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ヱビスビール記念館で大人の社会見学


本日の宿泊先は恵比寿にあるウェスティン東京。
ウェスティン東京といえば??と聞かれたらどんな回答をするだろうか。ヘブンリーベッド?ミシュランシェフを擁する龍天門?人により回答は異なると思うが、自分の中ではウェスティンと聞くと即座にヱビスビール記念館を想起する。ヱビスビール記念館はJR恵比寿駅からホテルに向かう途中の恵比寿ガーデンプレイス内にあり、ウェスティン宿泊時には欠かさず参拝する習慣となっている為である。

ひだり みぎ
ヱビスビール記念館のある恵比寿ガーデンプレイスはヱビスビール醸造場跡地を再開発して出来た複合商業施設。ヱビスビールがこの地で創業しなかったら恵比寿という地名にはならなかったわけで、まさにここがヱビスビール発祥の地であり、恵比寿発祥の地ということになっている。

ひだり みぎ
恵比寿ガーデンプレイスに到着すると、目の前に赤煉瓦造りのSAPPORO BEER STATIONという施設が現れる。初めて来た時は意気揚々と「ここだ!」と思って突っ込んだが、ここは紛らわしい名のレストランなのでお間違えなく。


三越の裏側にあるこちらがヱビスビール記念館。郊外への工場移転が進み1988年に閉鎖されるまで、約100年に渡りこの地でビールの生産が行われていた。工場移転後、再開発により「恵比寿麦酒記念館」がオープンし、2010年、ヱビスビール生誕120年という節目の年に「ヱビスビール記念館」としてブランドの威信をかけてリニューアルされた。

記念館は入場無料だが、500円を払って「エビスツアー」に参加すると専門ガイドによる解説があるだけでなく、ツアー後に2種類のビールを試飲できるという嬉しい特典が付いてくる。頭にも心にも口にも舌にも喉にも胃袋にも良いツアーで、ビール好きにおススメしたいツアーの一つである。


記念館に入ると、エビスビールの缶でできたオブジェの上で鯛を片脇に抱えた恵比寿様を発見。今日も大漁でご機嫌が宜しいのだろうか、いかにも御利益がありそうなニコヤカなご尊顔で入館客を癒している。


中はエビスビールのイメージカラーである高級感たっぷりのエビ茶色で統一され、落ち着いた大人の空間といった雰囲気。

ひだり みぎ
館内の至る所に動員されている恵比寿様。もともとは「大漁追福」の漁業の神であることからヱビスビールのロゴでも狩衣姿で鯛を抱えているが、今や「商売繁盛」や「五穀豊穣」をもたらす福の神や他の神の留守番役といった扱いにもなっている。

留守番役とは…
10月と言えば神無月。神々が出雲大社に集結することから全国的に神様が留守状態になってしまう10月に、セコムやアルソックよろしく全国でその留守を護るのが恵比寿様の職務の一つなのである。仲間外れじゃないか!と思ったりもするが、恵比寿様の人のよいご尊厳を見ているとそんな仕打ちに怒っている風でもないし、本院も甘んじて与えられた職務を受け入れているのだろう。


鯛を抱えた恵比寿様、なんと数百本に一本の割合で後ろの魚籠に二匹目の鯛を抱えるハッピーヱビス様がいらっしゃるとか。記念館ツアーではこんなヱビスビールに纏わるトリビアや歴史を学ぶことが出来る。


ツアーの開催時間は上記の通り。ツアーは前半20分がヱビスの歴史ツアー、後半20分が試飲タイムと所要40分。試飲はテイスティング程度の分量ではなく、ガッツリ350mlを2種類も楽しむことができるので、非常にお値打ちな大人の社会科見学と言えるだろう。

今回は14時過ぎに入ったが14:10、14:30のツアーは満員とのことだったので、最短で空きのある14:50のツアー開始まで展示スペースを一人でうろつくことに。

今から遥か4千年前のメソポタミア文明の頃に生まれたとされるビールだが、日本においては、19世紀にヨーロッパからビールが持ち込まれたのが本格的なビール文化の始まりとされている。その頃、ビール市場の成長を見据えて日本国内で多くのビール醸造メーカーが乱立し、そのうちの一社である日本麦酒醸造会社は本場ドイツから専門の醸造技師を招聘、当時高級品であった船来ビールに匹敵する本格派国産ビールの開発・製造を試みる。それから100年超、本格ビール造りを探求し、日本におけるビール文化を築き上げるパイオニアとして歴史を重ねてきた誉れ高きブランドこそがヱビスビールなんだと。

