カンボジアの首都プノンペンの象徴の一つとも目されるワット・プノン。ワット・プノンの名はクメール語で『丘の寺』を意味し、字面通りプノンペン市街にある丘の上に建てられた仏教寺院のことを指します。カンボジアの民間伝承によれば、1373年にDaun Penhという名の貴婦人がメコン川の岸に漂着した4体のブロンズ仏像と1体の石像を発見し、小高い丘と祠を築き、その中で仏像を手厚く祀りたてたことに由来するそうだ。そしてその丘の名前はいつからプノン・ペン(ペンさんの丘)という名の聖地として崇められるになり、これがやがてプノンペンの街の名前として定着したと言われている。それから5世紀、今でも寺院は町の象徴として崇められ、この街を見守り続けてきた。
プノンペンの主要道路であるモニボン通りと平行して伸びるノロドム通りの北の突き当たりに聳え立つワット・プノン。平坦な地にあるプノンペンにあって、遠景にもそのドングリ形状のストゥーパを望むことができる。
丘の高さは20-30m程度であろうが、近くに立つと意外な程に迫力を感ずる。丘の中腹ではおばちゃんがデ~ンと深く腰を下ろし、階段を登って行く参拝客を選別している。どうやら外国人のみおばちゃんに呼び止められ、入場料としてUS$1を徴収される仕組みのようだ。
丘の麓にある緑あふれる公園では地元の方々が思い思いに涼を取っている。その周りを猿が歩き廻ったりしていて、何とも長閑な雰囲気だ。
こちらの像は噂のペン夫人ではなく、クメール帝国最後の王であるポニャー・ヤット王子とその家臣たち。ヤット王はシャム王国の侵略を受けて当時の都アンコールからプノンペンに遷都した際、ペン夫人が保護した仏像がメコン川の氾濫による洪水被害に遇わぬよう、丘を更に高地化させたと言われるアツい仏教心の持ち主だったそうだ。そんな訳で彼の遺灰は丘のてっぺんにあるストゥーパに安置されている。
本堂は王宮を髣髴とさせる立派なクメール建築。いつ建築された物かは分からないが、流石に14世紀にペン夫人が建てたものではないのであることは確かだ。
内部には黄金の巨大仏像とコミカルなミニ仏像たちが安置され、天井や側壁にはラーマーヤナ物語の絵図が描かれている。ペン夫人が拾ったオリジナル仏像の姿は見当たらなかったが、現存していないのだろうか。
ワットプノンは今でも地元民の心の拠り所なのであろう。本堂の裏手では老若男女、小奇麗なビジネスマン風の男からホームレス風の男まで、皆、熱心にお祈りを捧げている。線香の香りも辺り一帯に充満し、神秘的な雰囲気で自分の心も洗われる気がする。
こちらが“Yeay Penh=マダム・ペン”ことペン夫人の像。背面を電飾で光り輝く仕様にすることで有難味が強調的に演出されているのは日本人的感覚からするといかにも安っぽくて頂けない。アイシャドーと口紅を塗りたくった派手目化粧とクメール人らしからぬ美白肌が印象的な貴婦人は、本堂の仏像と比べても圧倒的な人気を誇っているようで、富と繁栄のシンボルとして現地の方々によって一心不乱にお祈りを捧げられていた。
●Wat Phnom
・拝観料:US$ 1(カンボジア人は無料)
・開放時間:7:00~18:00
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