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ベトナムの伝統芸能 カー・チュー@旧家保存館


トゥオン劇場の公演のオーディエンスがまさかの私一人という事態となった為、流石に私一人の為に貸切公演はできないとの判断から当日キャンセルとなってしまった。失意のもとホテルに戻り情報収集をしていると、旧市街のマーマイ旧家保存館ではカー・チューという伝統芸能が鑑賞できるとの情報を入手した。カー・チューとは雅楽や民謡にも似たベトナムの伝統芸能で、高音の打楽器のファック(fワードで申し訳ない)、独特の音色を奏でる弦楽器のダンダイ、太鼓のチョンチャウという3つの伝統楽器の哀切感ある調べにベトナム古語の趣きある詩を乗せて、歌い手が情感豊かに歌い上げるという芸能だ。カー・チューの歴史は11世紀まで遡り、当時の上流階級の間で流行し、その後、庶民にも広まって村の行事などで広く歌われるようになったそう。北部の伝統芸能といえば水上人形劇が有名ですが、このカー・チューも2009年にユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、ベトナムが誇る貴重な伝統芸能の一つとのことだ。



【カー・チュー・タンロン劇@旧家保存館】
・住所:87 Ma May, Hanoi.
・電話:38536732
・開演日:火、木、土20:00~
・入場料:US$10(この日はVND200,000でした)

演劇の舞台となる旧家保存館はその名の通り19世紀ベトナムの伝統的な中華風木造家屋を修復保存した建物で、幅数メートル奥行き数十メートルという非常に細長い造りが特徴だ。当時は通りに面した家屋の幅で納税額が決定されたので、こんなにも細長い家屋が乱立したらしく、こちらの旧家保存館だけでなく、ハノイを歩いていると、横幅が極端に短くて奥行き・高さがある、俗に言う「うなぎの寝床」的な細長い住居をよく見かける。


そういや旧家保存館には去年にもきてますね。旧市街中心地にひっそりと佇む伝統家屋
しつこく追い回してくる靴磨きの少年からの避難も兼ねて入場。小さな会場ですが事前予約無しですんなり通してくれました。伝統芸能なので演じている方もそれなりの年齢かと思っていましたが、なんのなんの、演者の皆さまは若くて綺麗でお上品でびっくりです。これは嬉しい誤算。


席は自由席で早い者勝ち。壁際最前列にある、物凄く座高の低い椅子しか残っていませんでした。これ、本当にくるぶしくらいの高さしかなくて、慣れるまではちょっと窮屈に感じてしまう、というか、最後まで慣れなかった。本日は全28席が満員で、その殆どがツアーガイド率いる日本人の団体観光客のようだ。


開演前には表の木戸がバタバタと締められる。するとハノイ旧市街の喧騒が嘘のように一気に消え去り、舞台となる旧家の中に凛とした空気が張り詰める。舞台のデコレーションや演者の衣裳も含め、見る者を引きこんでいく独創的な世界が造り上げられて、見事な雰囲気のプレゼンテーションだ。


最初に今日のプログラムとカー・チューで使用される各楽器の説明などが簡単に英語で行われる。インターミッションではローズティーと茶菓子が振る舞われ、演奏後はなんと楽器にも触れさせてくれるとのこと。未知の体験にワクワクしてきます。


これが歌札、即ちカー・チューです。昔は役人や儒教学者、詩人などの身分が高く強要のある人達のために芸者が詩歌を歌い、聞き手が気に入ると太鼓を打ち褒美を出すこと知らせ、その評価額を書いた札が銅の盆や鍋に投げ入れられた。宮廷でも演ぜられる高尚な芸能だったカー・チューですが、フランス統治時代には金と女が結びつくダーティーなイメージがついてまわり、60年代~80年代には殆ど演奏されなくなったそう。その後カーチューは芸術として復活するも世間の偏見は覆せず、女性であるカー・チューの歌い手への色眼鏡はとても厳しいもので、あくまでもカー・チューは舞台の外で隠れるように継承されてきた。それが最近の伝統芸術復興の機運にのり、また、2009年にユネスコ世界無形文化遺産登録されたこともあり、こちらの演者さんたちのように若い世代が徐々に徐々に台頭し始めてきたのだと言います。

ひだり みぎ
さて、もう前置きはもう十分、演奏が始まりました。アンサンブルミュージックから始まり、曲ごとに奥の扉から演者が入れ替わり、使われる楽器もチェンジしていきます。カー・チューの歌詞はチューノム文字と呼ばれるベトナム古語や漢詩で書かれており、宮廷や知識人・資産家の間でも愛されたといわれております。演者が楽譜を見ていないのは、小さいころから聞いているので身に刷り込まれているからだそう。こちらには歌詞の意味は分かりませんが、このどこか幻想的な音楽が奏でる独特の雰囲気に包まれるだけでも素晴らしい経験になります。


演奏の様子。


右側の長~い柄の三味線のような弦楽器がダンダイ。全長は何と160~165cmにもなるそうだ。


歌い手はファックという20cm程の硬木の板を使って調子を取り、ダンダイが音階を調整しながら節をつけるように演じられている。胴の部分の裏板が張られていないので、独特の優しくこもったような音色が、心にしみわたる独特の風情を演出する。


楽譜も無く拍子の取り方が難しそうですが、ダンダイの響きにのせた歌い手の声色と竹でできた拍子木の音が終始絶妙な調和を保っています。

マーマイ通りの喧騒がシャットダウンされた中で哀愁のある楽器の演奏と歌が流れ、外の世界とは全く違った優雅な空間に身を置くことが出来ます。何というか、優雅で心に残る上品なひと時。歌詞は理解できないけれど、演出の雰囲気と音楽のお蔭で、その独特の世界に引き込まれました。途絶えかかっていたこの伝統芸能を復活させ、後の世代へ伝承すべく若者たちが頑張っている姿もいいではありませんか。ハノイ旧市街にあり交通の便も良いので、ハノイでお時間がありましたら是非ご鑑賞下さい。

*知ってか知らずか、日本人のおじさんがフラッシュをたいて写真を撮っていました。フラッシュはルール違反ですのでね!!注意されても逆上しないでくださいね!!!

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