タイ湖の畔に静かに佇むベトナム土着信仰の三大聖地・西湖府

今回のハノイ出張は日曜日帰り。完全休養日の土曜日にバイクを借りてニンビンまで往復200Kmを走破する計画を立てていたのだが、諸々の事情で土曜日にもガッツリ仕事をする羽目に。夕方前、ようやく自由時間が取れた頃には時すでに遅し。とても遠出ができる時間は残されていなかったので、本日の観光はホテル近くにある著名な神社・西湖府で済ますことに。

西湖府はタイ湖(西湖)突き出たところに建つ長閑な神社で、聖母道の女神であるなんちゃら聖母が祀られているそうだ。マリアなんて言うんでキリスト教関連の教会かと思っていたが、聖母道というのは中国道教とアニミズムに基づきベトナムで独自発展を遂げた比較的新しい土着信仰であり、「府」というのは聖母道の神々が住まう神聖な世界なんだと。しかもこの西湖府は聖母信仰の三大聖地として名声を博しており、遠路遥々お祈りに馳せ参ずる参拝客も多いのだとか。まぁシェラトンホテルのスタッフがお勧めする観光地なんだからオカルト系の信仰ではないでしょう。

移動はタクシーで。西湖府ホテルから見てタイ湖の向こう側にあるのだが、いかんせんタイ湖って全周17Kmと巨大なもんで、とてもじゃないが殺人的太陽の下でのほほんと歩ける距離ではない。

タクシーを降ろされた先には立派な楼門が建っている。車やバイクの雑音もない湖の畔に建っているだけあって、なんとものーんびりとした神秘的な雰囲気だ。

中へ入ると、タイ湖に沿って設けられた参道の奥に複数の建物があるのが見えてくる。
ひだり みぎ
供え物屋が続く。線香や冥器に混じって店頭に並ぶアイスクリームやココナッツジュースは現世を生きる参拝客に向けた商品だろうが、ゆで卵はお供え物用なのか参拝客のつまみ食い用なのか微妙なところ。


供え物屋を抜けた先にある西湖顕跡と書かれたこちらの建物。こいつが正府と呼ばれる祈り場で、寺院で言うところの本堂にあたる中心的建物だ。

正府に入ってすぐ前にある祭壇には引っ切り無しに参拝客が訪れ、現世利益を求めて祈りを捧げている。特に決まった参拝方法がある訳じゃないのか、祈りのやり方は十人十色。こういった緩ーい感じがいかにもベトナムっぽいじゃぁないですか。

中央奥でオカマっぽい仕草と表情を見せるのが道教の最高神であり霊験あらたかなる玉皇上帝。その両側には生を司る南曹と死を司る北斗が並び、手前には大官や皇子が祀られている。ここは霊祠であり、かれらの魂を感じることができる神聖な場所なのである。


奥には“西湖風月”“母義天下”と記された祭壇があり、天を司る上天第一聖母、地を司る地仙第二聖母、水を司る水宮第三聖母の三つの位牌が祀られている。道教の天官・地官・水官のいわゆる三官がベトナム流にアレンジされた亜流くらいのもんだろうが、聖母道では三官に山岳・高原・森林を象徴する山岸聖母が加わり、四府として信仰されているようだ。

正府には山岳を司る山岸さんの姿は確認できなかったが、山岸聖母は正府の横にある山荘洞に祀られているようだ。一人だけハミ子かい。

山岳の女神らしく、緑の衣装を身に纏われている。山幸彦と海幸彦的な神話もあったりするのかな。


山嶽鐘祠。上岸聖母の住まわる山岳地帯を見立ててなのか、祭壇も岩山の洞窟のような作りになっている。商売繁盛を祈念する財神として信仰され人気のある神様ではあるが、お供え物にあるようなクラッカーを食べミロを飲むところは人間と変わりありません。

ひだり みぎ
正府の前のタイ湖に面した広場には、姑と呼ばれる子孫を残さずに若死にした女性の霊を祀る小さな廟も建てられている。ベトナムでは若死にした祖先が一族を守護してくれると考える一方、崇りを畏れ、特別に尊重し信仰する習慣があるそうだ。


一面に広がるタイ湖を前に、枝や気根が絡み合い広場を覆いかぶさるように伸びたガジュマルの木。


線香の香り摩る中、ガジュマルの木の陰に座って眺める雄大なタイ湖。ボーっとしてたら腹減った……

中心地からは微妙に遠く、公共交通網の外れにあるので、ベトナム文化に興味が無い方には余りおススメはできません。
【西湖府】

住所:Dang Thai Mai, Quang An, Tay Ho, Ha Noi.

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