B級感あふれる上海博物館

本日は久しぶりに上海でゆっくりできる日曜日を迎えられたんだけど、疲れすぎて何もやりたくない重度の社畜症候群に見舞われたので、宿泊先近くにある上海博物館でゆるーく暇潰しするこ程度の活動に控えることに。

まぁ博物館で暇潰しって言っても、故宮博物館・南京博物館と共に中国三大博物館に数えられる上海博物館は2-3時間でサクッと見きれるような生温い弱小博物館ではなく、中国うん千年の歴史を伝える数々の重要文化財を惜しみなく展示する巨大博物館なんで参観するのに体力が必要。収蔵点数100万弱、国の重要文化財に指定されている文物だけで13万点も収蔵されているもんで、一点一点を吟味して見て回れば平気で丸一日かかってしまいますからね。選りすぐりの至宝は蒋介石の手で台湾の故宮博物館に軒並み逃されたんで、どうせ残り物の寄せ集めばかりが展示されてるんだろうなぁなんて上海博物館の価値を大いに軽んじてたんだけど、まぁ入館無料だからな!程度の軽いノリで足を運んでみることにした。

博物館の最寄り駅である人民広場駅を降りると、方形の土台に取っ手のような構造物が乗った奇妙な建物が前方に現れた。これが中国では名高い上海博物館で、この独特な形状は「天は丸く、大地は碁盤のような方形」という古代中国の「天円地方」と呼ばれる宇宙観を表現したものらしい。方の地に円の天とか言われてもあまりイメージ湧かないけど、前方後円墳っぽいコンセプトかな。

わくわくしながらエントランスに行くと、心が折れてしまうくらいの長蛇の列が…。
ひだり みぎ
それもそのはず、入場制限がかかっていたようで、退館する人の数だけ順々に入館しているような状況だった。しかも、セキュリティーがしっかりし過ぎていて、ライターや液体物の没収を命ぜられた入館者があぁだこうだと一いち抗議してやがる。しかものしかもで、入館後に判明したことなのだが、明らかに博物館の展示物目当てというより涼みにきてるだけで長居する地元のオバサンが大量に居座ってやがって、回転率の悪いこと悪いこと。大陸で冷房付きの博物館を無料開放したらこのような弊害が生じることは簡単に予見されただろうに…。平気で人権を蹂躙するような中〇でもこのような輩を強制排除するようなことはできんもんか。


やっとこさ入り込めた館内はデパートかのように中央が吹き抜けのホールになっていて、1階から4階にかけてテーマごとの展示室が設けられている。そのテーマは後述の通り多岐に渡り、紀元前の古代文明から明・清時代までの青銅器・陶磁器・書物・絵画・家具・貨幣などなど中国の歴史の重みを伝える幅広く充実した展示品が並んでいるので、速足でざっと見て回るのにも軽く3-4時間程度はかかるだろう。大人のディズニーランドみたいだな。

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敢えて順路を設けず自由に見て回れるフリースタイル造りとなっているので、先ずは手始めに一階の彫刻館を見学することに。

戦国時代から明朝時代までの中国の彫刻史の遍歴を物語る約120の作品が並ぶ。

ひだり みぎ
宋時代の天王石像に粘土の菩薩像。中国で彫刻品となると宗教モチーフが多いのか、展示品の殆どは仏教関係という構成になっている。

ひだり みぎ
石を彫って作った迫力ある表情の天王と物悲しそうな獅子。

ひだり みぎ
ひだり みぎ
石や木彫りの各種像。やっぱりなんかB級コレクション感があるんだよな。歴代皇帝のお宝は台湾に持ち去られたんで、しょうがなく残された中からそれらしい骨董を並べてみましたよ的な。

続いて、中国青銅器時代のトップコレクションが並ぶと上海博物館が自負する青銅器館。当時においては青銅は貴重な合金で、主に祖先神霊の祭祀に使われる容器に重用していたそうだが、時代を追うごとに用途が多様化。ここでは酒器・食器・兵器・楽器と幅広い芸術品が並んでいる。

1972年、雲南江川県で発掘された西漢時代の枕。当時の人は後頭部がかっちかちだったのかな。

ひだり みぎ
諸侯がチャンチャンバラバラやっていた春秋時代のワイン樽。複雑精緻な幾何学模様や動物の立体的な彫刻が表面を覆い尽くすようにびっしりと施されていて、鋳造技術の高さが窺い知れる。この時代、日本はまだ縄文時代晩期だったことを思うと古代中国の先進性に驚きを禁じ得ん。

諸侯たちがこぞって富国強兵を目指した戦国時代の樽や切れ味鋭そうな剣。どっかの博物館で戦国時代に作られた現代の高炭素鋼と同等の硬度を誇る鉄剣やイカした甲冑装備の展示品を見たんで、青銅の刀自体には驚くことはない。ドラクエでも銅の剣なんて初期装備の扱いで価値低いし。
ひだり みぎ
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青銅器時代の古代文明では祭祀において酒の果たす役割が大きく、最初期に作られた青銅容器はもっぱら酒器であったので、どこの博物館でも青銅器コレクションには酒器が多い。因みに、宗廟に備える為の青銅器を彝器と言うが、「彝」の象形文字は人が鶏を羽交い絞めにしている様子を表しているらしい。

どうだろう、鶏が羽交い絞めにされてるように見えるだろうか??

