ラオスの大地に建つ中国資本のカジノリゾート

切っ掛けは取引先の方の一言。先月、マカオのポルトガル料理屋で食事中、急にラオスのカジノの話を振られた。「国慶節のラオスはどうでしたか、ラオスにもカジノあるんですよね。」と。へー、そうなんですかー、ラオスのカジノと聞いても全然そそられませんわー。なんて言ってたが、後日ググってみたところ、ちょっと興味が湧いてきた。ゴールデントライアングルのラオス側に中国資本の金木綿集団が金三角経済特区なるリゾート地を開発し、その中に中国人が牛耳るカジノが運営されているのだとさ。こうしたカジノ絡みの経済特区はボーテンやミャンマー国境のモンラーにも中華マネーで建てられ、いずれも数年間栄華を極めたが結局は麻薬、売春の温床となった挙句に観光客の拉致事件や殺人事件などが続発し、余りにも風紀が乱れたために挙句にカジノは廃止、今や廃墟のように寂れた街になっているという。ただ、このゴールデントライアングルの経済特区はまだまだ新しく現役バリバリにカジノが運営されているらしい。ちょっと気になる存在だ。

ひだり みぎ
「ゴールデントライアングル、カジノ、OK?」と伝えるとニヤッとした笑みを見せ静かに頷くトゥクトゥクの運ちゃん。ホテルに寄ってもらってからカジノへと向かう。

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メコン川沿いの幹線道路を走ること20分弱、川の対岸に冠の形をした怪しい建物が見えてきた。言うならばキングスライムが被ってそうなアレ。分かるだろうか。


これ、この王冠そっくりの建築物が目に入った。


続いて右手に金木綿集団と書かれた看板と古びれた木造建築物を発見。これが中国カジノ軍団の巣窟か!

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金木綿娯楽と書かれた看板が掲げられているが、だだっ広いこの建物の中には掃除のオヤジ一人だけ。

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無駄にでかい建物は埃臭く放置されたいるかのよう。2010年に開業されたばかりと聞いたが、まさか既に夜逃げでもぬけの殻とか?

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対岸には確かに見える、王冠の姿をしたカジノらしき建物が。10分ほど川沿いで対岸を眺めていただろうか。不意に背後から声がかかる。それも中国語で。振り向くと明らかにタイかラオス系の顔立ちをした中肉中背の中年男が立っている。カジノに行きたければ川上に向かって500m程進んだ先にイミグレがあるので、そっちに行ってくれ、そこで対岸へのフェリーは手配するし、ラオス側に着いた後のカジノへの移動も面倒みる、と。流暢な中国語でそう伝えられた。

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男の言うとおりに川上に向かって進むと、確かにチェンセーンのイミグレと金木綿のオフィスが建っていた。金木綿の窓口でカジノに行きたい旨を伝えると、パスポートの提示を求められる。ここで日本のパスポートの威力を発揮される。日本人は手続き料金の500Bやビザも不要なので、直接お隣のイミグレで出国手続きを済ませてくれと。埠頭にて白い服を着た男にピックアップしてもらえるようだ。なんてことはない。他の方の訪問記では出国手数料やフェリー代金を支払われているケースが殆どのようだったが、日本人は長期滞在にならない限りはタイもラオスもビザなどは必要なく、本来であれば無料で行けなければおかしいのだ。フェリーもカジノに言えば手配してもらえる。

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埠頭に直結したChiang Saen Immigration。カジノ需要の為だけに簡素な出入国管理小屋ができたのだろう。ラオス側ではカジノを中心とする金三角経済特区を開発し、タイ側でも客を取り込むためにドックヤードまで運営してシャトルボートをピストン運行させている。金木綿とはいったいどういった集団なのか。中国のネット情報を漁ってみたところに拠ると、出所不明のZhao Weiという黒竜江省出身の男が老板として両岸の観光業を一手に担っているようだ。


何日ラオスに滞在するかだけ聞かれ、あっさり出国完了。

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Chiang Rai Unitedとかいうオレンジ色のサッカージャージを着たカジュアルなタイ人に声をかけられる。「船が着きました。」と、中国語で。川への階段を下りるとKings Romansと書かれた6人乗りくらいの小型スピードボートが待機をしていて、他のタイ人と5人ほどと一緒に乗り込むとすぐに発進。運転手も、着岸・離岸を助けるアシスタントも中国人で固められているようで、みな中国語を喋っている。

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5分足らずで対岸ラオス側の船着き場に到着。

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入国手続きでは残業中なので40バーツが必要になります、とオフィサーに告げられる。土日の06:00-20:00と平日06:00-08:00、16:00-20:00はオーバータイム勤務なので特別料金がかかるらしい。いや、それお前、腐っても公務員なんだし所属先から残業代支払ってもらってるだろ!なんて抗議はしたくてもせず、しょぼい金額だったので黙って支払うことに。因みに帰りのラオス出国時には要求されなかった。


財布からお金を取り出そうとしていると、せっかちな中国人が割り込んできた。既に支払って領収書も書類も全てあるからこんな日本人より先にこっち処理してくれと!さすが世界中どこにいても安定の厚かましさ。

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入国管理局を抜けた先には申し訳程度の免税店もしっかりある。中華タバコとか酒類とか。ビールが無駄にセレクションがよく、オランダやドイツ、チェコなどのメーカーのビールも取り揃えられている。


ラオス側のイミグレを出たところで待機していた送迎用の専用車に乗車。両脇に太いパームヤシが植えられた広い二車線道路を通ってカジノへと向かう。

[youtube]http://youtu.be/Q1dhF3pnp8E[/youtube]
船着き場からカジノへのミニバンではどうしてどうして、日本の北酒場が流れている。何故にこの曲!!?運転手に聞いてみると、仏頂面で我不知道と。顔も真っ黒くバウンサーのようでぶっきら棒・厳つい感じの運転手だ。


