還後に唐の太宗に提出したインド旅行の報告書・大唐西域記なのである。まぁ妖怪が出てきたりと随分と内容が膨らんじゃってますけどね。

大雁塔の南広場にはそんな玄奘の像が建ち、その奥に毒霧で霞む大雁塔が微かに見える。


西安を代表する観光スポットだけあって入場料は驚くほど高い。大慈恩寺の敷地に入るの50元、更に塔を登るのにも追加で20元とか…。現地の物価を考えれば法外な値段ともいえる価格設定だけど、それでも寺院内部は多くの玄奘マニアで賑わっていた。


目の前の塔が遠く霞んで見えるのは大気汚染という名の毒霧のせい。なんたってPM2.5指数が600μg/㎥超えですから。


敷地内に玄奘に纏わるプチ資料館があったので、塔に向かう前に立ち寄ってみることに。

完全に目が座っちゃってますが、こちらが敵さえも魅了する仙界のアイドル・玄奘さん。日本では何故か宮沢りえや深津絵里なんかが玄奘を演じているが、玄奘さんはれっきとした男です。

洛陽近郊の町で陳家の四人兄弟の末子として降誕した玄奘は、25歳頃まで仏法と高僧の教えを求め中国各地を巡歴したが、各地の高僧名僧は異なる自説を一方的に唱えるだけで、玄奘の疑問を解決するには至らなかった。こうして「だめやんけ中国!ホンマモンが知りたいわ」と思った玄奘は、天竺(インド)で教義の原典に接し、本場の高僧論師から解義を得るしかないだろうと海外旅行禁止という国の掟を犯してまでインドに向かうことを決意するのである。

ひだり みぎ
馬にまたがる在りし日の玄奘さん。生年と出国の時期については諸説あるものの、ここでは627年に27才で国禁を犯して密出国し、当時の仏学の最高機関であるナーランダ僧院に向けて旅立ったとされている。猛獣や山賊による襲撃・土砂崩れ・悪天候などで死者が続出する命がけの求法の旅…水はおろか草木一本もない灼熱のタクラマカン砂漠を歩き、雪と氷にとざされた厳寒の天山山脈を越え、未知なる西域のパミール高原・カラコルム峠を渡り、やっとの思いでインドのナーランダに到達した時には玄奘ただ1人だったという。心身ともに強すぎというか、破天荒すぎだろこの人。自分なんか敦煌にあった20メートル程度の砂丘を上っただけで筋肉痛になりましたからねw。唐代に陸路での西域突破とか偉業中の偉業だわ。


こちらが玄奘が歩いたナーランダ僧院へのルート。玄奘のインド・西域求法の旅は、通過した国が128国、距離にして実に3万キロに及んでいた。インドでの留学を終え西安に帰還した時には既に唐を発ち17年の歳月が過ぎていたというね。仏教にかける思いは凄まじい物がある。


西遊記に因んだ像なんかもあるし。因みに日本で描かれる西遊記は沙悟浄が国産ローカル妖怪の河童になっちゃうなどオリジナルと異なる点があったりする。まぁここらへんのアレンジ程度なら許せるけど、三蔵法師を女性にしちゃうのは流石にどうかと思うわ。

そんなこんなで遠い異国の地インドから生還を果たした玄奘。唐の都・西安に大量の経典を持ち返ってきた訳なんだが、それら原典は古代インド語のサンスクリット、すなわち梵語であった。これじゃあ駄目じゃんということで、帰国後の彼は王朝からの全面的な支援を受けながら持ち帰った仏典の翻訳に残りの生涯を賭ける。62歳で没す迄、訳業19年、死の間際まで漢訳作業に打ちこみ、大般若経16部600巻(漢字にして約480万字)を含め76部13巻(漢字にして約1,100万字)を翻訳したとされている。1,100万文字とか途方も無さ過ぎるwww
ひだり みぎ
彼の訳した大般若経を約300文字に集約した経文こそが仏教の経典の中で最も有名な『般若心経』。般若心経とは聞いたことはあるが、どんな内容なのか分からない…という方の為に、現代語訳版の般若心経ロックを載っけておこう。

現代語訳「般若心経」

超スゲェ楽になれる方法を知りたいか?
誰でも幸せに生きる方法のヒントだ
もっと力を抜いて楽になるんだ。
苦しみも辛さも全てはいい加減な幻さ、安心しろよ。

この世は空しいモンだ、
痛みも悲しみも最初から空っぽなのさ。
この世は変わり行くモンだ。
苦を楽に変える事だって出来る。
汚れることもありゃ背負い込む事だってある
だから抱え込んだモンを捨てちまう事も出来るはずだ。