まぁ簡単なヱビスビール史に関する展示物がコンパクトにまとまっている印象。

予習を済ませ、ツアーに挑む。ディズニーお姉さんバリの丁寧でハイテンションなブランドコミュニケーターの挨拶によりツアーが開始される。参加者は20名弱といったところか。

ヱビスビールの始まりは1887年9月。ビール事業の将来性に着目した資本家集団により未開の地同然だった恵比寿の地に日本麦酒醸造会社が設立された。1889年10月には現在の目黒区三田に近代的なレンガ造りの醸造所が完成。当時は日本各地に100とも150ともいわれる小規模な醸造所が出来ては消えるような群雄割拠の時代だったが、ヱビスビールは本場ドイツから醸造技師を招き入れ、仕込み釜・蒸気機関・製氷機などの設備も全てドイツ製で統一することで本格派ビールメーカーとして頭角を現していった。これが今のプレミアムビールであるヱビスの原点。


東洋のビール王・馬越恭平。三井物産の要職にあった1891年、経営不振に苦しむ日本麦酒に役員として乗り込み、僅か一年で黒字転換に成功。1906年には日本・札幌・大阪の3社合同による大日本麦酒を発足させ自ら社長に就任、同社をスエズ運河以東最大のビール会社に成長させ、東洋のビール王と呼ばれるまでになった。旧物産出身者が絡んだ大企業の多いこと多いこと。


1899年、馬越のアイディアで現在の銀座8丁目に日本初のビヤホールを開業、氷室で冷やした生ビール一杯(500ml)が10銭で提供された。工場直送の出来立て生ビールが味わえると連日の大繁盛となり、ヱビスビールの宣伝だけでなく日本でのビール文化の普及にも大きく貢献した。

ひだり みぎ
実際の開業当時の写真とビヤホール内部の模型。その開店日8月4日は「ビヤホールの日」として、恵比寿ビヤホールをルーツとする全国のビヤホールライオンでビール全品半額になるんだと。これもビールに関する有益な豆知識である。


発売から10年でパリ万博で金賞を受賞し名実ともに日本一となったヱビスビール。1901年には出荷量の増大に伴い鉄道輸送の必要性が高まり、工場構内にヱビスビール専用の貨物駅が設けられた。更に1906年にはブランド名ヱビスに因んで恵比寿駅が開業し、1928年には周辺の地名も恵比寿1丁目・2丁目と改称されていった。一企業のブランドが駅名となり、ひいては地名の起源となるというのは全国でも極めて珍しいケースなんだと。

ひだり みぎ
1897年と1900年頃のヱビスビールの看板。戎様の癒し系な笑顔は100年も前から不変。


1904年頃のビール瓶。ビール1瓶の値段が庶民の食べ物であるかけ蕎麦の10倍に相当したそうで、まだまだビールは庶民にはプレミアムな嗜好品だったそう。


1915年頃の美人画ポスター。ある種のアートの様な広告ポスターが並ぶ。

1918年、第一次世界大戦が終わり一時的な反動不況に陥るものの、翌年には反転して大戦中を上回る好況となった。都市への人口集中が一段と加速し、人々の生活が急速に変わっていく中、都心のサラリーマン層を中心に衣食住の西洋化が進み、洋服や洋食が普及。こうしたサラリーマン層の拡大がビール需要に影響し、1919年にはビール党という言葉が生まれてビールは国民の必需品となっていった。


しかし、ビールの好況も長くは続かない。第二次世界大戦に入り、1937年を境に急速に経済面でも戦時色が濃くなっていき、物資の軍需優先使用などによって物資不足は深刻化。ビールに対しても公定価格が定められ、1943年5月、ついには恵比寿ビールを始め全ビール会社のブランドラベルは廃止、家庭用・業務用・軍用の3種類のみしか生産・流通が許されなくなった。勿論ビールと言う呼び名もいわゆる敵性語扱いとなり、戦時は麦酒と呼ばれていたそうだ。まぁ野球でも「ストライク」が「正球」、「ボール」が「悪球」と呼ぶことが強要された時代ですからね。麦酒なんて「噴出水」みたいなダッサイ単語があてがわれた「サイダー」と比べればマシでしょう。

