南疆鉄道でカシュガルからクチャへ

 

カシュガルでの短すぎる滞在を終え、南疆鉄道にて次なるシルクロード沿線都市・クチャを目指す。

南疆線は新疆ウイグル自治区を東西に走る鉄道路線。天山山脈の南麓・タクラマカン砂漠北縁の間を走り抜け、トルファンからカシュガルまでの1,445キロを繋いでいる。元々はほぼ往年のシルクロード(天山南路)に沿って敷設された路線だが、2015年に天山山脈を越える従来の路線が廃止され、山脈をトンネルでショートカットする新路線に変更された。峠越えというロマンが味わえなくなり鉄道マニアから悲鳴が上がる一方、新疆を東西に横断する際の所要時間は大幅に削減されている。

因みに…カシュガル以西への鉄道建設計画も中国主導で進行中で、なんとパキスタンの海港グワーダルまで至る鉄道網が構築中となっている。中国の一帯一路構想に基づく中・パ経済回廊とか表現されているようだが、グワーダルの港といえば中国により租借され、中華経済特区として大開発中の港湾である。イランとの国境まで100キロもない地点にあり、実現すれば、中国はインド洋・マラッカ海峡・南シナ海を経由せずともエネルギー資源が確保できることとなる。輸入原油全体の8割を中東・湾岸国に依存しているが為の危機感からだろうが、アフリカ資源諸国への悪徳投資といい、形振り構わずにエネルギー資源を確保しようとする姿勢は本当に凄い。

話は逸れてしまったが、カシュガルの鉄道駅は町の中心から10キロ程離れたところにある。


カシュガル市内からは28路のローカルバスで一本、20分程で町の外れにポツンと建つカシュガル駅に到着する。

このカシュガル駅にはカシュガル-トルファンを結ぶ南疆線と、カシュガル-ホータンを結ぶ喀和線の2路線が乗り入れており、今回利用する南新線だけでも一日6本も走っているようだ(2017年5月のダイヤ)。
[table id=110 /]
T付きの列車は特快、K付きは快速、頭文字なしは普通列車と3種類の便がある。今回はカシュガルでの観光時間を取る為にカシュガル発が最も遅く移動速度も遅い普通5820便で移動、翌朝6時過ぎにクチャに到着するという計画を組んでみた。移動時間に睡眠がとれるのだから効率は良い。


さて、駅前に着くと、先ずは駅敷地内に入るのに荷物検査を受ける必要がある。新疆の鉄道駅の検査は本当に本当に厳重で、駅の待合室に入るまでに都合2度の荷物検査と1度の身分証チェックを経なければならん。季節や時間帯によっては大変な混雑も予想されるので、早めに駅に着いておいた方が無難であろう。

ひだり みぎ
駅舎の横に乗車券販売オフィスも併設されていたので、ついでに明晩のクチャ⇒トルファンの乗車券も買っておくことに。


完了。クチャ着が06時過ぎでクチャ発が同日23:38とクチャ滞在時間は17時間。

クチャからの乗車券を入手し、駅舎の入り口で再度の保安検査と身分証チェックを受けてから駅の中の待合室に入る。見送り客はここでオサラバ、待合室は鉄道の利用客のみしか入ることができない仕組みとなっている。ここらへんの検査は本当に厳しく徹底されている。
ひだり みぎ
さて、今回利用する5820号であるが、どうやらカシュガルが始発ではなくタリム盆地の南にある喀和線ホータン駅からグルリと北上してくる路線だったが為に座席の確保に難儀したようだ。東武東上線直通和光市行きの有楽町線みたいに、喀和線も南疆線直通でホータンからカシュガルの遥か先のトルファンまで繋がってるんだな。

待合室からホームへの出入りも厳しく制限されていて、発車15分前頃から始まる切符の検札まで待合室で待つことになる。

この日は20:55頃から検札が始まり、大量の人民たちが一斉に我先にと動き出す。多くの荷物を抱えた人民たちは列車内での荷物置き場を確保するために乗車を急ぐのだ。少しでも早く抜け出そうとする人民がホームへの入口へと集中することで、人と人との密着度が極限まで高まってくる。スリが怖いので密着されないようにと腕肘を張ってパーソナルスペースの確保に努めるも、そんなのお構いなしに距離を詰めてきたり、肩を入れ強引に割り込む秩序の無い輩多数。ドロップキックをかましてやりたくなるわ。

ひだり みぎ
そんな輩たちの乗車が完了すると、真っ暗な世闇に包まれたホームは一気に静まり返る。



出発時刻となったので、多くの警察に見守られながら小生も指定の車両に乗車する。


狭い一等席の通路では様々な臭いや熱気が混ざり合い、混沌とした雰囲気が漂っている。そんな中、乗客たちは恥じらうことなく着替えたり、洗面台で顔を洗ったりと各々が就寝準備の最中だった。すっごく生活感を感じられる鉄道である。

それでも、車内は思いのほか快適。劣悪な環境を想像していたからな。

トイレと洗面所の他、各車両には給湯器まで付いていて、カップラーメンのお湯を求める人民が列を成していた。

小生の座席は12号車一等21号ベッドの下段。一等席は中央に設置された窓とテーブルの左右に2段ベッドが置かれた4人用コンパートメントとなっている。割り当てられた部屋に着くと、何故だか漢族の男2人が私のベッドに座って御寛ぎになられていた。同部屋上段席の二人のようだ。というか4人部屋なのに5人も御寛ぎになられているんだけどw。

上段席は下段席と比べて安い代わりに狭かったり窓の外の景色が見えないので、下段席の乗客がいない場合は勝手に下段席に座っても良いという暗黙の了解があるらしい。枕の上に鼻くそとかゴミとかを付着されていなかったのが不幸中の幸いか。

ひだり みぎ
ベッドは若干横幅が狭いけれど、寝心地は思いの他悪くない。

21時40分、定刻を少し遅れて発車する。久しぶりの夜行列車に興奮して寝付けず…となるかと思ったのだが、疲れもあり出発後は鞄を足の下に置いて即就寝。
ひだり みぎ
気付けばクチャに到着してた。天山南路上の要衝にある、かつては仏教国・亀茲国の都として栄えていたこともあり、新疆を代表するような仏教絡みの遺跡が遺る古都である。



時計の針を見たら、定刻の到着時刻より早い北京時間06:00(新疆時間04:00)だと。駅前は予想以上に暗く、バスなんかの公共交通機関はもちろんタクシーもいなかった。


仕方なく宿泊先のクチャ国際ホテルまでの2キロを徒歩で移動。マイナス15度とくっそ寒いし怖かったけど、駅から20分ちょっとで無事に到着した。

【2017年新疆・敦煌・西安旅行記】







報告する

関連記事一覧

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。