銃を持つ民主主義

『銃を持つ民主主義』

共同通信社のワシントン支局長などを歴任され、現役引退後も精力的にフリーランスのジャーナリスト活動を続けられている松尾文夫氏の代表著書の一つである。松尾氏は1945年、疎開先の福井県での被爆体験の衝撃から、一生涯をかけてジャーナリストとしてアメリカを追い続けてきている執念の人だ。昨年、偶然にも小生の日本出張からの帰路便(成田⇒広州)で、その松尾氏と隣の席に乗り合わせました。松尾氏の次回作となるべき「日米関係よりも69年前に始まった米中関係」に関する広東省での実地調査への道中だったらしく、国際政治に関して門外漢の私に日米・米中の政治などに関して熱心に教授頂いた。縁とは不思議なもので、どこでどんな人と出会うか分からないものです。その後も小生の日本一時帰国時にはお食事に誘って頂いたり、著書をわざわざ中国まで郵送頂くなど厚遇頂いております。せっかく御厚意で著書をお送り頂いたので、今日はお送り頂いた中の一作である『銃を持つ民主主義』の概要紹介をさせて頂こうと思います。(私は松尾氏や、その出版会社の回し者ではありませんw)

●私が解釈した本の概要
松尾氏とアメリカとの関わりの原点となった米軍による福井大空襲作戦は、1945年7月19日深夜に実行に移され、福井市は1時間以上に渡り127機による集中爆撃を受けた末、市街地の損壊率は84.8%という壊滅的大被害を被りました。非戦闘員である一般市民の居住地をも攘夷弾で夜間に焼き払うという剥き出しの力の行使。この作戦を立案・承認し、後に朝鮮戦争においても200万人もの尊い命を無差別攻撃で奪ったルメイ将軍の『軍事力徹底使用主義主義』及び『先制パンチ至上主義』と、イラク戦争の開戦理論の支柱となった新保守主義者の『先制攻撃論』そして好戦的『ブッシュドクトリン』は同根、即ち米国の武力行使のDNAに資するものではないかとの論を、アメリカ建国まで遡って紐解いていくのが『銃を持つ民主主義』です。

冷戦後のアメリカは、世界に対して無敵の力と影響力を謳歌してきました。ブッシュジュニアはこの影響力に関して、次のようにも述べている。『自由、民主主義の諸原則、自由社会の価値に対する忠誠を維持していることとも合わせてこの我々の立場はかつてない責任・義務と機会を持つ。我々は最良の防衛は良き攻撃であると認識しており、攻撃を防ぎ、抑止するためのアメリカ本土防衛を強化している。国際社会の支援を得ることに耐えず努力ししつつ、テロリストが国民と国土に対して危害を与える事を防ぐため、彼らに対して先制的に行動する事で、必要ならば単独で自衛権を行使する事も躊躇しない。』

この姿勢は、人類の諸権利の為の義務だと信じ、アメリカ西部へ、やがては太平洋を越えたアジアへの拡張を続けた『帝国意識』、『明白な天命思想(所謂マニフェストデスティニー)』として建国直後から如実に表れていました。メイフラワー制約に始まるアメリカ型民主主義のオリジナリティーを誇り、民主主義の諸制度の構築を神の摂理にかなったものと受け止め、神に選ばれた国アメリカ合衆国として一種の歪んだ選民意識・使命感の下に西へ西へ拡大を続けたアメリカの啓蒙的国際帝国主義。民主主義の栄光の裏側に潜む武力行使のDNAがアメリカ合衆国国民にビルトインされているのだ。

米国はマニフェストデスティニーの正義の名の下に日本の民主化・アメリカ化には成功したが、ベトナムでは躓き、イラクでもレジームチェンジには成功したものの、その後のネーションビルディングには失敗。今後果たして…

●読んでみての感想
イラク戦争後も国際舞台での発言力が強まっている中国との鬩ぎ合いを見せている“世界のポリス”米国。そしてこんな武力剥き出しの啓蒙的帝国主義国家と中華思想覇権主義国家に挟まれた日本。すぐ傍の半島でも米中衝突の火種となりそうなリスクを抱えてるし、日本は地政学的に言えば非常に重要な立ち位置にある。それなのに日本国内では平和ボケムードが蔓延。相次ぐ政権交代で、日米同盟にしがみついていくのか、経済大国中国との関係強化に舵を切っていくのかの方向性・軸すら定まっていない。戦後日本の驚異的な経済成長の基盤となった日米同盟であるが、その意義が薄れてきている中でどうするのか。この本を読んでみて改めて米国の軍事主義精神に気づかされ、昨今の経済レベル・政治レベルに存在する米中摩擦もあり、日本国民も日本の世界での位置づけ、世界情勢にもっと関心を払い、危機感を抱くべきだと強く感じた。(ペーペーが偉そうなこと言ってしまいすみません)

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コメント

  1. 旅行好きサラリーマン

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    >ぴーすけat旅すけ。さん
    読みずらくてすみませぬ(涙)複雑で分かりづらいことですが、これからは国際情勢を常日頃から考えていくことがより一層大事になるかと思いますよ^^

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