その後、ヱビスビールが復活したのは28年ぶりとなる1971(昭和46)年。戦後のヱビスビールは麦芽100%、ドイツバイエルン産アロマホップを使用し、長期成熟が生み出す円熟の香味を特徴とし、高度経済成長の波に乗って日本を代表するブランドに成長していきましたよ、と。

苦難の時代を乗り越えてきたヱビスビール。その製品の変遷や逸話について学んだ後は待ちに待った試飲タイム。

今回の試飲セレクションは定番のヱビスビールと琥珀ヱビスの2種類で、それぞれ訓練されたプロフェッショナルにより注がれた「パーフェクトヱビス」が堪能できる。
「パーフェクトヱビス」とは、以下の3つの「C」と注ぎ手の確かな技術が揃って初めて実現する至高のヱビスビールのことらしい。

①Creamy:ビールと細やかでクリーミーな泡が7:3の黄金比率になっていること。
②Clear:グラスやサーバーがキレイに洗浄されていること。
③Cold:ビールの味や香りが最も楽しめる温度にグラスとサーバーが設定されていること。

自宅でもできる美味しいビールの注ぎ方(エビス伝統の三度注ぎ)も伝授下さった。下の画像はサッポロビールオフィシャルサイトから拝借した。

1. グラスの7割ほどまで泡が来るように真上から注ぐ。
3. ビール対泡が1:1くらいになるまで待ったら、2回目はグラスの9割ほどまで泡が来るまで注ぐ。
3. グラスの縁からそっと注ぎ、泡がグラスから飛び出るくらいまで注いで完成。
これですよ、これ。3度に分けてビールを注ぎ、グラスふちから数センチ上までクリーミーな泡がはみ出したビールこそパーフェクトヱビス。肌理細かい泡でグビグビ飲めてしまう。

因みに飲み方にもちょっとした要点がある。
1.グラスをもつ時はビールがぬるくならぬよう、底の方を親指・人差し指・中指の三本で挟むように持つ
2.のどごしを良くする為、背筋を真っすぐして飲む

パーフェクトな注ぎ方で注がれたパーフェクトなビールをパーフェクトな飲み方で飲んでこそのパーフェクトヱビスだと。


こうして生み出されたパーフェクトなビールには、泡とビールの境界にフロスティミストと呼ばれる泡の予備軍的なもう一つの層が形成される。このミストのお蔭で飲むたびに泡が再生され、最後の一口まで気が抜けずにその美味しさが持続されるらしい。


これでもまだ飲み足りない方は、ツアーの解散場所の横にあるテイスティングサロンへどうぞ。常時5種類のヱビスと季節のビアカクテルが1杯400円で楽しめる。簡単な肴もあり、気軽に入れるビアレストランといった趣だ。

こちらで飲めるビールは全部で5種類。
•エビスビール
•琥珀エビス
•エビス ザ・ブラック(黒)
•ハーフ&ハーフ(エビスビールとエビス ザ・ブラックのハーフ)
•エビススタウトクリーミートップ
このほか、期間限定のビアドリンクも随時提供されている。

営業時間が日中(11:00~19:00)に限られているのと食事メニューが限定的であることがあって、変な酔っ払い客などが出没する可能性は極めて低く、真のビール好きだけが集う大人なバーレストランになっている。営業時間的に夜の訪問はできないが、休日の昼下がりにまったりと飲む生ビールもたまには悪くないものですよ。

住所:東京都渋谷区恵比寿4-20-1 恵比寿ガーデンプレイス内
お問合せ先:03-5423-7255
開演時間:11:00-19:00(入館は18:30迄)
休館日:月曜日(休日の場合は翌日)及び祝日・年末年始
入場:無料。ツアーに参加する場合は大人一人500円
ツアー所要時間:約40分(試飲含む)
受付時間:ツアースタート時間の10分前まで

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