テロック・エア通りを歩く ナゴール・ダルガー寺院とシアン・ホッケン寺院

二泊目のお宿であるソフィテルソーに移動して荷物を降ろした後は、歩いてチャイナタウンを目指す。

ひだり みぎ
ソフィテルソー周辺は近代的高層ビルが立ち並ぶ近代的メガロポリスの中心地となっているが、その一方で、中国式瓦屋根のショップハウスや立派なビクトリア朝の歴史的建造物・各種宗教施設や各国民族の商店街なども混在する何とも奥の深いエリアとなっている。


金融街のメインストリートの一つであるコマース・ストリートを西に進むにつれて高層ビルが少なくなり、徐々に下町風情のある街並へと入っていく。

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中華系移民が持ち込んだ文化とマレー系の土着文化などが融合して生まれたショップハウスと呼ばれる狭く細長い家屋が並ぶ。

そんな金融街と下町の情緒を併せ持ったエリアの一角に、古き佳き趣き漂うテロック・エア・ストリート(Telok Ayer Street)がある。この通りは嘗てのウォーターフロント。中国からの移民が初めて到着した歴史的場所であり、19世紀半ばのラッフルズによる土地計画に基づいて華人たちが最初に住み着いた元町のような場所。海を渡って無事にシンガポールに着いた華僑移民が感謝の祈りを捧げる為の祈り場として建てた道教寺院・シアン・ホッケン寺院があることで有名な通りである。

シアン・ホッケン寺院を目指していたところ、Telok Ayer StreetとBoon Tat Streetの角に何とも特徴的なピンクの建造物を発見。


随分と面白い造りの建物だなーと近づいて吟味していたら、中から「welcome」との声が。中をのぞき込むと、なんかオタクっぽそうで凄く良い人オーラを全開に放ちまくるインド人が立っている。眼鏡をかけてて、自分と同い年くらいのうだつの上がらなそうな冴えないインド人青年だ。


どうやらここは1830年に南インド人により建設されたイスラム教寺院を改修して作った博物館のようで、正式名称をナゴール・ダルガー・インド・ムスリム・ヘリテージセンターと言うらしい。テロック・エアとシンガポール川の南岸にまたがる地域には華僑だけでなくインドからの移住者も相当数いたようだ。中国人とインド人で陣地の取り合いとかにならなかったのかな。

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スルタン王宮を使ってマレー文化を紹介するマレーヘリテージセンターのインド人ムスリム版と捉えれば良いのだろうが、それにしても狭い。マレーヘリテージセンターやリトルインディアにあるインディアンヘリテージセンターとは比べるのが烏滸がましい程の規模で、どんなに粘っても5分あれば見終えてしまうくらいの展示内容である。まぁそうだよな、シンガポールのインディアンムスリムに関する博物館とか、凄くニッチだわ。

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イスラミーな幾何学模様の中にちょっとだけヒンドゥー教要素が含まれているような色使いのタイル。


保守的で堅苦しいのかなと思いきや、随分とポップだな。

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特殊インクを用いて書かれた手書きコーランやMagaaniという南インドのムスリムに人気のイスラム文学書。アラブタミール語で書かれてるレア物ですよと言われてもピンと来ない。適当に「Oh really?」とか言って流しとく。

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他にも婚礼衣装や生活道具などこの地域に暮らすインド系イスラム教徒たちによって寄付された品々が展示されているが、余り見応えはなく10分足らずで退散。

続いて本命であるお隣のシアン・ホッケン寺院へ。中華系の人たちが多く暮らすアジア各地の主要都市では、航海の安全を守る「媽祖」を祀った廟が建立されているのをよく目にするが、このシアンホッケン寺院もその一つ。中国南部の沿岸都市からシンガポールまで無事に渡ってこられたことに感謝して、華人移住者が集めた奉納金により1842年に建立された。
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左右が反り上がった屋根などに特徴がある伝統的な閩南スタイルの寺院で、建材も殆どが福建省泉州から運ばれたものだそうだ。当時はこれほどまでに派手な造りではなかっただろうとはいえ、上陸した土地では海沿いの目立つ場所にこの廟を建て、航海の無事を祈ると共に後に続いてやって来る同胞たちの目印としていたのだろう。

