ホイアン市場とバーレー井戸の謎

関公廟を出ると、目の前に独特のくすんだ黄色をした教会のような佇まいのホイアン市場を発見。世界遺産にも登録された歴史街だけあって他の建物は小奇麗に御粧しているのに、なんだってこの市場だけが老いぼれたままのシミだらけの格好で晒されにゃならんのだ。


もしかしたらこの市場は観光客向けではなく、ホイアンの人々の為の大切な台所という位置づけなので、整備修繕で手抜きされているのかもしれん。


屋内は小さめの体育館ほどの広さのスペースに安くて美味しい地元民の為の屋台が密集していて、様々な匂いがそこらじゅうに立ちこめている。規模は小さいものの、雑多な雰囲気とむせ返るような匂いや人々の発する熱気は東南アジアの街によくある典型的な市場そのものだ。


伊勢うどんがルーツという具沢山のカオラウがVND20,000(100円)という嬉しいお値段。これでホイアンの三大名物コンプまで揚げワンタンを残すのみとなったが、胃袋一つでは足りない予感。


一方、ホイアン市場の外周では色とりどりの新鮮野菜や果物、獲れたての生きた魚介類や家禽類などが売られていて、地元民同士による売買の様子を楽しむことができる。香り豊かなカオラウやミークアンなどの麺料理、行商のお姉さんが天秤棒で売り歩く香ばしい揚げ玉ねぎを振りかけたモチ米のオコワ、蒸し餃子ようなホワイトローズなど、町中が良い匂いに包まれている。これらの香りはそのどれもがホイアンの人々の生活に切り離せないものであり、井戸水汲みの順番を待つお手伝いさんたちの早朝の挨拶の声や、米麺フーティウの売り子が鳴らす「カチカチ」という拍子木の音もまた、ホイアンの町の一部といえる。町全体が世界遺産に登録されているホイアンなので、もっと観光地化されているのかとも思ったが、意外に現地の人の生活が垣間見れる場所も多く残されているようだ。


独特の趣がある市場横の小路。小さな青果店や八百屋がひしめき合って並んでいる。

ひだり みぎ

ひだり みぎ
ホイアンの小路を歩いていると、あちこちで煉瓦作りの円形や四角形をした古井戸を見かけるが、市場の真ん前にも屋根で保護された古びれた井戸がある。これらの井戸は、チャンパ王国時代のチャム人によって8~15世紀に掘られたものと考えられていて、かつては陰暦の満月と新月の日の新生児の湯浴みや神様への供物を調理する時に井戸水が利用されていたそうだ。現在、ホイアンでは約80ヶ所の歴史的古井戸が点在しているそうだが、一部を除いて老朽化して放棄された状態にある為、それらを保存・復元するプロジェクトが進められているそうだ。この井戸にかけられた屋根もプロジェクトの一環なのだろうか。


殆どの井戸では枯れ果てていたり異臭を放つものばかりだが、ここでは井戸水で食材を水洗いしたり、灯油のポリタンクの容器に井戸水を汲んで各々持ち帰る人もいて、今でも貴重な水源として使われているようだ。この井戸の他、チャンパ王国の初期時代から1000年もの間、枯渇せずにホイアンの民を潤してきた伝説の井戸というのもあるらしい。

本当かいな。直ぐ近くにあるようなので、せっかくなので行ってみることに。

ホイアンの中心部、ファンチューチン通りからさらに路地を奥へ入った先にあるバーレー井戸。ホイアンの3大名物の内のカオラウ、ホワイトローズはバーレー井戸の水を用いなければ最高の風味・食感で調理することができないとも言われ、わざわざ遠方から水を汲みに来る訪問客も後を絶たないそう。


この民家の脇を入ったところにある。非常に分かりづらく、何度かスルーして行ったり来たりしてしまった。


小さな仄暗い井戸、これが生ける伝説のバーレー井戸。井戸の神様でも祀られているのか、供物が捧げられている。傍らには親切にも水汲み用のプラスチックの釣瓶が置かれている。汚いけど。


中は苔むしちゃっているが、干しレンガでつくられた井戸の底に井桁の形で石が置かれ、その下の砂地からこんこんと清水が湧き続けているとのことだ。他の井戸とも地下水脈で繋がっているとは思うのだが、それでもこのバーレー井戸の水でしかホイアンの名物料理が作れないとは…ベトナム七不思議の一つ。これからも枯れずにホイアンの台所を支えていってくれ。

【バーレー井戸/Gieng Ba Le】
住所:45 Tran Hung Dao St., Hoi An



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【2014年ホイアン・ダナン旅行記】




















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