送迎車が横づけしたのはまさにカジノの正面玄関となる場所で、パルテノン神殿を思わせる古代ギリシャ建築風の柱に、見上げればルネッサンス風の丸い巨大な天井画。こけおどしのゴージャスさで見た目だけはそれらしく造ってみたが、中身的には何の文化的含蓄もない代物だ。


カジノ横にはホテルまで!所謂カジノを中核とした複合リゾート施設となっているようだ。立てられた看板の案内によると、金三角経済特区は中国の金木棉集団が2010年2月にラオス政府から102.27km²の土地を99年間租借してリゾート開発されたものだそうで、特区内の開発権と管理権は金木綿集団に全面的に委ねられているとのこと。外交、国防、司法以外の自治権まで有しているとのことで、実質上はラオス政府の権限の及ばぬ独立国のようなもの。すべてはオーナーの趙偉氏の胸先三寸で決まる「金木綿王国」なのだ。

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ホテル脇にはご丁寧にショッピングストリートまでもうけられている。

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が、様子がおかしいぞ、と。

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病院も蛻の殻。人の気配が全くしない。夜逃げでもされたのか、建物の内部には長く放置されていたのであろうゴミが散乱して悪臭を漂わせている。水や電気も止められている。この経済特区には5億米ドルもの大金が投じられていると宣伝されていたが、今のところ誰がどう見ても採算がとれているとは思えない。勢いで立派なハコモノをつくってはみたものの、運用が全くうまくいかないという中国リゾート開発の典型的なパターンなのか、それともカジノ経営の裏側で何かもっと巨大なマネーが動いているのだろうか。何せここはかつて世界最大の麻薬・覚醒剤密造地帯として名を馳せたゴールデントライアングル、麻薬ビジネスから生まれる汚い金のロンダリングの為の投資だとか色々と勘ぐってしまう。

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カジノの外装やこれら取ってつけたかのようなローマ風レリーフに見られる陳腐な西洋趣味、素人の小学生が一晩で作り上げたような稚拙な動物たちの塑像など、文化や教養の香りがまったくしないところ、成金富豪の文化事業の悲しさといったところか。

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ある程度カジノ周辺の様子を見終えたところでカジノ内部に入ってみることに。入り口には痰を吐いたりポイ捨てする者には500元の罰金を課されるとの次元が低い注意書きが張り出されている。建物に入ると眠そうなおばちゃんに呼び止められ、カバンを預けることになる。その後セキュリティーチェックのゲートを通り、思いっきりビビーって警報鳴っているのにスルーで通され無事入場。パスポートチェックも無し。

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そこに広がっていたのは、いかにも華人好みの趣味の悪い金ぴかの空間だ。

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中央のテーブルゲームが置かれたカジノコーナーはバカラのみ。20ほどあるテーブルは全部バカラ。他のゲームはというと、ブラックジャックやポーカー、大小などの定番どころも全てなく、端っこの方にちょろちょろと機械式ルーレットとスロットがあるくらい。バカラの方はミニマム20B~と超庶民的カジノであり、客層は成金ファッションの中国人とラオス人/タイ人が半々くらいであろうか。圧倒的大多数はミニマム20~50の低レートテーブルにかじりついている。一応VIPテーブル2台にVIP貸し切りルームが3室あるのだが、誰も使っていないのでディーラーも配置されていない状態だ。後は電話による代理賭博のような専用台もあった。

ディーラーや飲食の給仕スタッフはラオス人が多数で、テーブル上で飛び交うのは現金。チップ交換なんて野暮なことはしません。
で、よくよくテーブルを観察をしてみると、行われている賭博はバカラっぽくてバカラじゃない。バカラとタイガードラゴンを足して2で割ったようなゲームで、参加者はバンカーかプレイヤーではなく、虎か龍か引き分けのいずれかにベット。セット完了後に虎と龍それぞれ1枚づつカードが配布され9に近い方が勝ちという特殊ルールが運用されている。もう単純な運否天賦の世界だが、一応はモニターで過去50戦くらいの虎と龍の戦歴が映し出されていて、皆さん必死になってパターンを読もうとしたり手に現金を握りしめて念じたりしている。ベット額が100円程度なのになんだか無性に殺気立っている安ーいカジノである。

おいおい、この日の為に少し多めにバーツを用意してきたのだが…
適当に台を観察するが、何だかこのゲームよく分からんwしかもこんなルールなもんだからサクサクと金が動いていく。でも折角来たからにはとミニマム1000のテーブルに張り付き、機を見て10,000バーツを龍に投入。周りがマジかよ10,000かよこいつ頭おかしいのかよみたいにざわついてくる。セット完了、カードがマシンから排出され、虎が4!こりゃあツイてる。龍が8であっさり勝利。こんなへんちくりんな丁半博打のようなゲーム、考えたってしょうがない。勝っても負けても次が最後と、続けて龍に10,000バーツ。そしてアッサリ連勝…ものの2~3分で20,000バーツの増殖に成功し、颯爽と引き揚げる。結果オーライだったから良いものの、こんなゲームは二度としないと思います。


因みに二階にはカフェが設置されていて中国語とタイ語のメニューにカウンターがあるが、肝心の店員がいない。トーストが10元、各種コーヒーが20元、各種お茶が16元となっている。カジノポイントとも交換できるようだ。

さて、埠頭まで客人をピックアップしにいく時間になったとのことで、車に乗ってラオス側のイミグレへと戻る。来るときはバンだったが、帰りはマーク2。
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イミグレスタッフも金木綿のバッジを付けた中国公安の制服を着ているではないか。流石はラオス内の中国の飛び地・金木綿ワールドだ。

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