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遊泳禁止のパラントゥリティスビーチ


ムラピ山麓の村・カリウランから思いのほか早く帰還できたので、今度はバスを乗り継いでジャワ島の南端・プラントゥリティス海岸まで一気に南下することに。

妙に西洋風というかギリシャ風な語感がするプラントゥリティスは、南海の女神ニャイ・ロロ・キドゥルが支配する海岸として地元民の間では知られている。彼女は太古の昔に西部ジャワに実在していたとされるパジャジャラン王国の女王だったが、父王の薦める縁談を断った為に実父により海底の宮殿に閉じ込められ、そのままインド洋の支配者として生きることになったそうだ。どうも古代ジャワ王朝の支配者はクッパ並みの不思議な魔力を操れたようで、政敵や恋敵を石化したり小人にしたりといった類の御伽話を聞くことがあるが、まさか御見合い話を断られたくらいで実の娘を海底宮に拘置してしまうような癇性な王様までいらっしゃるとは、驚きを禁じ得ない。

時は流れ16世紀、中部ジャワに新マタラム王国が勃興、なんとマタラム王国の始祖・スノパティはプラントゥリティスの浜辺で瞑想中に女神ロロ・キドゥルとの対面を果たし、お互いに惹かれた二人はまさかの電撃結婚。海底宮で三日三晩のアツい夜をお過ごしになられた後に婚姻関係を結び、こうしてマタラム王国始祖の子々孫々まで女神の庇護を受けることが約束されたそうだ。それから何世代を経た現世でもスノパティと女神のランデブーであったプラントゥリティスの海岸ではジョグジャカルタ王室により女神に対する秘儀が毎年催されているというから、マメで律儀なジョグジャ王室には驚かされる。曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽祖父の愛人の一人の墓参りをするみたいな感覚でしょ、だって。

そんな聖なるパラントゥリティスビーチ、ジョグジャからは町の南にあるギワンガンバスターミナル発のローカル乗り合いバスで向かう。

ギワンガンは近隣都市や他州などへのバスが出る市内随一の規模を誇るバスターミナルらしいが、バスを待つ地元民数名が地べたに座っているくらいの実に閑散とした田舎町のバス発着場といった感じである。
ひだり みぎ
パラントゥリティス行きのバスを探してターミナルをうろついてみる。


レゴブロックみたいにカラフルなミニバンが10台ほど並ぶ。大型バスは見当たらないが、デンパサール行きのバスも発着しているようで、切符売りの男がしつこくバリ行きを勧めてきて辟易する。


一台一台のバスは所有者の創作作品のようで、アーティスティックなペイントが車体に施されている。カリウランからのバスもそうだったけど、車体には目的地の名前よりデカく「Freedom」とか「Majesty」と書かれているのは「Freedom号」的な車号のようなものなのだろうか。

ひだり みぎ
食堂でオレンジジュース(7,000ルピア)のペットボトルを買って一気飲みすると、飲み干した瞬間、全身から汗が放出される。もうとにかく暑すぎて、うだるようなジャワの暑さに体が驚いたのだろう、ジュースを飲み終えた瞬間にフワフワと体が浮遊するような軽い眩暈症状を起こしてしまう。頭痛や吐き気、体の痺れといった症状は見られないし、寝不足や疲れもあって軽い熱中症に罹っただけだろう。食堂のオバサンに氷をもらい、予備のTシャツをタオル代わりにして首回りと脇の下を冷やすと随分と良くなった。金曜日の退勤後の深夜便で移動してからフルに歩き回ってたからな。今晩は早くホテルにチェックインしてゆっくり休むことにしよう。


食堂の日陰で30分程休憩し、体が快復したところでタイミング良くパラントゥリティス行きDAFA号がやってきた。


小生が乗り込んで直ぐ、待ってましたとばかりにどこからともなく現地の方々がバスに大集合。買い物袋をぶら提げたギャル風のイスラム女性、風呂敷にギッシリと物資を詰めたオバサンなどで5分もしないうちに満席となり、オンボロ乗り合いバスはジャワ島の南端、インド洋の海岸に向けて出発する。


途中、所々で乗客をピックアップしながらジャワ島を南下し、出発から10分としない内に乗車率200%超の激込みギュウギュウ詰め状態となる。これ以上は乗れん!!という状況でもひたすら詰め込んで詰め込んで、テトリスの要領で隙間なくびっしり乗客が押し詰められていく。タダでさえ煮え滾る暑さの車内が一層暑苦しい…