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優雅な曲線を描く屋根の上には龍や花などの装飾で彩どられ、入り口の扉には槍を持つ勇壮な姿の門神や黄金の龍が色鮮やかに描かれていたりと、煌びやかで豪華爛漫な伽藍が印象的。なんというか、めでたさ満開、365日旧正月ってな感じ。

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柱や窓枠などは巧妙で複雑な彫刻が施された御影石で彩どられ、梁には雲に乗った聖人や蓮の花・鶴・鹿・松など長寿や成功のシンボルが所狭しと彫られている。さながら寺院全体が大きな芸術作品化のような独特の雰囲気の寺院で、古色が漂い歴史の重みが感じられると同時に人々の信仰の篤さも思い知らされる。


本堂は天后聖母像を中央に祭され、その左右後にも道教神の像が配されるという構造。儒教・仏教と並んで「中国三大宗教」と称される道教の寺院だけあって、内部は伝統を感じさせる落ち着いた雰囲気で、凛とした静けさに包まれている。

因みに、主祀の媽祖は中国・福建省の林黙娘という女性が家族を海難事故から救ったという故事に基づいて広まった民間信仰の神であり、天上聖母なんかとも呼ばれたりする。中国・三国時代の武将である関羽を祀った関帝廟と共に福建省を中心とする中国大陸の沿岸部や東南アジア一帯の華人世界で広く信仰の対象となっている。


当時のウォーターフロントに建てられた寺院だけあって海に関係する神様が多いようで、本堂の裏手にある後殿に祀られている観音菩薩も南海娘と書かれている。かつて華人たちが仕事を求め東南アジアなどへ渡った際には、その殆ど全てが海路による移動だった為、「航海安全」というのは非常に切実な願いだったのだろう。


お笑い要員の神々の御姿もチラホラ。


こちらは願掛けの井戸かな。

1. 鐘を鳴らし
2. 合掌しながら願を掛け
3. 賽銭を井戸に投入。
シンプル3ステップで幸せになれるならこれ程簡単な事は無い。


19世紀の中華系移民の気持ちが伝わる厳かな良い雰囲気。楽しいアトラクションがあるって訳じゃないけれど、道教寺院独特の世界感に包まれながら芸術的建築物を眺めてまったりするだけで面白かったりする。一人でまったり街歩き派なトラベラー向きの観光地だ。

シアン・ホッケン寺院を離れ、当時の海岸線を更に南に向かって歩いていくと、アル・アブラー・モスクというモスクが見えてきた。

インディアンムスリムのヘリテージセンター・中国道教寺院ときてのイスラムモスク。異なる宗教の信仰の場が同じ通りに仲良く並んでいるのも多文化国家・シンガポールらしい風景だ。


中華医院。1952年、シンガポールの建国よりも更に昔、医療を受けられない人の為に設立された中国系の無料診療所らしいが、今ではMy Awesome Cafeというレトロカフェとして営業しているようだ。壁に太く濃い筆文字で中華医院なんて書いたら普通に病院だと思っちゃいますやん。

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中華医院だけでなく、ここら一帯では古風な伝統的建造物をリフォームしてカフェやら雑貨店にするのが流行っているようだ。フォーの大衆チェーン店であるPho 99までお洒落な建物を使って営業してる。


テロック・エアストリートとアモイストリートの角っこにアモイストリートフードセンターというホーカーズを発見。小腹がすいたんで、チャイナタウンを目指す前に小休憩を挟むことに。

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炒め物・スープもの・串ものとアジアのB級料理屋が並んでいるが、あんまり重い物は要らないなー。

軽めの物ということで、フードコートの入り口近くにあった老豆で豆乳プリンと豆乳を頂くことに。

豆乳プリンはオリジナル・アーモンド・ブルーベリー・ペッパーミント(以上、S$1.5)・緑茶・イチゴ・ライチ・メロン・マンゴー(以上、S$2.0)とテイストオプションが豊富。試しにマンゴー味を頂いたところ、甘さ控えめでプリップリ・ツルッツルな食感がかなり美味かった。これはもっと評価されるべき。

エネルギーを補充した後はチャイナタウンへと入っていく。


【ナゴール ダルガー インディアンムスリム ヘリテージセンター】
住所:140 Telok Ayer St, Singapore
電話:+65 6324-0021

【シアン・ホッケン寺院】
住所: 158 Telok Ayer St, Singapore
電話:+65 6423 4616



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【2016年シンガポール旅行記】













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