魅惑の歓楽街・女人街

女人街・・・
何となく魅惑的な響きの通り名。初めてこの名を耳にする人は吉原や、ポン引きが立ち並ぶ男の為の歓楽街などを思い浮かべかねないネーミングだが、実際は何ら如何わしいスポットではなく、激安商品やちょっとアレなコピー商品が並んでいる旺角の一大露店街です。香港の街を歩いていると、アチコチの路地でずらっと露店が並んでいる光景を目にしますが、女人街は数ある香港の露店市の中でも最大規模。思えば学生時代に旅行で香港に立ち寄った際に、真っ先に向かったのがこの女人街でした。あの時に買った重厚な見た目のパチ物タグホイヤーは見た目と裏腹に3日で故障し、郷ひろみに瓜二つの顔をした押しの強い商人に無理やり掴まされたカットソーは一度の選択で激しく収縮、哀れなヘソだしスリークオーター袖のピチピチスウェットシャツへと変貌を遂げた。『安物買いの銭失い』とはよく言ったものだ。あれから月日は流れ、縁あって香港には何十回も来ていますが、女人街は学生時代に行ったっきり。あの“THE香港”とも言うべき活気は今も続いているのだろうか。前述のような経験からハッキリ言って良い思い出は無いが、あの熱気と露店のごちゃごちゃ感が妙に懐かしくなったので、女人街を目指していざ九龍半島は旺角へ向かうことに。

MTR旺角駅で下車、D3出口から出て亜皆老街を東へ進んで一本目の通りである通菜街が女人街の北側の出発点。彌敦道(ネイザンロード)に並行して南北に走る400mメートル超の小道で、10メートル程度の道の両側をびっしりとテントの露店が占拠し、真ん中を北から南から観光客が盛んに往来します。更に露店の外側のビルにもレストランや小物土産店が所狭しと軒を並べる。縁日でもないのに至る所に物・人・店が氾濫していて、ここに来ればパワフル香港を体感することができるというおススメ観光スポットの一つです。

ひだり みぎ
ひだり みぎ
渋谷を彷彿とさせる賑わいで、夜の旺角のネオン街は若者や観光客でごったかえしています。


女人街の角を曲がると人口密度は更に上昇。両サイドの露店が只でさえ狭い道幅を更に狭め、ブリトニースピアーズやジェニファーロペスなど一昔前のアメリカンポップスが流れる中、人が通るのがやっとの小道を白人・日本人・インド人などの観光客が闊歩します。

ひだり みぎ
人がすれ違うのがやっとの狭い通りを歩きながら、露店の商品を品定めする。ゆっくりと歩いて観て回りたいが、道が狭い為に立ち止まると渋滞の原因になってしまうので、足早に歩く。学生時代に来た時には『シャチョーさんシャチョーさん。』との声をかけられましたが、当時と比べて店員の活気が失われているようで、椅子に座ってどっしりと構える仏頂面した店員が多かった印象。商品は服やバッグ、扇子、携帯電話用ケースやストラップなどの小物雑貨からスーツケースや絵画などまでバラエティーに富む。女人街だが女物以外の物も多い。殆どの品は値段が定められておらず、気に召した品があれば、電卓を持って香港商人との交渉することが必要。同じ製品でも各店舗ごとに値が違ったり、客の恰好によって販売価格を変えてきたりします。日本人と判別されるとかなりの額を吹っ掛けてくるので、値下げ交渉は必須。但し、一度興味を示す素振りをすると必死に食らいついてきて逃げられないので、交渉は本当に今日のあるものだけに留めた方が時間と体力の節約になります。

店『100ダラー!』
私『50!』
店『(悲しい顔をして)ノ~~。80!』
私『50!』
店『(私の腕を掴んで)ノ~~。70以下は無理あるね!いくらなら買うの?』
私『50じゃなきゃ買いません。50で売ってくれますか?』
店『ノ~』
私『それでは…』と立ち去ると…
店『オッケーミスター60!』それでも足を止めずに店を離れると…
店『オッケー50オッケー!!!!!ユーカムバックプリーズ!!』