社内のスペースは無駄なく埋まり、乗客数人の身体半分くらいが外にはみ出した状態でお構い無く平常走行。街頭の木や看板に激突しないか後部座席から見てて冷や冷やもん。

ひだり みぎ
市内と郊外を結ぶコミューター的な役割を担うバスだったのだろう。牧歌的な農地に入ったところでバスはスピードを緩め、買い物袋を持ったおばさんたちが一人また一人とバスから吐き出されていく。

ひだり みぎ
これでバスの乗車率も緩和された…と一安心したのも束の間、今度は元気いっぱいの学生たちが大量に乗りこんできてド満席のスクールバス状態。街道沿いの学校の前で幾度も止まり、次々とオバQ姿の女生徒を拾っていく。


こんな感じでジョグジャから1時間超。大海原に注ぎ込む直前のオパック川を渡るとインド洋はもう目の前、プラントゥリティスにある小さなバス停に停車した。ジョグジャへの最終バスについて尋ねると、30分後の17:00前後が最終便の出発時刻となっているとのこと。17:00前後と含みをもたせた回答が本当に嫌らしい。17:00前でも集客状況によっては発車してしまうのであろう。

バスターミナルからビーチへは歩いて3分程。ゴォーゴォォーとまるで大地が唸るかのような波の音がする方向に向かっていくと、目の前に荒れ狂うインド洋の姿が見えてきた。


なだらかな傾斜を持った広く黒い砂の海岸が何処までも続く。岩礁の傍には木造漁船がチラホラと見える。一応は近くには大き目な延縄漁船なんかも停泊できるような漁港や魚市場もあるようだ。有名だもんな、インドネシアのマグロって。


潮の流れが非常に速く波が荒れている為、パラントリティスビーチの海は遊泳禁止となっているようだ。地元の人は波打ち際で磯遊びに興じたり、ただただ砂浜に寝そべったりしている程度。それでも沖まで出てしまったが為に命を落とす人が後を絶たず、「ロロ・キドゥルが従者として海底宮に連れ帰った」という噂が広まっていく。女神は緑色の髪で貝や海藻を身にまとい、魅惑的な姿で若者を海に引き寄せているというのだ。

ひだり みぎ
荒涼とした砂浜と荒れ狂う海がどこまでも続くパラントゥリティスの海岸。南極大陸から遮る物もなく押し寄せるインド洋のうねりは大きく、灼熱の太陽の下であってもぞくっとする寒気すら覚える。


吹き付ける風も思った以上に強く塩っ辛いが、潮の香りはなく、どこか日本海に近い雰囲気だ。


泳ぐならここで…ビーチの一角に申し訳程度のプールが設けられている。

砂浜でマリブでも飲みながら夕日に染まる海を眺められれば遥々インド洋までやって来た甲斐もあるというもんだが、生憎そんな時間は残されてない。17:00前後に出発予定のジョグジャ行き最終バスに乗らなければならないのだ。
ひだり みぎ
最終バスを逃さぬよう、バスターミナルが見渡せる民宿で休憩することに。海の幸を楽しむ時間的余裕も無いので、ココナッツジュースのみ頂いて電解質とミネラルを補給。


16:55、バスの運転手が大声でジョグジャジョグジャと叫び始めたのを見て慌てて乗車。私以外に3人しか乗せていないガラガラのポンコツバスが出発…と思いきや、幾ら頑張っても老体バスのエンジンがかからない…


車両単独での始動が困難と見たのか、代金回収屋としてバスに乗り込んでいたサモア代表ラグビー選手のような屈強な男による押しがけでエンジンをかけることに。他に何名か加勢してきた男たちとスクラムを組み、渾身のタックルをかまして押し込んでいく。すると、ものの見事に車輪が動いてエンジンがかかった!

一旦エンジンがかかったら後はジョグジャまで全力で飛ばす飛ばす。

残念ながらサンセットはビーチで見届けられず…ジョグジャへの最終バスの出発時間がもう30分遅ければよかったのに。


ジョグジャに到着した頃にはもう真っ暗。長ーい長ーい1日だった。ギワンガンからはトランスジョグジャとバイタクを組み合わせてシェラトンホテルへ移動。SPG修行の関係で今回二度目のシェラトンムスティカホテルに滞在する。

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