摩訶不思議な仏教アート ワット・ローン・クン

チェンマイからチェンラーイへバスで向かう途中、チェンラーイ一の観光名所として名高いワット・ローン・クンの近くで降ろしてもらうことに。神聖な寺院のイメージとはかけ離れたポップなエッセンスとタイの伝統建築が融合された魔訶不思議な寺院として人気を集めるワット・ローン・クンだが、新進気鋭のアーティストであるチャルムチャイという人物が私財で建てた建造物なので、厳密にいうとワットではなく芸術作品や仏教をモチーフとしたテーマパークといったほうがしっくりくる。お坊さんもいなければ御本尊も祀られていませんしね。


乗車時に車掌さん的な方に降りる場所を告げておけば降りるポイントに差し掛かった時にバスを停めてくれる。ここからワット・ローン・クンまでは歩いて5分ほど。チェンラーイ市街からはチェンマイ方向へ約14キロ離れていて、トゥクトゥクを200バーツ程度で貸し切るか、チェンマイ方面へ向かうバスやソンテオに乗れば良し。


寺院脇に停められた無数のミニバンやタクシーを掻き分け進むと見えてきた。本当に真っ白く、太陽の光が白い本堂に映えて眩しいくらいの美しさだ。ガラスの装飾効果でキラキラと銀色の光を乱反射していて、太陽の光に照らされ神々しく輝く様は宇宙を照らす仏陀の光を表現しているよう。流石はビジュアルアーティストによる作品だけあってタイの伝統建築と因習にとらわれない前衛的モダンアートの要素が見事に融合した芸術性が高い建築物だ。お見事。


池の中を泳ぐ鯉も白、咲き乱れる花々も白という徹底ぶり。この徹底した完璧主義がアーティストの性格を表しているのだろうか。


遠目からは純白の美しい寺院風建築物に見えた。でも橋を通って本堂へと向かおうとすると、ベルセルクの蝕を彷彿とさせる不気味な彫刻が足元に…

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天に向かって無数に伸びる亡者の手や頭蓋骨の彫刻…溺死者が助けを求めているような阿鼻叫喚の地獄絵図のようになっていて、建築物の美しさに圧倒されつつ、足元のおどろおどろしさに、しばし竦んでしまう。


写真を撮ろうと道を塞ぐと、直ぐに前へ進めと警告が入る。本当に人だかりが凄くて人の海を掻き分けながらの見学となるくらいの人気っぷりだ。

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近くで見たら意外と凝ったデザインで、作品の緻密さ・スケールの大きさに感心させられる。チャラムチャイ氏としては仏教の学びの場としたいそうで、基本的にはこのパーク全体が仏教神話をモチーフとしたアート作品となっていて、建築物の白さは仏陀の清浄さ・清廉さを象徴しているそうだ。真っ白な外観で綺麗なだけかと思いがちだが、仏教の教えや人の性を其処此処にアート的に表現している不思議な空間となっている。

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極めつけは悪魔の口の中にある本殿内の壁画。チャラムチャイ氏が影響を受けたハリウッド映画にアメコミ、特撮やアニメ、SFものの登場人物たちが著作権を超えて大集合、真っ赤な地獄絵の中に著作権をまるっと無視したヒーローやアイコンなどポップカルチャー由来のキャラ達が綿密に描かれている。写真撮影が禁止されているので他所から拝借した画像になるのだが、トランスフォーマーやマトリックスの他、日本でもお馴染みのドラえもん、ウルトラマン、ハローキティーなど、そしてマイケル・ジャクソン、スパイダーマン、スーパーマン、ハリー・ポッター、プレデター、アングリーバード、テロの飛行機がビルに突っ込む9.11の画、ブッシュ&ビンラディンなどなどがざっくり見ただけで壁面にあしらわれているのが分かる。現代の大衆に合わせるように現代の英雄や悪魔の善悪を用いて表現したのはチャラムチャイ氏なりの工夫なのだろう。

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他にもカラーコーンの頭にも骸骨の飾りがさりげなく付いてたり、釘が刺さった生首や嘔吐した人の顔面だけを模した植木鉢が木に吊ってあったりと、お寺全体が製作者の世界観で凝っている。古代寺院や仏教寺院巡りの好きな方や敬虔な仏教徒には受け入れがたいかもしれないし、結構グロテスクな表現もあるので、好き嫌いは分かれるかもしれないが、まぁテーマパーク気分でさくっとこの異質な空間を味わう分には面白いかと。

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喫煙や飲酒による弊害を訴えるようなメッセージ性の強いモニュメントも多数。チャラムチャイ氏の考えが詰まったまさにライフワークの場になっている。まだ未完成とのことだが、なんとか存命中に完成させてもらいたいものだ。

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本殿以外も純白。

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ダチョウ倶楽部が『ヤー』って言っている様な立て看板のこちらのおじ様デザイナーが件(くだん)のチャラムチャイ氏。芸大生当時、古臭いとされていたタイ宗教美術を世界に通用する物にしようと志し、仏教や神話をモチーフにした前衛的な作品の研究・創作活動に注力する。ロンドンのタイ寺院の壁画やチェンライ市街地の黄金の時計塔も彼の作品で、日本の文化勲章のような位置づけの名誉あるタイ王国国家芸術家にも選出されるほどの有名人らしい。気さくなおっちゃんといった感じだが、デコ広すぎでしょ。

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こちらは境内でやたらみかける巻きグソのような物体。

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その正体は許愿牌と呼ばれる絵馬のようなプレートの集合体。一個3oバーツ。姓と願い事を書いて掲げられたものの集まりが巻きグソになるようだ。

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許愿牌のプレーは屋根になったりもする。多すぎてそろそろ保管場所がなくなりそうだ。


こちらの金ぴかの建物はお手洗い。このパークでは邪悪な欲望に支配された人に似合うケバケバシイ色とされているが、トイレだけは一面金色で超豪華。

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日本では人気の寺というと歴史があったり古い場所が一般的だが、こちらは所謂「由緒ある・・・」というものではなく、1997年に建設が開始された比較的新しい建築物で、まだまだ拡大中。サグラダ・ファミリアとまではいわないが、完成まで60~90年かかると見積もられているそうだ。

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既に観光地化していて、周囲にはお土産屋、食堂、ATM、両替商などが入った小さなショッピングモールやチャラムチャイ氏の異色の作品ギャラリーを並べた博物館に併設された土産物屋なども出ている。要りもしないポストカードなどをついつい買っちゃいました。

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たまたま参拝していたMiss. ASEAN 2014の各国候補者の面々。コンテストは12月30日で、優勝者には100万バーツが授与されるらしい。ミャンマーかインドネシアかな。

もう本当に凄い人で、ゆっくり見物するような場所ではありません。タイの北の端っこなのにこんなに観光者がいるとは思ってもいなかった。
続いてバスを降りた幹線道路に戻り、ソンテオに拾われてチェンラーイ市内へと移動する。

■ 基本情報
・名称: Wat Rong Khun
・住所: Pa O Don Chai Road, A. Muang, Chiang Rai,57000 Thailand
・アクセス:チェンライ市街地の第一バスターミナルからトゥクトゥクで往復約300バーツくらい。7-8番のプラットフォーム発のバスに乗り途中下車も可能、20バーツ。
・営業時間: 6:30~18:00
・電話番号: +66-53-673-579
・拝観料: 無料

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