ベトナムで小物屋巡りをして目につくのが鮮やかな色糸で刺繍を施された民芸品。売り子曰く「これは少数民族の○○族が~」と言われますが、そう言われても全くもってピンときませんよね。だって○○族って言われても知らないしイメージ湧かんもん。ハノイからは少数民族の村巡りツアーなんてのも開催されているので参加して見たかったが如何せん時間が無い…そんな私にぴったりな博物館がハノイ市内にあるようだ!その名も民族学博物館。ホアンキエム湖からメーターで走ってVND120,000(約500円)、この民族学博物館では54もあるベトナムの少数民族の文化や暮らしっぷりが紹介されているようです。
早速、入館料を払って内部へ。カメラの持ち込みとしてVND50,000が必要とガイドブックにあったので、入館料と併せて支払うとチケットとシールを渡される。ようは衣服に『撮影料金支払い済み。』を意味するシールを貼るのですが、他の見物客はシール無しでバンバンと写真撮影に勤しんでいたし、係員も注意などしていなかった。全くばかばかしい話である。
さて、博物館は建物内の小規模展示物の他、建物の周囲にある巨大な野外展示場にも各民族の伝統家屋が展示されている。各家屋は何とその土地その土地の少数民族の方々の手によって建築されたオーセンティックな住居だそうで、これだけでも少数民族ツアーのようでかなり見ごたえがある。
まるで住宅展示場のような野外展示コーナーから見学をスタートする。
こちらはバナ族の集会場。一際目を引くこの高床式建物は何と高さ19メートル!!2003年にベトナム中部の高原にあるコントゥム市に住む42人の手で建築されたそうで、アスレチックのような感じで階段を登り、内部にもお邪魔することができる。床は藁でできていて、足を進める度にギシギシ、ミシミシと音を立てるので床が抜けるのではと少し心配になる。
こっちはまた、電車のようになが~いお家!!2000年に16名のエデ族によって2月半の月日を費やして復元されたロングハウスで、気になる長さは42.5メートル!!これらのロングハウスには祖母から孫娘まで、2~3世代に渡る母系大家族が共同で暮らすそうです。
内部の様子。こちらも床は藁造り。風通しが良く木々の濃い~香りも充満して、意外と気持ちが良いものだ。ゴザを敷いて昼寝をしたら気持ちがいいだろうな~。
こちらはジャライ省に住むジャライ族の御霊屋。周りを取り囲む垣根の上に載せられた木像は故人と共に“あの世”に赴く人や物を象徴しているそうで、妊娠女性や局部を過度に強調した男性など、ちょっと卑猥な物もあったりしますが、これらは豊穣な生産力への願いからきているそうで、やましいものではなりませんので悪しからず…
近くで見てみると思いっきりリアルな悩ましいお顔のオブジェがズラリと並んでいる…
こちらはチャム族の集合住宅。かなり質素な生活を送っているようだ。
続いてタインホア省から移築されてきたベト族の家屋で、1906年に建築されたこの建物は、ホイさんという20世紀初頭の裕福な農家の所有物だったそうです。母屋と別棟と台所がU字型に配置されていて、中央には中庭を配すというのがベト族の農村でみられる伝統的な居住様式なんだそう。
こちらの仏壇(?)を見る限り、中華文化の影響を多分に受けているようだ。龍やフェニックスの彫刻が施され、中国語の文字で彩どられている。
まだまだ続く異文化体験の世界。大きな藁屋根に粘度壁が特徴のハニ族家屋(左)にザオ族の半高床式家屋(右)
その他、野外展示場ではベトナムの伝統芸能である水上人形劇も楽しむことができる。言葉は分からないが、楽しげな歌やら台詞やらに合せてシュールな人形が動き回る姿に何となく楽しめてしまいます。(土日のみの公演だそうです)
続いて博物館内部の展示会場へと進む。
中に入って直ぐ目に入るのはベトナムの象徴とも言える積載量満タンのチャリ!こんなんどうやって運転するんじゃ!
