続いてソノブドヨ博物館。タマンサリ出口の周辺には大量のベチャが客待ちで屯していて、みんな生活をかけた客引きに必死。そんなベチャの大群の中から後ろの方で少し足を引きずっている誠実で弱そうなオジサンを敢えてチョイス。今までの経験上、お年寄りやハンディがある人の方が吹っかけられる可能性が低い反面、過度に自己主張する奴ほど言い値が高かったり「やれ坂道」だの「やれバティック工房がどうの」など理由を付けて合意した価格を覆す傾向があったので。「Go with the weak and old」これがジョグジャのベチャに乗る際の鉄則だ。
ミスター誠実。老いていて、虚弱。むろん運転スピードは歩いた方が早いくらいなもんだけど、誠実。ぼったくりや後出し無しの安心会計。
タマンサリから15分でと着したソノブドヨ博物館。入場料は5,000ルピア(50円弱)と格安。
立派な博物館なんだけど、他に見学客は無し。営利だったら速攻で潰れてる。
入り口では2セットの年季が入ったガムランがお出迎え。触らせてもらえるので、「ちょっと叩いてみたかった」という人にはいいチャンス。生演奏が見たい場合は隣のシアターで毎晩20:00-22:00に上演されている影絵芝居に来れば実演が見学可能である。
本館への入り口にはジョグジャカルタ王家の家紋が光る。もともとは1935年に現王の祖父にあたるハメンクブオノ8世がジャワ島の伝統文化を保存・継承することを目的に建てた博物館。打楽器のガムラン、伝統工芸品のバティック、影絵人形芝居のワヤンやトペンなどの重要文化財を中心に豊富な展示物とともにジャワ文化や歴史が紹介されている。ソノブドヨ博物館収蔵品の数はインドネシアの中でもジャカルタ中央博物館に次ぐ規模なんだとか。
アラビア文字のようなこいつはジャウィ文字かな。東南アジア島嶼部にイスラムが普及した14世紀頃から使用され始め、欧州諸国の植民地支配を受ける19世紀頃まで幅広く使用されていた文字である。現在はアルファベット表記が主流になっているので殆どみかけることはない。
王族のバティック。七宝柄、斜め柄の幾何学模様、ジャワ文化の世界観を表したスメン模様など、王族のみに着用が許された禁制模様もあるそうだ。
左:ジャワ島西部を故郷とするスンダ人の伝統芸能ワヤン・ゴレックの木偶。ガムランを伴奏として人形使いが語り歌いながら1人で複数の人形をあやつり物語を演じるスタイル。メナク物語やインドの二大叙事詩が題材になることが多く、割礼や結婚、田植えや収穫などの儀礼に際してよく演じられる。
[youtube]https://www.youtube.com/watch?v=FW8wuRFO0TI[/youtube]
右:ダヌアトモジョによって創案されたワヤン・ドゥポロの鼻高白人人形。マジャパヒト王国の勃興からディポノゴロ戦争の歴史を題材にした長編物語。人形は牛皮製で、部分的に細かく穴がうがってある。これにより人や動物の形は単に全体が陰なのでなく、体の各部分の輪郭も表される。スクリーンを通すと観客には白黒にしか見えないのに着色してあるのは、スクリーンの裏側が冥界であるとされ、冥界では色の付いた美しい世界が現世では白黒にしか見えないという宗教的思想から。
(左):東ジャワからバリ島にかけて幅広く演じられているワヤン・ゲドッグの人形。東ジャワに栄えたジェンゴロ王国のパンジ王子をめぐる物語。
(右):ワヤン・サダッ(Wayang Sadat)。ジャバやバリの人間にイスラム倫理を説くのに演じられるイスラム色の強い物語。
ところ変わればワヤンも変わる。インドネシア各地でそれぞれ独自の郷土劇が生まれてきたようで、板人形芝居、 木偶人形芝居、仮面劇などワヤンの形式は多種多様。
こちらは仮面劇用の古いトッペン。木製の仮面を使った歌劇もワヤンの一つ
1956年にジョグジャカルタで発掘されたブロンズ製の仏陀の頭部。表面に金メッキが施されている。
中庭にあるのはバリヒンドゥー式の割れ門。よくウェディングの写真の背景にあったりする奴だ。一つの山を縦に真二つに割って開いたように左右対称の形をしている割れ門、この神聖な門をくぐる事によってその人の心の邪悪の部分が浄化され清らかになると信じられている。
割れ門の先にはトーテムポールみたいな男女の木像が一対。豊饒の擬人像だろうが、何とも言えない表情が印象的過ぎて頭から離れない。
開館時間:
火・水・木 08:00-13:00
金 08:00-11:00
土・日 08:00-12:00
インドネシアの祝日と月曜日は休館
【2015年ジョグジャカルタ・ソロ旅行記】
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