何だか罪悪感すら覚えてしまう店員の悲痛の叫び。自分の言い値まで下げてもらったらきちんと購入してあげるのがマナーです。そして、余り高圧的にならぬよう、笑顔で接してあげてください。交渉次第では非常にお得な値段で買い物をすることができるが、お品の品質も値段相応。『安かろう悪かろう』と割り切って買い物をしなければ、後で後悔する羽目になります。

ひだり みぎ
ひだり みぎ
間口2メートル、高さ・奥行3メートル程度のテントの中に所狭しと並べられた商品。少しでも多くの商品を並べようとテントの一番高い所までぎっしりと商品を並べています。スーツケースは2000円弱からと日本と比べて非常にお得。一度、深センで偽Tumiスーツケースを購入したが、出張デビュー戦でいきなり前輪・後輪各1個ずつが大破。長くはもたぬと分かってはいたが、まさか初陣から戦力外になるとは計算外のゴミっぷり。以降、偽ブランド品は自分では使わず、人様にお渡しするプレゼント用のみの購入にすることを決意しました。

ひだり みぎ
ひだり みぎ

1ミリたりとも売り場スペースを無駄にしない商品陳列にかけるこの努力!どの露店を見ても無駄を省いた商品の陳列レイアウトが施されており、この点に関してはただただ感服するばかり。上段のお品は店員が釣竿のような棒を巧みに使って取り下ろしてくれますが、取ってもらった後に『やっぱり要らない』と伝えると、今にも泣き叫びだしそうなくらいの悲しい顔をされるか『買え!この野郎!』と罵倒されるので、小心者の私は下から眺めるだけにしておきます。

ひだり みぎ
中央の出店の影に思いっきり隠れていますが、両脇のビルや女人街に交わる通りにも大衆飲食店を中心とした店舗がズラリと並び、観光客の需要を取り込もうと必死に客引きをしたりしています。


お坊さんも恥を忍んで通りかかる観光客に片っ端から声をかけて托鉢に勤しんでいます。見境無しに観光客にアプローチし、目が合うと20秒くらいチェイスし、何かを唱え続けている。ノルマが厳しいのか、こんなに能動的に托鉢にあたるお坊さんは初めて見た。


こちらでは菅直人似のオジサンが己の磨いた手練の至芸を披露している。


私を含む2~3人が静かにオジサンを見守り、圧倒的多数が彼のすぐ横を素通りしていく中、ゆっくりと足の上に銀のボウルをセット。頭のてっぺんには同じボウルが10枚程度、バランスよく乗せられています。足を故意にブラブラして(片足立ちに疲れてプルプルしてる?)ぼそぼそと何やら一人でおまじないを唱えながらタイミングを整え…ボウルを上空へ!お爺の足から上空へと飛び放たれたボウルは美しい放物線を描き、見事にお爺の頭の上にあるボウルの上に着地!おおおおおおおぉぉぉー!!割れんばかりの歓声!!ってな訳ではないですが、私ともう2人の観客で控え目に拍手をすると、照れくさそうにはにかむオジサン。こんなに目立つ芸をしているのに、周りを歩く人は皆見て見ぬふり。同情心から少ないながらも小銭を渡すと『ドゥオーチェ(多謝)』と黄色い歯をのぞかせてきました。頑張れオヤジ!

ひだり みぎ
串焼き、ケバブ、インドカレーにおでんなどの煮込み物の香りもまた香港特有の雰囲気を醸し出している。見た目は平凡だが、これがまたバカにならない。小腹が減ったら街歩きに繰り出し、汗をかきながら串ものとタピオカ入りミルクティーに舌鼓を打ちつつ周囲の人間観察。至福の時である。この熱気と活気の渦の中にいると、仕事の嫌な事も忘れて、目の前に広がる光景や出来事を楽しむことができる。この謎の熱気がパワフル香港の魅力だろう。

女人街は昼過ぎからボチボチとテント組みが始まり、夜の8時~11時くらいが賑やかさのピークです。じっくりと買い物を楽しみたい方は夕方前に、香港の活気を味わい方は夜8時過ぎに行かれると良いかと思います。

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