いや、器用なベトナム人の手にかかればこれでもかとチャリの前後左右に満載したビク(魚籠)を乗せ、それでもなお素晴らしいバランス感覚でしっかりと運転できてしまいます。この伝統は信じられない程に巨大な物を大量に載せて走る現代のベトナム人バイク乗りに脈々と引き継がれているようです。
こちらもベトナムの象徴の一つであろうノンと水上人形劇に関する展示物。
キン族と同じアンナン・ムオン語派に属するチュット族。生活は狩猟採集に頼っていて、男が槍や弓をもって狩猟に出かけ、女が狩猟する事で食物を確保しているそうです。
こちらは国の5.1%を占める440万人の人口を誇るタイ・カダイ語族に属するターイ族の宗教儀式。ターイ族は主に河川近くの肥沃な平地や山間部の平地に定住し、高度な農業システムを発達させてきた他、織物産業なども興している。文化的には儒教・仏教・道教の影響を受け、父系制の民族で、先祖崇拝を大切にするそうだ。
グアン省に住む織物の民・ターイ族の衣装は木綿と絹から作られ、芸術性が高い。機織りは今も生活に根付いているようだ。そういやターイ族手織り布キャミソールやターイ族手織り布なんて土産品を見た事がある気がするぞ。
こちらはホアビン省・タインホア省の盆地や山岳地帯に多く住むムオン族。山麓、丘陵地の斜面や河川のそばに建造した定住村落で水耕栽培を行なったり、家畜、家禽類を飼育したり、狩猟、漁業、食物の採集と、手工業を行っている。彼らは多くの口承文学や伝統儀礼を継承してきているそうですが、中でも『モ』と呼ばれる葬礼が有名だそうだ。紹介パネルやマネキンに加えて、葬儀の模様をビデオで流しているので、ちょっと夢に出てきそうで怖い感じもしますが見ていて興味深い。彼らは民族・言語的にはキン族(ベトナム族)に最も近く、ムオン語とベトナム語も多くの類似点がある。キン族が平野部に住み、紀元前111年の漢による侵攻以後に中国文化の影響を非常に強く受けたのに対して、ムオン族は山岳部で固有の文化を発展させたことで民族的に枝分かれしたと考えられているそうだ。
ベトナム北部の山岳地帯に住まうモン族。染織技術の高さに名高いそうで、バティックの技法を用いて蜜蝋で防染加工してから麻の織布を藍染めするスカートには彼女らの匠の心と器用さが凝縮されている他の竹細工や織物の展示物に目を向けてみても、非常に緻密にできていて、この国の人々の手先の器用さが伝わります。色使いも韓国や中国のように派手なものではなく、落ち着いていて控え目なな地色がベースとなっているものが多く、日本人に近い美的感覚を持っているような気がしないでもない。町中の土産ショップで見かける鞄なんかもモン族のものだったりするのかもしれない。
織物と土器造りで有名なチャム族の牛引き荷車。メコンデルタ周辺や中南部海岸沿いに住まうチャム族は2世紀から17世紀頃までベトナム中部で栄えていたチャンパ王国の末裔で、現在ではベトナム以外にもカンボジア、マレーシア、タイ、アメリカ、フランスと東南アジア諸国を中心に点在している。
一通り展示物を見回った後はお土産物屋へ移動。各少数民族の手工芸品、織物、竹細工などベトナム特有の逸品が取り揃えられている他、美しく面白いベトナムの姿が分かるポストカードの種類も豊富です。
14番の市バスなら3000ドンでホアンキエム湖から博物館の最寄りのバス停まで移動できるようです。
ハノイ・民族学博物館 | |
住所: | NGUYEN VAN HUYEN, QUAN CAU GIAY, HANOI, |
電話: | (04)37562193 |
時間: | 08:30-17:30 |
定休日: | 月、旧正月 |
料金: | VND 25,000 |
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