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香港で長期化する反政府デモの現場


1997年に香港が中国に返還されてから17年余り。一国二制度の下で高度な自治が認められ、アジアの金融ハブとして繁栄してきた香港で勃発した反政府デモが長期化、一国二制度継続の正念場を迎えている。今回のデモの発端は、次回2017年の香港行政庁間選挙からは普通選挙が導入されるという約束に対し、香港行政長官候補は親中派が集まる委員会の支持が必要との改革案が8月31日に発表されたことにある。確かに有権者による直接投票がうたわれてはいるが、人選は中共お墨付きの親中派からでお願いね、と。因みに、先の6月10日に中国政府により発表されたは香港統治に関する白書では、「香港の高度な自治権は固有のものではなく、その唯一の源は中央政府からの授権である」と明記され、「普通選挙で選出される行政長官は、国を愛し香港を愛する人物でなければならない」とも書かれている。この抽象的な人選基準の解釈権は共産党に握られているに違いない、それでは実質的に民主派候補が排除されている閉鎖的な仕組みと同じだ!!と抗議のデモが始まった。香港の学生や市民が公正な普通選挙の実現や行政長官の辞任を求めて中心街の大通りを占拠するという「占領中環」(オキュパイ・セントラル)は9月22日に始まり、中国の建国記念日の連休(10月1~2日)には10万人超が繰り出す一大デモに発展した。

香港市民「民主主義支持!普通選挙保証しろ!」
中共 「またきたアルな。しゃーない。」
中共 「18歳以上の住民に選挙権与える。普通選挙するぞ!」
香港市民 「よっしゃ!」
中共 「候補者は我々が選ぶ。好きなの選べ。」
香港市民 「………」

そもそも、将来的に行政長官選挙での普通選挙の導入を認めることが香港返還の条件で、返還から50年は民主主義国家に近い自由な体制が約束されるとして導入された一国二制度のシステムだったが、開始から僅か17年、中国が世界的なプレゼンスを増す中で香港への政治的発言力を強めつつあったところに、この決定。文明国では当たり前の義務を果たせば与えられるはずの民主的選挙権に被選挙権、しゃーない選挙権は与えるぜー、でも我々が事前選別した人からしか選ばせんわって…まぁ仕事の関係上中国大陸に住まう身の私としては、ここで個人的な政治見解を記載するのは慎もうと思うけど、ちょっとなぁ。

ひだり みぎ
中環、金鐘、銅鑼湾、旺角など、香港の繁華街や商業エリアがデモ参加者により占拠され、交通機関が一部麻痺した状態になっている。催涙ガスや唐辛子スプレー、大陸からの雇われヤクザを使いデモ隊の鎮圧を試みる警察側に対し、デモ隊は傘・ゴーグル・マスク・ポンチョなどの軽装備で防御、あくまで平和的解決を求めて丸腰で抗議活動を続け、11月18日現在でも金鐘、銅鑼湾、旺角などは一部バリケードやテントにより道路が封鎖されたままの膠着状態が続く。

ひだり みぎ
「デモ団体の瓦解によるデモ早期解散」「中国当局による暴力的な取り締まり」といった予想シナリオをことごとく裏切り、デモは長期化。APECが終わり次第動きが有ると思ったが、現時点ではどうなるのか読み切れない。


デモの参加者はテント住まい。彼らはゴミを散らかすこともなく騒ぎ立てることも無く全体として静かで、デモにより被害を被ってしまった一般市民や夜勤の続く警察官を気遣うくらいに平和的。「愛と平和」という謳い文句通りに非暴力による抗議活動が展開されている。中には有志でゴミ拾いをしたり、寝泊りするデモ隊に水や食料を配給したりすることでデモを支援する一般市民も多くいて、民主化団体+普段から中国人に不満を持つノンポリ層VS親中派といった構造になってきているようだ。

ひだり みぎ

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痴漢容疑者の指名手配ビラ。「689組の同類」と表現されているが、689とは現香港政府のトップであり、中国共産党の地下党員だとも噂される筋金入りの親北京派の梁振英行政長官を指す。2012年3月に長官選に勝利して現職に就いた彼だが、このとき彼の彼の得票数が689票だったことから689と揶揄されている。

ひだり みぎ

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参加者が傘を盾にして活動していることから、今回のデモ活動は傘の革命(雨傘革命)と呼ばれている。

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拡声器を握り群衆に訴えかけるデモ参加者。驚くのは、この大規模なデモ活動が若き学生により扇動されているということだ。リーダーは若干17歳のジョシュア・ウォン(黄之鋒)君。学生団体「学民思潮(スカラリズム)」の設立者の1人で、2012年に香港政府が愛国主義教育の導入を計画した際にも「教育に名を借りた洗脳だ!!」と抗議活動を指揮し、香港政府を計画の撤回に追い込んだ若き民主化闘士だ。

ひだり みぎ

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現場はもっと殺気が立ち込める危ない雰囲気かと思ったが、大声で要求内容を叫びながら警官とやりあうといった切迫した攻防が繰り広げられるわけでもなく、たまーに小競り合いが有る程度。学生デモ参加者による学芸祭的な和んだ雰囲気すら感じる。強権を振りかざし、強大な権力と暴力的支配をたのみに一国二制度を踏みにじろうとする大陸政府に反発する民主化デモとしては、洗練された文明の民としての平穏で秩序正しい不服従抵抗こそが最も効果的なやり方なのかもしれない。とにかくデモ参加者は一様に組織化され、秩序だっている。

続いて金鐘(アドミラルティ)のデモの様子。

金融センター香港の心臓部である封鎖政府庁舎の包囲は解除されたが、庁舎付近の一部のメインストリートは未だに封鎖されている。


活動を率いるリーダー格の一人・周庭(アグネス・チョウ)は大学に入ったばかりの17歳。学民の女神やら香港のジャンヌダルクなどと取り上げられている人物だ。「今戦わなければ、香港は早晩、中国本土の主要都市と同様に腐敗と縁故主義がはびこる社会に堕してしまう。」民主的な選挙を求め、国を変えようと集まる若い力に思わず感服してしまう。

ひだり みぎ

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金鐘(アドミラルティ)の方は、政治的なデモの根拠地というよりもサブカルチャー系の音楽フェスティバルを彷彿とさせる。多くのデモ参加者は学生で、テントの下で宿題をしたりする姿なども見られる。

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「一国二制度」を「一国独裁」に引きずり下ろしたい中国政府は、香港独自の制度を踏みにじり、強硬手段に訴えて香港を完全に中国化してしまうのだろうか。それとも市民の抵抗が香港のこれまでの文化・制度を維持させ、更には中国本土の民主化へとつながっていくのだろうか。アジアの未来をかけた民主化の戦いは今なお予断を許さぬ状況が続いている。

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