クチャの荒野に忽然と建つクズルガハ烽火台

続いて向かうはクズルガハ烽火台。
今から2000年以上前の前漢時代に敵の侵入を知らせる為に造られた烽火台で、烽火台としてはシルクロード最古と言われる遺構である。

スバシ故城から南西方面に20キロ程だろうか。

北は荒涼とした荒山の麓に広がる丘陵地帯が続き、南はタクラマカン砂漠に向けて渺々たるゴビが広がっている。


見渡す限りに広がる荒野に一筋の道路がずーっと地平線まで繋がっているというワイルドな場所。

暫く何もない荒野が続いた後、遠くに石油・天然ガスのコンビナートが見えるようになってきた。そう、全国一の天然ガス産出量を誇る新疆の中にあり、ここクチャ県はタリム盆地北部の石油・天然ガス構造帯の中心なのである。
ひだり みぎ
西部大開発政策開始以降にパイプライン敷設や送電線建設などが加速度的に進み、今では油田開発が年10%超という経済発展の牽引役となっている。


重要な資源開発拠点だからかセキュリティが厳重で、所々でゲートがあったりセキュリティチェックのポイントがあったりする。パスポートを持ってきて正解だった。


ゲートを越えた辺りから赤土の悪路が続くようになったのだが、ここでもお構いなしに猛スピードで爆走する運転手。ちょっと怖くなってくる。

何も無い荒野から細道に入ると、岩石の広陵の上に忽然と建つ烽火台が現れた。高さ15m程はあるだろうか。当時は辺境警備上の必要性から15キロ間隔で設けられていたが、現存するのはこの一基のみとのことである。

漢の西域経営にとって、往事の亀茲国は最重要拠点。匈奴との戦い・諸オアシス都市との抗争の最前線だったからな。前漢が西域都護府を置いた鳥塁から亀茲国へ向けての防衛線に等間隔で烽火台が建設されたそうだ。狼煙というくらいだから、日中はオオカミの糞を火種に煙を上げていたのだろう。各種通信手段が発達した今では煙を利用するなど原始的な方法とも思えるが、現代でも発煙筒や海難救助の信号弾でも煙が利用されているからな。最近の実験では、風向きによっては一時間で数百キロ先まで煙が伝わったいった結果も出てるみたいだし、有事の急報としては十分に機能してたのだろう。


ただ、このクズルガハ烽火台の由来に関しては、どうやら別の物語もあるようだ。その昔、亀茲国の王が寵愛する娘の死を予言され、その娘を守る為にこの烽火台を造り匿ったのだと。死を予言された18歳の誕生日に、国王が贈った果実籠の中に潜んでいたサソリに刺されて予言は的中、というオチ付きの伝説である。

そんな物語も本当に思えるこの烽火台の佇まい。スバシ故城の遺構とは異なり、日干し煉瓦ではなく、藁や木材と共に土を固めながら築き上げていくという工法が取られているようで、所々に葦や木材の露出が見られる。
ひだり みぎ
上部の木材は望楼の梁だろうか。近くから見上げたら結構な高さだよなぁ。

ひだり みぎ
その烽火台が建つ崖下には干上がった塩水渓谷が広がる。

その渓谷の向こうにはクズルガハ千仏洞がある筈だったが…オフシーズンだからか閉まっているとのことで訪問ならず。運転手が早く帰りたいあまりに嘘をついた可能性も否めないが、ここは彼を信じて次なる目的地であるキジル千仏洞へと急ぐ。

【クズルガハ烽火台】



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【2017年新疆・敦煌・西安旅行記】







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