続いて二階。陶器館では新石器時代から清朝時代までの厳選された芸術品500点余りが展示されている。
ひだり みぎ
紀元前2,000-2,200年の紋様土器と西普時代の土器。鳥やら人やら楼閣がモッサリと付いていてビックリする。

ひだり みぎ
威勢の良いお馬は共に唐時代の物。いわゆる唐三彩と総称されるもので、鉛釉を施した唐時代の陶器のことである。当時の人々の鬼神崇拝・動物のもつ強大な力に対する崇拝が動物モチーフの背景にあったとされ、やたらと動物を模った物が多く展示されている。


天王。きゅっとくびれたプリティな腰つきと茶目っ気たっぷりに振り上げてみた握り拳、そしてよくよく目を凝らしてみると踏みつけにされた小さいおじさんが…。おっかなく厳めしいはずの天王の表情までだんだんと可愛らしく見えてくる不思議な作品だ。


ラクダに跨る粋な行商のオジサン。1,000年以上も前の作品なのに、現代に通ずる作者のシュールな感性がビシビシと伝わってくるこの感じはなんだろう。

ひだり みぎ
黄色・白・緑の組み合わせがメインになっていることから三彩と称されているのだと。この、お馬と馬にまたがる騎手のやるせない表情が何とも秀逸なんだよな。「ひひーん↓」って声が今にも聞こえてきそうな。


こちらは枕シリーズで、元の時代の山水画が施された枕。


これは秀逸w。三国時代、呉の国の枕。やっぱりこのB級感が堪らないwww。蒋介石も、「これは大した価値無いんで残してって良いっしょ。輸送能力に限りあるしな。」みたいな感じの二軍作品扱いだったんだろうな。

3階は中国歴代書法館・印章館・絵画館となっていて、書や伝統的絵画・印刻・篆刻などが扱われている。印章なんか展示テーマになるのかよ!?と思われるかもしれんが、中国では印章に精緻な彫刻が施され、書と彫刻が融合した工芸美術芸術品として古くから文人に愛されてきたのである。

ここからは時間の関係上、残念ながら一点一点の展示品を吟味することは出来ず、さらっと流していくことに。

ひだり みぎ
人物画・山水画・花鳥画などなど様々な絵画が揃う。

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書法館には甲骨文字から王羲之・王献之の清代伝世作品まで幅広く展示されていて、書道作品という観点だけでなく漢字の歴史まで追うことができる。書道を嗜んできた方は純粋に文字の造形美と筆さばきを見て楽しめるのだろうが…。小学校の書道の授業を真面目に受けなかった事を今さらながら公開。

ひだり みぎ
印章。印材は現代で使われる合成樹脂でなく、主に古代中国では金属・玉石・陶磁・牙骨などが用いられてきた。

最後の4階も足早に駆け抜ける。
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少数民族工芸館。56の民俗から成る中華人民共和国、パンフレットに書かれた「各民族の人民が共同して中華文化と文明を作り上げた」紹介文が笑わせてくれる。

ひだり みぎ
貨幣館には半両銭や五銖銭、大明宝鈔から清代の紙幣まで幅広く展示されていて、各時代の画風の変遷がよく分かる。古い時代の円銭の中央に四角い穴がついているのは天円四方の思想表現なのかなぁと思ったり。

うーん。最後は駆け足になってしまって残念だったけど、限られた時間の中で無料の割には大いに楽しめた。多分、展示品の一点一点の価値はすこぶる高いという訳ではないと思うんだけど、陶器・書画・青銅器など中華文化の歴史がダイジェスト的にコンパクトにまとまっているので、中国の歴史文化をざっと俯瞰するのに最適な博物館といったところだろうか。国家的財宝を集めた故宮と違って民間から吸い上げた芸術品が多いので、誰もが知っている国宝級の作品はないけれど、入場無料でさくっと気軽に立ち寄りやすい博物館ではある。

【上海博物館】

住所:上海市人民大道201号/電話番号:(021) 6372 3500
営業時間:9:00〜17:00 (入館は16:00迄、一日の入館人数が8千人を超えると入場制限)
休業日:年中無休
料金 :無料
アクセス:地下鉄1、2、8号線「人民広場」駅1号出口を出て徒歩約5分
*スーツケースなどの大きな荷物は無料で預けられる他、車椅子やベビーカーも無料で貸し出されてる。



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