この世がどれだけいい加減か分ったか?
苦しみとか病とか、そんなモンにこだわるなよ。

見えてるものにこだわるな。
聞こえるものにしがみつくな。

味や香りなんて人それぞれだろ?
何のアテにもなりゃしない。

揺らぐ心にこだわっちゃダメさ。
それが『無』ってやつさ。
生きてりゃ色々あるさ。
辛いモノを見ないようにするのは難しい。
でも、そんなもんその場に置いていけよ。

先の事は誰にも見えねぇ。
無理して照らそうとしなくていいのさ。
見えない事を愉しめばいいだろ。
それが生きてる実感ってヤツなんだよ。
正しく生きるのは確かに難しいかもな。
でも、明るく生きるのは誰にだって出来るんだよ。

菩薩として生きるコツがあるんだ、苦しんで生きる必要なんてねえよ。
愉しんで生きる菩薩になれよ。
全く恐れを知らなくなったらロクな事にならねえけどな
適度な恐怖だって生きていくのに役立つモンさ。

勘違いするなよ。
非情になれって言ってるんじゃねえ。
夢や空想や慈悲の心を忘れるな、
それができりゃ涅槃はどこにだってある。

生き方は何も変わらねえ、ただ受け止め方が変わるのさ。
心の余裕を持てば誰でもブッダになれるんだぜ。

この般若を覚えとけ。短い言葉だ。

意味なんて知らなくていい、細けぇことはいいんだよ。
苦しみが小さくなったらそれで上等だろ。

嘘もデタラメも全て認めちまえば苦しみは無くなる、そういうモンなのさ。
今までの前置きは全部忘れても良いぜ。
でも、これだけは覚えとけ。

気が向いたら呟いてみろ。
心の中で唱えるだけでもいいんだぜ。

いいか、耳かっぽじってよく聞けよ?

『唱えよ、心は消え、魂は静まり、全ては此処にあり、全てを越えたものなり。』
『悟りはその時叶うだろう。全てはこの真言に成就する。』

心配すんな。大丈夫だ。


溢れんばかりの玄奘情報。この時点で玄奘についてお腹いっぱいになりつつあったのだが、プチ資料館の他に玄奘三蔵院なる建物群も発見したので入ってみる。


中央に玄奘三蔵の像が設置されている。聡明そうで穏やかな顔つきに玄奘三蔵に対する中国人の尊敬の念が表れているようだ。

ひだり みぎ
玄奘三蔵が翻訳した経典や玄奘三蔵伝の原書も展示されている。内容までは読み取れんが、その凄まじいばかりの数とボリュームに驚かされる。

ひだり みぎ
壁には木製レリーフもはめ込まれてる。インドへの旅程で発生した印象的なイベントについてのものだろう。


光が反射して見づらいが、恐らく訪問先国家の高級官吏から色々とお願いをされて「いやいやいや」と困る玄奘の絵w。

そんなこんなで玄奘について十分に学んでから、いよいよ西安のシンボルである大雁塔へと向かう。
ひだり みぎ
塔の足下には大慈恩寺の本堂である大雄賓殿があり、内部に金ぴかに光り輝く釈迦如来の御姿が確認できる。もともと、慈恩寺は紀元648年に唐の第三代皇帝の高宗李治が亡き母・文徳皇后の冥福を祈るために建立した由緒正しき寺院だそうで、部屋の数1,897間・僧侶300人規模を誇っていたそうだ。その後、玄奘がインドから持ち帰った経典・仏像を保管する為に大雁塔が追加建立されたという流れらしい。

大雄賓殿の背後に聳え立つ7層の楼閣式の大雁塔。塔の基礎と下層部分は創建以来のまま残っている。

組物を造ったり派手な彫刻を施したりせず、後世の塔と比べるとなんとも無骨。

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空洞となった内部中央には螺旋階段が最上階まで続いていて、各層には上部の丸い形をした窓があり、そこから遠景を眺めると西安の街を一望することができる。

ひだり みぎ
踊り場にはインドの玄奘寺から寄贈された仏舎利や明代の銅製の仏像といった小さいながらも気品あるインドグッズが飾られている。

さぁ急勾配の階段を登り切り、いよいよ最上階だ!
ひだり みぎ
奈良の都・平城京のモデルとなった西安の街が広がり、遥か西方へと続く道を眺めていると、この道を玄奘ら名僧高僧が歩いてこられたのだなぁとしみじみ…。って何も見えんじゃないか!最上階から外を見渡すとスモッグによる視界不良の具合が一目瞭然、西安の大気汚染の深刻さがよく分かる。観光するのにガスマスクが必要なレベルだぞ!

うーん、整然とした西安の街並みを俯瞰したかっただけに非常に残念。ただ、般若心経ロックのお蔭で心を取り乱さずに済んだ。見えないものは見えないんだから悲しんでも仕方が無い…。玄奘ゆかりの地で佛の心が会得できた気がする。

【大慈恩寺(大雁塔)】

住所:西安市環塔路117号



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【2017年新疆・敦煌・西安旅行記】











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